再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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スティープルチェース編 ミラージ・バット 弟子の優勝+少女の涙

(やはりこの競技は光井が有利だな)

 

 ミラージ・バット、決勝戦。

 

 第一ピリオドが始まって早々、俺が予想した通り殆ど光井の独壇場になっていた。

 

 紫苑も負けじと追いかけてはいるんだが、『光のエレメンツ』故の先読みが出来る光井が一歩先に動かれてしまう。

 

 現状としては一位が光井、二位が紫苑、三位は里見と言う流れだった。一高の三選手が揃って上位に入っている事で、(一高側の)観客達は大いに盛り上がっている。

 

 スタッフ席に座っている司波は相変わらずの無表情で、中条と啓はハラハラしながら見守っている。そして俺は光井が本当に厄介だと言う事を改めて認識しながら内心嘆息していた。

 

 如何でも良くはないが、里見は試合中に内心後悔しているだろう。光井と紫苑に余計な事を言った所為で、余計に引き離す結果を作ってしまった事に。

 

 この決勝戦は光井VS紫苑のような流れだ。里見以外の選手達も、二人のレベルの高さに諦めの表情が浮かびそうなのがチラホラいる。

 

 紫苑が本気でやれば余裕で光井に追いつくけど、それだとぶつかってしまう恐れがある。故意ではないにしろ、この競技では選手に接触したら妨害行為と見なされてしまって失格になる恐れがある。

 

 となれば、やはりあの魔法を使わなければならない、か。

 

 第一ピリオドは、光井の実力を測る為に敢えて様子見としていた。だがもう既に本気を出していると分かった以上、第二ピリオドからは奥の手を使わせるとしよう。

 

 

 

「どうだった、紫苑」

 

 第一ピリオドが終わり、第二ピリオドに向けての休憩と準備をしている中、俺は椅子に座っている紫苑に声を掛けていた。

 

「やっぱり、一筋縄で勝てる相手じゃないわ」

 

「うん、見てる俺もそう思った」

 

 紫苑が答えながら光井の方を見ており、俺もつられる様に視線を向けた。その先には闘志を燃やすように意気込んでいる光井に若干たじろいでいる司波がいる。

 

 彼女の様子を見る限り、第三ピリオドが終わるまで、ずっとあのペースでやると見ていい。それだと光井の優勝が決まって、紫苑は準優勝と言う形で終わってしまうのが容易に想像出来る。

 

 すると、紫苑は俺に向かってこう言った。

 

「リューセー君、アレ使っても良いわよね?」

 

 初めて見た。目や、声が、『絶対勝ちたい』と言う意思を俺に伝えてきている。

 

 一年以上の付き合いがあっても、こんな紫苑は今まで見た事が無い。思わず見惚れてしまう程に、な。

 

「……ああ。光井を驚かせてやれ」

 

 既に機は熟しているから、ここで使う事に何の問題もない。

 

 俺が笑顔で頷いた後、第二ピリオド開始前のチャイムが鳴る。

 

 

 

 

 

 

「あれっ? 紫苑の表情がさっきまでと違う」

 

 第二ピリオドのフィールドに立った紫苑の変化に、エリカが真っ先に気が付いた。

 

 先程と違って、まるで覚悟を決めたかのような強い目を見せている。

 

「確かにあの様子からして、紫苑が何か奥の手を使うみたいな感じがするね」

 

 エリカの台詞に幹比古は思わず目を凝らして紫苑の表情を観察しており、レオと美月が首を傾げていた。彼等と一緒に観戦している修哉だけが、感慨深げに頷いている。

 

「そうか……紫苑、ここでアレを使う気だな……」

 

「天城君、アレって?」

 

 雫が問いかけると、修哉は笑みを浮かべながらこう答えた。

 

「リューセーが紫苑を優勝させる為に教えた奥の手だ。もしかしたら北山さん達だけでなく、ここにいる全員が絶対驚くと思うぞ」

 

「修哉、それは一体――」

 

 クラスメイトの意味深な発言に幹比古が質問しようとするが、第二ピリオド開始のチャイムが鳴るのであった。

 

 

 

 

(達也さんの不敗神話は私が守る!)

