再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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スティープルチェース編 色々な人と再会

 西暦2096年8月3日

 

 

 

 九校戦出発日となった当日。一高は前夜祭パーティが行われるホテルへ向かおうと、大型バスとエンジニア用の作業車に分乗する為の段取りを行っている。

 

 今回参加する一高の選手団は、本戦男女各十二名、新人戦男女各九名、技術スタッフ八名、作戦スタッフ四名の合計五十四名。

 

 選手やスタッフ達がそれぞれバスや作業車へ向かってる中、俺は少々気になる事があった。

 

「おい司波、何故ピクシーを連れて行こうとしてる?」

 

「雑用仕事を任せる為だ。今年の九校戦は去年と違って入念に準備する必要があるから、なるべく無駄な時間を省きたい」

 

「ほぅ……」

 

 少々詰め寄るように問う俺に、司波は納得しそうな理由を返答してきた。

 

 確かに司波の言う通り、今年はルール変更があった所為で通常以上に準備を要した。そして本番も同様に大変である為、ピクシーに雑用仕事を任せたい司波の心情も理解出来る。

 

 だが生憎、俺はそれを素直に信じる事が出来ない。これが修哉や紫苑だったらすぐに納得して引き下がるけど、相手が司波となれば話は別だ。何か他の理由もあってピクシーを同行させるんじゃないかと疑ってる。

 

 ピクシーは3Hと言う名のロボットだが、その中にはパラサイトと言う妖魔が宿っている。人間に寄生して霊子(プシオン)を吸い取る害悪な存在だが、生憎今のピクシーにその危険性は無い。光井の強い想念を受けた事で、司波に(だけ)絶対の忠誠を誓っているから。

 

 危険が無いとは言え、こんな物騒な存在を連れて行くのは少々危険だ。他校だけでなく、軍の魔法師に気付かれたら確実に大騒ぎとなるだろう。当然それは司波も理解してる筈なのだが、そのリスクを冒してまで連れて行こうとする理由が絶対にある筈。

 

「………まぁ良い」

 

 だが俺は敢えて追求するのを止めた。司波と二人だけで話すならともかく、今は人目もあって下手にピクシーの存在を口にする訳にはいかない。

 

「だがその代わり」

 

「?」

 

 不思議そうな表情をする司波に俺は周囲に聞かれないよう――

 

「何か遭っても必ずお前が責任持てよ」

 

「無論そのつもりだ」

 

 小声で念を押して言うと、向こうもすぐに頷いた。

 

「だがそれはお前もだ。姿は見えないが彼女を(・・・)連れて来てるんだろう?」

 

「……よくお分かりで」

 

 司波が言い返す感じで問われた事で、俺は全く反論出来なかった。

 

 察しの通り、今回は(今も透明化中の)オーフィスを連れてきている。これは未だ非公開だが、里帰りと言う名目でレイとディーネも同様に、な。

 

 ホテルに到着したら、レイとディーネには富士山周辺の森へ行くよう命じる予定だ。あそこにはあの子達の同胞である無垢な精霊達がいて、人間で言う再会の意味合いも兼ねている。全く無関係なオーフィスは俺の傍に居るのが確定だけど、な。

 

「兵藤君、お兄様と一体何を話しているのですか?」

 

「何でそんなコソコソと話してるの?」

 

 すると、司波妹と光井が何やら俺に向かってそう言ってきた。特に司波妹が少しばかり怖い笑みを浮かべているだけでなく、暑いにも関わらず身体から冷気も漂わせていた。

 

 前々から思ってる事なんだが、二人は俺が司波と話すのを見て矢鱈と警戒している。理由は何となく察してるが、言ったところで無駄だから既に諦めていた。

 

 確認が済んだ俺は、司波から離れてさっさとバスに乗車する事にした。

 

「リューセー、司波と何を話してたんだ?」

 

「お前も見てたのかよ」

 

 座って早々、相席となってる修哉からの質問に内心チョッとゲンナリした。

 

「紫苑、同じ陸上部として絶対優勝するわよ!」

 

「そ、そうですね……」

 

 因みに千代田の相席となっているのは紫苑だった。

 

 婚約者の啓は技術スタッフでありながらも、今回作戦スタッフと同様の扱いでバスに乗ってるのに珍しい光景だった。去年は啓と一緒じゃなかったと言う理由で、当時相席していた摩利に不満をぶつけていたと言うのに。

