再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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更新しましたが短いです。


来訪者編 幕間②

 隆誠が白般若に変装して行動してる頃、達也も行動を開始していた。深雪とほのか、パラサイト誘き寄せる為にピクシーを連れて青山霊園へ向かっている。

 

 その途中、監視している存在――国防軍情報部防諜第三課に達也は気付いた。警官に偽装した諜報員(じゃまもの)をどうやって振り切ろうかと考えていたところ、ほのかが予想外な行動に出てしまう。自分達を尾行してる諜報員に、魔法を使って眠らせたのだ。それによって達也は内心焦ってしまう。

 

 街中で勝手に魔法を使うのは、本来違法行為である。けれど、達也が気にしているの問題はそこじゃない。相手を眠らせた時に使った魔法が『邪眼(イビルアイ)』の光であったから。

 

 その魔法は嘗てテロ組織『ブランシュ』のリーダーが、(壬生も含めた)一高生徒達を洗脳させる為に使っていた。ほのかは相手を洗脳でなく、眠らせるだけで済ませていたが、どちらにしても問題だった。

 

 魔法の中でも暗示効果を持つ術式は、違法の度合いによって悪質と判断される。本物の警察に捕まれば注意程度で済まされず、未成年であっても実刑は免れないかもしれない。故に達也は焦っており、他の仲間が駆け付ける前に、一刻も早く離れようと急いで目的地へと向かう。因みにほのかは自分が仕出かした事に全く気付いておらず、達也の役に立てたと喜んでいる。

 

 だが、この光景を遠くから見てる者が他にもいた。

 

「ふぅっ。困ったお嬢さんだこと……」

 

 市街地監視システムの街路カメラを通して見ている女性――藤林は呆れながらも、『電子の魔女』としてのスキルを使って、魔法が使用された記録を改竄した。軍人である彼女としては、ほのかがやった事は見過ごせないのだが、達也のお友達と言う事もあって陰ながら手を貸していた。

 

 だがそれでも、あの違法同然の魔法は今後使わないで欲しいと願っていた。今回は未然に防げたから良いが、もしも警察の目に入れば手助けする事が出来ないから。

 

「同時に四人も倒すとは、見事な腕前じゃないか」

 

 呆れている藤林とは別に、背後から純粋に魔法師としての技量を評価する声が聞こえた。

 

 余りにもお気楽な祖父――九島烈の発言に、藤林は嘆息しそうになった。

 

 彼はつい先日、USNA軍が日本の魔法師を拉致している情報を掴んで対応し終えたばかりなのに、まるで疲れ知らずと言わんばかりに此処へ足を運んでいた。

 

 藤林からすれば休んだ方が良いんじゃないかと気遣いたいところだが、言ったところで無駄なのは分かっている為、敢えて何も言わないでいる。

 

(それにしても、お祖父(じい)様は一体何処でUSNAの情報を得たのかしら……)

 

 いくら自分が「電子の魔女」と呼ばれても、向こうが密かに拉致行動をしようとしていた情報まで掴む事が出来なかった。なのに九島は何処かからか情報を得て、見事にUSNAを追い込ませている。

 

 気になった藤林は情報源をさり気なく訊ねてみたが、のらりくらりと躱される始末で結局分からず仕舞いだった。

 

「彼女は確か、『光井ほのか』と言ったね?」

 

「ええ。そうですわ、お祖父(じい)様」

 

 藤林の答えに、九島はふむと軽く頷いている。

 

「あの系統の魔法を得意としていて「光井」というと、もしや光のエレメンツの血統かね?」

 

「さあ、そこまでは。ですが光といえば、兵藤隆誠君も該当する思いますから、一緒に調べておきましょうか?」

 

「いや、わざわざ調べる必要は無いよ。勿論、兵藤君の事もな」

 

 調べるかと言う孫娘の問いに、九島は人の良い笑みを浮かべたまま首を横に振った。

 

「相変わらずお祖父(じい)様は、兵藤君を大層気に入っているのですね」

 

「おや、不服かね?」

 

「いいえ、滅相もありません」

 

 拗ねているのかと思って訊いてみるも、藤林は如何でも良いみたいに処理を行っている。

 

 普通に考えれば、嘗て世界最強の魔法師の一人と目された九島烈が、十師族とは一切無関係である筈の少年に興味を抱くなどあり得ない。

 

 けれど、兵藤隆誠が去年の九校戦で常識外れと言える魔法や剣技を披露した事で、それを見た全員の度肝を抜かせた。九島も当然その一人で、ファンになったと認める程である。

 

 それとは別に、二人は裏でちょっとした一蓮托生の関係になっている。それのお陰で現在起きているパラサイト事件では貴重な情報を得たり、密かに来日しているUSNA軍に弱味を握る事が出来た。九島からすると、隆誠は自分に大きな刺激を与えてくれる存在であり、この関係はもう暫く続けたいと願っている程であった。

 

(確か兵藤君の報告で、アレに妖魔(パラサイト)が宿っているそうだな……)

 

 藤林が会話をする気が無くなったのを見て、九島は再びモニターへ視線を移し、それに映っている達也達と一緒に行動している3Hを注視する。

 

 決して彼は隆誠の報告を疑っていないのだが、信じ切れない部分が多少残っていた。現行の技術では、3Hに魔法であれサイキックであれ、益してや妖魔が宿ると言う前例が全く無いから。

 

(恐らく他のパラサイトを釣る為の『餌』として利用しているのであろうな)

 

 そう言う風に考えなければ、達也が3Hを同行させる訳がないと九島は察していた。

 

 すると、モニターに映っている彼等の足が止まり、少女二人が途端に緊張の色を隠せないまま、達也の左右に身を寄せていた。

 

 その達也は懐から拳銃形態のCADを抜いている中、彼の前方から三つの人影が向かってきている。

 

「響子、あの者達は?」

 

 モニターで達也が代表して会話している中、九島は藤林に素性確認を求めた。

 

「少なくとも、ただの人間でない事は確かです。あの三人から異常な想子(サイオン)を検知しました」

 

「ふむ。どうやら司波君が今話している相手はパラサイトで間違いなさそうだな」

 

 パラサイトが達也達に会いに来たのは即ち、3Hに宿っているパラサイトを取り返しに来た。そうでなければ彼等が姿を現す理由は無い。

 

(さて、一体どうなる事やら……)

 

 3Hに対する疑念が段々消え去っていく中、九島はまるで観戦するような感じで楽しげな表情になっていた。

 

 実力は隆誠に劣るかもしれないが、達也も中々の実力者である事を知っている。四葉深夜(みや)の息子であれば、相手がパラサイトであっても、負ける事は先ず無いだろうと思いながら。




今回は九島側の話でした。

同時に四葉側の話も書きたかったのですが、次回に更新します。

幕間話はまだ続きますが、もうちょっとお付き合い下さると助かります。

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