再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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原作には無いオリジナル話です。


スティープルチェース編 シールド・ダウン 弟子の活躍

『それでは午後から、男子シールド・ダウン・ソロが開始となります!』

 

 

 隆誠と別れた修哉は、一高の代表選手としてリングに上がっている。運が良いのか悪いのか、一番最初に試合をする事になっていた。

 

 対戦相手は見るからにガタイの良い体格をした八高選手で、両手用の分厚そうな大盾を持っている。

 

 修哉は相手と比べて少しばかり劣るかのような細身を帯びた体型で、片手持ちの盾を右腕に固定している。

 

 一見すると明らかに八高選手が有利に見えてしまう。しかし、シールド・ダウンは魔法を使う競技である為、見た目や体格だけで勝敗が決まる訳ではない。

 

(あの一高選手の体格と盾を見る限り、やはり一昨日の夜の練習と同様、速さと手数で攻めてくるタイプで間違いないだろう)

 

 今も修哉と相対している八高選手は、冷静に分析しようとジッと見ていた。

 

 一高は去年に優勝三連覇を飾っている事もあって、選手の質も極めて高い。今行われている殆どの競技も上位を取っており、同じく優勝候補と見られている三高と拮抗している状態でもある。

 

 これから自分と対戦する天城修哉と言う選手についての情報を事前に調査するも、殆ど皆無で全くの無名だった。精々が非魔法競技のクラブの剣道部で上位の成績を収めている程度であり、魔法に関する実力は全く不明。

 

 普通なら数字持ち(ナンバーズ)でもなければ、それらと全く関係無い無名選手など恐れるに足らないと思ってもおかしくない。だが、八高選手はそんな油断は皆無どころか、今回の競技で出場する選手の中で一番に警戒している。

 

 天城修哉には、ある人物(・・・・)と共通しているところがある。九校戦で一番に注目されている兵藤隆誠と同じ剣道部に所属している他、一昨日の夜には二人が練習とは言い難いほど凄まじい攻防戦を繰り広げていたから。

 

 第一高校の兵藤隆誠。去年の九校戦では魔法師の常識を粉々に打ち砕くほどの魔法や技を披露した事で、『老師』と称される九島烈のお眼鏡に叶うほどの有名人となっている。今年の九校戦で出場した競技のロアガン・ソロでも、『海の七高』の記録を簡単に追い越して優勝を飾っているのは、今でも鮮明に憶えている。

 

 十師族以上の実力を見せるその彼が、一昨日の夜で今日の試合に備えて天城修哉の練習相手を務めていた。あの出鱈目な実力を持つ男が指導するようにやっていたと言う事は、目の前の選手は途轍もない実力を持っていると考えた方が良い。八高選手はそのように考えている。

 

(初めから全力で行かせてもらう!)

 

 故に、八高選手は最も警戒すべき相手と認識し、初戦にも拘わらず決勝戦をする気概で挑もうとする。

 

 ドッシリと大盾を持ち構える八高選手に、修哉も相手を一番の強敵を見るように構えていた。

 

 そして試合開始の合図が鳴った瞬間――

 

「がっ!!」

 

 突如、防御態勢に入っていた筈の八高選手が突然吹っ飛んでしまった。

 

 文字通り、彼はリングに立っている筈の両足は離れてしまい、攻撃を受けたであろう盾も罅割れている。

 

 まるで成す術がないように、吹っ飛んだ八高選手はそのまま場外に落ちてしまう。

 

「………え、あれ?」

 

 すると、真剣な表情をしていた修哉は、吹っ飛んだ八高選手を見て途端に目が点になっていた。それどころか首を傾げているように思われる。

 

 だが、その修哉の心情とは別に、会場全体は急にシンと静まり返っている。

 

『………………………』

 

 観客達だけでなく、審判も固まっている様子だった。盛り上げる実況者すらも全く声を出していない。応援席にいる隆誠と紫苑は、周囲の反応を見て『どこかで見た光景だ』と懐かしそうに見ているが。

 

「……え、えっと、相手選手が場外に落ちましたから、俺の勝ちで良いんですよね?」

 

 やっと状況を呑み込めたのか、修哉は周囲に向かってそう言い放った。その直後、段々とざわめくどころか、一気に騒ぎだそうとする。

 

 審判も漸く勝利をアナウンスした事により、修哉は問題無く一回戦を通過した。敗北した八高選手は吹っ飛ばされたにも拘わらず、今に何が起きたのかが分からない状態だが。

 

 

 

 

