再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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次回が本番と前話で書きましたが、急遽幕間を入れる事にしました。


番外編 七草家からの招待 幕間

(さて、此処までは順調だな……)

 

 弘一は内心ほくそ笑んでいた。目の前にいる少年が相当な実力者であっても、話し合いに関してはまだまだ青い学生(こども)に過ぎないと思いながら。

 

 隆誠が推測した通り、今回弘一が呼び出した目的は神霊(オーフィス)について話し合う為であった。

 

 七草家当主である弘一は現代魔法師である為、古式魔法に関して専門外であっても、必要最低限の知識を持っている。

 

 彼がそれを知ったのは、先日に起きた一高での出来事を、娘の真由美が克人と共に箝口令を敷いたのを独自に探ったからだ。如何に二人が秘密にしたところで、結局それは情報収集に長けてる七草家当主の耳に入ってしまう。

 

 集結したパラサイトを精神攻撃魔法『ルナ・ストライク』と似た魔法で倒されたと言う内容を見て、弘一は最初自分の目を疑ってしまう程に信じられなかった。隆誠が出鱈目な実力者である事は知ってても、精神干渉系の系統外魔法であり、その中で最も有名な魔法の一つを使うなど全く予想していなかったから。

 

 更に信じられない事に、パラサイト討伐後に幼女の姿をした神霊が出現し、そのまま隆誠が管理(ほご)すると言う形で収まっている。余りにもぶっ飛んだ内容であった為、流石の弘一も頭痛がしたとか。

 

 今回の事件で七草家は多くの戦力が失った為、その補充をしようと密かにパラサイトを捕らえる算段を立てていた。けれど、四葉家だけでなく、九島家も動いている事を知った事で、これ以上は藪蛇だと判断し断念するしかなかった。

 

 だが、神霊については別だった。如何に隆誠が責任持って管理するとは言え、十師族でない少年の手元に置くなど、決して容認出来ない。強大な力を持った存在を放置するなど、弘一はそこまで楽観的な考えを持っていないどころか。七草家だけでなく、他の十師族にも牙を向ける可能性があるかもしれないと危険視する程である。

 

 かと言って、下手に此方から手を出すような真似をすれば、手痛い竹箆(しっぺ)返しを受けてしまう。神霊とは別に、隆誠は大亜連合の呂剛虎だけでなく、『アンジー・シリウス』を含めたUSNA軍の精鋭をたった一人で倒せる実力者。彼を相手にすれば、七草家もUSNA軍と同じ運命を辿ることになってしまう。

 

 そこで弘一は考えた。敵対するよりも、七草家の戦力として迎える為の交渉をすべきかもしれないと。

 

 最初は危険視していたが、情報によると、神霊は主と見ている兵藤隆誠の命令に従順らしい。だから彼を上手く丸め込んで手綱役にすれば、七草家は失った戦力を補充するどころか、あの四葉家に対抗出来る最大の切り札を得るかもしれないと思いながら。

 

 無論、そう簡単には行かないと弘一も考慮している。交渉をする隆誠は途轍もない実力者なので、もし下手に機嫌を損ねてしまえば失敗どころか、神霊の怒りも買ってしまいかねない。

 

 いきなり交渉したいと言っても、例え自分が名乗り出たところで簡単に応じてくれるなど微塵も思ってない。だから敢えて目的を暈し、娘を案内人にさせようと画策する。その結果、隆誠は不審に思いながらも真由美の頼みを聞き入れ、こうして呼び出す事に成功した。

 

 来てくれたのは良いが、その途中で少々誤算が生じてしまった。真由美の妹である香澄と泉美が何を勘違いしてか、隆誠に喧嘩を売る行為をしてしまったのだ。更には密かに監視を命じていた魔法師達の存在が、公になってバレる破目になる始末。それを知った弘一は、この交渉が終わった後に娘達を軽く叱る予定が出来てしまう。

 

 娘二人が失態を犯した結果、隆誠は自分と対面して開口一番に痛烈な皮肉を言ってきた。父親である弘一は何も言い返せないどころか、甘んじて受け入れる選択しかなかったが、真由美のお陰で如何にか事無きを得ている。

 

 次に監視の魔法師について言及されるも、監視とは別にボディーガードの役割も兼ねていたと言う説明(いいわけ)をすると、向こうは途端に信じて謝罪の意を示していた。本当に信じているのかは分からないが、自ら頭を下げて謝罪してきたので、取り敢えずと言う感じで受け取る事にした。

 

 その直後にはUSNA軍の件を引き合いに、今後それと似たような案件が起きた場合、必ず七草家(じぶん)に報せるよう釘を刺す事に成功する。

 

 因みに隆誠が捕縛した『アンジー・シリウス』の引き渡し役を恩師である九島烈が行うと知った際、弘一は大変面白くなさそうに愚痴っていた。もし自分であれば、USNAから莫大な身代金だけでなく、戦略級魔法の情報開示、更には隆誠と戦った時に使った魔法兵器(ブリオネイク)を手に入れることが出来た筈だと。

 

 そんな欲深な考えを聖書の神である隆誠に見抜かれてるなど露知らず、弘一はここで本来の目的に移った。神霊についての交渉を。

 

 直後、何故それを知ってると言わんばかりに驚く隆誠だけでなく、同伴してる真由美も視界に入りながらも、弘一はここぞと言わんばかりに突き始めようとする。滅多に怒ろうとはしない神霊オーフィスの逆鱗に触れてしまう行為であることを知らずに。




今回の幕間は短いですが、弘一の心情話を載せる事にしました。

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