再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は幕間な話で、達也側の内容です。


来訪者編 隆誠に怒られた後

(やはりあの時、せめて深雪だけは連れて行くべきではなかったな……)

 

 達也がいる場所は自宅のリビング、ではなく、家族向けのレストラン。既に夕食は済ませており、飲み物だけしか頼んでいない。

 

 つい先程まで、達也の私物である軍用車両並みと言えるほどの高級自動運転車を使って、深雪をピアノとマナーのレッスンに通ってる教室へ送っていた。そこは男子禁制である為、達也は時間を潰そうと此処にいる。迎えに行くのは二時間後であり、家に帰るにしても中途半端である為、こうして時間を潰しているのだ。

 

 窓側の席に陣取っていながらも、彼は書籍サイトを開く事もせずに頬杖をついて窓の外を眺めている。

 

 一見するとボンヤリしているように見えるが、それは全く違った。寧ろハッキリしていて、意識を集中していた。隆誠がいつもウンザリしている「眼」を使っている。

 

 それを使っているのは当然、自分が守るべき存在――深雪に害を為すものを、何一つ見逃さない為に。

 

 普段は無意識に行ってる作業だが、今は意識的に行ってる事で「視野」を更に強化している。遠くに居ても護衛対象を視る事が出来る故に、達也は深雪のガーディアンを任されているのだ。

 

 そんな中、達也は急にある事を思い出すと同時に後悔する。放課後に隆誠を強制的に呼び出した件を。

 

 結果として(パラサイト)で無い事が判明したが、色々不味い事になった。隆誠との関係に亀裂が入ってしまったのだ。

 

 自分だけなら普段から不仲であって問題無くても、同行した妹や友人達となれば全く別となる。生徒会で仕事をしてる深雪とほのかだけでなく、エリカ達(主にレオと幹比古)とも今後の付き合いが大きく変わってしまう。普通なら一方的に敵だと疑われた事で絶交されてもおかしくない。

 

 だと言うのに、隆誠はそこまで大ごとに至らなかった。それどころか自分達に罰を与える事で許している。達也達が頭を下げて謝罪した後、『次は無いと覚悟しておくんだな』と凄く怒気が籠った警告をされ、それは尤もである為に一切の反論もなく解散となっている。

 

 しかし、ソレとは別に大きな疑問が残っている。確かに隆誠がパラサイトではなかったが、それとは全く別の繋がりがあると判明した。幹比古曰く『神霊』らしき自然現象そのものかもしれないと。

 

 達也としては本音を言えば突き止めたかったのだが、そんな事が出来る立場でない為、結局は分からず仕舞いとなっている。仮に訊いたところで、当の本人は全く知らないと答えるかもしれないが。

 

(いや、兵藤は確実に何か知っている筈だ)

 

 若干暴走気味だった幹比古が訊ねた際、隆誠は全く知らないと否定していたが、アレは嘘だと何となく分かった。

 

 余り認めたくないのだが、クラスは違えどそれなりの付き合いがあって理解している。会話を重ねる事で、どんな時に嘘を吐いているのかが何となく分かるのだ。それは隆誠も同様で、達也が嘘を吐いている事が分かる。

 

 二人は意外にも似てる、もとい共通している部分があった。本人達が知れば絶対に嫌な顔をするかもしれないが。

 

(確か他のパラサイト達も捜しているとピクシーは言っていたが……)

 

 ピクシーから聞いた話では、隆誠と繋がっているかもしれない『何か』はパラサイトの『同胞(なかま)』だと思い込んでいる。

 

 それが嘘か本当かは未だ断定出来ない状態だった。自分に従属すると言っても、それはあくまで向こうが勝手に言ってるだけなので、達也はすぐに信じる事が出来ない。

 

 ピクシーの話を裏付ける判断材料が欲しいと考えた結果――

 

(取り敢えずはもう一度尋問する必要がありそうだ)

 

 隆誠については一旦後回しにしようと、ピクシーを優先する事にした。

 

 未だにパラサイトの知識が不足している状態であるから、それを補う為には自分に従属しようとしているパラサイトに訊くしかない。

 

 今度は深雪達を連れず、一人だけで会いに行こうと予定を立てている際、今度は別の事を思い出す。

 

(そう言えば、リーナは昨日に続いて今日も学校を休んでいたな)

 

 パラサイトを追跡している彼女やUSNA軍が、ピクシーの存在を知れば間違いなく消そうと密かに動いていただろう。

 

 しかし、リーナが学校を休んだ事により回避された。達也からすれば幸運と言うべきかもしれない。ピクシーに憑依したパラサイトが達也に従属するなど耳に入れば、共謀していると変に疑われて自分を拉致、もしくは他のUSNA軍人の脱走者と同じ運命を辿ったかもしれないのだから。尤も、達也がそう簡単にやられたりしないどころか、返り討ちにするだろう。

 

(確か深雪から聞いた話では、体調不良を理由に休んでいると言っていたが……)

 

 達也の知る限り、普段から勝ち気で元気いっぱいなリーナが体調不良で欠席するのは絶対あり得ないと思っている。本人が聞けば『ワタシだって休むことくらいあるわよ!』と憤慨してるだろうが。

 

 そう考えれば、恐らく軍関連で休まざるを得ない状況になっているかもしれないと達也は考察する。二日連続となれば、余程込み入った事情かもしれない。

 

 他にも気になる事がある。先日辺り、隆誠がリーナの正体を見破った際に喧嘩を売った後は一体どうなったのかと。

 

 あれから不気味なほどに何の音沙汰も無かったのだが、もしかすると彼女が学校を連日休んでいる事に関係してるかもしれない。

 

 だが、そう考えるとおかしい点がある。仮にリーナが『アンジー・シリウス』として行動を起こしていたら、隆誠が学校に来る訳が無い。彼女と戦ったのであれば、何かしらの傷を負ってもおかしくない筈だ。

 

 にも拘らず、隆誠は全くの無傷どころか、戦闘の痕跡が全く見当たらない。また彼女と戦っていないのではないかと考えればそれまでだが、だとしても体調不良を理由に連日休むのはおかしい。戦う準備はいくらでもあった筈なのだから。

 

 独立魔装大隊にいる藤林に、ここ数日の行動履歴を辿るよう頼む手段もあるが、生憎と彼女は現在任務中である為に連絡が取れない状態であった。

 

(考えれば考えるほど、調べなければならない案件が増えてくる一方だ……)

 

 此処で達也は一旦切り替える事にした。これ以上考えたら、護衛に差し障ってしまうと。

 

 改めて深雪の方へと意識を向けるも、先程と同様に全く問題無かった。

 

 達也は考えに没頭してる事で飲み物が既に無くなってる事に気付き、もう一度注文する事にした。今度は飲み物だけでなく、軽いデザートも含めて。

 

 デザートと言えど、食べ物を注文すれば文句は流石に嫌な顔はされないだろうと思いながら、達也はレストランで時間を潰す事となった。

 

 その後、深雪のレッスンが終わる五分前になると、達也は迎えにいく準備をしようと会計を済ませ、颯爽とレストランを出て行く。


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