再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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これでダブルセブンの最終話です。


ダブルセブン編 香澄の転換点

 西暦2096年4月30日

 

 

 

「はい二人とも、ちゃんと来てくれて良かったよ」

 

「「……………」」

 

 七宝の再試合を終えた月曜日の放課後。

 

 前回にやった司波一行の四人(司波妹、光井、幹比古、柴田)と同じように、ジャージに着替えてる俺は陸上部で使用してるグラウンドへ来ていた。今回は俺の付き添いと言う事もあって修哉、そして陸上部の紫苑もいる。

 

 そして対象である七宝と香澄もジャージ姿になっている。ついでに少し離れた所から泉美が見守っているも、そこは敢えて気にしない。

 

 一昨日の土曜には反省文を書いてもらったが、今度は本格的な罰を下す為のランニングをやってもらう。勿論ただ走らせるだけじゃなく重り用のバンドも着けて、な。

 

 今日も生徒会の業務があって大変忙しいが、向こうには優秀な書記がいるから心配する必要は全くない。副会長としての権限も一時的に与えた瞬間、同副会長の司波妹が自分と同じ立場となった事に物凄く張り切っているのは言うまでもない。

 

 それと関係無いが今朝方、A組の教室に行く途中エリカに物凄く絡まれた。何故いきなりそんな事になったのかと疑問視されるかもしれないが、彼女にバレてしまったのだ。金曜日に俺、修哉、紫苑の三人が学校を休んで千葉道場で修行しに行ってた事を。会って早々『何であたしに黙って千葉道場に来てたのよ!?』と怒鳴られて散々な目に遭った。

 

 寿和と修次の二人でエリカに知られないよう秘密にしてくれたけど、偶然目撃したエリカの信者である門下生がポロッと喋った所為で台無しになったのは予想外だった。その密告者はエリカも当然知ってるだろうと思って話したそうだが、余計な真似をしたことに変わりない為、修次に電話で事情を説明ついでにチョッとした厳罰を下して欲しいと頼んである。それは当然彼も了承済みだ。

 

 とまあ、俺の個人的事情は置いとくとしよう。今は目の前にいる七宝と香澄に指示を出さなければならない。

 

「前にも話した通り、これから二人には重りを付けた状態のままランニング十周をやってもらう」

 

「はい」

 

「は~い」

 

 俺の指示に七宝が素直に頷いたのに対し、香澄は大変嫌そうな返事だった。対照的な反応をしていると思いながらも、俺は手足に着ける為のバンドを用意する。

 

「え、コレって……」

 

「リストバンドとフットバンドって、これ本当に重りなんですか?」

 

 バンドを見た事で七宝と香澄がキョトンとした表情で見ていた。司波妹と光井の二人と似た台詞であったが、俺は敢えて気にせず説明する。

 

 確かに初めて見る者からすれば、市販で販売しているリストバンドとフットバンドである為に疑問を抱かれるのは当然の反応と言えよう。

 

「そう言ってらえるのも今の内だよ。じゃあ先ずは七宝から着けてみな」

 

 俺がバンドセットを渡すと、七宝は言われたとおりに両腕と両脚の全てを着けた瞬間――

 

「うわっ!」

 

「え?」

 

 七宝が突然ガクンと体勢を崩し、まるで地面に引き寄せられるように両手と両膝を地面に付けた。突然の光景に香澄も目を丸くしている。

 

「ど、どうしたのさ七宝君!?」

 

「こ、このバンド、本当に重い……!」

 

 心配そうに訊ねる香澄に、七宝は余りの重さに驚く一方で立ち上がるのに少々辛そうな表情だった。

 

「兵藤先輩、このバンドは一体……?」

 

 七宝からの問いに俺はこう答えた。装着した瞬間に四つのバンドが連動して、身体全体に加重魔法が発動する仕組みになっていると。

 

 実はCADだと判明(かんちがい)した二人に、つくづく司波妹達と同じ反応をしているなぁと俺は内心苦笑している。

 

