再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回の番外は短いです。


番外編 リューセーVS達也 事前

 長距離走をやっていた司波妹達はバンドの重りに耐えながら完走するも、四人とも凄く大変だったと言わんばかりに息を切らしていた。

 

 唯一の男である幹比古でさえヘトヘトになっており、文化系の柴田は倒れる数歩手前になりながらもどうにか完走。司波妹と光井もフラフラな状態でありながらも、倒れるんじゃないかと心配してる柴田を支えていた。

 

 因みに陸上部は司波妹に見惚れていた。走り切って顔が上気してる彼女の姿が艶やかだったのか、男女問わずボ~ッと見惚れる余りに転んでいるのが何人かいたが、そこは敢えて見なかった事にしておく。

 

 そして俺は四人に着けているバンドを回収し――

 

「休んだ後、今日はもう帰って良いぞ。明日もし筋肉痛になってたら教えてくれ」

 

 そう言って次に抜き打ちテストをやってるレオとエリカの元へ向かった。

 

 あっと言う間に着替え終えて早々空き教室へ到着すると、予想通りと言うべきか、元三巨頭の監視が相当効果があったようだ。テストを終えた瞬間、二人は完全KOとなって机に突っ伏していたから。

 

 真由美からテスト用紙を受け取って採点した結果……それなりに頑張ったと言っておく。間違えた箇所がレオとエリカの苦手なモノだと分かり、明日はそこを重点的に講義すると教えると、突っ伏してる二人は更に気落ちする事となった。

 

 だが、此処でチョッと予想外な展開となった。

 

「ねぇリューセーくん、良かったら私たちも参加してもいいかしら?」

 

「あたしもだ。君が出した問題がとても参考になって、どんな講義をするか見てみたい」

 

「俺も大学受験前の復習として参加したいと思ってるのだが、構わないか?」

 

 監視役で終わる筈の元三巨頭から、明日以降の講義に参加したい事に俺は内心少々驚く。

 

 どうやら俺が作成したテストだけでなく、俺が行う講義も興味津々のようだ。

 

 随分物好きだなぁとチョッとばかり失礼な事を考えるが、別に参加しても構わない。逃がすつもりは毛頭無いが、レオとエリカが馬鹿な事をさせない為のストッパーになるから、俺としては寧ろ好都合だった。

 

「ええ、良いですよ」

 

「嘘でしょ!?」

 

「勘弁してくれよリューセー!」

 

 真由美達の参加を了承した瞬間、突っ伏していた筈のエリカとレオが一気に目覚め、絶望するような悲鳴を上げるのであった。

 

 因みに二人の態度は真由美達に物凄く失礼な態度なのだが、三人は全く意にも介していない。特に真由美と摩利はまるで痛くも痒くもないように、少々意地の悪そうな笑みを浮かべていたが。

 

「それじゃあ明日の放課後、今日と同じ時間に来て下さい。それとレオにエリカ、前に言ったが適当な理由でサボったり、ズル休みなんかするなよ。その分、講義する時間が倍に増えることになるからな♪」

 

「「………………」」

 

 逃走しない為の釘を打った瞬間、再び机に突っ伏して無言になる二人を見た後、俺は手伝ってくれた真由美達に感謝しながら空き教室を後にした。

 

 最後に生徒会室へ向かうと、凄いスピードで的確に事務処理をしている司波、そのチェックをしている五十里と中条がいる。

 

「すいません中条会長、啓先輩。急に無理を言ってしまいまして」

 

「いえいえ! 司波君のお陰で今日はもう早く終わりそうですから、寧ろありがたいです!」

 

「そうだね。今書類チェックしてるけど、流石は司波君と言うべきか、一つもミスが無いんだ。花音が重宝したがるのも分かるよ」

 

 入って早々声を掛けると、中条と啓は全く気にしてる様子は見受けられなかった。

 

 すると、突然ピタッと手を止める司波は、途端に此方へ視線を向けて来る。

 

「兵藤……!」

 

「おお、ちゃんとやってくれて何よりだ。残りの二日も頼むぞ」

 

 殺気も孕んだ睨みに軽く流し、俺は笑みを浮かべながら言い返した。

 

 全く効果が無いと分かったのか、司波はすぐに止めて問おうとする。

 

「お前が此処へ来たと言う事は、深雪達の長距離走は終わったのか?」

 

「ああ、今は休んでいる筈だ。心配ならもう行っても構わないけど、今日の分の仕事を終わらせない限りは――」

 

「問題無い、既に終わっている」

 

 俺が言ってる最中、司波は即座に終わらせたと言いながら片付けの準備に移る。

 

 テキパキと明日の分を行う書類も整理整頓して、もう既に生徒会室を後にする気満々だった。

 

「では中条会長、五十里先輩。今日はこれで失礼します」

 

「は、はい。ありがとうございました」

 

「今日は非常に助かったよ、司波君」

 

 中条と啓が感謝の言葉を述べると、二人に会釈した司波は颯爽と生徒会室を出た。俺に声を掛けなかったのは、チョッとした意趣返しなのかは分からんが。

 

 

 ――オーフィス、どうだった?

