再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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来訪者編 殲滅開始

 西暦2096年2月19日

 

 

 

 日曜日の夜。

 

 パラサイトを今夜、指定場所に誘き出す。レイモンドが提供してくれた情報は、正に事実だったと判明する。

 

 出発前にレイとディーネより、事前に教えていた一高裏手の野外演習場にパラサイトが集結していると確認した。奴が一体どんな手段を使って誘き出したのかは不明だが、敢えて気にせず、俺は現地へ向かうことにした。

 

 因みに精霊(こども)達も一緒に行く気満々だったが、待機するよう命じた。チョッとばかり駄々を捏ねられたが、戻ったら一緒に寝ようと提案した事で大人しくなり、どうにか自宅に残ってくれている。

 

 今夜行う殲滅には司波一行も参加する為、万が一にあの子達の存在が知られたら面倒な事になってしまう。非常に厄介な水晶眼を持つ柴田だけでなく、古式魔法師の幹比古もレイ達の存在に気付けば、神霊と勘違いして騒ぎ立てるのが容易に想像出来る。

 

 いつもであれば転移術を使って目的地へ向かうが、今回は通常の手段で学校へ向かっている。途中で校門にいる守衛と鉢合わせたが、向こうは学校に入ろうとする私服姿の俺を一切咎めなかった。真由美と十文字が事前に通達してくれたから、簡単に素通り出来た訳である。

 

 野外演習場に辿り着くと、誰もいない筈の場所に多数のオーラがあった。司波一行にリーナ、人間のオーラとは思えない複数のパラサイト。それと……学校関係者やパラサイトでもない第三者と思われる集団の中に、九島烈と思わしきオーラも探知した。何故彼が此処へ来ているのかは知らないが、取り敢えず後回しにしておく。

 

 現在いくつものオーラがぶつかり合ってるのは、交戦していると言う証拠である。

 

 リーナの方は予想通りと言うべきか、宿主の息の根を止めていた。その直後に本体であるパラサイトが出現し、何処かへと向かっている。

 

 対して司波達は宿主を倒しても、封印と思われる措置を施している。そうするのは即ち、司波達にパラサイトを倒す手段が無いと見るべきか。

 

(それにしても、あの司波にしては随分と消極的な手段を取っているんだな)

 

 アイツは確実に相手を仕留める性格をしてるから、古式魔法師でなくても相応の手段を用いて倒すと思っていた。

 

 それを講じる為の時間が足りなかったか、もしくは専門外である為に封印する方法しかなかったか……。まぁどちらにしろ、今の司波にパラサイトを倒せないのは確かである為、やはり俺が殲滅しなければならないようだ。出来ればアイツ等に見せたくないけど、今回ばかりはそうも言ってられない、か。

 

 さて、そろそろ俺も行動開始するか。今いる位置より少し先のところに……エリカとレオ(+ピクシー)が、第三者と思わしき集団と交戦中だ。そして割り込もうと二体のパラサイトが向かっている。

 

 俺が勝手に参加したらエリカ辺りが五月蠅いかもしれないと思いながら超スピードを使って移動すると、第三者――軍人と思われる一団と交戦している光景を目にする。

 

 すると、エリカの背後で、地面が突如爆発した。土砂が吹き上がり地中から人影が躍り上がる。

 

「土遁かよ!?」

 

 叫ぶレオに、俺も内心頷いてしまう。

 

 現れたのはパラサイトで、明らかに日本人とは思えない顔立ちをした男。それがまさか、とある忍者アニメのワンシーンと言える『土遁の術』を実物で見れるとは思いもしなかった。

 

 そんな事よりも、地面の下から躍り出た男の標的はエリカでなく、ピクシーであった。

 

 肉厚の鉈みたいな刃物でピクシー目掛けて振り下ろす地中からの襲撃者に、レオが前に飛び出しているが――

 

「がっ!」

 

 俺の指先から放ったキルビームが襲撃者の右肩に命中し、そのまま吹っ飛んだ。そして地面に激突し、立ち上がろうとするも途端に意識を失ったかのように静かになる。

 

「え? な、何だ!?」

 

「今のは、まさか……!」

 

 突然の事にレオが困惑し、エリカは見覚えがあったかのように此方へ振り向く。

 

「やぁ、レオにエリカ。随分と派手に暴れているじゃないか」

 

「リューセー!?」

 

「隆誠くん!?」

 

 俺が歩きながら声を掛けると、二人は揃って驚愕の声を上げていた。

 

 それと同時に、軍人の一団も俺を見た途端、何故か戸惑いの表情を見せている。

 

「何でお前が此処に!?」

 

「何だ、ひょっとして司波から何も聞いてないのか?」

 

「聞いてはいたけど、美月やほのかがいないって言ってたから、参加してないと思ってたのよ」

 

 成程。その二人と幹比古が、演習場を見渡せる屋上にいたのは、司波達をナビゲートする為に「目」の役割をする為だったのか。

 

