再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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スティープルチェース編 練習

 選手再選考を終えた放課後、各競技に参加する予定の代表選手達は顔合わせを兼ねたミーティングを、それぞれ異なる時間と場所で行われた。

 

 ロアー・アンド・ガンナーの参加選手の中には同じクラスメイトの森崎もいるが、もう一人のチームメイトとペアを組む事が確定済みとなっている。

 

 俺が参加すると知った際、『兵藤はピラーズ・ブレイクじゃないのか?』と訊かれた。気に食わないとか嫌味ではなく、ただ純粋に質問してきただけに過ぎない。A組になって数ヵ月経っても相変わらず大して話してないとは言え、今のアイツは二科生に対する見方が変わってるようで、人を見下す雰囲気が殆どない。アイツに一体何があったのかは知らないが、去年みたいな態度を取らずに接するのであれば大変良い事だと俺はそう思っている。

 

 っと、チョッと話は逸れてしまったが、質問にはこう答えておいた。『とある名家と試合すれば面倒な事になるから』と言った直後、森崎はすぐに察してくれた。勝敗云々は別として、俺があの競技に参加するであろう一条将輝と勝負したら、絶対に他の十師族が黙っていないだろうと。

 

 俺の方とは別に、修哉が参加するシールド・ダウンは昼休みにも言った通り、三年の桐原と沢木が出場する。組み合わせに関してはソロが修哉で、ペアには三年二人がやる予定だ。それを知った桐原が『ペアなら俺と天城が良いんじゃないか?』と異を唱えるも、そこは俺の方で後ほどコッソリ事情を教えたら即了承。紫苑と恋仲になる為にはソロで優勝しなければならない事は勿論修哉には内緒なので、それは絶対口外しないようキッチリ釘を刺してある。

 

 次に紫苑が参加するミラージ・バットだが、去年の新人戦で活躍した光井と二年D組の里美スバルも出場予定だ。女子の花形競技だからか、紫苑は凄い緊張していた。まぁそこは俺の方でフォローするから問題無い他、光井や里見にも紫苑の実力を教える良い機会でもある。特にこのところ司波に対する依存度が強まっている光井には、な。

 

 

 

 西暦2096年7月7日

 

 

 来週の火曜日に定期試験が予定されるも、競技の練習が再開された日となったので、一度でも良いから練習しておこうという事になった。

 

 俺もロアー・アンド・ガンナーの模擬戦をやる日になってるが、敢えて不参加にさせてもらった。初めて参加する修哉と紫苑の初練習を一度見なければいけないから。尤も、ミラージ・バットは設営準備に手間取っている為、まだ練習時間になっていない。

 

 周囲から過保護じゃないかと指摘されるも、そうするにはチョッとばかり理由がある。練習でバンドを外す必要があるか否かを確かめる必要があって、下手に全力でやらせればチームメイトの士気に大きく影響してしまう。それは勿論悪い意味で、な。

 

 その為に今日の俺は司波と一緒に各競技を見て回る事になった。その際、俺が参加する予定だったアイス・ピラーズ・ブレイクも一緒に見る事になっている。と言っても女子の方だけだが。

 

 現在はシールド・ダウンの練習を見ている中――

 

 

「今度は俺が勝つぜ、修哉!」

 

「それはどうかな!」

 

 

 ソロで模擬戦をしている修哉と西城レオンハルトは中々良い勝負を繰り広げていた。

 

 選手じゃない筈のレオが何故此処にいるのかと疑問に思われるかもしれないが、司波の方から練習相手として呼んだのだ。シールド・ダウンの模擬戦を行うには打ってつけだと言う理由で。

 

 同様の理由で、女子の方には千葉エリカも参加している。彼女は代表の三年、()(くら)(とも)()の練習相手を司波に頼まれた為に。

 

「兵藤、今の天城は七宝と試合した時と違って、随分動きが鈍いような気がするが」

 

「気のせいだろ」

 

「……そう言う事にしておこう」

 

 暗に余計な詮索はするなと遠回しに言った俺の発言に、司波は何か言いたげな表情になりながらも追求を諦めてくれた。

 

 と言うか、此処で余計な事を言わないで欲しい。レオはともかく、今休憩してるエリカの耳に入ったら面倒な事になるんだから。

 

「西城のヤツ、さっき天城に負けた所為か本気(マジ)になってるな」

 

