再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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 まだ入学編やってるのかよと突っ込まれると思いますが、思った以上に原作が長いので中々終われません。

 九校戦編まではもう少し先になります。


入学編 勝負

「はぁっ、はぁっ……! 図書館から出れさえすれば――」

 

「これはこれは壬生先輩、お久しぶり。お早いお着きでしたね」

 

「!!!」

 

 後ろを見ながら廊下を走り、階段を駆け下りながら壬生が呟いているのところを俺が繋げた瞬間、彼女は即座に足を止めた。

 

「兵藤君、どうして……!?」

 

 さっきまで特別閲覧室にいた筈の俺が、いつの間にか一階出入り口前にいる事が信じられないようだ。

 

「そんな事どうでもいいでしょう。突然ですが壬生先輩、俺と勝負しませんか?」

 

「………は?」

 

 提案を聞いて困惑している中、俺はテロリストが武器として使っていたスタンバトンの一本を放り投げた。それは彼女の手前で止まり、すぐに拾える状態となっている。

 

 対して俺も既にもう一本のスタンバトンを片手に持っており、先端を壬生に向けながら言った。

 

「俺は貴女お得意の剣で勝負したい、と言ってるんですよ」

 

「……どう言うつもり? そんな事をして何の意味があるって言うの?」

 

「単なる個人的な興味です。貴女が一昨年の全国中学女子剣道大会で準優勝したって前に修哉から聞きましてね。どれほどの実力なのかを知りたいんですよ」

 

「っ!」

 

 修哉と聞いた瞬間に壬生の表情が変わった。

 

「前から気になってたんですけど、壬生先輩って修哉の事になると面白いほど反応しますね。もしかしてアイツに片想い中ですか?」

 

「そんなの君に関係無いわ!」

 

 少し揶揄するように言うと、今度は激高して答える気はないと言い返した。

 

 まぁ確かに今は関係の無い話だな。それにそうであっても当人同士の問題だし。

 

「失礼。確かに野暮でしたね。それはそうと、俺との勝負を受けてくれませんか?」

 

「あたしが素直に応じると思ってるの?」

 

「応じるも何も、どの道貴女の退路は既に断たれています。俺の後ろをご覧下さい」

 

「? ……っ!」

 

 逃げられないと悟らせる為に、自身の後ろにある出入り口を見るよう促された壬生は目を見開いた。

 

 その直後、出入り口の扉が突然開いて誰かが入って来ようとしている。

 

「これは……!」

 

「え? どうして兵藤君と、壬生先輩が……?」

 

「何これ? 一体どう言う状況なの?」

 

 図書館に入って来たのは司波兄妹と赤毛の子の三人だった。

 

 俺と壬生が相対し、その周囲にテロリストと学生が気絶し倒れている事に全く状況が掴めてない様子だ。

 

「兵藤、ここで一体何が起きていたんだ? 出来れば状況を説明してもらいたいんだが」

 

「後でする。今は壬生先輩と勝負の交渉中なんでな」

 

「交渉?」

 

 状況が掴めてない司波が尋ねてくるも、俺は二言で済ませて再び壬生に話しかける。

 

「と言う訳でご理解頂けましたか、壬生先輩? もし俺と勝負せず逃げようとしたところで、後ろにいる司波達が貴女を即座に捕縛します」

 

「くっ……!」

 

「とは言え、これほど一方的な状況に追い込ませたら流石に気の毒なので……ここは条件を付け加えます。もし俺との勝負に勝てば、貴女をこの場から逃がします。勿論、後ろにいる司波達にも一切手は出させません」

 

『!?』

 

 条件を変更された事に壬生だけでなく、後ろで聞いている司波達も驚きの声を上げた。

 

 これは流石に納得行かないと司波妹が抗議してくる。

 

「兵藤君、こんな時に何をふざけた事を言ってるんですか」

 

「ふざけていない、大真面目だ」

 

「ですから――」

 

「じゃあ逆に訊くけど司波妹。もし追い詰められた壬生先輩が破れかぶれになって、お兄さんの身が危険になったらどうする気だ?」

 

「許しません。どんな理由であれ、お兄様に害する者は誰であろうと地獄の底から後悔させます」

 

 俺が逆に問い返した途端、司波妹はさっきまでと別人のように表情が変わり、殺気混じりな容赦のない返答をしてきた。

 

