再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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スティープルチェース編 シールド・ダウン 弟子の優勝

 男子シールド・ダウン・ソロで行う会場は決勝と言う事もあってか、観客席が殆ど埋まっていた。その中には隆誠だけでなく、紫苑や壬生に桐原、そして達也一行も勢揃いしている。

 

 リングの中央には一高の天城修哉、三高選手が対峙している。片手用の盾を右腕に装着してる細身の修哉に対し、ガタイの良い体格をしている三高選手は両手用の大盾を持っている。

 

 この光景に観客達は見覚えがあった。修哉が初戦で相手をした八高選手は、今の三高選手と殆ど似ている。だからこの決勝戦は初戦の焼き直しになるのではないかと、少々失礼な考えをしている観客がいるのは仕方ないかもしれない。

 

 それは三高選手も同様に考えているが、八高選手のようにはいかないと、一切の油断が無い表情となって修哉を見ている。試合の合図が鳴った瞬間、即座に防御態勢を取ろうとするだろう。

 

(どう言う事だ?)

 

 三高選手は修哉を見て違和感を感じていた。二回戦以降から、彼は試合が始まる数秒前には必ず突き技の構えを取っていたのだが、今は全くその気配が無い。

 

 シールド・ダウンのルール上として、試合が開始するまで魔法を発動させてはいけない。それは当然、試合前に待機状態にさせるのも不可になっている。しかし、魔法と全く関係の無い構えを取る事には一切問題無い。故に修哉はこれまでの試合で牙撃の構えを取り、試合が始まった直後、瞬時に盾に想子(サイオン)を纏わせながら突進を仕掛け、一瞬で倒すと言う勝利を飾っていた。因みに今までの試合を観ていた達也は、見事にルールの穴をついたなと、隆誠を見ながら内心そう考えていた程だ。

 

 修哉は牙撃の構えを取らないどころか、両腕をだらしないように垂れ下げている状態だった。殆ど隙だらけな構えと言ってもおかしくないが、三高選手は何か狙いがあるのではないかと考えている。

 

(だが、それでも俺が勝つ!)

 

 相手の考えが分からずとも、それを打ち砕いて勝利するのが三高選手のスタンスでもあった。加えて三年生である彼としては、是が非でも今年こそ三高の総合優勝を飾ろうと己を鼓舞している。

 

 その瞬間、決勝戦開始の合図が鳴り響く。

 

 修哉が攻撃に移るのを見た三高選手は、即座に盾を両手で持ち構えながら全力で防御しようとする。

 

(何だ、この異様な遅さは?)

 

 三高選手は盾を振るう修哉の攻撃を見事に防ぐも、思わず動揺してしまう。

 

 修哉は今までの試合では、瞬殺とも言うべき圧倒的な速さと攻撃力で相手を倒していた。なのに、決勝戦ではそれらと全く正反対な攻撃を繰り出している。素人から見ても、修哉の攻撃は余りにも遅すぎるのだ。

 

 この違和感に三高選手だけでなく、観客達も同じ気持ちだった。その中で隆誠だけはニヤリと笑みを浮かべているが。

 

 しかし、状況は一変する。攻撃を仕掛けた筈の修哉が突如消えてしまったから。

 

 いきなりの事に己の眼を疑う三高選手だったが、すぐに相手を見つけた。だが、自身の周囲には複数の修哉が現れたり消えたりの繰り返しが行われている。

 

「な、何だコレは!?」

 

 余りにも異様な光景に三高選手は狼狽の声を出してしまう。それは観客達も同様で、どよめきの声が彼方此方と上がっている。

 

「くっ!」

 

 今までとは全く異なる動きを見せられるも、三高選手は自身の勘を頼りに遠距離魔法を発動し、本体と思われる修哉に狙いを定めて放った。命中したかと思いきや、まるでハズレだと嘲笑うように修哉の姿は消えていく。

 

 ならば今度は直接攻撃を仕掛けようと突進しながら両盾を振るうも、修哉は悉く相手の攻撃を躱し続けている。

 

「くっ、どれが本物なんだ!?」

 

 三高選手は攻撃を仕掛けても修哉に全く当たらない所為で完全に翻弄されていた。

 

「こんな幻影魔法が……!」

 

「魔法じゃなくて技ですよ、これは」

 

 聞き捨てならないと言わんばかりに、三高選手を翻弄している修哉は思わずそう口にした。

 

 修哉の言う通り、これは隆誠が教えた技だった。名は『(りゅう)(すい)(まい)』で、『放浪する剣信(けんしん)』のキャラ――二乃(にの)(もり)紅紫(あかし)が使う得意技。緩急自在に動き回る移動法であり、残像を残しながら分身するように移動し、相手を幻惑する。この技に嵌ってしまえば、捉える事が不可能になってしまう。

 

 完璧に使いこなせる隆誠とは違って、今の修哉が見せている技は未だに荒い部分がある。そこを突けば三高選手の勝機があるかもしれないが、生憎と今の彼は術中に嵌っている状態で無理だった。

 

 しかし、『流水の舞』は単なる移動法の技に過ぎなく、その後が本番である。

 

「ど、どれが本物なんだ!?」

 

 本体と一緒に複数いる残像の修哉が、徐々に三高選手に近付き始めていた。自分に攻撃を仕掛けると本能的に理解した彼は何度も遠距離魔法を発動させるも、命中してるのは全部残像だった。

 

 もういっその事、障壁魔法を展開させて防御に集中しようかと考えた直後、途端に残像が消失する。いつの間にか跳躍している修哉が目の前に突然現れ――

 

「!?」

 

 三高選手は咄嗟に大盾を前に出して攻撃を防ごうとする。しかし、その選択は誤りだった。

 

 いつの間にか盾に想子(サイオン)を纏わせていた修哉は、三高選手の大盾目掛けて回転するように高速の三連撃を繰り出す。

 

 この斬撃こそが本命で、二乃(にの)(もり)紅紫(あかし)が『流水の舞』から繋げる三連攻撃の『円天(えんてん)(けん)()』。本来は刀剣類を使用する筈の技だが、そこを隆誠が盾用としてアレンジしている。

 

 そして修哉が着地をした瞬間、三高選手の大盾には三つの線が入り、綺麗に四分割となって切断されていた。

 

「え、な、なに、が……?」

 

 自身の大盾がバラバラにされても、三高選手は全く事情が呑み込めないように呆然と突っ立っていた。

 

 盾が切断されたと言う事は、即ち破壊されたと言う意味でもある。故に――

 

『さ、三高側の盾が使用不能状態になりましたので、男子シールド・ダウン・ソロは一高の天城選手の勝利です!』

 

 実況者は修哉の優勝を宣言した事で、会場は一気に騒然となるのであった。

 

(あ、紫苑と紗耶香先輩……)

 

 優勝した事に今一つ実感が湧かない修哉だったが、観客席を見た際に偶然に紫苑と紗耶香を発見する。

 

 今の彼女達は感動の涙を流して拍手をしながらも、自分に『おめでとう!』と言っているのが分かった。それを見た修哉は思わず二人に向かって、右手を天に突き上げるのであった。

 

(ってか、何でリューセーは桐原先輩と千葉とレオに問い詰められてるんだ?)

 

 喜んでいる彼女達とは別に、自分に技を教えてくれた師匠の隆誠が、何故か桐原達に問い詰められてる光景を不思議そうに見ていた。




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