再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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番外編 リューセーVSエリカ 口実

 翌日の放課後。

 

 俺は事情を説明した修哉を連れて、千葉道場へ向かっている。

 

「何だってこんな事に……」

 

「文句はレオに言ってくれ」

 

 移動中、愚痴を零す修哉の心情を理解しつつも、俺はどうにか宥めていた。

 

 今日はクラブを欠席することを、前以て壬生に話してある。最初は何故と訝る彼女だったが、エリカについて話した途端、納得と同時に苦笑しながら俺達の欠席を了承してくれた。

 

 勝手な理由での呼び出しとなれば壬生は文句を言ってもおかしくないのだが、今回は例外である為に強く出る事が出来なかったのだ。名家からの呼び出しである為に。

 

 既に知っての通り、エリカは百家本流の家系である千葉家に連なる令嬢。並びに『剣の魔法師』と言う二つ名を称されるほど、白兵戦技で知られている名門『千刃(ちば)流剣術』印可の実力を持っている。

 

 そんな凄い経歴を持ってるお嬢様からの強制的な呼び出しをされてしまったので、壬生は何も言えなくなっていた。下手に口出しをすれば、千葉家に喧嘩を売ってしまう事を理解している為に。

 

 因みに修哉はエリカが強引な性格である事を理解しても、此方の意思を無視してまでの行いに納得出来ていない様子であった。

 

 俺も当然納得してないのだが、そうまでする理由はそれなりに理解している。彼女直々に技を手解きした最初の弟子であるレオが、(立場上は)俺の直弟子である修哉に負け続けてることを知れば絶対黙っていないだろうと。しかもそれがパラサイトが出現する以前、去年の秋からであれば猶更に。

 

 加えてレオの敗北は謂わば、名門である千葉家に喧嘩を売ったと言う意味でもあった。同時に師匠である千葉エリカのメンツも潰した事になる。彼女に知られないよう今までずっと秘密にしていたのに、誰かさんがポロッと喋ってしまった所為で、完全にお怒り状態となってしまった。

 

 俺が今まで黙っていた事を謝罪しても、向こうは全く聞き入れずに千葉道場へ来いとの一点張りで、思わず呆れてしまいそうだった。チョッとくらいは此方の言い分に耳を傾けて欲しかったのだが、何を行っても無駄だと悟り、もう観念するしかなかったと言う訳である。

 

 今回は俺と修哉だけである為、紫苑は同行していない。俺達が千葉道場へ向かってる事を知らず、今頃は先輩の千代田と仲良く陸上部で頑張っている筈だ。

 

 もし彼女が知れば、絶対俺達に付いて行こうとクラブを休もうとするのが分かっていたので、敢えて話さなかった。修哉も余計な心配を掛けさせたくないと、黙っていることを了承している。後になって問い詰められた場合、そこは素直に白状するつもりでいるが、な。

 

「お、あそこだ」

 

 携帯端末に表示されている地図情報を頼りに移動した結果、目的地である千葉家に辿り着いた。

 

 流石は百家本流の名門と言うべきか、一般なんか比べ物にならないほどの広大な土地を所有しており、外から見ても立派な道場と屋敷が見える。

 

「すっご……! 小さい頃に行った紫苑の家とは違う意味で凄いなぁ……」

 

 千葉家を目にする修哉が驚くように見ていた。

 

 そう言えば紫苑は十師族や百家でもないが、確か良いところのご令嬢だったな。当然幼馴染の修哉は彼女の家に行ったことがあるから、さっきの台詞を口にするのは当然だ。

 

「小さい頃って、今は行ってないのか?」

 

「も、もう行く訳ないだろう! 俺達はもう高校生なんだぞ」

 

 別に高校生だからと言う理由で行けない訳ではないが……。

 

 まぁ確かに幼馴染であっても、多感な年頃である高校生が異性の家へ行くのに抵抗があるのは当然か。益してや最大の障害であろう紫苑の父親がいる家でいれば猶更に、な。

 

 修哉が俺に鍛えられてから一年近く経って、今は別人と思われるほどに腕を上げたから、達人クラスと呼ばれる彼女の父親にあっさり負ける事は無い筈だ。実力を直に見てないから、今はただの予測でしかないが。

