再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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ダブルセブン編 下準備

 俺が出した提案に修哉だけでなく、他の面々も止めさせようと口出ししてきたが、そこは敢えて無視させてもらった。

 

 そもそも今回起こした問題を解決しなければならない執行部と風紀委員が、生徒会副会長の俺に裁定を下すよう求めたのだ。後で服部や千代田から文句を言ったところで、責任回避した二人に自分を責める資格は無いと遠回しに言い返させてもらう。それを聞いた執行部の十三束と、風紀委員の北山も完全に押し黙る事となった。

 

 このまま修哉と七宝の試合をさせる流れのように思われたが、流石にすぐ行うのは無理だった。試合をさせるにしても生徒会長と風紀委員長の承認が必要な上に、七宝にもインターバルを置かせなければならない。先程俺に使ったミリオン・エッジの発動媒体を準備する必要もある為に。因みに修哉も全力で動ける(・・・・・)よう身体を慣らす必要があるが、今此処で教える訳にはいかないから内緒にしておく。

 

 勝負の日は明後日にした。その日は土曜日だが、放課後に演習室を予約しておくよう頼んでおくと言った後、この場は一旦解散となった。勿論、演習室に散らばってる紙吹雪の後片付けや、戸締りをちゃんとやった後で。

 

 これは非常にどうでもいいことだが、第一高校には軍の情報員(スパイ)らしき者がいる。司波の知り合いなのかは不明だが、軍務だからと言って学校内の情報を探るのは、個人的にチョッと目障りなのでいい加減止めて欲しい。

 

 一応司波に釘を刺しておこうかと思い、二人だけの話に――

 

「兵藤くん、お兄さまと何を話されるのですか?」

 

「別に二人っきりじゃなくても、今此処で話しても良いよね?」

 

 しようかと思って声を掛けるも、司波妹と光井から物凄く警戒されてるから止めておいた。それにスパイが誰なのかを正確に教えたところで、風間と言う司波の上司に余計警戒されてしまうのがオチだから。

 

 

 

 

 

 

 服部と千代田に事情を説明し、またしても試合をすると聞いて眉間にしわを寄せる中条から試合申請の許可を貰える事が出来た。それらを終えた俺は修哉と、合流した紫苑を連れて学校を後にする。

 

「何で俺が七宝と試合しなきゃいけないんだよ!?」

 

「リューセー君、こればかりは私も納得出来ないわ」

 

 この前あった演説前と同様、緊急会議をする為に喫茶店『AMAGI』にいた。

 

 修哉だけでなく、一通りの事情を聞いた紫苑からも反対されている。明後日に行われる七宝との試合について。

 

「いくら修哉が強くなったからって、二十八家の直系と魔法勝負させるなんて無謀よ」

 

「大丈夫。今回の勝負は魔法だけでなく武器の使用も有りだからさ」

 

「そういう問題じゃない!」

 

 バンッと机を両手で叩く紫苑に俺だけでなく、隣に座ってる修哉も思わずビクッとしてしまった。

 

「大怪我してもおかしくない魔法勝負をさせることに私は反対してるのよ!」

 

 魔法勝負に怪我は付き物であるのは彼女も勿論承知している筈だが、相手が相手だけに不味いと危惧しているようだ。

 

 確かに七宝が使うミリオン・エッジは、紙片の一つ一つが刃と化して、それが無数となって襲われれば大怪我を負ってしまう。場合によっては後遺症になるかもしれないほど、あれは非常に殺傷力が高い魔法だった。紫苑としては、修哉がその強力な魔法の餌食になって大怪我する姿を見たくないから、今すぐ撤回するよう大反対しているのだ。

 

「心配無いよ、紫苑。修哉が七宝の魔法程度(・・)で、傷一つ負うことは一切無いからさ」

 

「え?」

 

「リューセー、それは一体どう言うことだ?」

 

 断言する俺に素っ頓狂な声を出す紫苑とは別に、聞いていた修哉も訳が分からないみたいな感じで問うてくる。

 

「二人が今も手足に着けているバンドは、単なる修行道具と思ってるかもしれないが、それは使用者を守る為の防具でもあるんだ」

 

「え、マジ?」

 

