再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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漸く更新する事が出来ました。


スティープルチェース編 スティープルチェース前日

 2096年8月14日/大会十日目

 

 

 

 修哉に紫苑と恋人同士になる為の覚悟を決めさせた翌日。

 

 九校戦十日目で、一高はモノリス・コードで見事優勝していた。もうポイントを確認しなくても、対抗してる三高との点差は圧倒的に広げているので省略させてもらう。

 

 今日のMVPは吉田幹比古だった。三年の服部刑部、同じく三年で大会初出場の三七(みな)(かみ)ケリーを、得意の古式魔法で上手くサポートした事で勝利へ導いていたのだ。

 

 因みに幹比古の担当エンジニアは司波であり、友人が調整してくれた事で調子が良かったと言っている。それを聞けた事で、昨日から若干不機嫌だった司波妹もすっかりご機嫌な様子である事を補足しておく。

 

 それとは別に、司波の方は何だかいつもと違ってオーラが荒々しく感じる。表面上は何ともないように会話しても、頭の中ではさぞかし物騒なことを考えているに違いない。

 

 そう言う思考になると言う事は主に妹関連、もしくは……明日のスティープルチェースに投入されるであろうパラサイドールのどちらか。いや、両方かもしれない。司波妹がスティープルチェース中に襲い掛かるであろうパラサイドールを排除すると言い直せば、な。

 

 パラサイドールは人形兵器で破壊する事は容易いかもしれないが、そんな事をしてしまえば不味い事態になってしまう。解放されたパラサイトが野に放てば、近くにいる人間に憑依してしまう恐れがあるから。

 

 そうなる事は当然司波も充分理解してる筈だが、一体どうやって対処するのやら。俺がパラサイトを倒してから既に半年以上経ったとは言え、いくらアイツでも霊体に対して攻撃出来る魔法を開発したとは到底思えない。であればパラサイドールを破壊するのではなく、本体のパラサイトを封印、活動停止させるかのどちらかをやると見るべきか。

 

 だけど行動に移すとしても、司波妹が参加する女子のスティープルチェースだけだろう。アイツは自分の妹のみ無事なら問題無いと言うスタンスだから、男子の方では余り期待出来ない。まぁそれでも、あのシスコン男の性格を考えれば、万が一の場合に備えて全て掃討するかもしれないが。

 

 パラサイトを倒せる手段を持つ俺に声を掛ければ非常事態として協力するのに、司波からは未だその気配が無い。まさか自分だけで全て片付ける自信がある、それとも今回は四葉家が関わっているから協力する事が出来ない、とかだったりして。他の理由があるとしても、もし失敗して周囲に被害が及ぶような事態になれば、その時点で有無を言わさず介入させてもらう。対処を終えてから司波の精霊の眼(エレメンタル・サイト)を封印する罰も与えて、な。

 

 取り敢えず司波の方は如何にでも出来るから良いとして、だ。今まで修哉と紫苑を優勝させようと後回しにしてたが、既に目的は達成したので、そろそろ九島烈のことについて考えなければならない。

 

 九重の話によると、パラサイドールの開発に九島家が深く関わっており、今回の九校戦を利用しようと九島烈が提案したとか。いくらなんでも無謀としか言いようがない。

 

 九島家がパラサイトを何故保有しているのかは既に分かった。以前に一高でパラサイトを討伐している最中、司波達が封印した一部のパラサイトを、九島烈がどさくさに紛れて捕獲したのだと。あの時は何故彼があの場にいたのかは心底不思議に思っていたが、その時点から兵器として利用する為に捕獲したのだろう。俺が3Hにパラサイトが宿っている事を教えたのを切欠に、な。

 

 あんな悪性な存在を兵器として利用するのは、ハッキリ言って危険過ぎる。益してや九校戦で試すなど正気ではない。もし万が一にベースとなる人形が破壊されて、開放されたパラサイトが他の人間に憑依される事態になれば、開発した九島家だけでなく、パラサイドールに関わっている国防軍も世間から非難の的になるのが容易に想像出来る。九島烈は当然そうなる事を想定してもおかしくない筈なんだが、な。後先考えずにパラサイドールを投入させるなんて彼らしくないのだが、そうまでする理由があるのだろうか。