 

 すると、俺達が来たのを分かったかのように、突然目の前にある門が開いた。

 

 

 

 

 使用人なのか門下生なのかは知らないが、見知らぬ青年の案内に招かれ、剣道着に着替えてすぐに道場へと向かった。

 

 荘厳な雰囲気を醸し出している道場の中に入ると、上座と思わしき位置に、道着を身に纏っているエリカが瞑想するように畳の上で正座していた。

 

「エリカお嬢さん、お連れしました」

 

 男性が声を掛けた直後、瞑想していたエリカは瞼を開いて俺に向ける。

 

「待っていたわよ、隆誠くん」

 

「随分仰々しいお出迎えじゃないか」

 

 道場にいるのはエリカだけでなく、大変気まずそうに座っているレオや、門下生らしき人達も勢揃いしていた。

 

 その多くの視線に、隣にいる修哉がチョッとばかり気圧され気味になっている。

 

「レオならまだしも、他の人達も集めることないだろうに」

 

 今回の一件となってる関係者は俺と修哉、エリカとレオだけの筈だ。

 

 いくら千葉家の関係者だからと言って、こんなにぞろぞろと来られたら俺も少々うんざりしてしまう。

 

「こいつ等が勝手に集まっただけよ。安心して。絶対手を出さないよう言ってあるから」

 

 門下生達は明らかにエリカより年上の筈なのだが、『こいつ等』とぞんざいな扱いをされても、全く意に介してないように無反応であった。

 

 千葉家当主の娘だからか、もしくは彼女を慕っているかのどちらかは分からない。周囲の様子から見て後者の可能性が高いと思われる。

 

「そうか。じゃあ俺が此処で君をコテンパンにしても大丈夫って訳だな」

 

『!』

 

 俺の発言が聞き捨てならないと言わんばかりに、レオを除く門下生達が少々殺気立つようにギロッと俺を睨んできた。

 

「お、おい、リューセー……!」

 

 剣道部の雰囲気とは全く異なる雰囲気の他、急な殺気をぶつけられた事で修哉は俺を窘めようとする。

 

「アンタ達、余計なことをするんじゃない!」

 

『す、すいません!』

 

 しかし、エリカの鶴の一声によってすぐに霧散される事となった。

 

 こうも一瞬で怯えさせるほど大人しくさせるのは、見事としか言いようがない。上に立つ者としての心得は十二分にあるようだ。

 

「悪かったわね、隆誠くん。ウチの門人達が失礼な振る舞いをして」

 

「別に気にしてないよ」

 

 門下生達からすれば挑発をした俺が失礼だと思われるだろうが、こっちはエリカに無理矢理呼び出された身であるから、多少の意趣返しぐらいはさせて欲しい。

 

「ところで、俺達を呼び出した理由は何なんだ? まさかとは思うが、千葉家(そちら)(めん)()を潰した俺達への報復か?」

 

 もしこの前ぶちのめした司波の後ろ盾――四葉家であれば、間違いなくそうしているだろう。

 

 九重の話によれば、奴等は俺を危険分子として秘密裏に始末するどころか、俺に関わっている者達すら消そうとするから非常に性質が悪い。仮にそんな愚かな行為をした瞬間、聖書の神(わたし)直々の天罰が下る運命になってしまうが。

 

 千葉家は十師族でなくても、それに匹敵するほどの名門であるから、面子と言うものを相当重視している筈だ。名家が有名であればあるほど、それだけ大きな責任を背負う事になり、同時に失態を晒してしまう訳にもいかない。嘗て天界の長であった聖書の神(わたし)が身を以て経験しているから、エリカが報復目的に、俺達を千葉道場へ呼び出したのであれば分からなくもない。

 

 此方の発言に、修哉は勿論のこと、レオや門下生達が緊張が孕むかのようにエリカを見るも――

 

「そんな訳ないじゃない。隆誠くん、分かってて言ってるでしょ」

 

「あ、バレてた?」

 

 心外だと言わんばかりにエリカが呆れながら言ってきたので、俺は途端に破顔した。

 

