再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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気分転換で調子が良くなったので、連続投稿しました。

今回は隆誠が参加した『佐渡侵攻事件』の内容です。


もしも隆誠が誰かの家族だったら 一条家②

 2092年8月12日

 

 

 沖縄で大亜連合が侵攻されている中、新ソ連が佐渡に攻め入ったと言う緊急情報が入った。そこにある魔法研究施設も狙われ、研究員の半数以上が命を落とした事も含めて。

 

 これは当然、北陸を守護している十師族『一条家』の耳に入っており、当主である一条剛毅は佐渡を奪回する為の行動に出る。

 

 他国からの侵攻は国防軍が対処するのだが、現在は沖縄で大亜連合の海戦で意識を向けている為、人手が足りない状況に陥っていた。故に剛毅は佐渡侵攻の対応をしていた現地の最高指揮官――(さか)()大佐に、新潟・北陸へ連隊規模の部隊を回してもらえるよう依頼した。酒井大佐としても新ソ連の侵攻を阻止したい為、剛毅の要請に応え、部隊を回す事を承認する。

 

 剛毅は酒井大佐に感謝しながら、自身を中心に組織した義勇軍で防衛線に進駐しようとする。

 

 その中には剛毅の息子、並びに次期当主である将輝も参加。更にもう一人、『爆裂』や現代魔法を使えない筈の隆誠も参加しようと申請する。これには剛毅だけでなく、将輝も最初は大反対だった。魔法を使えない隆誠では足手纏いである事を理由に。

 

 だが、それでも隆誠は行くと言った。弟の将輝が参加しておいて、兄である自分は戦いもせずに見守る事は出来ないと、剛毅に力強く言い放った。

 

 自分が知っている優しい息子とは思えない隆誠の雰囲気に、剛毅は思わず呑まれそうになった。まるで自分より遥かに強い存在ではないかと錯覚する程に。一緒にいる将輝も含めて。

 

 圧倒的とも言える威圧感に耐えつつ、表情(かお)に出さずも、一条家当主として参加する事を許可する。その代わり、次期当主である将輝を守る為の護衛に専念して欲しいとの条件を付けて。

 

 そして剛毅は二人の息子を共にし、組織した義勇軍を引き連れて佐渡奪還をしようと動き出した。

 

 

 

 

 

 

 一条家の秘術『爆裂』を以って、剛毅は息子の将輝と共に多くの敵兵を葬っていた。

 

 それとは別に――

 

「遅い」

 

『ギャァァァアアアアア!!!』

 

 刀を手にした隆誠が、神速とも呼べるスピードを出しながら新ソ連の敵兵達を葬っていた。余りの速さである為、敵兵達は隆誠に斬られた事にも気付かないまま絶命しているのもいる。

 

 国防軍や義勇軍の中には名門の剣士もいるが、隆誠のスピードを誰一人捉える事が出来ないでいる。更には自分とは比べ物にならない程の剣を見せられてる事で、逆に恥じてしまうのが何人かいた。

 

(思った通り、この世界にいる魔法師の実力は大した事ないな)

 

 隆誠は敵兵を葬りながらも、頭の中では自分がいた時の世界の敵とは比べ物にならないほど弱いと改めて認識していた。

 

 嘗て聖書の神であり、人間の兵藤隆誠として転生した時間は、超常的存在と戦う日々を送っていた。普通の人間とは比べ物にならない存在と戦い続けた隆誠にとって、今いるこの世界の人間の魔法師は殆ど雑兵(ザコ)に過ぎなかった。

 

 今回の戦闘では、相手が人間であっても油断しないよう、それなりの実力を披露していた。再び転生した事で実力は更に低下したが、家族や周囲に気付かれないよう神の能力(ちから)による鍛錬をした事で、最低限の実力は取り戻している。前の世界で超越者となった(イッセー)とは比べ物にならないほど弱いが。

 

 だがそれでも、この世界の人間からすれば隆誠の実力は世界最強と呼べるだろう。例え全ての十師族が束になって挑んでも、誰もが本気となった隆誠に傷を負わせるどころか、埃を付ける事すら無理である。それだけの実力差と言う証拠だった。尤も、この世界で最強の存在になる気は微塵も無いどころか興味すら無い。隆誠は平穏の日常を過ごしたいから。

