再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今後はリューセー視点での地の分で、相手を呼び捨てにします。


入学編 種明かし

 学校の閉門時間間際である部活連本部。

 

「兵藤隆誠。達也君の報告内容は間違いないか?」

 

「はい、相違ありません」

 

 俺は目の前にいる三人の男女から、少し前に起きた剣道部と剣術部が起こした事件についての事情聴取をされた。

 

 何故こうなったかと言うと、風紀委員の司波が動く前に乱入して桐原を吹っ飛ばした後、他の剣術部員に暴力を振るったからだ。

 

 本来は風紀委員が率先して止めに入らなければいけないところを、そうでない俺が勝手にやってしまったのがいけなかった。しかし、俺が乱入しなければ修哉が危うく怪我をするところだったので後悔はしていない。

 

 更には桐原以外の剣術部員にも手をあげてしまった為、最初は魔法を使ってないからと咎めなかった司波も、流石にこれは不味いと判断し俺を連行した。そして司波が一通りの報告をした後、交代するように前に出て対面している。

 

 因みに俺が吹っ飛ばした桐原は気絶しても、大した怪我もなく打撲程度で済んでいた。デコピンを食らわせた剣術部員の額にはたんこぶが出来ただけだが、もう少しの間は痛みと向き合ってもらう事になっている。

 

 簡単な内容だが経緯についてはこんなところだ。

 

「兵藤くん、もし良かったら教えてくれないかしら? 達也くんの話によると、君は桐原君に一切触れず睨んだだけで吹っ飛ばしたみたいだけど、それだけだといまいちピンとこないのよ」

 

 向かって右に生徒会長の七草が、詳しい説明を求めてきた。

 

 確かに司波からの報告を受けても、そう簡単に納得出来ないだろう。一切魔法を使わないで吹っ飛ばしたなんて、魔法師からすれば考えられない事だ。

 

「確かにそれも気になるが、私としては君が一瞬で姿を現したのが気になるな」

 

 中央には一応司波の上司である風紀委員長の渡辺摩利。

 

 楽しそうに笑いながらも凄く気になってるようだ。七草とは別に、俺が超スピードを使って現れた方を知りたがっている。

 

 それは俺の後ろにいる司波も同様で、ジッと注視している。直接見ていたアイツとしては、この中で一番気になっているんだろう。

 

「もし差し支えなければ今此処で再現する事は可能か?」

 

 左にはガタイのいい三年男子生徒で、部活連会頭の(じゅう)(もん)()(かつ)()先輩は、七草とは別に再現を求めてきた。

 

 この三人こそが第一高校の三巨頭と称されている。加えてその内の二人である七草と十文字は、『十師族』と呼ばれる日本で最強の魔法師の家系である。謂わば日本にいる魔法師達の代表とも言える存在。

 

 代表と言っても表向きは一般人だが、その裏では政治に干渉出来るほどの権力を持っている。政府側は魔法師と言う強力な存在がいる事で日本が守られているから、十師族の行動をある程度黙認している節がある。それが非合法活動であったとしても。

 

 と、今はそんな事はどうでもいい。そんなお偉方なんかより、目の前の事に集中しないと。

 

 どうやらこの場にいる全員が知りたいようだ。俺が使っていた魔法でない『遠当て』や『超スピード』の事を。

 

 前世で見た漫画やアニメである『ドラグ・ソボール』を基に再現した技です、なんて言ったところで信じてないだろう。それは断言出来る。『前世』と言う非科学的な単語が出てる時点でおかしいので。

 

 まぁここは『とある武術家から教えてもらった秘伝だから口外できない』と言うのが妥当だ。そうすれば向こうは渋々引き下がって追求出来なくなってしまう。

 

 とは言え、教えたところで俺に何の支障もなければ、簡単に真似できる芸当でもない。情報を知られたら対策を立てられるかもしれないが、それ以外の手段はまだ沢山ある。だから一つ二つくらい教えても然して問題無い。

 

「分かりました。ではお見せしましょう。先ずは……」

 

 そう言いながら俺は後ろに下がり、司波を通り越して本部の出入り口前で止まった。

 

 司波だけでなく、10メートル近く離れている十文字達も訝しげな表情になっている。

 

「君は一体何をやろうとしているんだ?」

 

 代表して渡辺が訊いてきたので――

 

「渡辺委員長が気になっているアレを再現するんですよ――わっ!」

 

「うわぁっっ!!」

 

『!?』

 

 答えた直後に超スピードを使い、一瞬で彼女の目の前に現れて大声を上げた。

 

 突然の事に渡辺は仰天しながら、勢い余ってガタンッと椅子ごとひっくり返る。それにより彼女以外の全員が信じられないように目を見開いていた。

 

「………っ! ま、摩利、大丈夫!?」

 

「大丈夫か、渡辺」

 