 因みに七宝は入手先について尋ねられたが、そのバンドは市販のバンドを購入して聖書の神(わたし)能力(ちから)で自作した物とは言えないから誤魔化すしかなかった。

 

「さて香澄、君も着けてもらうよ」

 

「うう……」

 

 辛そうにしてる七宝を見てか、香澄はバンドを着けるのを躊躇っている。確かに女子からしたら辛いかもしれないが、罰は罰なので着けてもらう。

 

「あのぅ兵藤先輩、ランニングはちゃんとやるからバンドは無しで――」

 

「却下だ」

 

 決められた罰を緩めようなんてことは絶対にしない。と言うかいい加減に腹を括れ。

 

「言っておくが、副会長の司波さんはちゃんとやり切ったぞ」

 

「え? 深雪先輩も?」

 

「ああ。因みに君が持ってるそのバンドは彼女が使っていたモノで――」

 

「それは本当ですか!?」

 

 キョトンとしながら聞いていた香澄に教えてる中、見守っていた筈の泉美が突然やってきた。

 

 全く予定外の人物であった為に俺や香澄だけでなく、七宝、修哉、紫苑も彼女の登場に少々困惑している。

 

「香澄ちゃんが持ってるバンドは、本当に深雪先輩がお使いになられていたのですか!?」

 

「あ、ああ。間違いなく彼女が使っていた色のやつだよ」

 

 司波妹が使っていたバンドは黒色だった。自分の髪、もしくは兄が好きな色を意識したのかは知らないが、迷いなく黒を選んでいたのは今でも憶えている。

 

 当時の事を思い出している中、泉美は香澄が持ってるバンドをひったくっていた。

 

「ちょ、何してるの泉美!?」

 

「兵藤先輩! 私もこのバンドを使ってランニングに参加しても宜しいでしょうか!?」

 

「そ、それは別に構わないが……」

 

 普通なら関係者以外お断りしたいところだが、自ら参加したいと強く希望してる泉美の勢いにドン引きしながらも一応許可した。と言うより、ダメだと言ったところで無理矢理参加するのが目に見えていたから。

 

 俺の返答を聞いた泉美は『すぐに着替えてきます!』と言って、物凄い速さで一旦グラウンドから立ち去った。あの様子からして数分もしない内に戻ってくるだろう。

 

 取り敢えず司波に連絡しておくとしよう。泉美がランニングに自主参加してる他、前に妹が使っていたバンドを使いたがってる事も含めて、な。

 

「バンドを取られたって事は、ボクはこのまま無しで走れる――」

 

「訳ないだろう。予備のバンドはまだあるからな、香澄」

 

 泉美のお陰で楽が出来ると思っていた香澄だったが、俺が空かさず別のバンドを見せた途端に落胆するのであった。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……や、やっぱりキツいよコレ……!」

 

 泉美がジャージに着替えてグラウンドへ再び戻ってきたことでランニングが開始された。

 

 三人の様子は以下の通りである。

 

 琢磨は最初辛そうにしていたが、重さに段々慣れてきたのかのように一定のペースで走っている。

 

 泉美は走って早々参り気味だったが、バンドから伝わる深雪の愛――本人が勝手にそう思ってるだけ――によって何とか頑張っている。

 

 最後に香澄が二人と違って、バンドの重さによってバテる寸前になっている。

 

 香澄は泉美より運動神経が高い筈なのだが、重りを着けて走るのが初めてである為に苦戦していた。だと言うのに、七宝と泉美は何故か自分と違ってどうにか走れている。男子の七宝とは別に、女子の重さは双子に見合った重さに設定されてると隆誠は言っていた。なのに自分と泉美では一体何が違うのかと疑問を抱きながらも、何とか頑張って走り続けるも足が止まってしまう。

 

「はぁっ、はぁっ……!」

 

「大分参ってるみたいね」

 

「!?」

 