 

 因みに隆誠は今の戦闘で、単に超スピードを使いながら居合による鋭い斬撃を繰り出してる他、遠当てを応用した刀による飛ぶ斬撃を使っているだけで、オーラや神の能力(ちから)を一切使ってない。自身の身体能力だけで敵兵を葬っているだけだ。敢えて補足するなら、刀身が折れないよう薄いオーラを纏わせているだけだった。油断はしないように実力を出してるとは言っても、全力の半分以下でしかやっていない。

 

 この世界の魔法師達からすれば、隆誠のやってる事は超人も同然であった。

 

「隆誠にこれ程の実力があったのか……!」

 

「嘘だろ!? 兄貴があんなに強いなんて……!」

 

 父親の剛毅、弟の将輝ですら、隆誠の剣技に驚愕するばかりである。自分達が使う『爆裂』とは比べ物にならない程の速さで葬っているのだから、そうなるのは仕方の無い事だった。

 

 義勇軍の中で一番に敵兵を葬っているのは、恐らく隆誠かもしれないと剛毅は思った。武装一体型のCADでない単なる刀一本だけで全て倒している。自己加速魔法を一切使わないで神速と呼べるスピードを出してる隆誠の姿を、『剣の魔法師』と称されてる千葉家が知れば絶対に驚くであろうと思いながら。

 

 そして粗方片付いた事に、義勇軍は安堵の息を漏らしていた。

 

「ウォォォオオオオオオオ!」

 

 すると、まだ生き残っていた敵兵の一人が破れかぶれのように突進しながら、ハイパワーアサルトライフルを乱射しようとする。

 

「隆誠!」

 

「兄貴ぃ!」

 

 その近くにいたのが隆誠であり、剛毅と将輝はすぐに援護しようと『爆裂』を使おうとするも一足遅かった。既にライフルが隆誠に向けて撃っていたのだから。

 

 だが、撃たれようとしてる当人は大して気にしてないように振り向きながら、ハイパワーアサルトライフルの弾丸を刀を持ってない片手で全て防ぎ掴み取っている。

 

『……………』

 

 義勇軍だけでなく、敵兵すらも今の光景が信じられないように動きが止まっていた。

 

 ハイパワーアサルトライフルは、対魔法師用として、魔法障壁を破る為に弾薬の威力を高めた徹甲弾を発射する自動小銃である。本来であれば、魔法障壁を張っていない隆誠は身体を撃ち抜かれて絶命されている筈なのだ。故に、魔法を一切使っていない隆誠が片手で全て防いだのは普通にあり得ない。

 

 完全に注目の的になっている隆誠は、無言で片手を前に出し、開いた瞬間に先程まで撃たれた弾丸がパラパラと落ちていく。

 

『バ、バケモノ……!』

 

 それが決定打となったように、敵兵はロシア語と思われる言葉で、隆誠を恐ろしい存在であるかのように言い放った。

 

『罪の無い民間人を平然と殺してる貴様等に言われたくない』

 

 人外扱いされた事に気分を害した隆誠はロシア語で言い返した瞬間、超スピードによって消える。

 

 一秒も経たない内に、まるで通り過ぎたかのように敵兵の背後に姿を現す。鞘に納めた筈の刀を抜いた状態で。

 

『死にたくなければ、そのまま微動だにしない事だ』

 

『! ふざけ――』

 

 再度ロシア語を使って警告するも、敵兵は激昂して身体を動かした瞬間、血を噴出しながら全身バラバラにとなって地面に転がった。当然、もう既に死んでいる。

 

 隆誠が使ったのは嘗て木場祐斗に教えた技――(しゅん)(れん)(ざん)。超スピードを使うと同時に斬撃を繰り出す最速技の一つ。

 

 彼としては本来人間を殺したくないのだが、義勇軍の指揮官である父親の剛毅、そして弟の将輝が覚悟を以って相手を殺している。それを自分だけ不殺を貫くのは意に反すると、元聖書の神である隆誠は人間を殺す覚悟を敢えて背負うことにした。家族や国民を守ると言う誓いを立てて。

 

 余りの一瞬の出来事であった為か、剛毅や将輝は完全に棒立ちとなっていた。息子、並びに兄の実力が途轍もないものであったと改めて認識している。

 