 此処へ入る前、周囲に感知されないよう自身の周囲に簡易的な結界を張っていたから、柴田と光井は気付けなかったのだろう。けれど俺がそれを解いて参戦したから、レオ達が驚いていたって訳か。

 

 恐らく今頃、俺が突然現れた事に幹比古達も驚いている筈だ。まぁ正直言って如何でも良いので、そこはスルーしておく。

 

「てぇやぁぁ!」

 

 すると、俺の背後から新たなパラサイトが出現した。

 

 手にした抜き身の刀を片手で突き出しながら俺、と言うよりピクシーに襲い掛かろうとしている。

 

「やべぇ!」

 

「隆誠くん、後ろ!」

 

 レオとエリカが途端に焦り出すも、全く動揺していない俺は後ろを振り向かないまま、左の親指からキルビームを放つ。

 

「ぎっ!」

 

 命中したパラサイトは悲鳴を上げて、勢いよく地面に激突する音がした。

 

 振り返ると、左腕に命中したのか、持っていた刀を手放して悶えるように横たわっている。だがそれも束の間で、さっきの男と同じく途端に意識を失う。

 

「す、すげぇ……振り向きもせずに当てちまいやがったぞ」

 

「まるで、来るのが最初から分かってたみたいね……」

 

 二度も同じ光景を見せた事に、レオとエリカだけでなく、軍人の一行も信じられないと言わんばかりに驚愕する一方だった。

 

「な、なぁリューセー……」

 

「もしかして、殺したの?」

 

「いいや。気絶してるだけだ」

 

 言っておくが嘘は吐いていない。俺が放ったキルビームには聖書の神(わたし)の光も含まれている為、それを受けたパラサイト二体は身体が動かなくなって全身麻痺状態になっている。

 

 端から見れば魔法で死んだと思われるが、この後に憑依してるパラサイトを強制的に分離させるつもりで、単に意識を失わせただけに過ぎない。

 

 人目があるのを覚悟で分離させようとするも、気絶してるパラサイト二体に異変が起きる。完全に意識を失ってる筈なのに、突如身体から炎を発して、全身火達磨となった。

 

 いきなりの展開に俺だけでなく、レオとエリカも顔を顰めていた。当然、軍人の一方も呆然としている。

 

(もう動けないと悟って自爆したな……)

 

 色々な事があり過ぎてチョッとばかり忘れていたが、確かパラサイトは仲間同士で情報共有出来るんだったな。

 

 恐らく以前倒した覆面男がキルビームを受けて動けなくなったのを思い出し、完全に諦めて肉体を捨てたのだろう。

 

 そう考えていると、俺しか気づいていないのか、男二人の人体から霊子(プシオン)の塊が抜け出していた。

 

 頭上にいる塊の二つを片付けようとするも――

 

「かしこまりました」

 

 ずっと無言だった筈のピクシーが、突然承諾の返事をしていた。そしてそのまま、司波がいるオーラの方へと向けて走り出す。

 

「あっ、達也。今此処にリューセーがいるぞ」

 

「どうすれば良い?」

 

 今度はレオとエリカが誰かと話しているかのような仕草をしていた。

 

 達也と言ってたから、司波と通信しているのだろう。多分ピクシーもアイツの指示で動いたに違いない。

 

 まぁそんな事より、頭上にいる塊の二つは……駆けていくピクシーの後を追うように移動していた。ついでに他のパラサイト達も対象を見付けたかのように集まっていく。

 

 ロボットに宿る同胞(なかま)を発見したから、奴等は集結しているのか。であれば、俺にとっては却って好都合だった。

 

 ならば、少しの間だけ泳がせておこう。そうすれば残りのパラサイトも集結させれば纏めて殲滅する事が出来る筈だ。

 

 一度に集まって倒した方が効率が良いと結論した俺は、すぐにピクシーの後を追いかけ始める。

 

「あ! チョッと隆誠くん!」

 

「その場を動くなって達也が!」

 

 エリカとレオが俺を引き留めようとしていたが、アイツの指示に従う気はないので無視させてもらった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ……八岐大蛇(やまたのおろち)と言ったところか」

 

 ピクシーの後を追っている中、二体以外の本体を剥き出しになってるパラサイト達が集結した。

 

 レイとディーネが探知したパラサイトは十体だったが、今いるのは八体。その内の二体は司波達が封印していて、それ以外は見当たらない。

 

 八体のパラサイトはピクシーの頭上で集結したかと思いきや、突然合体した。まるで一つの存在に戻ろうとするように。

 

 元々アレは個にして全の存在であり、益してや人外の妖魔であるから、それくらいの事をしても別段おかしくはない。

 

 そして一つになったパラサイトはピクシーの目の前で巨大な球体になった後、その表面から八つの枝が出て来たかと思いきや、大蛇(おろち)みたいな首へと変貌する。

 

 日本神話に登場する伝説の生物モドキになったパラサイトは、ピクシーの中にいる同胞を喰らおうと、八つの首全てで襲い掛かろうとする。

 

