再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は短めです。


来訪者編 奇妙な再会

 西暦2096年2月15日

 

 

 

 リーナ達USNA軍の対応については九島に任せる。そう考えた俺は思考を切り替えて学校へ向かった。因みにレイとディーネは万が一の事を考えて、家の守護を命じてある。

 

 それとは別に、バレンタインデーが終わったにも拘わらず、一高の校舎内は変だった。浮ついた空気とは違い、奇妙な困惑が漂っている。

 

 登校して早々に俺はそれに気付くも、全く興味が無かったから、他の生徒達と違って確かめようとしなかった。と言うより、昨夜の件でチョッとばかり疲れた事もあって、調べる気分ではないと言った方が正しい。

 

 尤も、それは後になって分かった。興味深そうに調べていた修哉と紫苑から聞く事が出来たので。

 

 

 

「ピクシーが笑みを浮かべて魔法の力を放った?」

 

「ああ。俺達は直接見てないが、周囲の殆どがそう話していた」

 

「どうやら教師陣も完全にお手上げ状態らしいわ」

 

 昼休みの学食で食事を取りながら、噂を知った修哉と紫苑から聞いていた。

 

 因みに『ピクシー』とはロボ研のガレージに設置されている3H(スリー・エイチ)(Humanoid Home Helper:人型家事手伝いロボット)である。

 

 去年の秋頃に三年の関本が犯罪行為を行っていた際、ピクシーが生徒会に緊急メールを送信した件がある。もうついでに司波の奴が、関本の窃盗未遂動画や使用していたツールを記録させて密かに持ち出そうとしたところ、俺がチョッとばかり説得(おど)して複製させた事もあったが。

 

 まぁ過去の事は良いとして、だ。話題となってる人形が笑っているだけならまだしも、魔法を行使しているとなれば話は別だった。修哉達からすれば怪奇現象(ホラー)も同然であるから。

 

 聖書の神(わたし)からすれば、そんなに驚くモノではない。前世(むかし)の頃、そう言う似た人形を何度も見た事がある。(イッセー)と修行の旅をしていた際、遭遇した魔法使いとの戦闘で、向こうが人形を使って魔法であたかも人間みたいに振舞わせていた事があったから。

 

 だが、今回起きてる現象ではピクシー自体が魔法を使うのは普通に考えてありえない事だ。俺が知る限り、アレは電動ロボットの筈なんだが、一体どうやって魔法を使えるようになったのやら。個人的には興味深い事象だが、俺には如何でも良い事であり、すぐに解決するだろうと思っている。

 

 食事前、司波がロボ研の同級生に調査して欲しいと頼まれたのが見えた。今頃は現場に行って調べている最中だろう。

 

 ロボ研よりピクシーについて詳しいから、アイツに頼るのは当然の流れと言うべきだろう。俺としても是非ともそうするべきだと考えている。

 

 だから今回は司波に任せれば大丈夫だ。専門家以上の知識があるから、必ず良い方向へ上手く対処出来るだろう。

 

「まぁそこは俺達が彼是(あれこれ)考えるより、司波がどうにかしてくれる筈だ」

 

「そう言えばアイツ、ロボ研に頼まれたんだったな」

 

「確かに彼以上の適任者はいないわね」

 

 司波の名を出した途端、二人はすぐに納得した。俺と同様の事を考えているから。

 

 ピクシーの話題は此処までとなり、食事もあと少しで終わりそうになるところ、紫苑がふと思い出したように訊いてくる。

 

「ところで、リーナさんは学校に来てないわね。今日もお休みなのかしら?」

 

 それを聞いた瞬間、俺はピクリと反応する。

 

 気になって休み時間中に生徒会室で調べたところ、どうやらリーナは体調不良で欠席しているとの事だ。てっきり俺と同じく登校するかと思っていたが、やはりそうはいかなかった。

 