 他にも、義勇軍も同然の事をしていたが、一部は嘔吐している者がいた。一条親子が『爆裂』によって敵兵を爆散死するところを既に見慣れたとは言え、剣によって人間の身体がバラバラに斬殺するところを見るのは初めてであったから。

 

 これによって、今回の戦いで一条隆誠の評価が一気に激変する他、一部からは畏怖の意味を込めて『(けん)()』と言う異名で呼ばれる事となった。

 

 後は別の所で防戦してる部隊を援護しに行けば佐渡の奪還は完了するかと思いきや――

 

『大変です、一条殿!』

 

「どうした?」

 

 敵の動きを探っていた斥候からの連絡に、剛毅は只ならぬ事態だと察しながら訊ねた。その通信は隆誠や将輝だけでなく、他の義勇軍にも届いている。

 

『国防軍の酒井大佐より、新ソ連が艦隊を集結させて、佐渡に向かっているとの情報が入りました!』

 

「何だと!?」

 

 奪還がもうじき終わるかと思いきや、新ソ連が新たに兵力を投入してくることに、剛毅達は驚愕を露わにする。

 

(どうやら連中は、何が何でもこの佐渡を占領したいようだな)

 

 一緒に聞いていた隆誠は相手側の状況を推察した。

 

 新ソ連が艦隊を集結させていると言う事は、何らかの目的があると言う事になる。

 

 国防軍は、廃坑跡を利用したサイオンの性質を解明する為の実験施設を奪う為ではないかと推測していた。

 

 それとは別に、一方的に侵攻しておいて敗退すれば新ソ連の面目が丸潰れになる為、向こうの指揮官が意固地になってる可能性もある。隆誠からすれば、自分勝手極まりない馬鹿げた理由で侵攻してくる新ソ連に辟易してるが。

 

「不味いぞ、親父!」

 

「むぅ……!」

 

 急な情報であった為、焦っている将輝は指揮官である剛毅に向かって問う。今は一条家当主であるから、将輝は彼を当主として接さなければならないが、事態が事態である為にそれが抜けていた。指摘しなければならない剛毅も、今も必死にどう迎撃しようかと考えている為、そんなのを気にしてる余裕などなかった。

 

 先程まで敵部隊を殲滅した為、此処にいる義勇軍の多くは疲弊している。特に一条親子は敵兵を葬る為に『爆裂』を数え切れないほど使用した為、艦隊を迎撃する為の体力が消耗している。ある程度休めば何とか戦えるが、その間に艦隊が迫っているから、とてもそんな暇など無い。

 

 だが、此処には一人だけ例外がいた。

 

(仕方ない。問い詰められるのを覚悟でやるか)

 

 浮足立ってる義勇軍の中で、隆誠だけは冷静だった。この状況を打開するには、自身が持つ神の能力(ちから)を使って殲滅するしかないと。

 

 本当なら使いたくはないのだが、それを躊躇っていれば、新たに佐渡へ侵攻してくる新ソ連の艦隊によって、再び奪われる事になってしまう。更には多くの民間人達が命を落としてしまい、佐渡どころか新潟県その物が新ソ連に占領されてしまうだろう。

 

 此処で連中の横暴を見逃してしまえば、助ける手段を持ってる筈の自分を許せなくなってしまう。隆誠はそう考え、そして決断した。

 

「父さん、俺が行って艦隊を撃沈してきます」

 

「は? 隆誠、いきなり何を……なぁっ!?」

 

『!?』

 

 剛毅が訝りながら振り向くと、隆誠がCADを使ってないにも拘わらず、地面を付いてる両足が離れるように身体を浮かせていた。

 

 彼以外にも、将輝や他の義勇軍も目が飛び出るほど驚愕している。何故現代魔法を使えない筈の隆誠がCAD無しで、加重系魔法の技術的三大難問の一つとして扱われ、重力制御により継続して任意に空中移動することが出来る飛行魔法を使っているのかと。

 

「あ、兄貴、それって……飛行魔法、なのか?」

 

「まぁそんなところだ」

 

 前の世界で利用していた『飛翔術』が、魔法と似て非なる物であっても、この世界では魔法と呼べるものである。故に隆誠は否定しなかった。

 

