公開実験が成功した事により、魔法大学は大絶賛と言わんばかりの大騒ぎになっていた。余りの勢いに修哉と紫苑は気圧されそうになっていたが、全く動じてない俺は映像を切り、演説と中継を終了させようとする。
しかし、興奮を抑えきれない参加者達から多数の質問が飛び交う事になった。ある程度は答えることは出来たのだが、専門的な事は企画者である司波でしか分からないと言っても、それでもしつこく質問してくる始末。
借りていた演説室の時間がとっくに過ぎても、参加者達が一向に帰ろうとしない光景に、後輩のピンチを助けようと真由美と十文字が動いてくれた。十師族直系と当主補佐が前に出た事で、俺達が解放出来たのは言うまでも無い。まぁその後、去年の一高三巨頭+市原と少々長いお話をする事になってしまったが、な。
因みに俺達が魔法大学を後にする際、帰りの挨拶をした学長から、一高の百山校長と一緒に野党民権党の上層部に厳重抗議しておくと言っていた。司波が予想していた通り、魔法大学側も神田議員を含めた反魔法主義陣営議員の動きを封じる口実が出来たようだ。
☆
西暦2096年4月26日
魔法大学の演説、一高の公開実験を終えた木曜日。朝のニュースは昨日行った実験に関しての話題になっている。
記者によって好意的、もしくは敵対的に書かれてる記事が併存するのは当然だった。けれど、俺が見た限りでは好意的な記事が多いような気がする。
昨日に一高へ来た記者は反魔法主義者の神田議員に与する連中だから、てっきり悪意のある記事を公表すると予想していたのだが、意外とそうでもなかった。既に対策を考えていた司波も、まさかこんな結果になるとは思わず、予想外の肩透かしを食らっているだろう。
それでも、かなりヒステリックな記事を書いているのもあった。『魔法科高校生、水爆実験に挑戦か!?』と言うタイトルで、明らかに公開実験の趣旨と大きくかけ離れた見当違いな記事である為、演説をした俺からすれば非常に不愉快なモノだった。読む価値すらない低俗な記事だと思うほどに。
まぁ俺のそんな個人的感情は別として、世論は司波の公開実験を好意的に見てるのは確かであった。その中心となってる一高は、昨日の件で今もチョッと大騒ぎとなっている。
「思っていた以上の反応だったな。これも全て司波の計算通りなのか?」
「そんな訳ないだろう」
昼休みの生徒会室。俺は司波と二人で昼食を取っていた。非常に珍しい光景だと思われるかもしれないが、昨日に大学であった件について話したい為に誘ったのだ。
司波は最初嫌そうな表情をしていたが、大学側の反応を知りたかった事もあって、仕方ないと言う感じで了承した。因みにそれを聞いた司波妹と光井は、俺と司波が二人っきりで昼食を取る事に妙な疑惑を持った視線を送られたが完全スルーしている。
生徒会室で食事を続けながらも、設置されてる壁面ディスプレイに表示されたプッシュ型の動画ニュースは、有名人のインタビューが映し出されている。
「ローゼン家が日本のニュースに出演するのは完全に予想外だったと?」
「ならば逆に訊くが、兵藤は学校の実験程度で、ドイツの魔法工学機器メーカーが動くと思っていたのか?」
「いいや、全然」
司波からの問いに俺はそう言いながら首を横に振っていた。あくまで国内で話題になるものとしか予想してなかったから、海外からも高評価されるのは微塵も想定してない。
「けど、チョッと腑に落ちないんだよな」
インタビューされてるローゼン・マギクラフト日本支社長、エルンスト・ローゼンを見ながらそう言った。
俺がこう言うのは理由がある。名前は当然知っているが、つい最近その人物を直接見たことがあるのだ。
今月あった入学式の際、参列者の中にエルンスト・ローゼンがいた。入学式が終わって早々司波に会っていたが、その時は忙しいを理由に一言の挨拶だけで終わっていたが。
ローゼン・マギクラフト日本支部の社員や幹部の中に、ローゼン本家の人間は誰一人いない。なのに今年はローゼンの性を持つ者が日本に赴任してきた為、それを知ったデバイスオタクの中条が酷く驚いていたのは今でもはっきり憶えてる。
今まで日本に籍を置かなかった本家の人間がいきなり来日するのは、何かしらの理由があって来たんじゃないかと俺は踏んでいる。自分には全く関係無い事でも、USNA軍の一件があった所為で、急な動きを見せる他国の行動に俺は少々敏感になっているのだ。