 

 ――良からぬ事を考えていたから、我は何度も指摘した。

 

 ――だろうな。

 

 

 司波がやっていた書類チェックを手伝いながら、監視役を頼んでいた(透明化中の)オーフィスに念話で確認すると、思った通りの返答が返って来た事に俺は内心苦笑した。

 

 因みに良からぬ事とは、アイツが上手い事を言って生徒会室を抜け出す口実を指している。

 

 妹関連になると司波の考えが手に取るように分かるとは言え、少しは俺の事を信用して欲しいものだ。これはあくまで罰であり、決して酷い目に遭わせてる訳じゃないってのに。

 

 まぁ、あのシスコンに何を言ったところで耳を傾けたりしないだろう。今頃は移動しながらも、頭の中では妹の身を案じてるのが容易に想像出来る。案外、あの厄介な『眼』を使って容体を確認してたり、な。

 

 そう言えば『眼』で思い出したが、司波の奴は何故あそこまで俺の事を執拗に調べているんだろうか。今のところは控えてるが、それでも完全に止めようとする気配を見せていない。

 

 非常に用心深い性格をしてるとは言っても、妹を守る為にやってると言う理由にしては、些か度が過ぎている。もしかすると、何か別の目的があるんじゃないかと考えてしまう。誰かからの命令で『俺が使う魔法を徹底的に調べろ』、とか。

 

 もうついでに俺を調べると言えば、この前電話してきたレイモンドが面白い情報を提供してくれた。四葉家当主の『四葉真夜』がフリズスキャルヴを使って俺の出自や魔法について何度も調べているって。

 

 もしかしたら、四葉真夜が俺を調べるように命令されたから今も執拗に……。だがそうなると、司波兄妹は四葉家と繋がってる事になるんだが。

 

 アイツも俺とは違う意味で様々な経歴を持っている。国防軍特殊部隊の『独立魔装大隊』に所属し、FLTに所属する魔工師『トーラス・シルバー』等々。どう見ても普通の魔法師とはかけ離れている奴としか言いようがない。

 

 そして今度は四葉家だが、何一つ繋がりがあるとは思えない。仮に司波が四葉家に連なる者であっても、何一つ証拠は………いや、待てよ。

 

 四葉と司波。一見すると全く関連が無さそうに見えるが、司波を平仮名にすれば『しば』。だけど此処でチョッと捻るように漢字変換したら……『四葉(しば)』になるんだが、これは俺の考え過ぎなのだろうか。

 

 だが、例え俺の推測が正しいとしても、司波本人に訊ねたところで絶対口を割らないだろう。それどころか逆に脅してくるのが目に見えている。

 

 普段から平穏を望む俺としては、厄介な案件になり兼ねないモノと分かれば余計な首を突っ込まないよう静観している。だが、もうそれは止めた。此処らで司波の正体を暴き、もうあの『眼』を使わないよう警告しておく。

 

 今までは下手に指摘すれば余計警戒されてしまうと言う理由で踏み止まっていたが、一年近く経っても止める気配を全然見せてくれない。いくら聖書の神(わたし)人間(こども)のやる事に多少目を瞑ると言っても、もう我慢の限界であった。

 

 どうせアイツの事だから、例え俺が非常に厄介な存在でも、四葉家が本気になれば消せると考えている筈。だが実際はその逆で、俺が全力を出さなくても司波や四葉家を簡単に滅ぼす事は可能だ。

 

 とは言え、本当にそんな事をしてしまえば、俺は周囲から事実上の危険人物と認定されてしまう。たった一人で『触れてはならない者たち(アンタッチャブル)』と称される四葉家を滅ぼす存在となれば猶更に、な。いくら九島でも、こればっかりは流石に庇いきってはくれないだろう。

 

 尤も、それはあくまで四葉家が俺に本格的な牙を向けた場合の話だから、出来ればそうならない事を祈りたい。

 

 話を戻すが、司波が警告しても(とぼ)けるのであれば、相応の手段を取らせてもらう。例えば、あの厄介な『眼』を一時的に封じさせてもらう、とかな。まさか何度も視られてる事で解析させてもらったなど、使ってる本人は微塵も想像してないだろう。

 

 体術の手合わせで恨みを晴らすより、三日間も長距離走をしている妹の傍にいられない方が精神的に苦痛だと思って罰の内容を変更したのだが、ここでもう一度変更することにした。

 

 これはあくまで俺の個人的なモノに過ぎないから、流石に学校内でやる訳にはいかない為、今夜行う事にする。幸い司波のナンバーは知ってるから、呼び出すのも簡単だ。

 

「リューセー君、さっきから書類と睨めっこしてるけど、どこかおかしなところがあるのかい?」

 

「え? あ、すいません。チョッと考え事をしてまして」

 

 深く考え込んでる俺に啓が怪訝そうに訊ねてきたが、俺は一旦思考を切り替え、残りの書類チェックをするのであった。

 

 ついでと言ってはいけないが、司波一行に罰を実行してる間は剣道部を休んでいる。俺がいなくても、修哉はちゃんと練習してるから問題無い。




読者様からすれば『やっとかよ』と思われるかもしれません。

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