「兵藤」
勝負を見届けた司波が此方に近付いて俺に声を掛けてきた。
「何だ?」
「マナー違反である事は重々承知している。最低限答えられる範囲内までで良いから教えてくれ。お前、壬生先輩に何をした?」
司波の質問と共に、その後ろにいる妹とエリカが凝視する。
そう言えばこの世界って、人が使う魔法や秘伝とかの詮索は基本的にマナー違反だったな。司波はそれを分かっていながらも聞くって事は、相当気になっているってところか。
瞬連斬は確かに俺が編み出したが、実はコレって前の世界のゲームなどを参考に考案したお遊び同然の技なのである。架空の技を実現した事で、とんでもない必殺技となってしまったが。
まぁ俺としては別に教えても良い。対処法を見付けて模倣したっていい。逆に寧ろ出来るもんならやってみろ、という考えなので。
「良いぞ。魔法以外だったら別に問題無いから」
「ちょっと! そんなアッサリ教えちゃっていいの!? さっきの技は秘伝じゃないの!?」
俺の返答を聞いたエリカが信じられないようにツッコミを入れたが、無視させてもらった。
「逆に訊くが、司波は俺が何をやったのか認識出来たか?」
「……辛うじて連続で打ち込んだぐらいだ」
「へぇ、そこまで見えていたか。司波って結構目が良いんだな。正解だ」
ちゃんと認識していた事に感心するも、司波はそれだけで納得がいかない様子だった。
「まだ続きがある。お前が例の縮地法を使って壬生先輩に一体何撃打ち込んだ? 俺はニ~三撃までしか見えなかったが」
「残念。五連撃だ」
「五……!」
正解を教えた途端、司波からこれでもかと言うほどに目を見開いていた。司波妹とエリカも同様の反応だ。
何もそこまで驚く事はないと思うんだが。今の現代魔法でもやろうと思えば出来るだろうに。
………あ、そっか。俺が魔法を使わないで身体能力だけでやったから、コイツ等は心底驚いているんだ。
う~ん、やっぱりこの世界の人間達は、俺が前にいた世界と違って
そう考えると司波達に見せたのはちょっと失敗だったかもしれない。向こうからすれば、ただの身体能力だけで魔法師以上の力を見せた俺は化け物染みてると思われるだろう。これでコイツ等が学校中に言い触らして大騒ぎになれば、俺が自ら退学すれば良いだけの話だ。
「恐いか? 二科生である筈なのに、魔法を全く使わず化物染みた俺の技を見て」
「……いいや。あれはお前の努力の結晶で編み出した技なんだろう? 確かに最初は恐ろしいと思ったが、誰も化物だと思っていない」
冷静に戻るのに若干間があったが、司波は淡々と答えた。
魔法師と言えども、大抵の人間は自分が絶対に出来ない力を見れば恐れて忌避する筈だ。それなのに何でもないようにアッサリと答える司波の返答は逆に疑問を抱く。
「意外だな。てっきり忌避すると思ったんだが」
「そんなのは今更だ。仮に魔法師の俺達がお前を忌避なんかすれば、それこそ反魔法主義者の連中となんら変わらなくなってしまう」
ああ、言われてみれば確かに。魔法を持たない人間は魔法師を恐れている節が見受けられる。故にこの世界にいる人間の一部は、同じ人間である筈の魔法師を化物扱いしている集団がいた。自分たち人間とは違う存在だと。
俺とした事が肝心な事を忘れていた。道理で司波妹やエリカが、司波と同様そこまで忌避する様子が見受けられない訳だ。まだまだ勉強不足である事を痛感させられる。
「そうだったな。不安に思った自分が急にバカらしくなってきたよ」
この話はもう終わらせようと、話題を変える事にした。
「ああ、そうそう。お前は確か状況を知りたいんだったな。俺があの二人を保健室へ運んだ後からになるが、俺の方で奴等が何者なのかと独自に調べようとした際、途中で壬生先輩がテロリスト達を連れてこの図書館へ向かったのを見かけたんだ。気になった俺は後をつけて図書館に入った瞬間、待ち伏せしてた連中にバレて襲われたから結局全員片付ける事にした。壬生先輩がどこにいるのかと探した結果、特別閲覧室にいる事が分かってな。だが他にもテロリスト達が図書館にある機密文献を盗み出すのが真の目的だと知ってすぐに阻止したって訳だ」