 その光景を見た修哉達は呆気に取られたかのように、ポカンとしながら見ている。

 

「でもまぁ、弟子の敵討ちをする気は一切無い、と言えば嘘になるわね。正直言って、レオを負かした天城くんの実力を直接確かめてみたいと思ってる」

 

 それに、と言ってエリカは立ち上がりながら話を続ける。

 

「あたしとしては、天城くんをレオ以上の実力者にした隆誠くんの方が一番気になるのよ。呂剛虎を無傷で倒せる貴方が、一体どれだけ強いのかが」

 

「ふ~ん」

 

 つまり修哉はあくまで呼び出す為の口実に過ぎなく、エリカの真の目的は、俺と手合わせをしたいが為だったのか。

 

 毎回学校で『自分と手合わせしろ』と言っても躱され続けてる俺に業を煮やし、逃げれない理由を作って千葉道場へ来させるとは……上手く考えたものだ。

 

 失礼なのは分かってるけど、エリカは武闘派の面が強く出てるから、考えて行動するのは苦手なタイプだと思っていた。

 

「そう言う訳で隆誠くん、あの時の続きをやるわよ。去年は引き分けで終わったけど、今回はキッチリ勝敗を付けようじゃない」

 

「やはりそれが狙いだったか」

 

 

「お嬢さんを相手に引き分け!?」

 

「バカな……!」

 

「何かの間違いじゃないのか……!」

 

 

 とても許容出来る発言じゃなかったのか、門下生達はざわつき始めた。

 

 それが煩わしいように、エリカが強く一睨みした事で即座に静まり始める。

 

 因みに修哉とレオは門下生達と違って当時の手合わせを観ているから、苦笑に留まっている。

 

「……ったく、しょうがないな」

 

 もう断れる雰囲気じゃないと理解したので、エリカとの手合わせを了承する選択しかなかった。

 

 修哉をレオの隣に座るよう促した後、俺は向こうから借りた竹刀を手にして、中央にある道場の板張りの床へ両足を付けた。

 

 あの時の続きと言っても、今の彼女は去年より強くなっているのが分かった。恐らくこの世界の人間から見れば、既に達人クラスと言っても過言じゃないだろう。

 

 前世(むかし)と比較するのは間違っているのだが、当時高校生だった木場(きば)(ゆう)()に比べたら、まだまだ遠く及ばない。特にスピードに関しては、祐斗の方が遥かに上だと断言出来る。

 

 ついでに俺から言わせれば、『それがどうした』程度の認識に過ぎない。多少腕を上げた程度で、俺の勝利は一切揺るがないから。

 

「隆誠くん、今度は本気でやりなさい。あたしも本気でやるから」

 

「ほう……」

 

 本気でやれ、か。知らないとは言え、聖書の神(わたし)相手にそれは無謀な行為も同然だ。

 

 そんなことしたら一瞬で勝負がついてしまうし、エリカがこれまで培ってきた剣士としての誇り(プライド)も一瞬でズタズタに引き裂かれてしまうだろう。

 

 俺を『精霊の眼(エレメンタル・サイト)』で『視』続けていた司波ならまだしも、エリカ相手になるとチョッとばかり気が引ける。

 

 とは言え、向こうのリクエストに応えなければ絶対納得してくれないだろうから、ここは相応の実力で挑むとしよう。

 

「じゃあこっちからも言っておこう。エリカ、一瞬たりとも絶対に気を抜くんじゃないぞ」

 

「?」

 

 俺の発言にエリカだけでなく、修哉とレオ、そして門下生達も怪訝そうに俺を見ていた。

 

「そんなの当たり前じゃない」

 

「嘘吐け。だったら何故――こんなに近づかれても反応しないんだ?」

 

『!?』

 

 俺が言ってる最中の刹那、いつの間にか彼女の懐に入ってるだけでなく、首筋に竹刀をトントンッと軽く当てていた。

 

「す、凄い。あの一瞬で……!」

 

 エリカ達と違って、唯一ギリギリ目で追う事が出来た修哉だけは違う反応を示しており、それを耳にした俺はチョッとばかり気分が良かったのは秘密にしておく。




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