再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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本当は前話の内容と一緒に更新する予定でしたが、区切りを付けるため別々にしました。


ダブルセブン編 火種勃発

 司波妹と光井の誤解をどうにか解く事は出来たのだが、午後の授業以降から矢鱈と警戒される破目になってしまった。北山や他のクラスメイト達からは疑問視されるも、そこは敢えて気にせずやり過ごしている。

 

 今日も生徒会で行う業務はあるけど、剣道部の方を専念させてもらった。そこで司波と会えば二人に何を言われるか分かったものではない上に、またしても変な誤解をされるかもしれないと思ったから。明日になれば大丈夫だろうと思って、修哉を鍛える事にしたのだ。

 

 上級用バンドを着けて動きが制限されてる修哉だが、段々慣れてきたこともあってか、動作のキレが良くなっている。もし外して身体が軽くなった状態で本気を出せば、今までの動きが数倍以上に速くなるのは確実だろう。しかも魔法を使わずとも、な。着々と成長する弟子の姿に、師匠の俺としては鼻が高くなるばかりだ。

 

 並びに陸上部で活動してる紫苑も、中級用バンドにもうすっかり慣れてるみたいで、クラブに全く支障のない動きなのも確認済みだ。本音を言えば上級用バンドを使わせても良いんだが、流石にアレは俺が直接見ないといけないから、自分の目が届かない場所で使うのはかなり不味い。もし彼女の身体を壊すような事態になって千代田が知れば、絶対黙っていないのが目に見えている。

 

 とは言え、とある計画(・・・・・)を立てている俺からすれば、修哉と紫苑の更なるレベルアップは必須。それを考えると、チョッとばかり予定を早める必要がありそうだ。

 

 二人の今後について考えてる最中、非常に面倒な厄介事が起きたのであった。

 

 

 

 

 場所は風紀委員会本部。生徒会副会長として来た俺は目の前の光景を見て呆れていた。

 

 俺が此処にいるのは、生徒会長の中条より緊急連絡が来たからだ。『風紀委員の七草香澄と、執行部の七宝琢磨が魔法を使って喧嘩を起こした』のだと。

 

 内容を聞いた瞬間、もう呆れてモノが言えなく嘆息するしかなかった。あの喧嘩っ早い二人のどちらかが必ずトラブルを起こすと予想していたが、まさかこんな早く起きるとは想定外だった。いくら十師族や師補十八家だからって、入学して一ヵ月も経たずに問題行動を起こすのはどうかと思う。

 

 風紀委員会と執行部が問題行動を起こした為、第三者として生徒会も緊急出向する事になった。本当ならこれは中条が来るべきなんだが、荒事に関しては俺が適正だからと言って押し付けられたのだ。啓も同様の理由を述べて笑顔で逃げ、司波なんか『俺は今も情緒不安定になっている深雪とほのかの傍にいなければならない』と抜かしていた。本当なら司波に対して『ふざけんな!』と文句を言いたいところだが、今回は敢えて受け入れている。多感な時期である少女二人に精神的ショックを与えた原因が何であるか、物凄く心当たりがあったからとだけ言っておく。

 

 因みに今回起きた問題には、今年執行部に入った修哉も同席させている。既に執行部の代表である十三束がいるのだが、入ったばかりの修哉も経験させた方がいいと言う理由で俺が連れて来たのだ。

 

 今いるのは風紀委員長の千代田と二人を連行した森崎及び北山、部活連から会頭の服部、執行部の十三束と修哉、生徒会の俺。そして問題行動を起こした香澄と七宝がその中心にいる為、二人からすると針の筵気分を味わっているだろう。

 

「香澄、風紀委員が何をやっているのよ。しかも見回り中に……」

 

 最初に口を開いたのは千代田で、深々と溜息を吐いていた。その事に香澄は罰が悪そうに目を逸らしている。

 

「七宝、魔法の無許可使用が校則違反だって事くらい知っているだろう?」

 

 十三束の嘆きに、七宝は身体を強張らせながらも黙ったまま聞いていた。

 

「とにかく、事情を確かめることが先決だと思うが」

 

 二人を責める前に、先に聴取すべきだと建設的な話をしようとする服部。

 

 部活連会頭からの提案を聞いた千代田と十三束も、異論はないと言わんばかりに頷いていた。

 

 今回起こした問題について、香澄は完全な未遂とは言っても停学の可能性有。七宝も同様に未遂なのだが、CADの操作に入っていた事もあり退学の可能性有。千代田は前以て二人にそう宣告している。

 

「さっき言った事を念頭に置いて話しなさい。一体何が原因なの?」

 

 千代田が改めて尋ねると――

 

「七宝君が七草家を侮辱したんです」

 

「七草から許し難い侮辱を受けました」

 

 香澄と七宝は、お互いを決して見ようとせず、ただ相手側に非があると言うだけだった。

 

「……服部君、この始末、どう付ければ良いと思う?」

 

 二人の主張に千代田は再度深い溜息を吐いた後、何故か目を閉じている服部に答えを求めようとした。恐らく自分では手が出せないと諦めたに違いない。

 

 確かに百家本流の家系である彼女でも、十師族や師補十八家相手だと流石に分が悪いだろう。学校内で起こした問題であっても、家の問題となれば、下手すると自身の家系にも被害が及んでしまうから。

 

 千代田からの問いに、百家支流である服部は閉じていた目を開いてこう言った。

 