「………成程な」
流石に
聞いていた司波は相変わらず無表情だが、一先ずはと言った感じで納得の様子を見せている。
「ついでにこっちも聞きたいんだが、司波達が此処へ来たのはどうしてだ?」
「小野先生から奴等の狙いが図書館だと聞いてな。と言っても、お前が終わらせたから無意味になったが」
「ふ~ん」
確か小野先生ってカウンセラーの筈だが……何でその人がテロリストの目的を知ってるんだ? まぁ、色々と訳ありな人である事にしておこう。
そう思ってると、司波が再び俺に質問をしようとする。
「ところで、壬生先輩を除いて、敵はこれで全員なのか?」
「いいや。特別閲覧室のデバイスにハッキングしようとしたテロリストのメンバー三人は俺が伸して、今も向こうでオネンネしてるよ」
「因みにそのハッキングで使っていた機材はどうした?」
「
「……そうか。ならばもうデータを盗まれる心配はなさそうだな」
俺が答えた内容に何か不審に思ったのか、司波が若干目を細めていた。だがそれは一瞬で、すぐに安堵した表情に戻っている。
「まぁ、壊したと言っても中身の確認まではしてないが」
「ならばそれは俺の方で確かめておこう。でないと俺が図書館に来た意味がないからな」
「是非とも頼む。俺はこれから壬生先輩を運ばなきゃいけないし」
後の事は司波に任せておいた方がいいだろう。一応、立場上は風紀委員として来ているし。
そう思った俺は壬生を修哉と紫苑と同じく運ぼうとするが――
「兵藤君、あたしからもチョッといいかしら?」
「ん?」
すると、何故かエリカが俺に声を掛けてきた。
「え~っと……君は確か」
彼女と面識があっても、まともに会話した事がなかった。その為にどう呼べばいいか分からなくて困っている。
だが、それはすぐに解消した。
「一年E組の千葉エリカ。知っての通り、達也くんの友人の一人よ。あたしの事はエリカで構わないわ」
「はぁ、どうも……で、そのエリカさんが一体俺に何の用だい? 出来れば手短にして欲しいんだが」
見た目通りと言うべきか、随分と活発でフレンドリーな子だな。殆ど初対面である筈の俺と友好的に話して早々名前呼びで良いとは、コミュ力が結構ありそうだ。
「エリカでいいわよ。あたしも君のことを隆誠くんって呼ばせてもらうから」
「ど、どうぞお好きに……」
何故だろう。この子は友好的に話している筈なのに、ニコニコしてる笑顔の裏側には途轍もない威圧感を放っているような気がする。
「さっきの技は本当に凄かったわ。魔法を一切使わず秘伝の縮地法と同時に五連撃をこなすなんて、見事としか言いようがないわ。あたしなんかじゃ、まだまだ君の領域に届かないって痛感させられたし」
「へぇ。もしかして君も壬生先輩と同じく、剣を嗜んでいるのかい?」
「まぁね。尤も、あたしは剣道じゃなく剣術の方だけど」
「ほほう、それはそれは」
剣術、ねぇ。
となればエリカは剣道をやる壬生と違って、魔法を使っての剣技を主体とするタイプか。
「まぁそう言う事は取り敢えず良いとして、あたしチョッ~と聞き捨てならない事があるのよね」
「聞き捨てならない事?」
はて、それは一体何を指しているのだろうか。
少なくとも俺はエリカに対する失礼な事を何一つ言った憶えはない。けれど彼女からすればあるみたいだ。
「壬生先輩と勝負ながら会話してる時なんだけどね。君があの女より遥かに強いって話をしてたでしょ?」
「『あの女』? それって渡辺摩利さんの事か?」
「そうそう」
先輩である筈の摩利に対して随分な呼び方をしてるな。何かあからさまに嫌ってるように思えるが。
もし機会があれば彼女に聞いてみるとしよう。エリカが嫌っている理由を。
「で、壬生先輩はその後に『千葉家以上の剣士』とも称賛していたけど、隆誠くんは全然興味無いってスルーしたわね?」
「そうだな。と言うか、さっきから勿体ぶった話し方をしてないで、早く用件を言ってくれ。こっちは急いでいるんだからさ」