 多くの魔法師達が必死に研究している飛行魔法を、『一条家の恥』や『無能魔法師』と蔑称されてる筈の一条家長男が使っている。今まで隆誠を蔑んでいた魔法師達が知れば絶叫する事は間違いないだろう。

 

 転移術を使う手段もあったが、軍や他の魔法師達が知れば非常に厄介なことになると思い、隆誠は敢えて『飛翔術』を披露することにした。

 

「それじゃあ父さん、すぐに片付けてきます」

 

「ちょ、チョッと待て隆誠、私はまだ……ば、バカな!」

 

『!!??』

 

 剛毅が引き留めようとするも、隆誠が途端に全身から想子(サイオン)らしきモノを放出した直後、凄まじいスピードで新ソ連の艦隊がいる場所へ向かった。

 

 またしてもあり得ない光景を目にした事で、流石の将輝達も再び目が飛び出るほど仰天したのは言うまでもない。

 

 因みに、隆誠が猛スピードで飛行してるのを知った国防軍や酒井大佐も、剛毅達と同様の反応を示していた事を捕捉しておく。

 

 

 

 

 

 

「アレか!」

 

 飛翔術を使って目的地にたどり着いた俺――一条隆誠は、新ソ連の艦隊を発見した。

 

 既に敵艦隊は日本の領海内まで侵攻しており、佐渡に辿り着くのもあと僅かと言ったところだ。

 

 オーラを探ってみると、敵艦隊には多くの敵兵と思われる沢山の反応も感じる。それだけ新ソ連が佐渡を占領しようと本気になってる、と言う事か。

 

 だが生憎と、そんな愚かな事を俺――いや、聖書の神(わたし)は決して許さない。このまま撤退してくれれば見逃していたが、侵攻するのであれば消えてもらおう。

 

 そう考えた俺は急遽降下し、海面ギリギリのところで停止して浮遊する。新ソ連の艦隊も既に飛翔術で移動してる俺の存在に気付いている筈だが、戸惑いはしても止まる事はしないだろう。

 

 今回の戦いで人間を殺めている俺は、もう今更不殺を貫く気など無い。愛する家族を守る為、封印していた聖書の神(わたし)能力(ちから)を解放する!

 

 その決意と共に、俺は胸の前で両手の五指の指先同士を合わせる。

 

「ぬぅぅん……!」

 

 神の能力(ちから)を使うオーラを解放した直後、両手の中から極限にまで凝縮された光の塊が出てきた。

 

 この技――『終末光弾』は、前の世界にいた旧魔王派――クルゼレイ・アスモデウスを葬った時に初めて使った技だ。『終末の光』を極限に凝縮されたものであり、人間が触れれば一瞬で消滅してしまう。この世界で言えば分解魔法と似たような物だ。

 

 威力に関しては以前と違って格段に落ちてるが、目の前の艦隊を簡単に消し飛ばす程度は可能だ。それでも周囲に被害が及ばないよう、ある程度加減しておく必要はあるが。

 

 さて、これを見ても新ソ連の艦隊は退く気はないようだ。それどころか、俺に向かって艦砲射撃をしようと、砲身を此方へ向けている。

 

新ソ連(おろかもの)は消えよ!」

 

 凝縮された終末光弾を放つと、それは新ソ連の艦隊に向かって高速で前進していく。その一隻に触れる寸前、維持する限界を超えたのか、光弾は凄まじい光が発すると同時に爆発と爆風も発生。それによって俺の前方は純白な光によって埋め尽くされた。

 

 当然、この光は佐渡にいる者達だけでなく、北陸周囲にも目にしてるだろう。更には遠くから佐渡侵攻の戦いを見ている全世界からも。

 

 そして光が消えた後、先程まであった筈の新ソ連の艦隊がいなかった。まるで何事も無かったかのように消えている。

 

 後に分かった事なのだが、『佐渡侵攻事件』を起こした新ソ連は今回の件に関して関与を否定していた。それどころか、『十三使徒』以外の戦略級魔法師を日本は秘匿していたと抗議すると言う、棚上げ同然の行為を行っていた事に、一条家を含めた国防軍は多いに呆れさせるのであった。




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