 

 千代田がああも張り切ってるのは、九校戦に初参加する紫苑がいるからだろう。益してや陸上部で仲の良い後輩でもあるから、先輩として付き添っているかもしれない。

 

 まぁ俺としては是非ともそうして欲しい。婚約者の啓と呆れるほどイチャ付くより、ああ言う仲の良い先輩後輩の光景の方が遥かにマシだから。肝心の彼もその光景に苦笑するどころか、寧ろ温かく見守ってるようだ。千代田の(呆れるほどイチャ付く)事をよく知ってる三年生達も、何だか安堵してる感じがする。

 

「紫苑には悪いけど、バスの中では千代田委員長の対応を任せるとしよう」

 

「あははは……」

 

 俺の呟きに修哉は苦笑し、それを聞いていた周囲も『同感だ』と言わんばかりに強く頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 今年は途中事故も無く、誰かさんの所為でバスの中に不穏な空気が漂う事も無く、俺達は無事ホテルに着いた。何一つトラブルが起きる事無く、前夜祭パーティの準備も済んでいる。

 

 既に会場入りしている俺は、去年と違って借り物じゃなく、一科生である自分の制服を着ている。

 

「全く。二人は去年会場に来たんだから、何もそこまで緊張する事無いだろうに」

 

「あの時は選手じゃなくてバイトで来たんだよ……!」

 

「これで緊張しない方がおかしいわよ……!」

 

 俺と同じく一高の生徒かつ一科生の制服を身に纏ってる修哉と紫苑は緊張していた。

 

 一般庶民の修哉はともかく、令嬢の紫苑はこう言った空気に慣れていると思ったんだが、存外そうでもないようだ。それだけ九校戦が大きなイベントと認識しているのだろう。

 

 俺が弟子二人と一緒にいるのとは別に、司波は女子六人(司波妹、北山、光井、里見、明智、桜井)に囲まれたハーレム状態で、残りの二年男子達は三年男子達に囲まれ小さくなっている。

 

 試合前だからか、去年みたいに他校生達との交流は少しばかりギスギスした――

 

「隆誠殿!」

 

 雰囲気の筈が見事にぶち壊すような声が聞こえた。

 

 物凄く聞き覚えがある声だと思いながら振り向こうとした直後、突然の衝撃が俺に襲い掛かった。

 

「息災であったか、隆誠殿?」

 

「ああ。それと出来ればもう少し控え目に声を掛けて欲しかったんだが」

 

「あ、相変わらずだな……」

 

「四十九院さん、こんな公共の場でそれはチョッと……」

 

 俺に襲い掛かった正体は第三高校の女子生徒、四十九(つくし)(いん)(とう)()。去年は新人戦バトル・ボードに出て光井と良い勝負をして準優勝を飾った実力者でもある。

 

 あの時と比べて背丈が伸びているようだ。今のところは一高(ウチ)の中条と互角と言ったところだが、小柄な童顔である事に変わりない。

 

 因みに沓子が俺に飛びついていると言う事は、即ち抱き着いているという事だ。当然この光景は苦笑してる修哉と紫苑だけでなく、周囲にいる一高を含めた他校生達も見ている。これで驚くなと言うのが無理な話だろう。

 

 驚いた顔をする司波兄妹、沓子を見て大胆と驚愕する光井、何故か少々面白くなさそうに見ている北山、他の女性陣や男性陣は興味深そうに眺めるか顔を赤らめるかのどちらかになっていた。如何でもいいが、三高の一条と吉祥寺が司波兄妹と一緒に此方を見ているが気にしないでおく。

 

 やっと落ち着いたのか、彼女は俺から離れてくれた。

 

「沓子、前より背が伸びたな」

 

「当然じゃ! わしは成長期じゃから、まだまだグングンと伸びるぞい!」

 

「そうかそうか。是非ともそうなって欲しいな」

 

 エッヘンと自慢気に言う沓子を褒めようと、俺は彼女の頭を優しく撫でた。

 

 何だか思い出すなぁ~。前世(むかし)の頃に幼児期だった(イッセー)の子供達が俺に会いに来てくれた際、こんな風に接した当時の記憶が段々思い出してくる。俺の甥や姪であっても、聖書の神(わたし)の視点で思わず孫のように接していた。その所為で伯父の俺を『お爺ちゃん』と呼ぶ子がいて、それはそれでいい思い出の一つだ。