「天城君が凄いのはこの前の試合で知ってるけど、西城君もかなりの腕前だね」

 

 男子ペアの桐原と沢木も休憩がてらに見物してて、あの時の試合について語ろうとしている様子だ。

 

「ふっ!」

 

「甘いぜ!」

 

 そんな中、修哉が反撃しようと強打(バッシュ)するも、腰を落としてるレオは受け止めた。見事な防御態勢となってる事で小揺(こゆ)るぎもしないレオに対し、その反動を受けた修哉も体勢を崩さないまま一旦距離を取ろうと後退した。

 

 生半可な攻撃はもう通用しないと判断したのか、修哉は模擬戦にも拘わらず技を披露しようと構え始める。

 

 深く腰を落とし、桐原と同じく右腕に装着してる紡錘形の盾の先端をレオに向けて、その盾に軽く左手を添えた状態となっていく。

 

「随分変わった構えだな。桐原、あれは剣術の構えの一つなのか?」

 

「いや、あんなの見たことねぇ。まぁ思い当たるとしたら……」

 

 独特の構えをする修哉に沢木が不可思議そうに見るのに対し、桐原も同様に不明でありながらも何故か俺の方へと視線を向けていた。

 

「アレは突き技の一種なのか?」

 

「ま、そんなところだ」

 

 司波も気付いてるみたいで、俺に答えを求めようと訊いてきた。離れて見てるエリカは、大変興味深そうにジッと無言のまま見ている。

 

 数秒後、修哉が動いた途端に凄まじい勢いで突進しながら、レオの盾目掛けて刺突を繰り出す。

 

「うおっ!?」

 

 先ほど防御した強打(バッシュ)以上の威力と衝撃だったのか、修哉の盾の先端がレオの盾に激突した瞬間、腰を落としていた筈のレオが体勢を崩す。それどころか、シールドごとリングの外へ弾き飛ばされてしまった。

 

「また俺の勝ちだな、レオ」

 

「~~~~~! 何だよあの突きは!?」

 

 場外に敷き詰められたクッションに背中から落ちるレオだが、大したダメージは無かったみたいですぐに起き上がった。その代わり盾を持っていた両手が痺れたのか、プラプラと軽く振り回している。

 

 修哉が使ったのは『()(げき)』と言う技で、『放浪する剣信(けんしん)』の主人公の宿敵キャラ――東藤(とうどう)(おわる)の得意技。本来は刀を水平にした平刺突(ひらつき)技の一つ「片手一本突き」を極限まで鍛え、昇華した技の一種と呼ばれている。

 

 主人公が使う技以外を覚えてはいけないと言うルールなんて一切無いから、宿敵キャラの技も同時に教える事にした。まだまだ俺には遠く及ばないが、この世界の魔法師や剣士相手でも充分に通用する。格闘戦や防御に特化してるレオを吹っ飛ばせれば猶更に、な。

 

「どうですか、服部先輩」

 

「……確かにアレほどの実力なら、ソロでも充分やっていけそうだ」

 

 修哉の実力と技の威力を改めて見た事により、服部は問題無いと言わんばかりに頷いていた。

 

「おい修哉、もう一回だ!」

 

「西城、さっきからお前だけズルいぞ! 今度は俺にもやらせろ!」

 

「出来れば俺も天城君と一戦やらせてもらいたいな」

 

 口惜しがってるレオが再戦しようとするも、修哉の牙撃を見て闘志を燃やしたのか、休憩していた桐原と沢木も混ざろうとしていた。

 

 どうやら今のままでもバンドを外さないでやっていけそうだ。まぁ俺が練習相手をする時には、慣らし運転として一時的に外させるが。

 

 シールド・ダウンの練習は問題無いと判断した俺は、次に向かう予定であるアイス・ピラーズ・ブレイクの準備が出来るまで、女子選手達をコーチしてる司波の方を見てる事にした。言い忘れてたが、女子シールド・ダウンの中に桜井水波も参加してる事を補足しておく。

 

 

 

 場所はピラーズ・ブレイクの練習場となってる野外プールへ変わる。

 

 司波と同行してる俺も此処へ来て少し経った後――

 

「お兄様ーーっ!」

 

「泣くな深雪、お前はよくやったよ」

 

『………………』

 