 

 ピリオド開始の合図が鳴ったの聞いたほのかは、ホログラフが未だ出現してないのに他の選手達より早く動いた。

 

 彼女の眼は常人に見えない光を視認可能な為、既に場所を把握しているこそ、誰よりも早くポイントを先取出来ている。

 

 加えて、ほのかは今まで以上の実力を発揮している状態だ。決勝が始まる前、スバルが『司波君の不敗神話を打ち破ってみせる』と言う挑発行為に刺激されたから。

 

 達也の積み上げてきた功績に泥を塗らないよう、自分も必ず優勝しようと強く意気込んでいた。全ては愛する人の為に、ほのかは妖精の如き舞いを披露している。

 

 そしていつも通りにポイントを先取しようと、出現したホログラフに辿り着こうと――スティックを振るう寸前、突如目の前に他の選手が出現した。

 

(え?)

 

 ほのかは目の前の選手にぶつかりそうになるが、再び急に姿を見失った。その先にあった筈のホログラフが消失している。

 

 次に出現したホログラフも、いつの間にか突然現れた選手によって奪われていた後、またしても姿が消える。

 

 これには選手側のほのか達だけでなく、各校のスタッフや観客達もどよめくどころか絶句していた。

 

 三つ、四つ、五つ……。 

 

 突然姿を現わし、突然姿を消す。まるで妖精ではなく幽霊と誤認してしまいそうな感じだった。

 

 すると、ホログラフを取り続けていた選手が、再び姿を消して現れた場所は着地地点。ほのかとスバルのチームメイト――佐伯紫苑がそこにいた。

 

「佐伯、さん……?」

 

「嘘、でしょ……?」

 

 点を取れなかったほのかとスバルも着地するも、二人は紫苑を信じられないと言わんばかりに凝視している。それは他の選手達も同様に。

 

 

 

 

「い、今のって……」

 

「瞬間移動……?」

 

 誰かが、そう呟いた。

 

 選手だけでなく、観客達も凝視している。

 

 直後、着地地点にいる筈の紫苑は再び姿を消して、瞬時に上空で姿を現わした。

 

 去年に飛行魔法を優美に披露した深雪に劣るとは言え、一人の戦天使のように舞っている。

 

「アレって、本物の瞬間移動……?」

 

 囁きが連鎖していく。

 

「そんなバカな……」

 

「まだ実現不可能な筈だぞ……」

 

 波紋は徐々に広がっていくばかりだった。

 

「だがあれは……」

 

「新人戦とは違う、本物の瞬間移動……」

 

 その場に居合わせた全員の目が、瞬間移動を繰り返す少女へ向けられていた。

 

 

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

「リュ、リューセー君! これは一体……!?」

 

「お二方、取り敢えず落ち着いて下さい」

 

 スタッフ席では驚愕の声が響いていた。それは一高側も含まれている。

 

 完全に目が点になっている中条とは別に、啓が隆誠に問い詰めていた。

 

 他校側から見れば何故あんなに驚いているのかと疑問視されるかもしれないが、彼等も知らなかったのだ。隆誠が紫苑に教えた魔法が本物の『瞬間移動』であった事に。

 

「兵藤、佐伯が使っているあの魔法は本物の『瞬間移動』なのか?」

 

「珍しいな。司波がそんなに慌てるなんて」

 

 達也の表情は普段通りでも、内心は酷く動揺している事を隆誠は見抜いていた。

 

 

 

 

「こんな、事って……」

 

「姉さんの『疑似瞬間移動』とは全然違う……!」

 

 観客席の中には違う意味で驚愕している者達がいた。

 

 四高に在籍している黒羽亜夜子、黒羽文弥の双子。

 

 数日前、新人戦ミラージ・バットで亜夜子が『疑似瞬間移動』を披露し、圧勝と言うべき結果で優勝を飾った。

 

 自分以上の使い手はいないと思いながら観戦する彼女だったが、ここで予想外の事態に直面している。一高の選手が本物の『瞬間移動』を披露している為に。

 