 まぁそれは仕方のない事かもしれない。彼女が休んでいる理由はいくつか考えられる。

 

 

 ①俺が捕らえた事で身体に何らかの異常が無いかの確認。

 

 ②昨夜の戦闘で負けて捕らわれた際、リーナが色々と失態を犯した事が判明した事によりバランスが取り調べ中。

 

 ③今朝方に九島からの連絡で、今もバランスと同席しながらOHANASHIと言う名の追及をされている。

 

 

 個人的に③が濃厚だと思うが、どの道リーナを含めたUSNA軍は暫しの間、身動きが取れないだろう。

 

 USNA軍が今後自分に手を出さない為の釘を刺すよう九島に頼んだが、その後の事までは一切ノータッチだ。だから何かを企んでいるにしても、そこは俺が口出しをする権利は無い。

 

 まぁ少なくとも、彼は俺に対して不利益な事をしない筈。未だに大きな借りが残っていると本人が言っていたし、恩を仇で返すような真似はしないだろう。出来ればそう願いたいが。

 

「ああ。どうやら体調不良らしいぞ」

 

 取り敢えず紫苑の質問に答えようと、俺はリーナの欠席理由を教えた。

 

 因みに昼休みが終了間近になっても、司波達は学食に来なかったみたいだ。

 

 聞いた話によると、四時限目が終わるまで対処していたらしい。授業をサボってまで調べるとは、それだけピクシーの対処が大変だったと言う証拠なのだろう。

 

 そう結論していた際、俺は気付かなかった。作業を終えた司波や同行していたその一行が、何故か怪訝な視線を投げかけていた事に。

 

 

 

 

 

 

「リューセー、行こうか」

 

「ああ」

 

 放課後。授業を終えた俺と修哉は剣道部の部室へ行こうと教室を出ようとする。

 

 生徒会の仕事はあるが、今日は大して忙しくないから、クラブの方へ行く事になっていた。勿論それは生徒会長の中条も知っている。

 

「そう言えば昨日、壬生主将が桐原先輩に本命チョコ渡したの見たぞ」

 

「え、マジ? もうチョッと詳しく教えてくれ」

 

 俺が昨日起きた事を話すと、修哉は大変興味深そうに食い付いてきた。自分の姉貴分だから気になるのだろう。

 

 クラブが始まる前に揶揄ってやろうと二人で話しながら教室の扉を開けると、目の前に予想外の人物が佇んでいた。

 

「兵藤、話があるから付いてこい」

 

「おいおい、いきなり何だ? ってか、先ずは理由を言え」

 

 目の前の人物――司波が突然の命令口調で言ってきた事に俺が抗議するのは至極当然の流れだ。

 

 司波妹や光井は別として、あんな上から目線な言い方をされて素直に従う奴はいない。

 

 理由を求める俺からの抗議に、司波は相も変わらずの無表情で告げる。

 

「詳しい事は後で話す。だから付いて来てくれ」

 

 明確に言わないまま、再度同行しろと言ってくる司波。

 

 何も言わず一方的な態度を取るとなれば……修哉に聞かれたら不味い内容なのかもしれない。パラサイトに関する事であれば猶更だ。

 

「待てよ、司波。リューセーはこれからクラブがあるんだから、明日以降じゃダメなのか?」

 

 司波の態度にチョッとばかり不快に思ったのか、修哉が眉を顰めながら文句を言ってきた。

 

「悪いが大事な話だから、場合によっては休む事になるかもしれない。天城の方から壬生先輩に伝えてくれ」

 

「はぁ? お前、一体何をそんな勝手に――」

 

「止せ、修哉」

 

 納得が行かないと再び文句を言う修哉に俺が止めた。

 

「リューセー……」

 

「司波がこう言う陰険な性格してるのは前から知ってるだろ?」

 

「誰が陰険だ。少なくとも兵藤に言われたくはない」

 

 修哉に諭すよう言ってると、聞き捨てならないと睨みながら言い返してくる司波。

 

