再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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スティープルチェース編 九校戦の裏側に関する噂

 沓子が抱き着くだけでなく、訳の分からん追究をされる事に段々辟易する俺だったが、そこは何とか収まる事になった。後から一色や十七夜が来て、男の俺にずっと抱き着いてる沓子の大胆過ぎる行動に顔を赤らめるも、窘めながら引き剥がしてくれたのだ。尤も、それで沓子は完全に諦めていない様子を見せていたが、そこはもう気にしないでおく。

 

 その後には一高の本部天幕に戻ったら、そりゃもう大騒ぎとなっていた。俺のロアガン・ソロ優勝に感激してる中条を中心に、服部からも『見事だ』と称賛され、更には司波妹からも『おめでとうございます』と祝いの言葉を貰った。司波は相変わらずの無表情でありながらも妹と同様の言葉を貰うも、『三高と七高の口惜しがる顔が目に浮かぶな』と言って、俺も内心同感だと思った。特に吉祥寺が一番参っているだろう。昨日のロアガン・ペアで明智が披露した改造版の散弾型『インビジブル・ブリット』を見せられた上に、優勝を狙えると思ったであろう戦法が三位となれば猶更、な。

 

 因みに男子とは別に、女子ロアガン・ソロは四位だった。得点ゼロの惨敗に終わるも、男子の俺が『海の七高』から優勝を勝ち取れたから問題無いとの事だ。あと他にもピラーズ・ブレイク・ソロは男女共に予選を突破していた。対戦相手を全く寄せ付けなかった司波妹に対して、男子の方はひやりとさせられる場面があったらしい。一高からすれば、二日目の結果は一日目と同様に悪くないだろう。

 

 現在は七高が一八〇点で一位、一高が一三〇点で二位、三高が一一〇点で三位。現時点で七高が二位と比べて少し引き離すように暫定トップになっているが、そこは然して問題無く、一高が警戒すべき相手は三高としか見ていない。こんな事を言っては大変失礼だが、七高の天下はここまでになる。三日目以降から一気に変わり、新人戦のロアガン以外は大した結果にならないだろう。『海の七高』は水上競技に特化してる反面、その他の競技は一高や三高に比べればレベルが低い。今までやった過去の九校戦でも、水上競技以外目立った結果が一切無いのだ。

 

 それを示す証拠と言う訳ではないが、夕食時を取ってる一高の面子は幸先の良いスタートのような雰囲気だった。その時には修哉や紫苑だけでなく、北山や光井など他の女子達からも俺が一位を取った事にべた褒めされて、少しばかり居心地が悪かったのは内緒にしておく。

 

 夕食を終えた際、北山から再び夜のお茶会に参加しないかと誘われた。昨日はロアガン・ソロに控えての準備を理由に断っていたが、流石に二度も続けて断る訳にはいかないので、彼女の好意に甘える事にした。当然、修哉と紫苑も参加する予定になっている。だが今回は司波がCADの調整を終えてからで、時間が少しずれる事になるそうだ。

 

 集合時間まで少々暇になる為、明後日に修哉が出場するシールド・ダウン・ソロに向けて、軽い手合わせをしようと運動場へ行く事にした。

 

 

 

 

「はぁぁぁっ!」

 

「おっ、今のは中々良かったぞ」

 

 運動場には九校戦に出場する選手達もいる中、俺と修哉は剣道部でやっている練習そのモノの手合わせをしていた。

 

 流石に竹刀でやる訳にはいかないので、今回は前以て用意したチャンバラ棒を使っている。竹刀より若干柔らかくて、当たっても怪我に響く事の無いチャンバラ棒を、な。

 

 加えて、今の修哉はバンドを着けたままでやっている。本当なら外そうかと思ったのだが、運動場にいるのは殆どシールド・ダウンに参加する選手達だから、チョッとした誤認識をさせようと、今まで通りの練習をする事にした。尤も、明日は人目が付かない場所でバンドを外してやる予定だが。

 

 

「何だよあの二人……!」

 

「どっちも速過ぎるぞ……!」

 

「一高の兵藤とやってるのって、確かシールド・ダウン・ソロに出場する天城修哉だったか……」

 

「アイツも相当な実力者みたいだな」

 

 

 先程まで練習していた他校生達は俺達の手合わせを見ていた。と言うか、もう完全に明後日のシールド・ダウン・ソロに向けて観察してるように見受けられるが、俺としては予想通りの反応だから、修哉の実力を誤認識させようと気にせず続けている。何だか続々と見物人が増えてきてるが、そこは無視しておく。

 

 修哉も俺の思惑に気付いているのか、他校生達から観察されても止めようとする気配を見せていない。それどころか少しばかり呆れたような表情をしている。

 