 

 

「ははは~。修哉の奴、完全に去年の俺みたいじゃないか」

 

「まさか一撃で倒しちゃうなんて」

 

 観客席にいる俺――兵藤隆誠は、弟子の修哉が見事に圧勝した事で拍手を送っていた。紫苑は俺と違って苦笑気味だけど、な。

 

 隣に座ってる壬生なんて、口を開けたまま呆然としている。自身の弟分があそこまで強くなったのは完全に予想外だったのだろう。

 

「一瞬で接近するスピードだけでなく、相手選手が持つ盾を砕くほどのパワー……もしあの時の模擬戦でフライングしなければ、七宝はあっと言う間に負けていただろうな」

 

 上の席に座っている司波は、精霊の眼(エレメンタル・サイト)を使わずとも分析していた。前に修哉が相手をした七宝の事を思い出しながら。

 

 確かにそうかもしれない。もし修哉がフライングをしなかったら、七宝は一瞬で倒されていただろう。何も分からずに気絶した状態で、な。

 

「おいおい、マジですげぇじゃねぇか!」

 

「七宝琢磨との模擬戦よりも、更に早くなったような気がする……」

 

 あの時の模擬戦を観ていた桐原と幹比古も、改めて修哉の実力に驚くばかりだった。

 

「隆誠くん! アレは一体どう言う事よ!?」

 

「前に俺と模擬戦をした時とは全然比べ物にならねぇぞ!」

 

 修哉の実力に抗議するように、エリカとレオが俺に向かってそう言ってきた。

 

「まぁ、アレが修哉の本来の全力だと言っておく」

 

「本来の全力……チョッと待ちなさい、隆誠くん。まさかとは思うけど、前にやったあたしとの試合で、天城くんは本来の全力とやらを出していたのかしら?」

 

 うわっ、エリカが凄く鋭い。

 

 軽く教えただけなのに、もうそこまで辿り着いたのかよ。

 

 どうしようか。今此処で真実を話したら、エリカが大会中にも拘わらず爆発するのが容易に想像出来てしまう。問い詰められるのを覚悟していたとは言え、周囲にお構いなしの暴走は流石に勘弁して欲しい。

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハッハ!」

 

 場所は変わってVIPルーム。そこには先程まで普通に観戦していた九島烈が、修哉が圧勝したシーンを見た途端に大笑いしていた。傍にいる護衛は突然の事に狼狽しているが、彼はそんなの全くお構いなしである。

 

 彼は隆誠が出場する競技を観る為だけに、無理して九校戦に顔を出していた。その目的が済んだ以上、後は適当な理由を付けて退散するつもりだったが、予想外な試合を見た事で考えを改めている。

 

(まるで兵藤君みたいではないか!)

 

 去年の九校戦で、新人戦アイス・ピラーズ・ブレイクで隆誠が、初戦で十秒足らずで勝利した事を。今やってる競技は全く異なっても、一瞬で相手を倒すシーンはあの時と全く同じだった。

 

(確か彼は兵藤君の友人だったな)

 

 大笑いした後の九島はふと思い出した。隆誠と話している際、今年の九校戦で二人の友人が出場すると言っていた。参加する競技は男子シールド・ダウン・ソロ、女子専用競技のミラージ・バットだと。今見ている男子シールド・ダウン・ソロに出場している天城修哉は、間違いなく彼の友人だと断定する。

 

 天城修哉が見せたあの出鱈目な実力は、間違いなく隆誠が大きく関わっているだろう。それどころか、彼の指導による賜物と見るべきかもしれない。

 

(どうやら兵藤君は実力だけでなく、指導に関しても大変ずば抜けているようだ)

 

 またしても隆誠に驚かされる九島だが、それは勿論良い意味でだった。

 

 どのような指導で友人を強くさせたのかを非常に気になる彼だが、今はそんな事は如何でも良いと思っている。今すぐ来賓席に向かって直接観戦しようと考え始めている。

 

 同時にこうも予想している。恐らく男子シールド・ダウン・ソロは、間違いなく天城修哉が優勝すると。加えてあの隆誠が友人を鍛えてまで九校戦に出場させたのだから、自分では考えられない技も披露する筈だと確信している。

 

(無理をして此処へ顔を出した以上、最後まで観るべきか)

 

 パラサイドールの件で今も疲弊している筈の九島だが、予想外の楽しみが出来てしまった事で既に如何でも良くなり始めていた。輝かしい若者の活躍を観るのが彼の生き甲斐となっているから。




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