 すると、誰かが自分に声を掛けてきた為に香澄は反応して振り向く。

 

 目の前にいる女子生徒は隆誠と同じ二年の佐伯紫苑で、ランニング中の三人と同様にジャージ姿になっている。

 

「そのバンドは相応の重さに設定されてるけど、想子(サイオン)を流し込めばかなり軽くなるわよ。今走ってる二人はもうそれに気付いてるわ」

 

「え!?」

 

 初めて知ったと言わんばかりに驚いた表情になる香澄。

 

 大変そうな表情をしていた筈の七宝と泉美は最初と違って、今は問題無く走り続けている。紫苑が言ったように想子(サイオン)をバンドに流して負担を軽くしているのだろう。

 

 それを見た香澄も紫苑の言う通り実践した結果、先程まで重かった筈のバンドが段々軽くなっていく。

 

「こんな方法があるなら、何で兵藤先輩は教えてくれなかったんですか!?」

 

「それじゃ罰にならないからよ。もし教えたら貴女、真っ先に軽くしようとしたでしょ?」

 

「うっ……」

 

 紫苑の指摘に香澄は反論出来なかった。確かにこんな嫌な罰を早く終わらせたかったから、こんな裏技を知っていればすぐにやっていただろう。

 

「それと余り軽くしない方が良いわよ。ただでさえ走ってて疲労が溜まってるのに、そんな状態で想子(サイオン)を消費し続けたら本当に倒れちゃうから」

 

「あっ! い、言われてみれば……」

 

 軽くしたい余りに想子(サイオン)を使い過ぎた所為で、今以上の疲労感が香澄の身体に襲い掛かった。思わず倒れそうになってしまいそうになるも、紫苑が咄嗟に抱えようとする。

 

「貴女はチョッと休憩した方が良さそうね」

 

「で、でもそれだと罰にならないんじゃ……」

 

「そんな状態で無理矢理走らせるほどリューセー君は鬼じゃないわよ」

 

 香澄を支えてる紫苑が隆誠に向かって手を上げると、向こうは了承したかのようにコクリと頷いていた。

 

「ほら、許可が出たから行くわよ」

 

「は、はい……」

 

 それを確認した後、紫苑はコースから外れた場所に香澄を座らせてから飲み物を用意するのを見た香澄は欲しがろうとする。

 

「み、水をください……」

 

「ダメよ。先ずは呼吸を整えなさい。息切れした状態で一気に水を飲むと(むせ)ちゃうから」 

 

「分かりました……すぅ~……はぁ~……」

 

 紫苑の言う通りにしようと、香澄は息切れした身体を落ち着かせる為に一旦深呼吸をする。それを何度も繰り返す事で身体が何とか落ち着き始めて、息切れしていた呼吸も静まっていく。

 

 身体が少々安定したと分かった紫苑は、持っている飲み物を渡そうとする。

 

「焦らなくていいから、ゆっくり飲みなさい」

 

(この先輩(ひと)、ボクが七草と分かってても普通に話してる)

 

 言われた通り水を飲みながら香澄は不思議そうに紫苑を見ていた。自分を一人の後輩として接している事に。

 

 二十八家や百家でもない一般人の殆どは、相手が七草家の令嬢だと分かった途端に必ず(へりくだ)った態度を取る。中学でも年下や同級生だけでなく、自分より年上の先輩も同様に。

 

 高校でも似たような事になるだろうと思っていたが、目の前にいる紫苑は全く違っていた。初めて会った先輩なのに、何だか自分の大好きな姉と似たような雰囲気がする。

 

 親身に接してくれる紫苑の姿を見た事に香澄はランニングの期間が過ぎても、彼女と出会えば必ず話しかけることになるのはまた別の話だった。




次回はスティープルチェース編、もしくは番外編として千葉道場での修行を書くか考え中です。

感想お待ちしています。



余談ですが、活動報告に司波隆誠の短いIF話を掲載しています。
此方を参照下さい
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