 (他校生達から見て)少々速い打ち合いをして十分近く経ってから、俺と修哉は少しばかり距離を取る。

 

「よし修哉、折角だから俺の技を披露しようじゃないか」

 

「え?」

 

『!?』

 

 俺の発言に修哉が目が点になり、見物人達も予想外と言わんばかりにざわめき始めていた。

 

「良いのか? こんな場所で、お前の技を見せちゃって」

 

「別に構わん。見られたところで大して問題は――」

 

「大有りに決まってるだろうが!!」

 

 見物人の中から突然割り込んできたのは、我等が第一高校剣術部員である三年の桐原だった。その後にはマジック・マーシャル・アーツ部の部長である三年の沢木も出てくる。どうやらこの二人、明日のシールド・ダウン・ペアに向けての練習をしていたようだ。

 

「何考えてんだよお前は!? 敵に塩を送るにしてもソレは絶対ダメだ!」

 

「そうだよ、兵藤君。こればっかりは俺も流石に見過ごせないよ」

 

「は、はぁ……」

 

 桐原と沢木が強くダメ出しをしてくるのは、どうやら俺の技は武術をやってる二人からすれば相当不味いらしい。まるで機密扱いされてるような気がして、いくら何でも大袈裟過ぎるんじゃないかと思う。

 

 結局のところ、練習中に他校生達の前で技を披露するのはNGだと言われてしまった。流石に先輩方からの忠告を無視してまでやるほどの反骨精神を持ち合わせていないので、俺は渋々従う事にした。因みに俺がやらないと決めた直後、見物中の他校生達から舌打ちをしているのが何人もいたことを補足しておく。その後には監視の意味合いも兼ねてか、俺と修哉は先輩二人の軽い手合わせをするだけに留まっている。

 

 そんな中、俺に予想外の来客が来るのであった。

 

 

 

「悪いな兵藤、邪魔をしてしまって」

 

「別に良いよ。そろそろ終わりにしようと思ってたから」

 

 見物人達の中から新たに声を掛けて来たのは、三高の一条将輝だった。今は場所を変えて、人がいない場所にいる。コイツはつい先程まで俺達の手合わせを興味深そうに見ていたが、ある程度経ってから声を掛けて来たのだ。因みに修哉は引き続き桐原と沢木の手合わせを続けるみたいで、俺が戻ってきたら止めて合流する予定になっている。

 

「今日のロアガン・ソロには凄く驚かされたぞ」

 

「ハハハ。流石の吉祥寺も俺が的を全部狙うだけでなく、スピードも重視していたなんて思わなかっただろう?」

 

「と言うより、あんな出鱈目なやり方をするお前がおかしいんだがな」

 

 俺の戦法に思うところがあったのか、一条は苦々しい表情をしながら言い返してきた。この言い方からして、吉祥寺も相当口惜しがっていたのが何となく分かるが、敢えてそこは触れないでおく。

 

「んで、俺に一体何の用事なんだ?」

 

 一条が深刻そうな表情で『話したい事がある』と言ってきたので、俺はこうして場所を変えたのだ。恐らく前夜祭パーティで話したスティープルチェースの件かもしれないと思いながら。

 

「あ、ああ。この前のパーティで話したスティープルチェースの事についてな」

 

 やはり当たっていたようだ。しかし、俺には一つ気になる事がある。

 

「俺より先にその話をした司波の方が良いんじゃないのか?」

 

「最初はそのつもりだったんだが、作業車で凄く忙しそうにしててな」

 

 成程。確かにアイツはCADの点検をして大変忙しいから、その最中に声を掛けるのは野暮だと思って、急遽俺に変えたようだ。

 

 修哉達の手合わせをしていた俺なら良いのかと突っ込みたいが、折角一条が俺に声を掛けて来たのだから、此処は敢えてやらないでおくとする。

 

「じゃあ俺の方から後で司波に伝えとくよ」

 

「そうしてくれると助かる」

 

 流石に一条としても同じ話を二度もする気がないみたいで、俺が伝える事を訊いた途端、少しばかり安堵した表情になっていた。

 

 そして本題に入ると、ベンチに座る俺を見た一条は改めて表情を切り替える。

 

「どうも、思っていたよりきな臭いぞ」

 

「何か分かったのか?」

 

 俺からの問いに、一条は正面から受け止めるように答えた。

 

「まだ分かったと言えるほどじゃない。ただ、今回の九校戦には国防軍の‶対大亜強硬派"が噛んでいるようだ」

 

「その派閥が、今回の九校戦の裏で暗躍しているのか?」

 

 軍人ではない俺も強硬派の存在を知っている。戦争の為に軍を取り込もうとしている派閥で、ニュースでも大亜連合に対して中々過激な発言をしている軍人もいた。

 