 けれど、ピクシーは反抗するように魔法障壁を展開し、相手の攻撃を防いでいた。

 

「さてと……」

 

 これ以上様子見をしても残りのパラサイトは現れないと分かった俺は、さっさと始末しようと動き出そうとする。

 

「兵藤、何故お前が此処にいる」

 

「司波か」

 

 すると、俺の背後から司波の声がした。

 

 思わず振り向くと、司波妹だけでなく何故かリーナも一緒にいる。因みにリーナは『アンジー・シリウス』の姿であったが、そこは敢えて気にしない。

 

「エリカとレオを通じて、あの場に留まるよう言った筈だが」

 

「そんなの知るか」

 

 と言うより、何故俺が司波の指示に従わなければならないのかが意味が分からない。まぁどうせコイツの事だから、俺がいては却って不都合とでも考えたんだろう。

 

「兵藤くん、お兄様にそのような暴言は――」

 

「へぇ。もうこの前の出来事を忘れたのかい、司波さん?」

 

「…………」

 

 不快に思った司波妹が反論するも、俺が軽く睨みながら問い返した瞬間、途端に大人しくなった。

 

 まだ完全に許した覚えが無いと言うのに、このブラコン娘は……。少しは自分の立場を考えて欲しいものだ。

 

 因みにリーナは当事者じゃないから、一体何の話をしているのかを全く分からない様子だった。

 

「チョッとリューセー、あの人形に巨大な『力』が圧しかかってるアレは一体、なに?」

 

 おいおいリーナ、折角変装してるのに司波兄妹の前で俺が知ってる事をバラしてもいいのかよ。

 

 まぁ向こうが構わないなら、俺はそれに合わせるとしよう。

 

「パラサイトの宿主が死んだことによって、本体が自由になって暴れているんだ。君が無駄に殺したのと、俺が倒し損ねたパラサイトの計八体が一つになっている」

 

「倒し損ねただと?」

 

 俺の発言に司波兄が反応するも、リーナは途端に激昂する。

 

「無駄って何よ! ワタシは自分の任務を果たしただけだわ!」

 

「そうだな。君はあくまで宿主を始末しただけ。パラサイト本体も殺せと言う任務まで請け負っていないから、責める理由は無い。だから後は俺がやるから下がってろ」

 

 否定する事無く事実のみを告げた後、俺は彼女だけでなく司波達にも向かって言い放った。

 

「下がってろって、何故リューセーにそんなこと言われなきゃいけないの!」

 

「君にアレは倒せないからだよ」

 

「やってみなければ分からないわ! 見てなさい!」

 

 俺の言い方が癇に障ったのか、リーナはパラサイト本体を倒そうと躍起になる。

 

「アンジー・シリウス。兵藤の言う通り、君では無理だ」

 

 司波も黙っていられないのか、リーナの無謀を止めようと、宥めるように声を掛けた。

 

「うるさい! タツヤは黙ってて!」

 

「っ!」

 

 今の彼女は全く聞く耳持たずだった。

 

 どうでもいいけど、『アンジー・シリウス』の姿になってる筈のリーナが司波を名前で呼んでいるって事は、俺と同じく正体がバレているんだろう。今の彼女は頭に血が上って全く気付いていないが、逆に司波は俺にそれが気付かれたと言わんばかりに若干表情を歪めている。

 

「ワタシはこの任務を成功させなきゃならないのよ! そうでなきゃ、私は何の為に日本に来て、同胞を手に掛けてるのよ!」

 

 リーナの癇癪は、もはや俺や司波に向けられたものではなかった。

 

 仮面を外してリーナ本来の姿へと戻り、慟哭(どうこく)のように叫ぶ彼女を見て思わず同情してしまう。

 

 とは言え、現代魔法を使ってパラサイトに攻撃を仕掛けるのは見過ごせない。あんなの当てたところで、精神体にダメージを与える事は出来ないのだから。

 

「だからって、何でも一人で背負い込むな!」

 

「なっ!」

 

 リーナが魔法を発動させる前に、俺は一瞬で彼女に接近して腕を掴んだ。その瞬間、発動させる筈だった魔法は途端に霧散していく。

 

 この光景に司波兄妹は目を見開くも、俺は敢えて気にせずリーナに集中する。

 

「リューセー、放しな――」

 

「下がれ、リーナ。これ以上は力付くで黙らせるぞ」

 

「………………」

 

 チョッとばかり殺気を込めて睨みながら言うと、リーナは漸く大人しくなった。

 

 肩を掴んだ際、チョッとばかり聖書の神(わたし)の光を注いでいる。と言っても微量なもので、単に激昂状態を鎮静させただけに過ぎないから、身体に何の問題は無い。

 

 冷静になるリーナを余所に、俺はスタスタと未だピクシーに襲い掛かってるパラサイト本体の方へ向かって行く。

 

「さて、始めようか」

 

 出来れば司波達の前で見せたくなかったが、リーナを無理矢理止めた以上、もう気にしていられなかった。




次回で決着が付く予定です。
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