 

「……なぁ紫苑、何か急に祖父と孫みたいな会話になってないか?」

 

「う、うん。そんな感じがする」

 

 修哉と紫苑が途端に複雑そうな感じで見ているが気にしないでおく。俺の思い過ごしなのか分からないが、周囲の空気も似たような感じがするが、そこも敢えて気にしないでおこう。

 

「な、何と言いますか、とても若い男女とは思えない会話ね……」

 

「兵藤君を見ると、何故かお爺さんみたいな感じがする」

 

 すると、またしても聞き覚えのある声がした事で、俺だけでなく修哉と紫苑も振り返る。

 

「お、一色に十七夜じゃないか。会ったのは去年の横浜以来だな」

 

「お久しぶり、兵藤君。天城君と佐伯さんは約一年振りね」

 

「三人とも、元気そうで何より」

 

 三高の一色(いっしき)(あい)()十七夜(かのう)(しおり)が優しい笑みを浮かべていた。

 

 去年は俺の事を単なる一般人としか見てなかった一色は少々刺々しい感じだったが、今はその雰囲気が全く見当たらない。その証拠に俺と同じ一般人である修哉と紫苑にも普通に話している。

 

「でも驚いたわ。天城君と佐伯さんも九校戦に出場するだけでなく、二科生から一科生に転科していたなんて」

 

「あはは、どっちもリューセーが関係してるけどな」

 

「私達もまさかこうなるなんて思いもしなかったわよ」

 

「この二人は俺の弟子だから、競技に優勝出来る実力は勿論あるぞ」

 

 俺の台詞に一色や十七夜だけでなく、沓子も少しばかり雰囲気が変わった。

 

「言ってくれるじゃない。残念だけど今年は我が三高が総合優勝を決めさせてもらうわ」

 

「去年のようにはいかない」

 

「隆誠殿、言うておくがわしも愛梨達と同じく優勝を狙っておるからの」

 

 おお、流石は三高の中でも有名な女子トリオ。友好的でありながらも、絶対勝つと言う気迫を思いっきりぶつけている。修哉と紫苑も同様に、な。

 

「まぁ優勝を狙うのは当然だからソレは横に置いといて、だ。今年の九校戦は種目が半分も変わったから準備に色々手間取ったよ。そっちも大変だったろ?」

 

 話題を変えた事で、三人は途端に疲れたように嘆息した。

 

「全くよ。私達が本来出場する筈だった種目がいきなり変更されたから、思わず文句を言いたいほどだったわ」

 

「掛け持ちが出来る競技が限られてる上に、ソロとペアに分かれるなんて全く予想外だった」

 

「と言うか最後の競技は何なのじゃ? 『スティープルチェース・クロスカントリー』をやらせるなんて、わし等は軍人ではないのじゃぞ」

 

 話してる相手が俺達だからか、一色と十七夜は恨み言のようにボヤいており、沓子なんか少しばかり憤慨するように言っていた。

 

 やはり一高だけでなく他の魔法科高校も同様に、今回の変更通知を受けて色々大変だったようだ。

 

 今回外された種目のクラウド・ボールに一色が、スピード・シューティングに十七夜が、そしてバトル・ボードに沓子が去年の新人戦に出場していた。今年の九校戦で本戦に出ようとしていた三人としては、さぞかし歯痒い思いをしたのは容易に想像出来る。

 

 調べた情報によると、一色はシールド・ダウンのソロ、十七夜と沓子はロアー・アンド・ガンナーのペアで出場するみたいだ。掛け持ち可能のスティープルチェースは競技開始の前日までエントリー期限があるから参加するかは不明だが、恐らくこの三人はエントリーするだろう。一色と十七夜はともかく、沓子だけ少しばかり不安だが。

 

「それより隆誠殿、何故ピラーズ・ブレイクに参加しなかったのじゃ? 一条はお主がロアー・アンド・ガンナーに出場すると知った直後、凄く不満そうな顔をしておったぞ」

 

「やっぱりそうか」

 

 道理で一条が物凄く不機嫌そうに俺を睨んでいた訳だ。今はまだ司波と話してるようだが、それが終わったら真っ先に俺の方へ向かおうとするだろう。

 

「俺も最初はピラーズ・ブレイクに出るつもりだったけど、公式の場(・・・・)で一条と戦えば面倒な事になるって指摘されてな」

 