少々苛つき始めた俺はさっさと本題に入れと促した。
一緒に聞いている司波兄妹もエリカが何を言いたいのか分からないようだ。
エリカもやっと話してくれる気になったようで、用件を言おうとする。
「じゃあ遠慮なく言うわね。隆誠くん、あたしの前で千葉家に対して随分舐めた発言をしてくれたじゃない」
「……………え?」
おいおいおい……まさか千葉エリカって、壬生が言ってたあの千葉家の娘……なの? 名字が被っていたとか、じゃなくて。
「いやー、あたしの事を知らないのはまだ辛うじて良いんだけど、隆誠くんが千葉家の事を全く眼中に無いってのがよく分かったわー。まぁそりゃそうよねー、あんなに強いんだから見向きもしないのは当然かー」
「あ、あの、エ、エリカ、さん……?」
「何かしら?」
「ど、どうして笑顔のまま、CADらしき警棒を出しているのかな?」
「あら、これがホウキだって分かったの? 達也くんと同じく凄いわね」
笑顔でありながらも目が全然笑っておらず、携帯している伸縮式の警棒を取り出していた。
そりゃその警棒からサイオンと思わしきオーラを感じてるから分かるよ。口では言わないが。
「理由は簡単よ。千葉家に喧嘩を売る発言をされた以上、あたしも千葉家の娘として黙って見過ごす訳にはいかないの。だから……今すぐあたしと勝負しなさい!」
「はい!?」
本性を現したかのように、さっきまで笑顔だったエリカがいきなり警棒の先端を俺に向けてきた。
これから壬生を保健室に連れて行かなきゃいけないってのに、何考えてるんだよこの子は。
名門のプライドかどうか分からないが、この状況でそんな事を持ち込まないでほしい。
取り敢えずエリカは司波に任せるしか……ってあの野郎、妹を連れて特別閲覧室に向かおうとしてやがる!
「おい司波! この子はお前の友人なんだから、どうにかしてくれ!」
「悪いが俺は特別閲覧室に行かなければならないんでな。エリカはお前に任せる。行くぞ、深雪」
「はい、お兄様」
司波の奴、もしかしてこの前の仕返しのつもりか!? よりにもよって此処でそれはないだろうが!
「達也くん達の事はどうでもいいから、早くアタシと勝負よ!」
「あのなぁ、俺は早く壬生先輩を保健室に連れて行かなきゃならないんだぞ! 勝負なんか後で良いだろ!?」
「勝負なんか、ですってぇ!? アンタこれ以上千葉家を舐めるのもいい加減にしなさいよ!」
「何で君はそう言う風に捉えるのかなぁ!?」
結局、壬生を連れて行くのにエリカをどうにかするしかなかった。とんだ迷惑だよ、ホントに。
司波の奴も随分と癖のある相手を友人にしたな。面倒くさいったらありゃしない。
☆
隆誠が必死になってエリカを宥めようとしている最中、達也と深雪は特別閲覧室に到着していた。
「魔法式が無い、だと……!?」
中に入る前に達也は出入り口となっている開門中の大きな扉を調べていた。
目の前の扉は対戦車ロケットの直撃に耐える複合装甲の扉で簡単に破壊出来ない。更には魔法で破壊しようにも、幾重にも重ねた大規模な魔法式を構築しなければならない。
要するに物理や魔法でも簡単に通じない頑丈である筈の代物だ。だと言うのに不可解な点があった。
達也が
「お兄様、確か特別閲覧室の扉には強固な魔法が掛けられている筈では?」
「ああ。コレは本来、物理対策と魔法対策の二重に施された扉だ。物理はともかくとして、魔法でやろうにも並みの魔法師では簡単には開けられない。だと言うのに、この扉には
「そんな……!」
あり得ないと言わんばかりに深雪は目を見開きながら扉を凝視する。
普段から達也の言う事に何一つ疑う事をしない深雪でも、今回ばかりは容易に信じる事が出来なかった。
どんなに優れた魔法師でも、魔法式を破壊しても必ず痕跡は残る。当然それは深雪も例外ではない。尤も、達也のような『分解魔法』なら話は別であるが。
「確か兵藤はこの扉を開けたと言っていたな……」
達也は先程のやり取りを思い出す。自分と隆誠が会話した一部を。
『因みに連中がそのハッキングで使っていた機材はどうした?』
『
