再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は第三者側の話になります。


来訪者編 困惑する者達

 ほんの少しだけ時間が遡る。

 

 

 

 場所は野外演習場を見渡せる屋上。そこには後方支援として、幹比古、美月、ほのかの三名がいる。

 

 美月は水晶眼を使って対象(パラサイト)のオーラを探知し、ほのかは光学魔法で映像をカメラに取り込んで達也達の情報端末へ届けていた。

 

 戦闘組の達也達が広大な演習場を迷うことなくパラサイトを発見出来ていたのは、この二人のお陰であった。そして彼女達の護衛として幹比古を張り付けており、彼も遠くから『見て』いるパラサイトを封印する術を施している。

 

 二体のパラサイトを封印した後、エリカとレオのところから新たなパラサイトが出現するも、隆誠の登場によって状況が変化した。

 

 残った八つのパラサイトが統合体となり、達也に合流しようとするピクシーへ襲い掛かってるところ、隆誠が魔法でダメージを与えた事に困惑する。

 

「た、達也、一体これはどう言う事だい!?」

 

『寧ろ俺が知りたい位だ……』

 

 隆誠は間違いなく現代魔法を使った筈なのに、何故アレでダメージを与える事が出来るのかが幹比古には全く分からなかった。

 

 あの魔法に精神体を傷付ける効力があるのかと疑問視するも、またしても予想外な事態が起きた。呪符を持っていない筈の隆誠が、パラサイトの攻撃を防ぎながら、対妖魔術式・迦楼羅炎を使用し、敵の動きを止めていた。

 

「そんな! どうしてリューセーが呪符も使わずに精霊魔法を発動させているんだ!?」

 

 遠くから見ている幹比古の叫びに、美月とほのかは少しだけビックリするも戦いを見届けている。

 

 精霊魔法を使用するのに、呪符と言う名のコントローラーを必要とされる。それを使って精霊を支配下に置く事で発動されるのだが、隆誠はそれを吹っ飛ばして精霊魔法を行使していた。

 

 統合体となったパラサイトは並みの魔法で通用しない筈なのに、隆誠が使った迦楼羅炎は、自分と比べ物にならない威力であった。それだけ精霊との繋がりが強いと言う証拠だが、幹比古としては到底見過ごす事が出来ない光景である。

 

 だが、それが一気に吹き飛んでしまう光景を目にしてしまう。

 

 パラサイトが動きを封じられている中、隆誠は新たな魔法を使おうとしていた。詠唱、もしくは念仏を唱えた直後、彼の手から黄金のオーラが吹き荒れる。

 

「きゃっ!」

 

「! 柴田さん、大丈夫かい?」

 

 美月が突然悲鳴を上げたのは、隆誠が発してるオーラに反応したのだろうと察した幹比古は、すぐに彼女の身を案じた。

 

「だ、大丈夫です。でもこのオーラ、全然痛くないんです」

 

「え?」

 

「美月、それってどういうことなの?」

 

 彼女は水晶眼を持ち主である他、霊子放射光過敏症に悩まされている。霊子によって生じる非物理的な光に対して過剰な反応を示す為、その対処として度の入ってない特殊な眼鏡を掛けている。

 

 だから隆誠の手から放たれるオーラの光を感じ取れば美月の目に痛みが走ってもおかしくないのだが、不思議とそうならなかった。

 

「よく分からないんですが、兵藤君が放ってるオーラは、凄く清廉でして……」

 

「! それって……」

 

 美月の説明に幹比古は心当たりがあった。

 

 数日前、隆誠がパラサイトの仲間であるかを確かめる為に呼び出したが、結局のところ怒られてしまう破目になった。パラサイトの件が片付いた後、罰が下される予定になっている。

 

 その途中、幹比古は幽体を調べた際、意外な事実が判明した。隆誠は他の魔法師とは比べ物にならない莫大な精気が満ち溢れ、荘厳且つ清廉な霊子(プシオン)もあり、更には『神霊』と思わしき繋がりもある。

 

 もしかすれば、彼が精霊魔法を使えるのは、その繋がりがあるかもしれないと幹比古は推測した。同時に、美月に痛みが走らないのは、普通とは異なる霊子(プシオン)であるかもしれないと。

 

 幹比古がそう推測を立てていると、達也達のいる戦場は再び驚きの展開を迎えようとする。隆誠が霊子(プシオン)の光を利用して魔法陣を作り出した後、統合体のパラサイトに向けて放ち、見た事の無い方法で倒してしまった。

 

「パ、パラサイトのオーラが、消えました……」

 

「凄い……」

 

 統合体のパラサイトが発する巨大なオーラが反応が消失したのを確認する美月と、光学魔法で見届けていたほのか。どちらも隆誠が倒したのだと認識している。

 

(そんな馬鹿な!? もしアレが精神干渉系魔法の『ルナ・ストライク』だとしても、霊子(プシオン)を使ってパラサイトを倒すだなんてあり得ない!)