 初めて聞いたと言わんばかりに少々驚いたように、自分が身に着けてるバンドを見る修哉と紫苑。

 

「ああ。既に知っての通りソレは想子(サイオン)を流し込めば重さが軽量化される。だがそれと同時に想子(サイオン)を吸収してるバンドは余剰分を排出させてるが、もしも身の危険を感じた際、二人の身体には不可視の『情報強化』を自動的に施す仕組みになっている」

 

 実際は聖書の神(わたし)能力(ちから)によるもので、吸い取った想子(サイオン)をオーラに変換させて『守りの加護』が発動している。だからもし修哉と紫苑が修行中に銃弾や魔法による攻撃を受けても、聖書の神(わたし)の加護によって簡単に防ぐ事が出来るのだ。流石にそんな真実を言えないから、敢えてこの世界の魔法によるモノだと思わせるしかない。司波が俺に精霊の眼(エレメンタル・サイト)を封印される前から調べていたかもしれないが、聖書の神(わたし)能力(ちから)で施された道具については判明出来ないから大丈夫だ。

 

 まぁとにかく、七宝の切り札であるミリオン・エッジが修哉に直撃したところで、聖書の神(わたし)の『守りの加護』が簡単に防ぐ事が出来るから然して問題無い。

 

「だけどバンドによる情報強化がなくても、今の修哉なら七宝を余裕で圧勝できる」

 

「………リューセー君が嘘を吐いてないのは分かってるけど、やっぱりいくら修哉でも二十八家が相手じゃ――」

 

「あのなぁ紫苑、君はその肩書きに怯えすぎなんだよ」

 

 俺が問題無いと言っても不安視する紫苑の発言に少しばかり指摘する事にした。

 

 確かに二十八家は魔法師の中で優秀な家系の集まりだから、それとは一切関わりの無い一般人からすれば絶対勝てないと思ってしまうのは仕方のない事だろう。加えて権力者としての面もあるから、下手に敵対行為をすれば自分だけでなく家族にも危険が及ぶかもしれない。令嬢の紫苑はそう考えているから、修哉を七宝と戦わせることに反対している。

 

「七宝琢磨と言う生徒は一人の後輩だ。対して俺達は先輩なんだから、怯える理由なんか全く無いんだよ」

 

 二十八家に対して怯え気味な姿勢を見せる紫苑に、俺は修哉が七宝と試合させる理由を話した。

 

 正直に言うと七宝の言動はかなり目に余る。このまま放置しておくと、いずれ取り返しのつかない事を仕出かすと断言出来てしまう程に。だからそれを事前に防ぐ意味合いも兼ねて、今度の試合で徹底的な敗北を味わわせる必要がある。二十八家や百家でもない一般の家系である修哉に負けたら、七宝のプライドがズタズタになるどころか、場合によっては二度と立ち上がれなくなる恐れがあるかもしれない。例えどんな結果になろうとも、後輩に自分の未熟さを痛感させ、大きな目的を成し遂げる為には強くならなければいけない現実を教えるのが、先輩としての役割だから。

 

「……成程。リューセー君は七宝君の今後を考えていたのね」

 

 理由を聞いた紫苑は、先程までの不安な表情とは打って変わるように段々落ち着いていく。

 

「そうでもしないと、こっちはまた余計な仕事が増えるからな」

 

 七宝が問題行動を起こす度に、職員を除いた各組織が必ずと言っていいほど動く破目になる。今回だって執行部と風紀委員会で起きた問題を、生徒会に委ねられた俺としてはとんだとばっちりだった。

 

 服部や千代田が当てにならないと分かった以上、ここからは俺のやり方で七宝を徹底的に矯正させてもらう。

 

「でも別に七宝の相手は俺じゃなくて、リューセーが再戦すればそれで解決するんじゃないのか?」

 

 説明した紫苑とは別に、次に修哉が別の理由を求めてきた。

 

「七宝がまた俺と試合した後、素直に敗北を認める姿を想像出来るか?」

 

「無理だな」

 

