再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は短いです。


来訪者編 リーナ

 四葉家がフリズスキャルヴを使って調べていたのは、本当に予想外な情報だった。

 

 思わずレイモンドに理由を訊いてみると、どうやら九校戦で披露した魔法が四葉家当主――『四葉真夜』の目に留まったみたいだ。その当主が扱う系統魔法『流星群(ミーティア・ライン)』に少々似ている為、もしかしたら何処かで術式を盗んだのではないかと、四葉家は密かに情報を集めているらしい。

 

 あの悪名高い四葉家からも疑われていたとは……。聖書の神(わたし)能力(ちから)で編み出した技なのに、あたかも盗んだと思われるのは心外にも程がある。十師族とは一切無縁の身であると言うのに、チョッとばかり嫌になってくる。まぁ十師族としては、術式を盗用されて広まる事になれば大問題になるから、徹底して調べようとするのは理解出来るが。

 

 誠実な一条家と違って、あそこはそう簡単に話し合いに応じてくれないだろう。場合によっては捕らえようとして、精神干渉系魔法などによる尋問で情報を無理矢理引き出そうとするかもしれない。尤も、聖書の神(わたし)相手にそんなバカな事を仕出かせば、こっちも相応の手段を用いて対抗させてもらうが、な。

 

 とにかく、四葉家が俺を疑ってるのは分かった。まだ会って間もないレイモンドからの情報が本当かどうかは確信を持てないといっても、一条家の事もあるから、少なくとも口から出任せを言ってるとは思えない。それでも完全に信用出来る相手じゃないから、今はまだ距離を置いておく必要がある。

 

 その後、再びパラサイトの話に戻り、出来れば殲滅してもらいたいと頼んで来た。日本側の日付で二月十九日の夜、一高裏手の野外演習場に活動中のパラサイトを誘導させると。俺としても纏めて倒せるのであれば好都合だから、レイモンドの頼みを承諾済みだ。

 

 もうついでに、俺に(四葉関連を除いて)教えてくれた情報はアンジー・シリウスに伝えている他、司波にも後ほど伝えるようだ。

 

『そうだリューセー、良かったら九校戦について語り――』

 

「お前が俺の番号をハッキングして深夜に電話した事を、北山に話したらどうなると思う?」

 

『Sorry。ティアに嫌われたくないから、今日は此処で失礼するよ』

 

 

 

 

 

 

 西暦2096年2月18日

 

 

 

 一年F組の二時限目の授業は一般科目だった。テキストを読み、問題を解くスタイルで、生徒の好みにより音声読み上げ機能も利用出来る。

 

 魔法科高校は魔法以外に、語学や数学、科学、社会学などの一般科目も学んでいる。一般的な高校と何ら変わりないが、履修するカリキュラムはかなり詰まっていて大変であった。

 

 加えて、二科生は一科生と違って教師はいない。今やっている座学だけでなく、実技も同様に。さっき言ったようにテキストを利用しての学習である為、分からないことはテキストで調べる方法しかなかった。教師と言う名の監視役がいない事もあって、生徒の中には少々サボっているのもいる。

 

 因みに俺は授業に参加していないが、決してサボりではなく、訳ありでそうせざるを得なかった。去年と同様、職員より記録を出すように言われたのだ。一科生の司波妹や光井でなく俺に、な。事務処理は俺の方が正確で速いから、と言う理由で。

 

 それを聞いた瞬間、『二科生の俺に頼んだ方が、却って好都合なんだろうな』と思わず勘繰ってしまった。教員がキチンと見なければならない一科生と違って、二科生は課題が済んでいるのを確認するだけで問題ないと言う扱いなのだ。どの魔法科高校も教員不足である事は重々理解してるが、少なくとも第一高校は今後も一科生を優先するのであれば、その悩みは一生解決する事が出来ないと聖書の神(わたし)は思う。

 

 教員からの頼みを邪推しながらも、生徒会室のシステムでデータベース検索と収集を終えた俺は、データを職員室側にある端末へ転送した。やるべき事を済ませ、早く教室へ戻って遅れた分の授業を済ませようと退散する。

 

 教室へ戻る途中、不意に足が止まってしまった。

 

「リーナじゃないか」

 

「リューセー……」

 

 会ったの三日前なのだが、今見ている彼女の顔は随分やつれていた。頬がこけているとか目の下に隈が出来ているとか、健康を害している異常ではない。

 

 ただ単に、精彩がないのだ。普段自信満々の可愛い笑顔を見せている筈の彼女とは、全く真逆である。

 

 俺はこうなっている理由を既に察していた。防諜第三課にある施設を襲撃し、捕えられたパラサイトを処刑した事を、レイモンドを通じて知っているから。

 

 予想通りと言うべきか、リーナには暗殺の適性が無いと改めて認識した。そうでなければ、こんな酷い表情(かお)になっていない。

 

 見た目は陰のある儚げな美しさを醸し出しているが、その実、慣れない暗殺をした事で心が苛まれている。これが何度も続ければ、リーナの心は間違いなく壊れてしまうだろう。

 

 すると、俺を認識した瞬間、真っ直ぐサファイアブルーの瞳は此方を見る。

 

「貴方も話は聞いた?」

 

「一応な」

 

 話題にしているのはレイモンドと言う七賢人から(もたら)された情報であった。省略された言葉が多過ぎても、俺達は充分に伝わっている。

 

「なぁリーナ――」

 

「ワタシは、慣れ合うつもりはないわ」

 

 共闘する提案を示す途中、リーナは明確な拒否を示した。分かっていたが、追い詰められても意地っ張りであるのは変わりないようだ。

 

「そうか。じゃあハッキリ言おう。君では絶対無理だ。俺に勝てない限り、な」

 

「ッ!」

 

 端から聞けば、リーナが俺にいつもの勝負をする為の会話だと思うだろう。

 

 こういう言い方にしたのは、今も盗み聞きしている者がいた場合に備えての事だった。

 

 彼女もそれを察しているかもしれないが、それとは別に、睨みながら怒鳴ろうとする寸前になっていたが、寸でのところで呑み込んでいた。

 

 そして用件は済んだと言わんばかりに、リーナはクルリと踵を返しながら去っていく。

 

「………はぁっ。全く」

 

 去っていくリーナの後ろ姿に、俺は思わず嘆息してしまった。

 

 表面上を装っていても、今の彼女は完全にアンジー・シリウスだ。任務を達成させる為、必死に己を押し殺している。

 

 もしかしたら、俺に敗北した事が原因で、ああなっているかもしれない。軍人として任務だけは必ず遂行させるという信念だけは貫こうと。

 

 だが、それはパラサイト相手に意味の無い物だった。宿主を殺すだけでなく、霊子(プシオン)の塊であるパラサイトその物を殺す手段も無ければ意味がないから。

 

「ったく、気配の消し方がチョッと雑だぞ。今度はもう少し上手くやるんだな、お兄様」

 

 周囲に誰もいないにも関わらず、俺はとある方向を見ながら言った後、すぐに教室へと戻った。

 

 

 

 

「……誰がお兄様だ」

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