達也達に強い制裁を期待していた方々には申し訳ありませんが、今回はそのような展開は一切ありません。
コレを見てガッカリしたかもしれませんが、リューセーは間違いなく怒っており、ちゃんと罰を下す予定です。
「……おい司波、それは冗談にしても笑えないんだが?」
拳銃型CADを此方に向けている司波に対し、俺は静かに怒気を込めて問う。
だが、当の本人はCADを下げようとする気配が全く無かった。それどころかすぐにでも
一方的にこんな場所へ連れて来られた挙句、司波一行に囲まれて自分をまるで敵だと言わんばかりに警戒されている。こんな事をされて怒らない奴はいない。
「悪いが今は此方の質問に答えてもらいたい。お前は兵藤なのか、もしくはパラサイトであるのかを」
「お前なぁ……!」
正直言って、司波の言ってる意味が全く理解出来なかった。寧ろ、それ以前に全く話にならない馬鹿げた質問である為、余計に怒りが募る一方だ。
それとは別に、アイツがこんな馬鹿げた行動をしている理由は何となくだが分かった。恐らく、あそこにいるピクシーが原因だろう。
さっきアレが言った台詞――『彼は我々の
確証は一切無いけど、俺の予想では覆面女だと思っている。母さんが風邪を引いてしまった為に看病しようと学校を休んでいた時、リーナの関係者と思わしきマクシミリアンの女性社員が来ていた。ソイツが前に交戦した覆面女のパラサイトだと判明するも、自爆した挙句に逃げられた。多分だが、霊体となって学校を彷徨っていた時に偶然ピクシーに憑依したかもしれないと俺は考えた。
因みにその覆面女だが、昨夜にリーナの記憶を読み取ってる時に偶然知る事が出来た。USNA軍の関係者――『ミカエラ・ホンゴウ』であった事を。追跡してるパラサイトがUSNA軍の中に紛れていたとは皮肉な結果だと、リーナに少しばかり同情してしまう。
それはそうと、他に気になる事があった。経緯は全く不明だが、ピクシーには何故か光井のオーラ、と言うより、残留思念と思わしき何かも感じる。
一体何がどうなってピクシーに憑依してるパラサイトが光井の残留思念と合わさっているのか、こればっかりは皆目見当もつかない。逆にコッチが聞きたい位だった。
だがその前に、今は俺を囲んでいる連中をどうにかしなければならない。CADを向けている司波だけでなく、俺の後ろにいる司波妹も魔法が放てる状態だ。
本来は校内でのCAD携行は禁止されており、持ち込んだ際は学校に預け、帰宅時に返却して貰う規則だ。但し、生徒会役員と風紀委員は例外としてCAD携行が例外として認められている。生徒会副会長の司波妹、そして風紀委員である司波兄は当然所持しているから、それを使って構えている。因みに生徒会メンバーの俺と光井もCADを所持してるのは言うまでも無い。
尤も、下校時間になれば受取可能なので、放課後となってる今ではCAD所持が可能だ。その証拠にエリカと幹比古とレオが、自身のCADを持っている。恐らく司波が俺を此処へ連れて来る前、一通りの準備をしておいたのだろう。態々放課後にした理由は言うまでも無い。
「俺はパラサイトじゃない。これで良いか?」
今の司波に何を言っても無駄である上に、本気で撃つ雰囲気を見せていた為、俺は怒りを抑えながらも大人の対応をする事にした。
コイツを一瞬で黙らせる事は造作も無いが、それをやってしまえば非常に面倒な事になる。後ろにいる司波妹が暴走する展開になると容易に想像出来るから。
「ならば兵藤。お前が本当にパラサイトでないなら、いくつか質問させてくれ」
「あ~はいはい、分かった分かった。もう好きにしろ」
後で覚えてろよと決心しながら、苛立ちを抑えながらも従う事にした。
とは言え、コレは当然の流れだった。いくら違うと否定したところで簡単には信用出来ない。俺が逆の立場だったら絶対にそうしてる。加えて普段から用心深い司波が、あんな一言の解答だけで全面的に信じる訳が無い。
司波達に囲まれたまま、俺は敵じゃない事をアピールしようと両手を上げている。端から見れば今の俺は完全に隙だらけで、もしも司波兄妹が魔法を発動させたら、あっと言う間に倒されると言う展開を想像するだろう。尤も、
「先月の日曜日、生徒会室で七草先輩達にパラサイトについて話した後の事だが……」
司波兄妹がいなくなった後、エリカと幹比古からの強い要望で俺が急な仲介役となって、真由美達と合同捜査する事になったアレか。捜してる覆面女が学校で交戦した事で肉体を失い、パラサイトが逃げられてしまった事であっと言う間に解散となってしまったが。
「エリカ達から聞いた話によると、お前は合同捜査に参加しなかったそうだな。更にはその翌日、母親の看病と言う理由で学校にも休んでいた」
「それがどうした? まさか俺が休んでいる間、学校に来た覆面女のパラサイト――『ミカエラ・ホンゴウ』に情報を流したとでも疑っているのか?」
『!?』
俺が覆面女のフルネームを言った事で、司波達が目を見開いていた。同時に俺の斜め前にいるエリカが今まで以上に殺気立ち、今にも襲い掛かりそうな雰囲気を見せている。
「兵藤、何故お前が――」
「やっぱりグルだったのね!」
司波が言ってる最中、突如エリカが激昂して襲い掛かって来た。いつの間にか武装デバイスの小太刀の形態に展開し、それを振り翳していた。
『エリカ(ちゃん)!?』
司波を除く全員が声を上げるも、エリカは止まる気配を一切見せず、両手を上げたままの斬りかかろうとする。