『……そうか。ならばもうデータを盗まれる心配はなさそうだな』
隆誠は確かに言った。特別閲覧室の扉を俺が開けて、と。
ならば一体どうやって開けたと言うんだろうか。
そう思いながら扉の先にはブランシュのメンバー三名が酷い顔になって今も気絶している。もう暫くの間は目覚める事は無いだろう。
あれは隆誠がやったのは間違いないと断定出来る。会話の中には『図書館にいるブランシュのメンバーは全て片付けた』と隆誠が言っていたので。
だが今は如何でもいい事だ。問題はあの連中が此処にいたという事は、間違いなくこの部屋にある閲覧用端末からハッキングとデータ抽出の作業を行っていた筈だ。
その前に手引きした紗耶香が扉を開いて中に招き入れた後、すぐに閉めて施錠した筈だ。そうなったら最後、内側から開錠しない限り簡単に開ける事は出来ない。
室内に入っていた誰もが簡単に開けられないと安堵しながら作業をしている最中、それを覆すように隆誠が自分達が知らない方法で扉を開けた。これが達也が今一番に気になってる疑問だ。
兵藤が力尽くで開けた。それは違うと否定。もしそうなら扉は今頃無残なガラクタとなり果てている。
もしくは魔法を使ってこじ開けた。それも違うと否定。二科生である筈の隆誠が、高度な魔法を使える技能は未だない。
他にも達也は入学式で隆誠と会って以降様々な情報を調べるも、入学試験の実技に関しては自分と同じく全くダメな方だった。理論に関してはそれなりに良かったと、自分と似た結果だったのは敢えて気にしないでいる。
それとは別に、先週あった魔法実習の課題で奇妙な出来事があった。
隆誠が魔法実習の課題でコンパイルの結果を密かに調べようとした際、あり得ない数字が表示されていたのだ。『224ms』と言う大変馬鹿げた数字が。深雪の最高記録である『235ms』を超えていて最初は目を疑った。
詳しく調べた結果、隆誠曰く『計測器の操作ミス』と言って周囲のクラスメイトも納得していたらしい。改めて今度は『703ms』と、明らかに普通の二科生では無理な結果となっていた。尤も、そんな情報で扉を開けたと言う証拠にはならない。
念の為に師である八雲から素性を調べても、入学前までは極普通の一般人として過ごしていたと期待外れの結果だ。だがそれとは別に、魔法抜きの自己流体術で自身に匹敵する実力を持っていると判明した事で余計に警戒する破目になった。つい先程の紗耶香との勝負も含めて。
何もかも一切分からないと完全にお手上げ状態となっている達也だが、ここである事を想定した。
「まさか、兵藤は俺と同じ『眼』と『分解』を――」
「あり得ません!」
達也が独り言の途中で深雪が即座に否定した。いきなりの事に流石の達也も少々驚き気味だ。
「その『眼』と『分解』はお兄様だけにしか使えない能力です! それだけは断言出来ます! お兄様以外に使える者がいるのは絶対に――」
「落ち着くんだ、深雪」
感情を昂らせると同時にサイオンが暴走気味になってる深雪を達也が抑えていた。その所為で周囲の気温が低くなり、気絶してる者達の身体が一部凍りかかっているが、気にも留めてない達也と深雪には如何でもいい事だ。
まるで癇癪を起こす子供をあやそうとする大人みたいな光景である。言うまでもなく結果的には深雪が子供で達也が大人のようだ。残念ながらそれを指摘する者がこの場に誰もいない為、今は完全に二人だけの空気となっている。もしもエリカや隆誠がいたら話は別だが。
「も、申し訳ありません! 深雪とした事が、お兄様のお手を煩わせてしまいまして……!」
「気にするな、深雪。俺も迂闊な発言だったと反省しているから」
「お兄様……」
数十秒後にはやっと落ち着いた深雪だが、今度はさっきと違って、非常に恥ずかしそうな表情で顔を赤らめながら達也に頭を下げて謝罪していた。
あやした後には即座に自分の非を認めて謝るのは、いつものパターンとなっている。もう慣れてしまってる達也は気にした様子を見せる事無く流している。