 余裕で勝利する俺と敗北を受け入れられない七宝の姿を思い浮かんだのか、首を横に振りながら即答した。俺より七宝の事を知ってる修哉だからこそ、そう言った想像が出来るだろうと踏んだのだが、まさか即答してしまうのは予想外だったと内緒にしておこう。

 

「だから修哉に任せることにしたんだよ。まぁ他にも理由はある。今回の試合は、バンドを外した修哉の全力を見れる良い機会でもあるからな」

 

「え? バンドを外すって……」

 

「っ! リューセー君、貴方まさか……!」

 

 俺の台詞に紫苑が気付いたようだ。

 

 明後日行う試合の目的は七宝を矯正させるだけでなく、修哉が全力で戦える為の踏み台になってもらう事も含めて、な。

 

 

 

 

 

 

 西暦2096年4月27日

 

 

 

 平日の金曜日だが、昨日起こした騒動の件を知っているのか、一高全体はそれで少々ざわめいていた。

 

 他にもあった。琢磨が休んでいる事で、一年生のフロアでは様々な噂が流れている。

 

 だが、それは二年生のフロアでも似たようなことが起きていた。

 

「兵藤だけでなく、天城と佐伯も休んでいるのか」

 

 昼休みの学食で、達也一行はそこで仲良く昼食を取っていた。

 

 食事を開始して早々、A組の深雪・ほのか・雫からは隆誠が学校を休んでいると話題を振った後、B組の幹比古から修哉と紫苑も休んでいると話した。

 

 一年の琢磨が試合に備えて休む事は大体予想していたが、いつも行動してる二年の隆誠たち三人も休んでいる事に達也は不審の表情になっていく。

 

「明日に行う七宝君との試合の為でしょうか?」

 

「そうかもしれないが、佐伯も一緒なのは腑に落ちないな」

 

 自身の隣に座ってる深雪が言うように、隆誠が明日の試合に備えて修哉を出来るだけ鍛えようと学校を休むのは達也も理解出来るが、そこに紫苑も加わる事で不可解になっていく。

 

 修行のサポートをさせる為だと言っても、正直言って彼女がいたところで何の意味は無い。師匠役の隆誠はともかく、紫苑に一体何の役割を与えているのかが達也には全く分からなかった。

 

「天城くんが相手をするのは師補十八家の七宝琢磨だから、心配で一緒に休んだに決まってるじゃない」

 

「寧ろそれしか考えられないぜ。リューセーとは別に、あの二人は幼馴染だからな。達也だって、もし深雪さんが試合に備えて休む場合、お前も一緒に休むだろう?」

 

「……そうだな」

 

 達也が不可解に思ってるところを、エリカとレオが至極当たり前のように言った事で、否定出来ないどころか一気に氷解していった。

 

「だがそれとは別に、兵藤が天城に七宝の相手をさせる真意が分からない。いくら何でも分が悪過ぎにも程があるんだが」

 

 修哉は幹比古と同じく一科生に転科した他、剣道部でもそれなりの実力者なのも当然知っている。隆誠によって精霊の眼(エレメンタル・サイト)を封じられて今の実力を測れないとは言え、七宝を相手にするのは少々力不足ではないかと達也はそう判断していた。

 

 もし試合中に琢磨がミリオン・エッジを使った瞬間、修哉の敗北は決定するだろう。あの魔法は七宝家の切り札だから、如何に修哉が相当な実力を持っていたとしても対処しきれない筈。自分が扱う分解魔法、もしくは隆誠が見せた魔法を無効化する手段を持っているなら話は別だが、それでも百万の刃と化した群雲を全て防ぐのは流石に無理としか言いようがない。例えミリオン・エッジを展開させないように阻止したところで、七宝はそれを踏まえて戦おうとするから、どっちみち修哉が敗北する結果しか予想出来ないのが現状だった。

 

「おい達也、チョッとばかり修哉のこと甘く見過ぎだろ」

 

「そうよ。不覚を取ったとは言え、天城くんは一応このあたしに一本取ったんだからね」

 

「それは既に聞いたが、一体どう言う内容だったんだ?」

 

 レオとは別に、エリカが苦い思い出みたいに言った事で達也の興味が一気に湧いた。

 