 亜夜子と文弥は、紫苑についての情報は当然得ている。彼女は普段の学生生活で一緒に行動している『兵藤隆誠』の友人関係である事を。

 

 彼等は、と言うより四葉家は隆誠に対する警戒度は高い。その中で四葉真夜は彼が扱う魔法に関心を寄せており、今も達也に調査を続けさせている程だった。尤も、達也が精霊の眼(エレメンタル・サイト)を、隆誠に使う事が出来なくなっている事を未だに知らないが。

 

「姉さん、後で達也兄さんに確認を取った方が良いんじゃないかな?」

 

「……そう、ね」

 

 文弥からの確認に、亜夜子はショックに近い状態でありながらも何とか答えていた。

 

 

 

 ――本戦ミラージ・バット、決勝戦。紫苑が第二ピリオド以降、今まで優勢だったほのかの点数を一気に抜いた。

 

 結果は紫苑が優勝、ほのかが二位、スバルが三位。一高の選手三人が上位を占めた事で、獲得ポイントは一〇〇点。

 

 総合順位は一高であり、ライバルである三高とは圧倒的な差を付けていた。

 

 

 

 

 

 

 一高がミラージ・バット優勝をした事でお祝いムードになってもおかしくないのだが、全く異なる状況になっていた。

 

「すみません、達也さん。私、達也さんの不敗神話、守れなくて……!」

 

「ほのか、俺は全然気にしてないよ」

 

 試合が終わった後、ブースに戻ったほのかは両目から大粒の涙を流していた。

 

 達也は何度も気にしてないと慰めているのだが、当の本人は大失態を犯したと言わんばかりに謝り続ける一方だった。

 

 彼女が泣いているのは隆誠達も知っている。特に紫苑は自分が優勝した所為でほのかを泣かせてしまった事に罪悪感を抱いてしまうも、そこは隆誠が気にする必要は無いとフォローしていた。『決勝で周囲に目もくれず、司波の事ばかり考えていた光井の油断による結果だから』と。

 

 端から聞けば非情とも言える台詞かもしれないが、それは紛れもない事実であった。

 

 実際にほのかは、予選で圧倒的な実力を見せた紫苑に警戒していた。しかし、決勝前にスバルが(ほのかからすれば)挑発行為をした瞬間、失念することになってしまった。頭の中では達也の為に優勝しようと占有された為に。

 

 想い人の為に頑張るのは間違っていないとは言え、状況次第で視野を狭めてしまう。それによってほのかは、第二ピリオドで本気を出した紫苑に虚を衝かれてしまい、冷静な判断が出来ずに敗北する結果となった。尤も、一高からすれば準優勝は充分に誇れるのだが。

 

「私の所為で、不敗神話が……!」

 

「別に俺は不敗神話にこだわっていないし、ほのかが準優勝して誇らしく思ってるから」

 

 因みにこのやり取りは十分以上続いていた。

 

 これ以上は埒が明かないと判断したのか、達也はある行動に出る。

 

 片手でほのかの頭を撫でながら、もう片方の手でそっと彼女をそっと優しく抱きしめると言う行為を。

 

「た、達也さん……!?」

 

「ほのか、頼むからもう泣かないでくれ」

 

 突然の事にほのかは顔を赤らめるも、達也は気にせず抱きしめながら優しい言葉をかけていた。

 

 これは深雪にしかやらない行為だが、ほのかならば大丈夫だろうと、内心妹に申し訳なく思いながらやっている。

 

 因みにこの光景は――

 

(はわわわわわ! 司波君大胆です!)

 

(ほほう。司波君も意外とやるねぇ)

 

(もし花音が負けたら、僕もああしていたかもしれないね)

 

(私だったら修哉に慰め……って、何考えてるのよ私は!?)

 

(ナイスだ司波。光井が誰かに負けた時の慰め方法を実践してくれるとは)

 

 中条、スバル、啓、紫苑、隆誠もバッチリ見ているが、敢えて何も言わず生暖かく見守っている。

 

 達也のお陰で漸く正常に戻ったほのかだが、数分後に隆誠達を見た途端に絶叫するのであった。




原作と違って、ほのかは準優勝の流れにしました。

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