再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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すいません、今回は短い幕間話です。


スティープルチェース編 ミラージ・バット 決勝前

 予選に勝利した事で紫苑は漸く自信を付ける事が出来た。こう言う所は修哉と似た者同士だと思ったのは俺の胸の内に秘めておく。

 

 紫苑が冷静な状態で試合出来たのは、聖書の神(わたし)のオーラを僅かに注いだからだ。椅子に座らせて瞑想させてる最中、肩を優しく叩いてる時に。勿論ソレはセクハラではなく、以前に魔法大学で講義する時に使った手段である。

 

 因みに啓を退室させたのは、俺の裏技を見せない為だ。この世界の人間(こども)聖書の神(わたし)のオーラを視認する事は出来ないが、万が一の場合を考えて退室させた。特に司波の耳に入れば、な。

 

 と言っても、決勝前にもうソレはやらない。あくまでガチガチの緊張状態を解す為の緊急措置みたいなモノの他、既に自信を付けた今の紫苑にはもう必要無いから。

 

 予定通りと言うべきか、光井ほのかと里見スバルも楽々と予選通過して決勝に出る予定だ。

 

 決勝で一高の選手が三人も出場する為、実力を考えれば一位から三位を独占出来る筈。その中で紫苑には一位を取って欲しいので、是非とも頑張ってもらいたい。

 

 

 

「紫苑、調子はどうだ?」

 

 啓がCADのチューニングをチェックして退室した後、残っている俺は紫苑の調子を尋ねた。

 

「大丈夫よ。まだ緊張は残ってるけど、前みたいに酷くないわ」

 

 予選前と違って自信が付いてる紫苑はハッキリと答えてくれた。

 

 確かに今の彼女は多少の緊張はあっても、決勝に支障が出るほど酷いモノではないのは俺でも分かる。

 

「そうか。なら、決勝でアレを――」

 

 俺が教えた例の魔法について話そうとするところ、誰かが入ってきた。

 

「兵藤君、佐伯さん、お邪魔するよ」

 

 隣のブースで中条と最終調整を行っていた筈の里美スバルだった。

 

「誰かと思えば里美じゃないか」

 

「里美さん、何かあったの?」

 

 突然の入室者に俺と紫苑は不思議そうに彼女を見ていた。

 

 同じ学校の選手であってもミラージ・バットは個人戦だから、決勝前のタイミングでこれから戦う選手の許を訪ねて来るのは、少しばかり礼に失する行為だった。

 

「チョッと君達にも挨拶しておこうと思ってね」

 

「挨拶?」

 

「私達に?」

 

「そう、君達に」

 

 里美が演劇部に入ってるからか、勿体ぶった仕草で頷いていた。彼女がこう言う事をするのは一年前から知ってるから、今更もう気にならない。紫苑だけは少々困った表情をしているが。

 

「司波君にも言ったけど、この試合、僕が勝たせてもらう」

 

「ほう」

 

「……むっ」

 

 いきなりの勝利宣言に紫苑が少しばかり不快な表情になった。

 

 いくらチームメイトであっても、一方的に勝つと言われたらそうなるのは無理もない。

 

「紫苑はともかく、何故俺にも言うのかが全く理解出来ないんだけど」

 

 俺は司波と違ってエンジニアではなく選手だ。今回俺が紫苑に付いてるのはあくまでコーチ役に過ぎない。

 

「兵藤君にも挨拶するのは当然じゃないか。君がコーチした直弟子の天城君はシールド・ダウンで圧倒的な実力で優勝を飾って、そして佐伯さんも予選で圧勝したんだからさ」

 

 そう言えば紫苑が予選を終えた後、里美や光井が相当驚いていたそうだ。練習の時とは違って凄く早かったとか。

 

 練習中ではバンドを付けたままやらせていた為、それを外して本気になった紫苑を見るのは初めてだから、彼女達が驚くのは無理もない。

 

「因みにそれは司波に対しても似たような事を言ったのか?」

 

「勿論。司波君の不敗神話は今日でストップすると言ってきたよ」

 

 俺の問いに里美は当然と言わんばかりに答えた。

 

 司波の事だから、彼女からの勝利宣言を聞いて『俺が勝ったわけじゃない』とか言いながら苦笑していたに違いない。

 

 因みに里美が言った『司波の不敗神話』とは、恐らく司波が担当した選手が去年からお互いに負けただけで実質無敗を続けている事を言ってるのだろう。因みに今年の九校戦でも女子ロアガン・ペアの明智、女子ピラーズ・ブレイク・ペアの北山、ソロの司波妹、男子シールド・ダウン・ペアの桐原、新人戦ロアガン男子、新人戦シールド・ダウン女子と全競技で優勝している。

 

「と言う訳で兵藤君、佐伯さん。今年作られるだろう君達の不敗神話を打ち破ってみせる」

 

 もしかしたら里美は、予選で本気になった紫苑を見た事で相当警戒してるかもしれない。此方にプレッシャーを与えるだけでなく、自分自身にも鼓舞する為に強気な態度を露わにしたのだと俺は察した。

 

 正直に言って、その態度は余り良くないから――

 

「そうかい。楽しみにしてるよ」

 

 俺は余裕な笑みを浮かべながら言い返す事にした。

 

 

 

「んで、どうする紫苑?」

 

「……言ってくれるじゃない、里美さん……!」

 

 言うべき事を終えた里美が自身のブースへ戻った後、紫苑は今までと違う雰囲気を醸し出していた。

 

「不敗神話なんて全然興味無いけど、修哉が優勝したなら、私も優勝しないとリューセー君の弟子は名乗れないわね」

 

「いや、別にそこまで気負わなくても良いんだが……」

 

 予選の時とは違って凄くやる気を出す紫苑に、俺は少しばかり押され気味だった。

 

 普段の彼女はこんな性格じゃないが、時折急にスイッチが入る事がある。特に友人の俺や修哉の事に関しては、な。

 

 けどまぁ、決勝でこれ程やる気を見せてくれるのであれば、間違いなく優勝出来るだろう。どうやらこれは里美に感謝しなければならないようだ。

 

「ところでリューセー君、あの魔法はどのタイミングで使えば良いかしら?」

 

「そうだな。里美だけでなく光井もいるから、使うとすれば――」

 

 紫苑のやる気を削がないよう、俺は彼女に合わせて最後の打ち合わせを行う事にした。




次回でミラージ・バット決勝をやります。

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