「七宝は部活連の身内だ。俺には、公平な判定を下す自信がない」

 

「それを言うなら香澄は風紀委員会の身内よ」

 

「ならば部活連でも風紀委員会でもない第三者、生徒会の兵藤に裁定してもらおう」

 

 服部と千代田の言い分を聞いて、どちらも全く当てにならないと俺は内心大きく溜息を吐いた。身内であるなら、猶更二人がそれぞれ相応の処罰を下せば良いだろうに。

 

「どちらも相手に非があると主張するだけでなく、学校で起こした問題を家同士の諍いとして発展させるのであれば、七草家と七宝家の両当主に厳重抗議すれば良いのではないですか? 未遂とは言え、二人は重大な違反を犯したんですから、いっそ保護者に責任を負わせるのが妥当かと」

 

「「!」」

 

 俺の裁定内容を聞いた香澄と七宝は眼を見開き、顔を青褪めながら一斉に俺の方へ視線を向ける。

 

 二人がああなってるのは、非常に不味い事態だと理解してるのだ。今回の出来事が未遂であっても大問題である為、もし外部に知れ渡ってしまえば、自身の家を蹴落とす為の非難材料を与えてしまう事になる。益してや十師族として有名な七草家、並びに師補十八家の七宝家となれば、彼等を蹴落としたい他家は必ずいるだろう。

 

 それ以外にも、今回の件を七草弘一と七宝家当主の耳に入れば、間違いなく激昂するだろう。魔法師として模範を示さなければならない有名な直系の子供達が、入学して間もなく問題を起こしたとなれば、他の魔法師達に恥を晒してしまう事になるから。尤も七草家の場合はあの狸親父でなく、香澄の姉である真由美が一番怒るかもしれないが。

 

「兵藤。この問題はなるべく学校内で済ませたいから、出来ればもう少し穏便な内容にしてもらえないか」

 

「そ、そうよ、兵藤君。もしこれが外部に知れ渡ったら、場合によっては君もただじゃ済まなくなっちゃうわ」

 

 改めて変更を求める服部と千代田に、俺はまたしても呆れながら内心溜息を吐いてしまう。因みに二人の言い分に十三束だけでなく、森崎と北山も同感だと言わんばかりに強く頷いている。修哉だけは俺と同じく呆れた表情になっているが。

 

 人に裁定するよう求めておいて、随分勝手な事を言ってくれる。

 

 でもまぁ、二人の言い分は分からなくもない。俺が下そうとする裁定は七草家と七宝家に喧嘩を売る行為も同然だから、その二家を敵に回すような事をすれば千代田の言うように、決してただでは済まなくなるだろう。もし向こうが俺に何らかの報復をやれば、神造精霊のレイやディーネだけでなく、(一応)神霊のオーフィスも絶対黙っていないが、な。

 

「ならば香澄と七宝に反省文を書かせる他、数日限定ですが、放課後に重りを付けた状態のままランニング十周させるのはどうでしょうか」

 

「……まぁ、それなら問題無いな」

 

「因みにランニングに関しては、兵藤君が監視するの?」

 

「出来れば身内であるお二人に任せたいんですが、第三者である自分が適任かと」

 

「「…………………」」

 

 思いっきり皮肉が籠ってる俺の台詞に、服部と千代田は何も言い返す事が出来なかった。

 

 執行部の十三束だけでなく、風紀委員の北山と森崎も反論する様子を見せていない。一般人側である修哉だけは軽い罰だと思ってるのか、若干不服そうに見ているが気にしないでおく。

 

「とは言え、どうせこの二人は俺からの罰を受けたところで反省しないどころか、また同じ行為を繰り返すのがオチでしょう」

 

 先程から香澄と七宝は、罰の内容を聞いた途端、思いっきり不満があるかのように俺を睨んでいた。

 

 香澄の場合、前々から俺が自分の大好きな姉である真由美と仲が良い事が非常に気に食わない為、司波兄と同様に敵対視している。『こんな奴に従いたくない』と言うのが丸分かりだ。

 

 七宝の場合、十師族でも師補十八家、益してや百家でもない一般人の俺を今も内心見下してる。同時に『今は甘んじても、この恨みはいつか絶対晴らしてやる』と顔に書いており、浅はかな考えが丸見えだった。

 

 今のコイツ等には相応のお仕置きをしない限り、自ら考えを改めようなんてことは決してしないだろう。あくまで俺の勝手な推測に過ぎないが、な。

 

「香澄、七宝。俺からの罰を受けたくなければ、もう一つある。尤も、これは条件付きだが」

 

「え? 条件って……」

 

「それは一体何ですか?」

 

 条件と聞いた香澄と七宝は食い付いたかのように耳を傾ける。これは二人だけでなく、服部達も同様だった。

 

 見事に引っ掛かったな、と俺は内心笑みを浮かべながらこう言った。

 

「お前達が全力で俺に魔法戦闘で勝利出来たら、今回の件は見逃してやろう。それでどうだ?」

 

『!?』

 

 俺が出したもう一つの条件が余りにも予想外だったのか、香澄と七宝だけでなく、この場にいる全員の誰もが目を見開いていた。

 

 因みに俺の近くにいる修哉は――

 

「あっ、そういうことか……」

 

 周囲には聞こえないよう、納得したみたいに小声で呟いていた。

 

 俺の考えを見抜くとは分かるようになったではないか、我が弟子よ。




原作と違って、リューセーが相手をする流れにしました。

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