対して俺は、彼女の強襲に慌てる事無く――簡単に躱しながら一瞬で間合いに踏み込んだ。そのまま小太刀を持ってる手首を掴み、流れるように片足を引っ掻け、あっと言う間に倒れていくエリカの背後に回ってそのまま床に抑え込む。因みに彼女が持っていた小太刀は既に床に落ちている。
「いいっ!?」
「さてエリカ、覚悟は当然出来てるだろうな? 言っておくが俺は女相手でも容赦しないぞ」
「ぎゃぁぁぁぁぁ~~~~~~!!」
勝手に襲い掛かってきた
それを受けてるエリカは女とは思えない悲鳴をあげながらジタバタ暴れているが、俺に拘束されている為に身動きが取れない状態である。
『……………………』
一連の流れを見ていた司波達は言葉を失ったかのように呆然としていた。エリカの奇襲を簡単に躱し、あっと言う間に組み伏せたのは予想外だったのだろう。
「兵藤、悪いがエリカを放してやってくれ。お仕置きはもう充分だろう?」
「逆に問うが、お前はこの状況で俺が素直に応じると本気で思ってるのか?」
いくら相手が友人としての付き合いがあるエリカでも、そう簡単に許す訳にはいかない。
加えて、今の俺はこう見えて結構気が立っている。
昨夜の戦闘で疲労が溜まっている他、一方的に俺を呼び出してパラサイトではないかと一方的に疑われた挙句、勝手にキレたエリカに襲われかけた。これが俺以外の人間だったら、確実にブチ切れているだろう。
「リュ、リューセー! それ以上やったらエリカが……!」
「おいリューセー、いくらエリカが狂暴だからって、一応女なんだぜ……!」
幹比古はともかく、レオがさり気なく酷い事を言っていた。まぁ否定出来る要素が全く無いから、思わず頷きそうになったのは俺の胸の内に秘めておくとしよう。
因みにエリカは聞いているのかは分からず、今も俺の折檻で悲鳴を上げている最中である。
「取り敢えずお前等、CADを床に置け。今の俺は気が立っていてな、いつまで加減出来るか分からんぞ?」
『!?』
エリカの利き腕の骨を折るぞと言う意思を見せた瞬間、司波達は再び目を見開く。
俺のやろうとしてる事は度が過ぎた暴力行為だと思われるかもしれないが、後になってからそれは正当防衛だと認められ、逆にエリカが咎められる事になる。
学校内でCADを持ち、剰え自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反以前に犯罪行為である。エリカの場合はCADを小太刀の形態に魔法展開させ、俺に攻撃を仕掛けたから犯罪行為に該当する。だから俺が彼女に大怪我を負わせても罪にならないどころか、文句の付けようが無い正当防衛だと立証される。それでも少しばかりやり過ぎだと注意されるかもしれないが。
当然、俺を囲んでいる司波達も充分に理解している。と言うより、CADを構えてるコイツ等(司波兄妹、幹比古、レオ、光井)も犯罪行為寸前の立場である為、俺が訴えれば即時同罪になる。
「分かった。全員、兵藤の言う通りにしろ」
『…………』
リーダー的立場である司波の指示に、幹比古達は待機状態にしていたCADを解除した後、言われた通り床に置いた。そして司波も手にしてる拳銃型CADを同様に。
賢明な判断だと思いながらも、俺はまだエリカを解放しようとする姿勢を見せない。
「指示には従った。次はどうすれば良い?」
「まずこっちが教えてもらいたい。お前達がこんな馬鹿げた事を仕出かした理由、そこのピクシーの事もな」
「……良いだろう」
俺の要望に司波は若干間がありながらも了承した。
「そもそも俺達がお前を此処へ呼び出したのは、ピクシーの話を聞いたからだ。さっきピクシーが言ってただろう。お前の事を『シューティング・スター』と呼んでいた他、『繋がりも感じる』と」
「その前に何故ソレが俺の事を知っているんだ?」
「今から説明させる。ピクシー」
『はい、マスター』
司波が声を掛けると、ピクシーが反応して返事をした。
……チョッと前から気になっていたんだが、何で司波の事を『マスター』って呼んでいるんだ?
何だかピクシーを見てると、レイとディーネみたいな感じがするのは気のせいだろうか。
「メンテ室で俺と話していた事を、兵藤に全て説明してくれ」
『かしこまりました』
「ええっ!? た、達也さん、それってまさか……!」
すると、何故か光井が途端に慌ただしい声を出した。しかも顔を真っ赤にしながら前に出ようとしてるところ、司波妹が阻止している。
「ほのか、エリカを助ける為だと思って、ね?」
「嫌よ! 何で今度は兵藤君にも教えなきゃむぐぐぐぐ!!」
何故か熟れたトマトみたいに顔が赤くなってる光井は、司波妹によって口を手で塞がられている。非常に気になるが、敢えて無視しておこう。
そんなやり取りは他所に、一歩前に出たピクシーは俺に向かってこう言った。
『初めまして、「シューティング・スター」。漸くお会い出来ました』
挨拶をしてくるピクシーに何とも言えない俺だったが、向こうは気にせず話を続ける。
「チョッとぉぉぉ! あたしはいつまでこんな状態でむぐぐぐぐ!!」
俺が今も拘束してるエリカが五月蠅いので一先ず黙らせようと、頭を掴んでいた手を放し、今度は鼻ごと口を押さえることにした。それで彼女の呼吸を止めている事を知らずに。
重ねて言います。
読者が期待してる過激な制裁はやりませんが、ちゃんと罰を下します。