再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回はタイトル通り幕間話なので、フライング投稿します。


ダブルセブン編 幕間

 魔法大学を後にした俺は一高へ戻り、報告をしようと生徒会室へ移動した。実験室の戸締りと後始末を行っている中条と五十里を除き、生徒会室には残りの生徒会メンバーの他、実験に協力している香澄と桜井、留守番を任されている風紀委員の北山と合流する。

 

 向こうにいる学長の挨拶を終えたとの報告を終え、次に司波と話をする為に別室へ向かう。もうお約束のパターンと言うべきか、司波妹もさり気なく混ざろうとしていたが、即座に俺の方で釘を刺しておいた。

 

 司波妹だけでなく、他の面子も気になるように視線を向けられてる中、別室に入った俺は話を始めようとする。

 

「やはり真由美さんと十文字先輩も、明日の議員視察の件を知っていたぞ」

 

「そうだろうな」

 

 大学のカフェテリアで尋問された事を話すと、司波は慌てる事無く冷静に受け止めていた。四葉家が国会議員が一高へ視察する事を知ってるなら、七草家や十文字家も同様の情報を得ている筈だと初めから予想していたようだ。

 

 あと他に市原と遭遇した件も話したら、これも想定していたのか、あの先輩が興味を抱くのは当然であると頷く様子を見せている。

 

 今のところ全て予定通りの展開になってると言わんばかりの様子を見せる司波を見て、俺はある事を尋ねた。

 

「おい司波。まさかとは思うが、真由美さん達にも事情を説明させる為のメッセンジャー役も兼ねて、俺を大学に行かせようと考えたんじゃないだろうな?」

 

「そんな訳ないだろう。だが仮にそうであったとしても、兵藤は後で俺に面倒事を全部押し付けるんじゃないのか?」

 

 俺からの疑惑に、司波はいつものポーカーフェイスでそう問い返してきた。

 

 確かに面倒事を押し付けられたと判明したら、全部コイツに押し付けようと考えている。

 

 どうやら司波は、俺が大学へ行って真っ先に疑われる事を想定していたようだ。そうでなければ、もうお見通しのような切り返しをしてこない筈。

 

 まぁそこで演説をするのだから、真由美達と会って問い詰められるのは必然的な流れなので、これ以上疑うのは止めておくとしよう。後に他の理由があって騙されたとあっても、そこは俺の落ち度だから甘んじて受け入れるしかない。余りに度が過ぎれば、それこそ精霊の眼(エレメンタル・サイト)を強制封印すれば良いだけだし。

 

「………兵藤、何か不穏なことを考えなかったか?」

 

「お前はいきなり何を言ってるんだよ」

 

 司波が突如目を鋭くして、凄く真剣な表情で俺に訊ねてくるも、俺は呆れるように言い返した。

 

 チッ、勘が鋭い奴だ。防衛本能と言うべきか、精霊の眼(エレメンタル・サイト)の強制封印と考えただけで、こうも敏感に反応するとは。それだけあの時封印されたアレは、司波にとって恐ろしい出来事だったのだろう。

 

「この際だから断言しておく。俺は兵藤を騙してなどいない。未だに信じられないかもしれないが、これが俺の本心だ」

 

「……そうかい。疑って悪かったよ」

 

 恥ずかしげもなくハッキリ言ってくる司波の台詞に、俺は素直に受け取っておくことにした。

 

 疑った詫びではないが、謝罪の代わりにある物を渡すとしよう。

 

「ところで司波、突然話は変わるが、確かお前今日は誕生日だったな」

 

「ああ、そうだが」

 

 いきなり違う話になった事に、司波は突如表情を変えた。まさか自分の誕生日について訊かれるとは思いもしなかったのだろう。

 

 それを知ったのは、以前に表向きの情報を調べた際、誕生日についても偶然知った。最初は如何でも良いと切り捨てようとしたのだが、途中で俺はある事を利用しようと考えた。

 

 司波が訝るのは当然の反応だと思いながら、俺は懐からある物を取り出そうとする。

 

「ほれ、俺からの誕生日プレゼント」

 

「……どう言うつもりだ? と言うより、ソレに一体何が入っている」

 