 余りの変貌振りに赤毛の子は若干引き気味になり、兄の司波は大して慌てる事無く軽く宥めようとしている。

 

 今までやり取りを見てもしやと思っていたが、やはり司波妹は相当なブラコンのようだ。これまで俺が司波に誤解を招く発言をした際、真っ先に反応していたのがあの妹だった。

 

 そう考え始めたのは、俺が司波と赤毛の子に誤解を招く発言をした時からである。まるで心から愛してる男の浮気を問い詰める嫉妬深い女のように見えた。とても実の兄妹とは思えないやり取りだったと。

 

 一応確認の意味も込めて、壬生が司波に襲い掛かった場合の質問をすれば、あのように変貌していた。司波の実力を考えれば、例え壬生が襲い掛かったところで難なく対処出来ると思う。だが妹ついさっきアレな発言をしたから、司波が対処する前に手を出すのが容易に想像出来る。

 

 この兄妹は色々な意味で訳ありのようだと思いながらも、取り敢えず壬生の方へ意識を向ける事にした。

 

「とまあ、貴女が俺との勝負を受けずに無理して逃げようとすれば、出入り口前に立ち塞がってる司波達が絶対黙ってないって事です」

 

「……………」

 

 俺が逃げる選択肢を悉く潰し、勝負を受けざるを得ないよう誘導されてる事に壬生は気付いているようだ。と言うより、これで気付かない方が可笑しいんだが。

 

 そして彼女は瞑目しながら嘆息した後、地面に落ちているスタンバトンを拾って持ち構えた。

 

「良いわ。この状況ではもうどうしようもないもの。その代わり、あたしが勝ったら約束は守って」

 

「勿論」

 

 勝てればの話だが、と俺は内心付け加える。

 

 得物を使って戦うのは久しぶりだ。この世界に来て一通りの練習をしてるとは言え、力加減を誤るかどうかが少しばかり不安である。

 

 負けはしないと言っても、無様な姿を見せないようにしないといけない。前の世界で剣の指導をした(イッセー)や祐斗達には非常に申し訳が立たないので。

 

「聞いた通りだ。壬生先輩が勝ったら一切手を出すなよ?」

 

 振り向きながら司波に警告すると、向こうも諦めたように嘆息していた。

 

「……良いだろう。だがその代わり見張らせてもらうぞ。『風紀委員』の俺が見逃したなんて、後で『渡辺委員長』に知られたら大目玉を食らうからな」

 

「どうぞご自由に」

 

 抜け目がない奴だ。俺の実力を見定める為に風紀委員と摩利を出しにするとは。

 

 因みに赤毛の子が摩利の名前が出た事に少しばかり不快そうな表情をしていたが、それはどうでも良いとしておく。

 

「深雪、エリカ。お前達も手を出さないように」

 

「お兄様がそう仰るのでしたら」

 

「良いわよー。あたしもこの勝負にチョッとばかり興味あるから」

 

 司波が同行してる妹と赤毛の子――エリカに念を押すと、二人もすぐに了承して見守ろうとする。

 

 突然の観客(ギャラリー)が付いてしまったが、俺にとってはどうでもいい事なので放っておく。

 

「さて、それじゃあ壬生先輩、始めましょうか」

 

「……後悔しないでよ」

 

 後悔、ねぇ。生憎そんなの()っくの()うにしてる。特別閲覧室で再び相見(あいまみ)え、密かに能力(ちから)を使って調べた結果、壬生が既に洗脳されていると判明した時点で後悔しているのだから。

 

 どんな違和感があっても、襲撃が起こるまで修哉の先輩だからという理由でまともに調べようしなかった。その時まで自分の迂闊さを呪う気分になったのは、この世界に転生して初めてだ。もし気付いていれば俺の方で洗脳を解き、彼女がこんな愚かな行為に走る事はなかっただろう。

 

 だがそれはもう後の祭りだ。なので此処は俺なりのけじめを付ける。でなければ今も壬生を心配してる修哉に申し訳が立たない。

 

「はぁぁっ!」

 

 俺が決意した直後、諸手中段の構えを取っていた壬生が動き出した。

 

 早く決着を付けようと思ってるのか、俺が持ってる武器を持ってる手首目掛けて小手を仕掛けようとしている。

 

 バレバレだと既に見抜いてる俺は、向こうの攻撃に慌てる事無く、動かないまま自身が持ってるスタンバトンで軽く振り払う。

 