 司波妹が本気の悔し涙を流しながら兄に慰められていたのであった。余りにも予想外な光景に、参加選手の北山と千代田、そして見学に来てる光井が言葉を失っている。

 

「やれやれ、負けた途端に泣くとは情けない」

 

「兵藤先輩! 深雪先輩に無慈悲なことをしておいて、よくそのような台詞を……!」

 

 呆れるように言い放つ俺に、光井と一緒に見学しに来てる泉美が抗議していた。

 

 何故こんなおかしな状況になっているのかを簡単に説明しよう。

 

 ピラーズ・ブレイクの模擬戦として司波妹VS北山・千代田と言う二体一のハンディキャップマッチ戦をしていた。戦績は司波妹の五連勝となり、千代田が大変不機嫌となる結果になっていた。

 

 余りにも実力差が有り過ぎた為、北山がある提案を出した。『いっそ兵藤さんと相手をしてみたらどうか』と。

 

 その提案を聞いた司波は断ろうとしていたが、司波妹が一度やってみたいと言い出したので、急遽俺との模擬戦をやる事になった。

 

 俺としては別にやっても問題無い。けれど勝てばシスコン兄が五月蠅いと危惧するも、当の本人は妹に逆らえないのか、どんな結果になっても俺を責めたりしないと約束してくれた。

 

 司波妹からも『出来れば本気でやって下さい』と言うリクエストがあったけど、俺はすぐに彼女の魂胆を見抜いた。恐らく大好きな兄にいいところを見せようと、『氷炎地獄(インフェルノ)』みたいな高難度魔法でも使って俺に圧勝しようと考えているに違いないと。

 

 その甘い考えをすぐに打ち砕いてやろうと、俺は向こうの望み通りにチョッとばかり本気でやろうと決意する。

 

 司波の合図で俺VS司波妹の模擬戦が始まって早々、一瞬で決着を付けようと思っていたのか、やはり彼女は『氷炎地獄(インフェルノ)』を使おうとしていた。流石に高難度魔法である為か、いくら彼女でも完全に発動させるのに僅か数秒程度のタイムラグがある。けれど俺は去年の試合で披露した十二本の『光の槍』を一瞬で発動させ、司波妹側にある氷柱を全て突き刺した後に爆発させた。僅か数秒で決着が付いた所為か、司波妹だけでなく、模擬戦を見ていた司波達ですらも言葉を失うほどに。

 

 司波妹は自分が敗北したと頭が理解するのに少々時間が掛かるも、その直後に両眼から涙が溢れ、司波に飛びつき慰められて今に至る訳であった。

 

「あ、あの司波さんを一瞬で倒すなんて……!」

 

 先程までムスッと不機嫌そうにしていた千代田だったが、もう既に霧散してて、今は大変気の毒そうに司波妹を見ていた。

 

「流石は兵藤さん。魔法速度は去年より磨きが掛かってる」

 

「と言うか兵藤君があんなに凄いなら、やっぱりピラーズ・ブレイクに出た方が良かったんじゃないかな……?」

 

(磨きが掛かったんじゃなくて加減していた力をチョッとばかり早くやっただけに過ぎないし、ピラーズ・ブレイクに出れば面倒な事になるから避けたんだよ)

 

 北山と光井の発言に、俺は内心そう突っ込んでいる。

 

 本当は適当な言い訳を口にしたかったのだが――

 

「深雪先輩を泣かせるなんて鬼畜の所業です!」

 

「そんな非難をされても困るんだが……」

 

 今も俺に噛み付いてくる泉美が、香澄とは違う意味で鬱陶しくて出来なかった。

 

「なら今度は君が俺の相手をするか?」

 

「……………」

 

 余りにも五月蠅い為に模擬戦を提案するも、先程までギャーギャーと騒いでいた泉美は途端に無言となる。

 

 どうやら彼女は香澄と違って聞き分けがいいみたいだ。以前に自分と試合をして文字通り痛い目に遭った事を思い出したのか、すぐに引き下がってくれた。

 

「兵藤、お前はもうこっちの練習に来なくていい」

 

 結果として、俺は司波から今後女子アイス・ピラーズ・ブレイクの練習には来ないよう出禁命令が下される事となった。自分の大事な妹を泣かせた腹いせかもしれないが、此方としては別に問題無いので了承してる。北山だけ凄く寂しそうな表情となっていたが、そこは敢えて気にしないでおいた。




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