九島が名指しの激励をした事により、俺は多くの他校生から様々な感情が混ざった視線を浴びる破目になってしまった。普通なら居た堪れなくなるかもしれないが、
前夜祭パーティが終わった後、各校の生徒達はホテルに戻って解散し、割り振られた部屋で寛いでいる。ホテルの部屋はツインだ。
今回の部屋割りで俺と一緒になったのは修哉だった。去年の相方が司波だったから今年も一緒になるかと予想していたのだが、
因みに紫苑は一年の七草香澄と同室になっている。本当なら同学年の生徒同士が良いのだが、人数の関係によって二年生女子の二人が、一年生と三年生の女子と同室する事となった。もう一人の女子である司波妹は千代田と一緒だ。
そして俺はつい先程まで修哉と一緒に部屋で寛いでいたが――
「全く。貴方が余計な事を言った所為で、俺は周囲から睨まれる破目になったじゃないですか」
「ハッハッハッハ。以前にUSNA軍を手玉に取った君が、あれ位で委縮しないだろう?」
「……まぁ、否定はしません」
九島烈から電話で呼び出され、彼が宿泊してる部屋で再会し、椅子に座って対面していた。
今までは電話で何度も話していたが、こうして直接会うのは去年の九校戦以来だ。あの時と違って九島は若干疲弊してるように見受けられたが、俺の顔を見た瞬間、それが吹っ飛んだかのように破顔している。
密かに協力してくれて一蓮托生の関係になってるとは言え、こんなに早く会うのは意外だった。てっきり九校戦が始まる前日に呼び出すだろうと予想したのだが、まさか前夜祭パーティが終わって早々に呼び出されるとは思わなかった。
「にしても、閣下にしては随分らしからぬ大胆な発言でしたね。いくら俺のファンだからって、あんな堂々と身贔屓な応援をするのは周囲から問題視されませんか?」
「私は思った事を口にしたまでだよ」
遠回しに要らぬ疑いを掛けられると言ったのだが、当の本人は全く気にしてないようだ。
まぁ確かにあんな激励程度で、俺と九島が協力関係になってると言う結論に達する者はいないだろう。司波を含めた四葉家を除いて、な。
そう言えば四葉家で思い出したが、パーティ中に司波兄妹が一条と吉祥寺の二人と話し終えた後、双子らしき男女の他校生と話しているのを見かけた。確か黒羽、だったか。
互いに初対面の挨拶をしてる振舞いだったが、アレは演技だとすぐに察した。同時にあの双子は四葉家の関係者である事も含めてな。
俺がそのように考えたのは、司波があの双子達に対して無警戒だったのだ。加えて司波妹を守るような素振りを一切見せていないのが何よりの証拠でもある。
司波達也は初対面の相手に対して必ず警戒するだけでなく、妹を守ろうと一歩前に出る癖がある。本人はそれに気付いているのかは分からないが、多分無意識でやってるかもしれない。ソレ等をやる素振りを一切見せていないとなれば、司波はあの双子に対して気を許せる間柄という事になる。
もう一つ指摘するなら、あの双子が本当に司波兄妹と初対面を装いたいのであれば、少し詰めが甘いと言わざるを得ない。何しろあの二人は男の司波だけしか話していなく、司波妹には大して目もくれずに話そうとする素振りを一切見せなかったから。(俺は一切興味無いが)司波妹みたいな美少女を見れば、男女問わず必ず舞い上がると言うのに、あの双子は一切の動揺を見せずに司波と話す事に集中していた。特に双子の男子の方が話をしたがらないのは、余りにも不自然過ぎて逆に違和感を抱いてしまう程に、な。
あんな茶番をしてまで司波兄妹と接触するには何か理由があるのだろうが、俺には至極如何でもいいので放っておく事にした。もしも俺関連で密かに行動するのであれば、その時は自分だけでなくオーフィスや
「ところで兵藤君のファンとして訊きたい事があるのだが、何故今年はピラーズ・ブレイクに出場しなかったのかね?」