「くっ!」

 

 先手を防がれた事に壬生が一旦引いて距離を取り、再び攻撃を仕掛けてくる。

 

 今度はさっきと違って連続攻撃だ。

 

 面、面、小手、胴、小手、面、胴、そして突き。

 

 壬生の流麗如き放たれる攻撃を俺は全て簡単に防いでいる。さっきと同様一歩も動かないまま。

 

 何でもないように思えるが、実は内心結構驚いていた。修哉から聞いた通り、彼女の腕は見事なものだ。全国中学女子剣道大会準優勝というのも納得出来る。

 

 だがそれと同時に残念だった。もしも洗脳なんてされず、ただの純粋な剣道勝負であれば楽しむ事が出来たのだから。

 

 俺はひたすら攻撃を防ぎながらも、雑念が入り混じっている彼女の剣技を内心気の毒に思っている。

 

「す、凄い……!」

 

「嘘でしょ!? 一歩たりとも動かずに全部防ぐなんてあり得ないわよ……!」

 

「完全に壬生先輩の攻撃を見切ってるな。いや、それどころか勝負にすらなっていない」

 

 観客側である司波妹とエリカは信じられないと言わんばかりに愕然としており、二人と違って冷静に見ている司波は既に察したように言っていた。

 

「これなら……!」

 

 壬生は再び距離を取り、さっき特別閲覧室で使ったアンティナイトでキャスト・ジャミングを発動させていた。俺が攻撃をああも簡単に防いでいるのは魔法の力だと勘違いしたんだろう。

 

 因みにその波動は観客側にも影響を及ぼしている。司波は妹を守ろうと立ちはだかり、エリカは少々不快そうな表情だ。あの様子から見て、それほど大した問題じゃないと判断する。

 

「壬生先輩、一体何の真似ですか?」

 

 そしてキャスト・ジャミングの波動を直撃してる俺だが、何事も無いように平然としている。知っての通り、俺にそんな物は全く効かないので。

 

「俺は剣で勝負したい、と言いましたよね。何故そんな事をするんです?」

 

「き、君、コレが効かなっ!?」

 

『!?』

 

 壬生が言ってる最中、俺は超スピードを使い一瞬で間合いに入って彼女の首筋にスタンバトンの先端をピトッと当てた。

 

 驚いているのは壬生だけでなく、観客の司波達も同様だ。

 

「次にそんな無粋な行動を取った瞬間、即行で有無を言わさず叩きのめします。あ、因みにこれはノーカンですのでお気になさらず」

 

「…………………」

 

 接近を許したどころか全く気付かなかった事に、壬生はここで俺に対して恐怖を抱き始めている。更には力の差があり過ぎるという事も含めて。

 

 俺が離れようと、またしても超スピードでさっきの位置に戻る。

 

「相変わらず出鱈目な速さだな。しかもあれで魔法を使ってないから本当に恐れ入る。因みにエリカは見えたか?」

 

「達也くん、ひょっとして喧嘩売ってる? んなわけ無いでしょうが! あ~もう! 何であんな奴が今まで誰も知られてなかったのよ!?」

 

 何やらエリカが自棄を起こしているように騒ぎ始めていた。司波と違う意味での反応をしてるが、取り敢えずは放っておこう。

 

 勝負を始めて数分も経たず、誰が見ても俺の勝利になると分かっていた。

 

 俺としては最初から分かりきっているのだが、生憎とそんな簡単に終わらせるつもりはない。

 

「壬生先輩、もう充分にご理解頂けたと思います。だからここはいっその事、貴女の本気を見せて貰えませんか?」

 

 さっきまでの壬生が仕掛けた攻撃は、一刻も早く勝負を付けたいと言う焦りが生じていた為、彼女本来の実力を出し切れていない。

 

 勧誘週間の一日目での乱闘事件前、彼女が剣術部の桐原と試合する心構えだったら状況は変わっていただろう。一歩も動かずにずっと防御だけしていた俺が、不味いと思わず反撃してしまう可能性だってある。

 

 だから見てみたかった。修哉が今でも尊敬している壬生紗耶香の剣を。実力の全てを俺に見せて欲しい。

 

 すると、壬生は途端に何もかも諦観したような溜息を吐いた。

 

「どうやら始めからあたしに勝ち目なんか無かったみたいね。もしかして貴方()いじめっ子なのかしら?」

 

「も、と言う誰の事を指してるのかは知りませんが、俺はそんな特殊な性癖は持ち合わせていません」

 

 壬生からの皮肉を俺は心外そうに返した。

 

 すると、観客の司波が何やら「……一緒にしないでもらいたいな」と小さく呟くのが聞こえた。

 

(お前だったんかい! こっちだって御免だ!)