 予想通り司波は、俺が出した小型メモリーキューブを見て疑惑の表情となっていく。

 

 簡単に受け取る気配が無さそうだと分かった俺は、ある事を尋ねようとした。

 

「中身を教える前に確認だが、数ヵ月前にあった吸血鬼事件の際、司波は俺とリーナがとある場所で真剣勝負した(・・・・・・・・・・・・)のはもう既に知ってるよな?」

 

「………ああ、兵藤が本気で挑んだ彼女達(・・・・・・・・・)に勝利したと聞いた時は、自分の耳を疑うほどだった」

 

 端から聞けば一体何の話かと疑問に思われるだろう。しかし、司波は俺に合わせるように言い返した。

 

 やはり司波も知っているようだ。俺がリーナことスターズ総隊長『アンジー・シリウス』が率いるUSNA軍と一戦交えて撃退した事を。七草家が知っているなら、当然四葉家当主も耳に入っている筈だ。尤も、四葉真夜の場合はハッキングツールの『フリズスキャルヴ』で、俺に関する情報を収拾してる時に入手したんだろうが。

 

 となれば、俺が彼女を捕らえた後、USNA軍に引き渡しの交渉をした事も当然知っている筈だ。そこで九島が出て来た事も含めて、な。

 

「因みに彼女が俺との勝負に使った魔法は聞いてるか?」

 

「そこまで詳しく知らないが、何でも強力な魔法兵器を使っていたとしか……ッ! 兵藤、お前まさか……!」

 

 お、言ってる最中に気付くなんて流石だな。

 

 司波は俺が持ってるメモリーキューブに記録されてる中身の正体に気付いたのか、途端に凝視している。

 

「お察しの通り、コレには彼女が使っていた魔法兵器の情報(データ)の一部が記録されてある」

 

 俺が『ブリオネイク』の情報を得たのは、リーナを気絶させて拠点のマンションに転移した後の話である。

 

 あの時は一切対価を求めず無条件で引き渡す形として終わらせたが、実際は既にちゃっかり頂いていた。リーナやスターダストの女性二名が眠ってる間、『ブリオネイク』以外にも、『キャスト・ジャマー』やCADに搭載されている魔法に関する情報も根こそぎ入手済みだ。無論ソレ等には情報を奪われないよう強固なセキュリティを施されていたが、聖書の神(わたし)が使う能力(ちから)の前では何一つ無意味なモノである為、全て頂く事になった。

 

 いくら聖書の神(わたし)であろうと、窃盗行為をするなど以ての外なのは重々承知している。最初はそんな事をする気は全く無かったが、リーナから記憶を読み取って家族にも手を出そうとしたと判明した瞬間、予定変更せざるを得なくなった。いくら未然に防ぐ事が出来たとは言え、母さん達を人質に取ろうとするUSNA軍の身勝手な行いを簡単に許す訳にはいかない。向こうが密かに俺の家族を捕えようとしたのなら、こっちも密かに情報を頂こうと決意した訳である。

 

 俺からすれば、USNA軍の兵器や魔法に関する情報は非常に如何でも良いモノだと勿論理解している。けれど、自分以外の魔法師なら取引材料に使えるかもしれないと思い、自分の懐に収めた。

 

 かと言って取引する相手は、ちゃんと見極めなければならない。特に十師族の七草弘一みたく、非常に欲深な考えを持った魔法師と取引するのは一番危険だ。人間が欲を持つのは決して悪いことじゃないと聖書の神(わたし)は充分理解してるのだが、あの狸親父はそれ以前の問題だ。アレは自分が一番得をする取引をしなければ絶対応じない人間だと、この前会った時に充分理解したから。

 

 目の前にいる司波も取引するには余り信用出来ない部分があっても、精霊の眼(エレメンタル・サイト)に施されてる封印術の件がある。それで強く出れない事を差し引けば、今の司波とはある程度の取引が出来る。あくまでそれは俺の考えに過ぎないが、な

 

「戦略級魔法『ヘヴィ・メタル・バースト』を応用して、FAE理論を実現させた魔法兵器を使うことで、収束ビームとして発射することが出来るらしい」

 