 例え断ったところで、コイツは是が非でも連れて行くのが目に見えているから、此処は穏便に済ませようと俺が譲歩する事にした。

 

 壬生には遅れる事を修哉に言伝を頼んだ後、俺は案内する司波の後に付いて行く。

 

 その途中で司波妹と合流したのだが、何故か彼女は俺の後ろに付きながら歩いていた。まるで司波兄妹が俺を挟むような列となっている。

 

(どう言う事だ? あの超絶ブラコン娘は必ずと言っていいほど、超絶シスコン男の隣を歩く筈なのに……)

 

 俺は内心で司波兄妹に対して物凄く失礼な事を考えながらも違和感を抱いていた。

 

 この光景は他の生徒達も目撃しているのは言うまでも無い。だが、俺とこの兄妹は一高では色々有名となっているから、目撃はしても口出しをしようとする様子は見受けられなかった。

 

 もしかして俺を危険な存在と判断し、罠を仕掛けて俺を亡き者にしようと言う魂胆か? だとしても、それは非常にナンセンスだ。敵対すると分かった瞬間、力の差を教えながら返り討ちにするつもりだ。自分達がどれだけバカな事を仕出かしたのかを、心の底から後悔させてやる。

 

 襲い掛かってきたらどこまで痛めつけてやろうかと考えている中、目的の場所に辿り着いた。目の前には実験室と思われる空き教室があり、司波は扉を開けて先行し、俺もその後に続いて中に入る。最後に司波妹が入室すると、その直後に何故か教室の鍵を閉めた。

 

(おいおい、まさか本気でやる気なのか?)

 

 ハッキリ言って痛めつける云々は殆ど冗談であった。いくらなんでも司波兄妹が学校でそんな短絡的な行動をする訳がないと思っていたから。

 

 ソレとは別に何かおかしいのは確かだ。この兄妹は俺を見た時から、何かしらの警戒感を醸し出している。

 

 だが、俺が入った空き教室には司波兄妹の他にもいた。エリカ、レオ、幹比古、柴田、光井。そして最後に、本日の話題となっていたピクシーも一緒にいる。

 

(何でエリカ達まで……?)

 

 空き教室で司波一行とピクシーがいる事に、益々訳が分からないと俺は不可解に思った。

 

 その直後、何を血迷ったのか司波達は俺を取り囲むように動き出した。動いていないピクシーは俺の方へ視線を向けたまま。

 

 それだけでは無い。司波達はまるでいつでも戦えるように身構えている。特にエリカ辺りは殺気を出すように睨んでいる。

 

「おい、これは一体何の真似だ?」

 

 俺がチョッとばかり不快になりながら訊ねると、司波が何故かピクシーの方へ視線を向けている。

 

「ピクシー、コイツに間違いないか?」

 

『はい、マスター。彼が前の宿主や他のパラサイト達も探し求めていた、「シューティング・スター」に間違いありません』

 

「……は?」

 

 突然の展開に俺は戸惑っていた。

 

 それは仕方のない事だろう。ロボットである筈のピクシーが司波に対してマスターと呼んでいる他、人間みたく会話してるようにテレパシーが意識に響いた。これで戸惑わない奴はいないだろう。

 

 確か修哉達の話では笑みを浮かべて魔法を使ったと言っていたが、もしかしてそれに関係しているのか?

 

『そして、前の宿主がこうも言ってました。「彼は我々の同胞(なかま)と思わしき繋がりも感じる」と』

 

「おいチョッと待て。まさかお前はあの時の……!」

 

 聞き覚えのある台詞が耳に入ったので俺が問おうとするも――

 

「説明してもらおうか、兵藤。いや、この場合は『パラサイト』と呼んだ方が良いか?」

 

 いつの間にか拳銃型CADを持ち構え、いつでも撃てる状態の司波が俺にそう言ってきた。




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