 

 表情には一切出さないまま内心言い返した後、気を取り直して壬生に集中する。

 

 そんな中、壬生が突然構えを解いて、持ってるスタンバトンを地面に落とす。次には右手中指に光る、指輪型のアンティナイトを抜き取り、床へ投げ捨てた。

 

「もう何もかも投げ出したい気分だけど、君のお望み通り、最後まで付き合ってあげるわ」

 

 そう言いながら今度はブレザーを脱いだ。

 

 どうでもいい情報だが、一高の女子の制服はブレザーの下にノースリーブのワンピースとなっている。

 

 その為、壬生の両腕が肩から剥き出しになった。脱いだ理由は、肩から先の自由を確保する為だ。胴着と違ってブレザーは何かしらの動きを制限されやすいので。

 

 壬生がスタンバトンを拾い、再び構える。今度はさっきまでと違って一切隙がない。普通の人間が挑んでも、あっと言う間にやられるだろう。

 

「ふっ、やっとその気になってくれましたね」

 

「いくつか解ったわ」

 

 構えを取って向き合う俺と壬生。

 

「君は、私が以前に手合わせを断られた渡辺先輩より遥かに強い。いえ、それどころか名門の千葉家以上の剣士と見たわ」

 

「……あの人については『光栄です』と受け取りますが、千葉家については興味無いのでスルーさせて頂きます」

 

「何ですって!?」

 

 ん? 何かエリカが凄い反応を示したような……まぁ良いか。

 

 さてさて、壬生が本気でやってくれるから、俺も俺で敬意を表するとしよう。

 

 今まで片手だけで中段の構えから、今度は両手に持ち替えながら水平にして構える。

 

「! ……はぁっ……はぁっ……」

 

 表情と雰囲気が変わった事に気付いた壬生は、途端に緊張感が高まるように息が荒くなり始めた。それでも闘志は欠片も揺らいでいない。

 

 一挙一動見逃さないと言わんばかりの慢心や油断の一切無い壬生の本気の姿に、俺は思わず笑みを浮かべる。

 

 司波達も雰囲気が変わったのに気づき、終始無言となっている。まるで一切喋ってはいけないと察しているように。

 

 それにより、一気に沈黙が支配する。

 

 壬生は勿論のこと、司波達も息苦しく思っているだろう。

 

 ほんの数秒で緊張から緊迫へと変わっていき、既に最高潮へと達している。

 

「行くぞ」

 

「っ!」

 

 俺が若干低く真面目な声を出した瞬間に姿を消した。

 

 反応した壬生が咄嗟に防御の構えを取って――いたのだが、俺はまるで素通りしたように彼女の後ろ数メートル先に現れる。

 

「………え? 今のは……失敗?」

 

「いいえ、ちゃんと当てました。三、二、一……(ぜろ)

 

「がっ!」

 

 俺が零と口にした瞬間、突如壬生から激痛に苛まれる声を発した。

 

 痛みに耐えきれなくなった所為か、彼女はバタンッと倒れて気絶する。

 

 さっき使ったのは、前の世界で木場祐斗に教えた技――(しゅん)(れん)(ざん)。超スピードを使うと同時に斬撃を繰り出す最速技の一つだ。

 

 本来だったら相手が足を動かした瞬間に痛みが走るが、久しぶりに使うと同時に加減してやった為、今回のように時限式となってしまった。やっぱりぶっつけ本番でやると上手く行かないようだ。

 

 壬生に当てた箇所は両腕両脚に加え腹部の五つにより計五連撃。頭もやろうと思えば当てれたが、流石に金属製のスタンバトンで殴打したら不味いと思い止めておいた。一応加減してると言っても打撲は確定なので、少々痛みとお付き合いしてもらう事になる。

 

「……ふぅっ、これで少しは晴れたみたいだな」

 

 気絶している彼女の顔を見ると、口上が少しばかり上がっていた。負けても満足した、と言うような顔だな。

 

 後は保健室に連れて治療した後、修哉と直接話し合ってもらうだけだ。




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