内容が短い上に、サブタイトルは一体何なのかと疑問を抱いてるかもしれませんが、最後まで読めば分かります。
既に予想していたとは言え、中条や啓だけでなく、司波までもが思いっきり問い詰めてきた。言うまでもなく紫苑が披露した『瞬間移動』について、な。
いくら同じ学校の先輩や同級生であっても、詳細を教える事は出来ないときっぱり断っている。三人はマナー違反である事は重々承知しているのだが、それでも実現不可能だった筈の瞬間移動をどうやって実現出来たのかを、概要だけでも知りたいらしい。特にトーラス・シルバーと思わしき司波とか、独立魔装大隊で活動している司波とか、四葉家から俺の魔法について未だに調査している司波とかに、な。余りにもしつこかったから小声で『封印されたいか?』と言った直後、瞬時に引き下がってくれた。余りの変わりように中条と啓は疑問視するも、そこは完全スルーしておく。
俺の詰問とは別に、表彰式を終えた後、あの二人が紫苑に祝福の言葉を贈っていた。同じ陸上部として鼻が高いと凄く自慢気になる千代田と、優勝おめでとうございますと嬉しそうに抱き着く香澄。祝福された当の本人は、二人のハイテンションに苦笑するばかりだったが、な。
一高だけでなく、大会委員も割って入るように急な呼び出しをされた。紫苑が瞬間移動で使用したCADを検査させろと言ってきたのだ。
いきなりの要求だが、向こう側にはそれなりの理由がある。他校から本当に瞬間移動なのかと問い合わせの嵐が来ているみたいで、それを解決するには術式を提出して欲しいと。
恐らく去年に司波が飛行魔法の術式を提出したから、大会委員は素直に応じてくれると思ったのだろう。生憎だけど、俺はアイツと違って丁重に断らせて貰った。
紫苑に教えた瞬間移動は、魔法師が使う系統魔法とは大きく異なっている。
魔法師に対するマナー違反を理由に断っても、大会委員は全く引き下がろうとしなかった。寧ろ、術式を提出してくれなければ困ると言わんばかりの様子で。
余りにも執拗に提出を求めようとしてくるので――
「貴方達は去年、九島閣下に叱責された件についてもう忘れたんですか?」
去年の新人戦ピラーズ・ブレイク決勝で俺に要らぬ疑いを掛けて強制不戦敗の他、敵の工作員が各競技に妨害行為を見過ごしていた件について触れた瞬間、一気に顔を青褪めていた。
九島の名前が相当効いたのか、さっきまでの執拗さは一気に失せただけでなく、申し訳ありませんと謝罪して何事も無かったかのようにアッサリと解放される。あの様子からして、去年に九島から相当絞られたのかもしれない。
☆
「優勝したってのに、災難だったな」
「まぁ、ああなる事は予想していたよ」
夕食後、ホテルの部屋で寛いでいる俺は今日の事について修哉と話していた。
本当なら紫苑を呼んで簡易的な祝勝会をしたかったが、千代田と香澄によって女子だけのお祝いをされて出来ないでいる。
因みに今回は北山からのお誘いを断らせてもらった。理由は当然ある。光井を泣かせる原因を作った俺がいては流石に気まずいだけでなく、司波の不敗神話とやらが壊された事で司波妹が若干不機嫌になっていたから。
「それはそうと、今後についてだが」
「ああ、明日はモノリス・コードだな。幹比古が出るから絶対応援に――」
「違う、俺が言ってるのは九校戦じゃない。お前に関する話だ」
「へ?」
まるで予想外みたいな反応をする修哉。
「修哉、そろそろ覚悟を決めてもらうぞ」
「覚悟って……一体何の話だ?」
「お前が紫苑の父親に勝って、紫苑と恋人同士になる件だ」
「……………………はぁっ!?」
かなり間があったけど、漸く認識したのか、修哉は途端に顔が真っ赤になっていく。
「ちょっ、いくら何でもそれはまだ早過ぎだって……!」
「全然早くない。寧ろ遅い」
修哉と紫苑が友人となって一年以上経ち、早く恋人同士になって欲しいとどれだけ願った事か。それもこれも、紫苑の父親が『自分を負かした相手でなければ交際は認めない』と余計な事を言った所為なのだ。
だがしかし、今の修哉はシールド・ダウンで簡単に優勝出来る実力があるから、全力で挑めば絶対に勝てる筈。いくら彼女の父親がマーシャル・マジック・アーツの達人でも、な。
「修哉。九校戦が終わった後でいいから、紫苑の父親とコンタクトを取れ」
「ふぁっ!?」
紫苑に告白する前に、一番の障害である彼女の父親を勝負して勝たなければいけない。
計画を立てようとしても、修哉は顔を赤らめたまま『まだ無理だから!』と言って断ろうとするから――
「じゃあお前、このままずっと単なる幼馴染の関係だけで終わっていいのか?」
「うっ、そ、それは……」
絶対に成功させる為に、俺は少しばかり心を鬼にし、(恋愛に関して)弱腰な弟子に喝を入れていた。
内容がいまいちかもしれませんが、修哉と紫苑の恋を成就させようとついに動き出すリューセーでした。
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