「ああ。中心の酒井大佐は、俺たち魔法科高生が大学を経由せず、直接軍に志願することを望んでいるらしい」

 

 それに、と言う一条は更に付け加えようとする。

 

「酒井大佐が特にお前を国防軍に加えたいと言う噂もあるみたいだぞ」

 

「俺を、か」

 

 軍や警察が俺をスカウトしたがっている事を九島から聞いていたから、ある程度の予想はしていた。

 

「大方俺が九校戦で披露した魔法や技だけでなく、去年の横浜事変で呂剛虎を倒したのを見て、是非とも確保したいと考えたんだろう?」

 

「恐らくな。だが、これはまだ根拠の無い噂に過ぎない」

 

「噂が有ろうが無かろうが、そう言う話が軍から出た時点で馬脚を現しているも同然だ」

 

 九島烈も当然知っている筈だ。寧ろ、知らない方がおかしいだろう。しかし、この前俺と久しぶりに会って、何故その話題を出さなかったんだろうか。

 

 軍の内部事情に対する印象を悪く与えたくなかったと言う理由があるにしても、去年の九校戦の時には、国防軍の特殊部隊である独立魔装大隊について密かに教えてくれたから、何かしらの警告をしてもおかしくない。今回それをやらなかったのは、彼にとって相当不味い事情があった、と言う可能性もある。

 

「だけど、良く特定の人物まで調べる事が出来たな」

 

 いくら一条家が十師族だからって、軍との繋がりを持っていれば問題視されてもおかしくないのだが。まぁ、そこは一般人の立場である俺がどう言う指摘すべき事じゃない。

 

 俺の指摘に、一条は途端に苦い表情を浮かべた。

 

「酒井大佐は、親父の昔の知り合いなんだ……」

 

 その発言を聞いた俺は思わず驚いてしまった。

 

「おい一条、まさか……」

 

「違うぞ、兵藤! 誤解するな!」

 

 当主の一条剛毅が知り合い経由で俺に関する情報を渡したのではないかと言おうとしたが、その途中で一条は狼狽を露わにしながら即座に否定した。

 

「知り合いだったのは昔のことだ!」

 

 今はもう全く関係を持ってないと必死に言う一条に、俺は本当だと内心安堵した。付き合いは短いけど、コイツは実直で堅実な性格をしてるから、平然と嘘を言ったりしない。

 

 だがそれでも向こうは弁明を続けようとする。

 

「四年前の佐渡侵攻事件の最高司令官だったのが酒井大佐で、当時義勇軍だった親父は部隊を回してもらえるよう掛け合っただけだ。だが大佐は沖縄戦闘後、新ソ連へと逆侵攻しようとして――」

 

 長々と話してくれているが、要するに『一条剛毅と酒井大佐は激しい口論の末に交流を断った』との事だ。

 

 二人に相当込み入った事情があったんだと思いながらも、俺は一条の話をちゃんと聞いている。

 

「――『反乱なんて真似をしなければいいが』と、親父と話した時も懸念していたんだが……」

 

「反乱だと?」

 

「ああ、いや……」

 

 聞き捨てならない単語を聞いた俺が思わず鸚鵡返しをすると、一条は過激な発言をしてしまったかと途端に焦り出す。

 

「酒井大佐のグループに反乱の疑いがあるとかいう事じゃない。『そのうち反乱でも起こすんじゃないか』と噂されている程度だ」

 

「俺を国防軍に加えたい噂と同様、未だに根拠はないのか?」

 

「そうらしいが……とにかく!」

 

 余りよろしくない方向に話が進んでいると感じたのか、一条は声を張り上げて強引に話題を元へ戻そうとする。

 

「今は一条家と何の繋がりもない! 以前の知り合いの伝手で分かった事だ! 今回もせいぜい若い魔法師を集めて大亜連合に攻め込もうと考えているぐらいだろう」

 

「それでも充分穏やかじゃない話だが……まぁ兎に角、教えてくれてありがとう。司波には俺の方から伝えておくよ」

 

「あ、ああ。だが兵藤、間違っても反乱の事については……」

 

「分かってるって。そこは適当に暈しとく」

 

 念を押してくる一条に、俺は苦笑しながら頷いた。

 

「あ、そうだ。急に話を変えて悪いんだけどさ」

 

「何だ?」

 

 話題を変える俺に、一条は何の疑問を抱く事なく訊いてきた。

 

「九校戦が終わった後に俺の家族を連れて、お前の家に泊りがけで遊びに行っても良いか?」

 

「……………は?」

 

 今までと全く関係の無い話をされた一条は、突然の事に目が点になるのであった。




原作では達也と将輝が話してますが、此方ではリューセーが代わりに聞いています。

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