 固まっていた七草は数秒後にハッとなって、すぐに椅子から上がって倒れた渡辺に近寄って介抱しながら安否確認をする。十文字は渡辺を気遣ってか、同じ女性の七草に介抱を任せて声を掛けるだけに留めている。

 

 どうやらちょっとばかりやり過ぎてしまったようだ。まさか吃驚し過ぎて倒れるとは思わなかったので。

 

「いたたた……い、いきなり現れるんじゃない! 心臓が止まるかと思ったぞ!」

 

 打った腰を擦りながら立ち上がった後、渡辺は怒鳴り散らした。

 

「失礼しました。委員長のリクエストに応えたつもりだったんですが、少々悪ふざけが過ぎましたね」

 

「……君も達也君と同様に一癖あるようだな」

 

 渡辺の皮肉に俺は内心納得いかなかった。

 

 司波と同様って……なんかまるでペテン師みたいに言われてるんだけど。多分だが後ろにいる司波もそう考えてるかもしれない。

 

 まぁ取り敢えず一つ目の再現はしたのは確かなので、さっきの皮肉は聞き流す事にしよう。

 

 倒れた椅子を立て直し、改めて座る渡辺や七草、そして所定の位置に戻った俺は説明を始める。

 

「先程見せた通り、アレを使って剣道部と剣術部の間に割って入りました。当然魔法の類でなく、純然たる俺の身体技能です。武術で言う縮地法みたいなもの、と思って下さい」

 

「何だと!?」

 

「摩利?」

 

 俺が縮地法と言った事に、渡辺は驚愕した。反応からして知っているようだ。逆に七草は知らないみたいで、思わず彼女の方へ視線を向けている。

 

 因みに十文字は驚きの反応を示すも、声を荒げてはいない。後ろにいる司波も同様に。

 

 質問をしたそうな渡辺を余所に、俺は次に遠当ての話に移ろうとする。

 

「ではお次に会長が知りたがっているアレを披露しましょう。と言っても、何かぶつける物とかないと証明する事が出来ないんですが……」

 

 生憎とこの今は本部に小道具の類は一切無い。試すとしたら、司波に遠当てを受けてもらうしかない。尤も、それは本人が了承してくれればの話だ。

 

 そう思ってると、途端に十文字が立ち上がった。

 

「ならば、俺が実際に体験しよう」

 

「十文字君!?」

 

「お前、本気か?」

 

 自ら遠当ての体験をすると言い出した十文字に驚く七草と渡辺。

 

「兵藤が秘伝も同然の技を、俺達の頼みで明かしているんだ。これくらいしなければ割に合わないだろう」

 

 秘伝、ねぇ。遠当てや超スピードは元々『ドラグ・ソボール』と言う漫画+アニメを参考にしたものだが、確かにある意味秘伝かもしれない。何しろこの世界に存在しない物だから。

 

 結局のところ、十文字が受ける事となって俺と相対する事となる。

 

「十文字会頭、防御の構えを取って下さい」

 

「分かった。なら………これでいいか?」

 

 七草や渡辺、そして司波にも見える位置に立つ俺と十文字。

 

 彼は俺の指示通りに動こうと、両腕を分厚い胸板の前で交差し防御態勢となる。

 

「充分です。後は倒れないよう踏ん張って下さい。では、いきます」

 

「……………」

 

 遠当てをやろうと瞑目する俺に、十文字は来いと言わんばかりにどっしりと構えていた。

 

 誰もが無言で見届けてる中、目を開いた俺はキッと力強く睨んで遠当てを発動する。

 

「ぬっ!」

 

 見えない衝撃を受けた十文字だが、身体ごとズズズっと後ろへ引くも一切倒れる様子はなかった。

 

 凄いな。加減したとは言え、俺の遠当てを受けてもよろけないなんて流石だ。並の人間なら簡単に吹っ飛ぶ威力だが、それをこうも防ぐとは流石は十文字家の次期当主と言ったところか。

 

 驚く俺以外にも、七草と渡辺は信じられないと言わんばかりに目を見開いており、司波は何か分析するように目を細めている。

 

「……なるほど、コレで桐原を触れずに倒したのか。魔法でないのに、凄まじい威力だ」

 

 遠当てを体験し、感想を述べながら構えを解く十文字。

 

「ご理解頂けて何よりです。今のも武術で使う『遠当て』という一種の秘伝みたいなものです」

 

「君は『縮地法』だけでなく、『遠当て』も出来るのか!?」

 

 またしても知っていそうな渡辺が叫んだ。縮地法や遠当てを知っているって事は、この人もしや武術を嗜んでいるんだろうか。まぁ風紀委員と言う荒事対応の組織に入ってるから、それなりに武術の嗜みはあるんだろう。

 

 詳細は省かせてもらったが、三巨頭+司波にはこういう技という事を教えて、どうにかお開きにさせてもらった。


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