自身の頬に触れながら優しい笑顔を見せる兄を見た深雪は、途端にコロッと変わって恋する乙女のような表情となる。とても実の兄妹と思えないようなやり取りどころか、まるで恋人同士のような甘い雰囲気だ。
「取り敢えず扉については後回しだ。今はそこの壊れた端末とキューブを確認しよう」
「はい」
改めて扉を再確認する達也と深雪だが、結局のところ分からず仕舞いとなった。
唯一分かったのは、扉に施された魔法式を綺麗サッパリ消したのは隆誠であるという事だけだ。それをどうやったのかは本人に直接問い詰めたいが、他人の魔法について詮索するのは完全なマナー違反の為に
達也は携帯端末、深雪がキューブをそれぞれ確認しようとする。
(この端末、まるで爆発したかのような壊れ方だな)
ブランシュが用意した携帯端末を検証する達也に新たな疑問が浮上した。
隆誠がこの部屋に入って早々壊したと言っていたので、てっきり紗耶香と勝負する時に使用した武器で物理的に壊したんだろうと思っていた。
しかし、その予想は完全に外れている。自分が今見ている携帯端末は明らかに武器で破壊されていない。それどころか端末の内部から爆発している壊れ方だ。例えて言うなら、端末を使ってる最中に突然ボンッと急に破壊されたようなイメージと思えばいいだろう。
隆誠は超人的な身体能力の他、扉に施された強固な魔法式を消すと言う手段も持ち合わせている。だから携帯端末を内部爆発させる方法を持っていてもおかしくはない。と言っても隆誠は一応、第一高校二科生の魔法師だから、何らかの系統魔法を使って壊したと言う可能性が非常に高いが。
またしても厄介な疑問が増えたと少々辟易する達也だが、それは敢えて口に出さずに心に留めておいた。もし言えば、またしても深雪が反応してサイオンを暴走させる恐れがある。
壊れた携帯端末を確認してみたが、爆発によって中身の基板やデータチップが完全に破壊されている。これはもう使い物にならないから心配はないと、エンジニアでもある達也はそう結論した。
「お兄様、兵藤君の言った通り記録キューブも破壊されています。とてもデータを吸い出せる状態じゃありません。ですが、まるで
(やはりな……)
深雪の報告を聞いて、思った通りだと達也は確信する。確認した携帯端末がこうなったのだから、キューブもそうなっている筈だと既に予測していた。
今回ブランシュの企みを察知して見事に阻止した兵藤隆誠の行動は、学校側からすれば充分過ぎるほど評価に値する。それどころか表彰されてもおかしくない筈だ。そして三巨頭である生徒会長の真由美、風紀委員長の摩利、そして部活連会頭の克人も感謝と同時に称賛するだろう。
特に摩利の場合、隆誠が魔法を一切使わないで敵を倒したと知れば、『良かったら風紀委員会に入らないか?』と言ってスカウトするかもしれない。尤も、それが実現出来るかどうかは全く別だが。
しかし、それ等とは全く逆の反応を示す者達もいる。兵藤隆誠は風紀委員でもなければ、生徒会や部活連に属してない単なる二科生だ。それを魔法選民主義の一科生達が知れば、即座に面白くない反応を示すのが容易に想像出来る。主に嫉妬と言う負の感情を前面に出して。
挙句の果てには下らない因縁や嫌がらせをするかもしれないが、隆誠はそんな簡単にやられたりしないどころか、逆にとんでもない竹箆返しを相手に喰らわせるだろう。これは達也でも未だ知らない真実だが、現在長期欠席中のとある一科生二人を同性愛疑惑のレッテルを貼らせた真犯人が隆誠である。
それは別として、達也の兵藤隆誠に対する警戒度が今まで以上に爆上がりしていた。アレはもう一介の高校生ではない。もはや二科の劣等生と言う名の皮を被った超人的存在であると見ている。尤も、それは達也にも言える事なのだが、当の本人はすっかり棚上げしている状態だ。
一通りの確認を終えた達也は、(紗耶香を除く)図書館で気絶している者達を連行させようと、無線機を使って上司である摩利に要請をしたのであった。
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