「司波は何か知ってるか? ローゼン本家が日本に来た理由とか」
「いくら俺でも向こうの事情など知らん。向こうが日本へ赴任したのは、何かしら大きな方針変更があったんじゃないのか」
全く知らないと否定しながら推測を立てる司波。
この様子から見て本当に知らないかもしれないが、何かを隠しているような感じがした。何だか誰かを意識してるような……まぁ、そこは俺が知るべき内容じゃないので、深く訊かないでおくとしよう。
俺と司波の会話とは余所に、画面の中のエルンスト・ローゼンは流暢な日本語でキャスターの質問に答えていた。
『高校生があれほど高度な魔法技術を操るとは予想外です。日本の技術水準の高さには驚かされました。第一高校の生徒が成功させた昨日の実験は、魔法が人類社会に更なる繁栄をもたらす技術となり得る可能性を見せてくれました』
「アレは間違いなくお前に対するメッセージだな」
「頑張ったのは深雪達なんだが……」
そう言いながら司波は動画を消そうとディスプレイの画面をオフにした。もうこの話題は終わりだと言わんばかりに。
「ところで兵藤、一昨日お前から貰ったプレゼントだが」
全く違う話に移ろうとする司波の姿勢を見て、さっきまでの話は本当に如何でも良いモノだったと俺は内心察した。
「一部とはいえ、アレは確かにUSNAが開発した魔法兵器『ブリオネイク』の情報で、非常に興味深いモノだ。今日帰ったらすぐに解析するつもりなんだが、その前に聞かせてくれ。あの情報を手土産にしたお前は、俺に一体何を求めている?」
恐らく研究熱心な司波の事だから、数日もしない内に情報を解析し終えるかもしれない。そうなる事を予想したから、コイツは今の内に聞いておきたいんだろう。
「そう慌てなさんな。別に逃げも隠れもしないんだから、解析を終えたその時に話すよ」
「あの程度の情報なら一日もあれば終わってしまうんだが」
「早過ぎにも程があるだろ!」
提供した情報が一部であっても、それなりに時間が掛かると思っていたのに、司波がさり気なく凄い事を言ってしまう為に思わず突っ込んでしまった。
コイツの頭の中は一体どうなってるんだよ。俺や
「だったらついでに、こっちの方もやってくれ」
「何だソレは?」
俺が懐から取り出したモノを見た司波は、突如怪訝そうな表情で見ていた。一昨日に渡したメモリーキューブと違って、封筒に収まってる紙媒体であるから。
「魔法大学にいる市原先輩から、昨日の実験について色々訊きたい事があるから、コレを司波に渡して欲しいって頼まれたんだ」
「………だとしても、それは本当に質問書なのか?」
司波が疑うのは無理もない。何故なら俺が渡そうとしてるのは、ラブレターと勘違いしてしまいそうな小さな封筒であったから。
中身に詳しい詳細が書いてあるとは言っても、こんな渡し方は無いだろうと俺も思う。
「言いたい事は分かるが、とにかく受け取ってくれ。でないと、残りの情報やらんぞ」
「……分かった」
魔法兵器『ブリオネイク』の情報が何としても欲しいのか、司波は諦めたかのように、俺が差し出した封筒を受け取ろうとする。
何だか男の俺が司波にラブレターを渡すような光景で嫌になる。もしこんな所を誰かに見られたら――
「ひょ、兵藤くんが、お兄さまに、ラブレターを……?」
「達也さんも、それを、受け取ってる……?」
突如、生徒会室の扉が開いて入って来たのは司波妹と光井だった。
しかも大変間が悪い時に、俺が司波に封筒を渡す光景を見た事でショックを受けて石のように固まっている。
「おい待て二人とも! 絶対何か酷い誤解してるだろ!?」
「深雪、ほのか、先ずは俺達の話を聞くんだ!」
これには俺だけでなく、司波も一緒になって二人の誤解を解こうとしたのは言うまでもなかった。
特に一番酷かったのは司波妹の方で、まるで暴走したかのように全身からブリザードを放出していたから、司波兄が必死になって止めるのに苦労していた。
市原のちょっとした悪意によって、深雪とほのかに誤解されてしまうリューセーと達也でした。
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