「噂には聞いていたが、まさか本当にFAE理論を実用化していたとは……。さすがだな、USNAの技術力は」

 

 情報の内容を簡単に教えただけでも、司波は大変興味深そうな表情だった。俺が手にしてるメモリーキューブを凝視したままだが、受け取ろうとする気配を見せずに警戒している。

 

「どうやって入手したのかは敢えて聞かないでおく。だがそんな重要な物を受け取ったら最後、俺もUSNAに狙われてしまうかもしれないんだが」

 

「お前がそんなドジを踏むヤツじゃないと、俺はそう思ってプレゼントするんだが……いらなければ処分するぞ」

 

「誰もそこまで言ってない」

 

 そう言いながら司波は、俺が持ってるメモリーキューブを自分の手中に収めようとする。

 

「兵藤、お前からの誕生日プレゼントは有難く受け取ろう。だが流石に一部だけでは満足出来ないんだが」

 

「分かってる。詳細なモノは後日ちゃんとやるが、その前にやってもらいたい事がある」

 

「成程。これは謂わば前払いと言う訳か」

 

 どうやら司波は理解したようだ。俺が渡した誕生日プレゼントが、実は取引を行う為の材料である事に。

 

「何が望みだ?」

 

「詳しい話は、司波がその中身を一通り解析してからだ。と言っても、明日の公開実験が終わってからになるが」

 

「……まぁ、それもそうだな」

 

 すぐにでも聞きたそうな表情の司波だったが、今は明日に控えてる実験が一番大事だと理解してるみたいで、一旦この話を後回しにした。

 

 

 

 

 話したい事を終えた俺達が別室から出ると――

 

「兵藤くん、お兄さまと別室で随分ごゆっくりされていたみたいですね。一体何を話していたのですか?」

 

 何故か分からんが、司波妹が冷たい笑みを浮かべながら詰問してきた。彼女以外にも、光井達も気になるように此方を凝視している。

 

 別室で随分ごゆっくりって、俺達そこまで長く話したつもりは……って、時計を見たら別室に入ってから地味に時間が経ってるじゃないか。司波妹達が気になるのは無理もないと改めて理解した。

 

「大学で行う最終確認の打ち合わせをした際、司波が今日、誕生日だったのを急に思い出してな。俺からのバースデープレゼントを司波が疑って少々時間が掛かったんだ」

 

「中身の詳細を聞いた結果、怪しい物では無いと判断して有難く受け取る事にしたと言う訳だ」

 

 別室で話した詳細は敢えて話さず、主に遅くなったのはプレゼントを渡した事が原因で遅くなったと話し、司波も俺に合わせてくれている。

 

 ナイスフォローだぞ、司波。これで彼女達も安堵するはず……え?

 

「ひょ、兵藤くんが、お兄さまに、誕生日プレゼントを……?」

 

「み、深雪先輩、大丈夫ですか!?」

 

「う、うそ、よね……? 男子の兵藤君に、先を、越されちゃった……」

 

「ほのか、しっかり」

 

 遅くなった理由を言った筈が、何故か分からないが司波妹だけでなく、一緒に聞いていた光井もショックを受けていた。よろよろと倒れそうになる二人に、泉美と北山が空かさず支えようとしている。

 

「ひょ、兵藤先輩と司波先輩って、もしかしてそういう関係だったの!?」

 

 おいコラ待て香澄。そういう関係って一体どういう事だ。

 

 何やら変な誤解をしてるようだから、取り敢えず後でデコピンの刑だから覚悟しておけ。

 

「……司波、彼女達は一体何を考えてると思う?」

 

「……俺に聞くな」

 

 司波妹を筆頭にした女性陣の反応に、俺と司波は何とも言えない表情になって見てるしかなかった。

 

 その後、司波妹と光井は何とか立ち直ったのだが――

 

「「……………………」」

 

「お二人さん、言いたい事があるならハッキリ言ってくれないかな?」

 

 まるで仇敵のように睨んでくる為、理不尽だと俺は内心嘆きながらも突っ込むしかなかった。




次回は公開実験の話になります。

感想お待ちしています。

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