 

 今回見たのが自分でなく、伝統派の古式魔法師であったら絶対黙っていないだろう。隆誠が使った魔法は古式魔法でないにしろ、対妖魔を専門とした術者達から見れば、必ず何かしらの因縁をつけるのが目に見えている。

 

 幹比古としても個人的に気になるが、自分の心の内に秘めておく事にした。相手の魔法を詮索するのはマナー違反であり、彼には申し訳ないことをした身である為に。

 

 何はともあれ、統合体のパラサイトが倒されたことに間違いない。もし隆誠が了承してくれれば、封印している二体を――

 

「きゃっ!」

 

「美月、どうしたの?」

 

 すると、美月から再び悲鳴が上がった。

 

 ほのかがすぐに声を掛けるも、幹比古は――

 

(ま、まさかアレは……喚起魔法!)

 

 すぐに達也達がいる方を『見る』と信じ難い光景が広がっていた。

 

 隆誠が魔法陣の中心に立って何かしている。アレは統合体のパラサイトを倒す時に使ったものだが、今は全く異なる魔法になっていると幹比古は気付いている。

 

 自分の知る術式とは全く異なるが、喚起魔法であるのは何となく分かった。けれど、あの魔法陣から放出されている莫大なオーラは、そこら辺の精霊を喚起するものじゃない。もしかしたら神霊を呼び寄せるんじゃないかと錯覚してしまう。

 

(いや、あり得ない! 仮にアレが(じん)()魔法だとしても、今の時期に呼び出せる筈がない!)

 

 幹比古は思わず『星降ろしの儀』を思い出す。

 

 星降ろしの儀とは、吉田家が毎年太陰暦七夕の夜に行っている重要な儀式。神霊を呼び出し、活性化する魔法の優劣を争う吉田一門の競技会となっている。

 

 嘗て幹比古が竜神を喚起しようと挑戦したが、失敗に終わってスランプに陥る(と思い込む)散々な結果になってしまった。達也のお陰でアッサリと解消し、あの時以上の実力が付いて今に至っている。

 

 それはそうと、隆誠が一体何を呼び出すのかは不明だが、神霊に関連する可能性が高い。今の時期に喚起したら、神霊の怒りを買ってしまう恐れがある。精霊と違って神霊は非常にデリケートで、少しでも機嫌を損ねる事をすれば大きな竹箆返しを受けてしまう。下手をすれば自分と違って、本当に魔法が使えなくなるどころか、最悪命を落としかねない。

 

 悪い方向への可能性を考えている幹比古とは別に、達也は隆誠を助けようとしているのか、拳銃型CADを魔法陣へと向けていた。恐らく『術式解体(グラム・デモリッション)』を使って、魔法陣を強制的に破壊しようと考えたのだろう。

 

「ダメだ、達也! あの魔法陣を撃っては!」

 

 幹比古は咄嗟に達也へ通信を入れて、すぐに止めるよう大きく叫んだ。

 

『あの魔法陣を撃ってはダメだと? 一体どういう事だ、幹比古』

 

 彼の慌てように達也は咄嗟に撃つのを止めて、すぐに理由を訊ねてきた。

 

「今あの魔法陣は、神霊を呼び出す為の祭壇と化している! もし破壊したら、達也達も大きな巻き添えを受けてしまう!」

 

『何?』

 

 簡潔に説明する幹比古に、戸惑いの声を出す達也。

 

 その僅かな会話で、隆誠が立っている魔法陣が更なる輝きを発して、巨大な柱となった。

 

「な、何アレ!?」

 

「あの光の柱から、パラサイトとは違う、凄いオーラを持った何かが出て来るような……」

 

「!」

 

 戸惑うほのかとは別に、水晶眼を視て何かを感じ取った美月の発言に幹比古は目を見開く。

 

(まさか、そんな、あり得ない!)

 

 美月の言ってる事が本当であれば、隆誠はもしかしたら神霊を呼び出したかもしれない。自分では御しきれなかった存在が、眼と鼻の先で姿を現そうとしている。

 

 吉田家の古式魔法師として見過ごす事は出来ないと判断したのか――

 

「二人とも、この場から絶対離れないように!」

 

「ええ!?」

 

「よ、吉田君!?」

 

 美月とほのかの護衛役を放棄してまで、幹比古は魔法を使って、全速力で現地へ向かうのであった。

 

「おいおい、何だよアレは!?」

 

「レオ、あたし達も行くわよ!」

 

 他にも、達也から待機してるよう指示されたエリカとレオも向かっている事も補足しておく。




書く必要無いんじゃないかと思われるような内容ですが、幹比古の心情メインの話でした。

今年最後の更新となります。

それでは皆様、良いお年を。

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