 既に知っての通り、エリカの剣術は達人と呼べるほどの実力者である。加えて印可を持ってレオの師匠でもあるから、隆誠の弟子である修哉に一本取られたのは、後から知った達也達からすれば寝耳に水だった。

 

「あたしがチョッとばかり舐めてたのも敗因の一つなんだけど、天城くんは隆誠くんから教わった返し技を使ってきたのよ。それで負けちゃったわ」

 

「確か『(りゅう)(かん)(げき)』って言うカウンター技だったな。俺も初めて食らった時はマジで効いたぜ」

 

「エリカだけでなく、レオも修哉に負けていたんだね」

 

 師弟揃って隆誠の弟子である修哉に負けていた事に、聞いていた幹比古は苦笑していた。

 

 すると、エリカは突然睨むように幹比古へと視線を向ける。

 

「言っとくけど、あたしはこのバカと違ってちゃんとリベンジしたからね」

 

「よく言うぜ。その後リューセーとの試合で何度もコテンパンに゛っ!?」

 

「アンタはいつも一言余計なのよ!」

 

「エリカちゃん……」

 

 レオが言ってる最中、隣にいるエリカに思いっきり足を踏まれた事で大変痛そうな悲鳴を上げていた。

 

 その直後に二人が口論に発展しそうなところを、美月がどうにか止めようとしている。学食にいる他の生徒達からの視線が突き刺さるも、達也達はいつものことだと思いながら敢えて気にしないでいる。

 

「まぁとにかく天城がエリカに勝つほどの腕前なのは分かった。だがそれでも七宝のミリオン・エッジをどうするかは不明だが」

 

「もしかしたら、兵藤さんが今日その対策を教えてるかも」

 

 雫の台詞に達也だけでなく、口論してるエリカとレオも気になるように反応して振り向いている。

 

「学校を休むほどだから、それだけの時間が必要な修行をしてるんじゃないかな。私はそうとしか考えられない」

 

「何だか雫、兵藤君の行動を読んでるみたいに言ってるね」

 

 断言する親友を見たほのかが少し寂しそうに言っていた。まるで自分の立場を取られたかのような感じで。

 

「だとしても兵藤が天城にミリオン・エッジの対策を教えるとなれば、それはそれで不味いような気がするんだが」

 

 例え人知れない場所でやったとしても、大抵は監視カメラの目がある。もしもその光景が中継されて七宝家が知ってしまえば、かなり大事になってしまうのではないかと達也は少しばかり危惧している。

 

「アイツの事だから、当然それは考慮している筈だ。だがそれでも秘密を約束する協力者がどうしても必要になるな」

 

 そう考える達也は隆誠の協力者と思われる人物を想像する。

 

 隆誠にコネがあるとすれば、九校戦を通じて縁が出来た九島烈が思い浮かぶも即座に却下した。いくら彼と関係を築けたからと言っても、あの老師が子供の我儘同然の理由で協力するとは到底思えない。

 

 もう一つ考えられるのは、自身の師匠である九重八雲。二ヵ月ほど前のチョッとした出来事とは別に、以前隆誠は九重寺を訪れて彼と手合わせしたこともある。出家した世捨て人で、俗世には関わらないことを戒めてるとは言っても、あの住職の性格を考えれば面白そうだと言って協力するかもしれない。神霊(オーフィス)の契約者である隆誠からの頼みであれば猶更断れない、と言う感じで。

 

 他にも考えられそうな協力者を思い浮かんでる中――

 

「だとすれば千葉道場じゃねぇかな。リューセーと修哉は以前あそこに来た事あるし」

 

 すると、レオの当てずっぽうを聞いた途端に達也は考えるのを止めた。

 

「んな訳ないでしょ。もし仮にそうだったら、隆誠くんがあたしに一報入れる筈じゃない」

 

「いや、お前んとこの兄貴の修次さんは、リューセーと手合わせしたがってるから、ひょっとすればそれを条件に千葉道場を貸してるんじゃないかと思ってな」

 

 絶対にあり得ないと強く否定するエリカだが、それでもレオは可能性があるんじゃないかと推測している。

 

 達也もエリカと同じく流石にそれはないと思いながら食事を再開するも、まさか大当たりだったと翌日に判明するのは完全に予想外だった。




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