「ああ、それはですね――」
九島からの問いに、俺はパーティで沓子達に答えた理由をそっくりそのまま話した。
それらを聞き終えた事で、彼は若干不服があるかのように眉を顰めながら嘆息している。
「やれやれ。今年こそ観戦出来ると思って期待してたのだが……まぁ、そこは致し方あるまい」
だがそれでも元十師族の当主である九島は、向こうの心情を察しており、苦言を呈するだけに留まっている。
「本音を言えば、密かに第三高校で開催した兵藤君と一条君の決勝戦を直接観たかったよ」
「まだ根に持ってたんですね」
あの時の事を思い出したのか、途端にジト目になりながらネチネチ言ってくる九島に俺は苦笑した。
「だからお詫びとして映像記録を渡したではありませんか」
確かあの後、『孫と一緒に見せてもらうよ』とか言っていた。その孫の反応が気になるから、ちょっとばかり誘導してみるとしよう。
「因みにお孫さんは、俺の試合を見てどんな反応してました?」
「孫の
「ほほう」
てっきり一般人如きの俺に対して何らかの偏見があるんじゃないかと思っていたが、どうやら
「それどころか、兵藤君に是非とも一度会ってみたいと強請られてしまってね。私と同じく完全に君のファンになっているよ」
「あはは、そこまでですか……」
まさか俺のファンになるほど気に入ってくれたとは想定外だった。九島烈と言い、その孫と言い、十師族じゃない俺にそこまで興味を抱かれるとは。
「もし機会があれば、
「まぁ、その機会がありましたら」
聞けば九島家は奈良に本宅を建てているらしいが、余程の事情が起きない限り難しいだろう。それは九島本人も理解してるみたいで、俺を本宅へ招こうとする発言をしないのが何よりの証拠だ。
すると、九島は途端に真面目な表情になって話題を変えようとする。
「時に兵藤君。こんな質問は高校生に尋ねるのはどうかと思われるかもしれないが、君は今の魔法師についてどう思うかね?」
「今の魔法師について、とは?」
俺が思わず鸚鵡返しをすると、彼は話を続ける。
「君も知ってるだろうが、現在は強力な力を持つ魔法師が『国』の戦力として重宝されている時代だ」
以前に俺が相手をした戦略級魔法師『アンジー・シリウス』は、USNA軍が誇る最強戦力として扱われている。
「だからと言って、魔法師と言う理由で強制的に戦力扱いされるのは御免です」
国防軍に所属してる九島烈に向かってとんでもない事を言ってるかもしれないが、これは殆ど事実も同然だった。現に魔法師を兵器扱いしてる
俺の発言に彼は憤慨しないどころか、同感だと言わんばかりに頷いている。
「全く以ってその通りだ。私とて、自分の孫が軍事力の一つとして数えられるなど考えたくもない。だからその為に私は――ッ!」
「?」
何やら熱弁を振舞おうとしていた九島だったが、急に何故か失言だったみたいな表情になるも、それは一瞬で切り替わった。
「――是非とも兵藤君の意見を聞きたくてね。魔法師が単に国の戦力として扱われず、他に生きる道がないかを」
「……一応ありますが、あくまで俺の安直な考えに過ぎません。それでも良いですか?」
「うむ、構わんよ」
全く当てにならないモノだと前以て確認するも、九島は全く気にせず即座に首を縦に振った。
此処から先は魔法師が軍以外で活躍出来る場、と言うより仕事内容について語る事になる。
魔法を利用した土木業や工業関連の仕事、容姿が優れてる魔法師は俳優やアイドル歌手を目指す事が出来る等々と色々話した。聞いていた九島は途中から珍しく面食らったかのように、ポカンとしていたのが凄く印象強かったのは内緒にしておく。
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