『!』

 

 言葉を濁しても一色達は何かに気付いたような表情になった。恐らく去年俺が三高へ行き、そこで一条将輝に勝利した事を。

 

 あの試合は一条家当主の剛毅や前田校長が箝口令を敷かれた事で(一部を除いて)広まっていないが、今回の九校戦で一条将輝に勝利すれば他の十師族が絶対黙っていない。

 

「……まぁ、そう言う事なら仕方ないわね」

 

「確かに色々と問題が起きそう」

 

「わしとしては、それを抜きにしても観たかったのじゃ」

 

 一色と十七夜とは別に、沓子だけは不満があるようだ。悪いけど決まった以上はもう変更出来ないので、どうか諦めて欲しい。

 

 因みに修哉と紫苑も、俺がピラーズ・ブレイクを避けた理由は当然知ってる。この二人も三高へ来た当事者でもあるから、事情を聞いて即座に納得した程だ。

 

 後で一条にも事情を説明するつもりで――

 

「おい、兵藤」

 

 その話題となってる人物が司波と会話を終えて、とても不機嫌そうに俺に声を掛けてきた。

 

 ゆっくり振り向いた先には、やはり物凄く不満気な表情で俺を睨む一条将輝がいる。彼の傍に居る吉祥寺真紅郎は苦笑気味だが。

 

 こうなった一条には一から事情を説明しなければ納得しそうにないと思った俺は、一旦修哉達から離れて話す事にした。

 

 

 

 俺が一通り話し終えた後、予想していたよりアッサリ終わってしまった。自分と勝負する事で他の十師族が黙ってないと聞いた直後、不満はあれど納得してくれたのだ。思わぬ結果に肩透かしを食らった気分になるも、本人が納得してくれたなら余計な事は言わないでおいた。

 

 だけどそれとは別に、今年の九校戦は何か変ではないかと言う疑問を抱いてる。それは吉祥寺も同様で、つい先程まで司波と話し合っていたみたいだ。

 

 二人が一番の疑問となってるのが、最後の競技予定となってるスティープルチェース・クロスカントリーで、アレだけは行き過ぎてるどころか異質と言っていた。

 

 それは一条家が調べた結果なのかと思わず訊いてみるも、どうやら一条と吉祥寺だけの見解で留まってるようだ。そこまで疑問視してるなら当主の剛毅さんに頼んで詳しく調査して貰えばいいと言った直後、『それはもう司波に言われた』と途端に不機嫌そうに言い返された。どうやら不機嫌な理由は俺だけでなく、司波の方にもあったらしい。何だかチョッとしたとばっちりを受けた気分だ。

 

 まだ他にも俺に訊きたい事があったみたいだが、中断せざるを得なかった。来賓の挨拶が始まった為に。

 

 普段見る事の無いお偉方が登壇した後――

 

『私が最後となったが、ここは手短に済ませるとしようか』

 

 テレビ電話で何度も見た九島烈の登場に、会場にいる誰もが緊張が走った表情となった。

 

 しかし、今年はいつもと様子が違う。その疑問は俺だけではない。

 

『残念だが今年は手品を考えていない。去年ミスをした件もあって、今年は控える事にした』

 

 それを聞いた俺はチョッとばかり罪悪感を抱いてしまった。何しろ去年に魔法を発動させている九島の狙いを阻止しようと、俺が指弾を使って途中で解除させてしまった。もう邪魔する気は無いのに、随分意地の悪いことを言ってくれる。

 

 内心溜息をしながらも、一通りの挨拶を済ませた九島は――。

 

『最後に第一高校二年、兵藤隆誠君』

 

 何故か俺を突然指名した事で、周囲も一斉に此方へ視線を向けてくる。

 

 おい待て九島、何でこんな挨拶で俺の名前を出すんだよ。当の本人は意地の悪い笑みを浮かべながらこう言った。

 

『今年も私を心から楽しませてくれることを期待している』

 

 明らかに贔屓とも言える応援をした所為で、来賓とは別に、一高と一部の三高生徒を除く他校生達から物凄く睨まれてしまう事になった。

 

 と言うか、九島は一体何のつもりであんなことを言ったんだ?




優等生で出演した愛梨はシールド・ダウンのソロ、栞と沓子はロアー・アンド・ガンナーのペアと言う私の個人的な理由で出しました。

原作で九島烈は欠席となってますが、此方では出席させています。

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