 

 まさかとは思うが、九校戦前の前夜祭が終わった後、俺が九島と話した事に何か関係があったりして。自身の孫を含めた魔法師を安易に戦力として組み込ませない為、パラサイドールなどの戦闘兵器で補わせようと。

 

 そう考えていた矢先、突如懐に入ってる携帯端末から着信音が入った。

 

 

 

 

「すまないね、急に呼び出してしまって」

 

「いえいえ、お気になさらず」

 

 場所は九島烈が寝泊まりしているホテルの部屋。相も変わらず魔法科高校の生徒達が使っている一般客用の部屋と違って、このスイートルームは本当に豪華な作りだ。

 

「俺を呼び出したのは、シールド・ダウンとミラージ・バットの件についてですか?」

 

「うむ、その競技に優勝した君の友人達は実に見事であった」

 

 まるで俺が言葉に出すのを待っていたかのように、九島は数日前にあった競技について語り出そうとする。

 

 シールド・ダウン・ソロで修哉が見せた圧倒的な身体能力、技は目を見張るモノだったようだ。特に決勝で披露した『流水の舞』と『円天剣舞』は実に見事だったと。ただ、もしかしたら某忍術使いが黙っていないかもしれないから注意しておくよう指摘されたが、それは既に釘を刺してきた九重の事だと思いながらも一応頷いておいた。

 

 ミラージ・バットで一番驚かされたのは、やはり紫苑が披露した『瞬間移動』みたいだ。今まで実現不可能と呼ばれた魔法を目にする事が出来て僥倖だとか。因みに大会委員会から術式の提出を求められた際に俺が九島の名前を出した事を話すと、余り気にしてない様子だった。寧ろそう動くだろうと既に予想していたとか。

 

 だけど、それとは別に魔法大学も大慌てしているとの事だ。どうやら『瞬間移動』の術式を『インデックス』に登録すべきだと動いているらしく、近い内に開発者である俺に正式な打診をする予定だと九島は教えてくれた。あくまで俺の推測だけど、魔法大学だけでなく、リーナのいるUSNAを筆頭に、各国からも飛行魔法と同じく術式を公開しろと催促される事も考慮しておく必要があるかもしれない。それと万が一に紫苑を攫おうとする愚か者がいれば、聖書の神(わたし)を敵に回した事を冥界(じごく)の底から後悔させてやるが、な。

 

「さて、私としてはまだまだ語りたいところだが、一先ずここまでにしておくとしよう」

 

 先程まで子供みたいに楽しそうな表情をしていた九島だったが、話が変わった途端に雰囲気が少しばかり変わった。

 

「確認なのだが兵藤君、君や友人達もスティープルチェースに出場するのかね?」

 

「ええ。掛け持ち出来る競技は必ず出るよう言われましたから」

 

 俺の返答に九島は「そうか」と言いながら、紅茶が入っているカップに口を付けた後に一息付く。

 

「第三高校の一条将輝君には申し訳ないが、やはり君の優勝は間違いなさそうだ」

 

「良いのですか? 十師族の貴方がそのような事を仰って」

 

「生憎今の私は、魔法協会理事の立場として此処へ来ている。それに十師族だからと言って、学生の競技に気を遣うなど馬鹿馬鹿しい」

 

 純粋に九校戦を楽しみに来ている九島烈ならではの台詞と言うべきか。加えて彼は自ら俺のファンと公言していたから、十師族に対する配慮など無いのだろう。あくまで九校戦に関してかもしれないが、な。

 

「明日の競技は今までと違って非常に難易度が高い。尤も、君からすれば大した事は無いかもしれんが」

 

「さぁ、それはどうでしょうね。向こうが俺を簡単に優勝させないよう、何かしらの障害物(・・・・・・・・)でも設置していたら話は別になりますから」

 

「っ……」

 

 俺の台詞に九島は不意を突かれたのか、ピクッと反応を示した。

 

 普段ならどのように揺さぶられても表情(かお)に出さない筈の彼が、パラサイドールについて一切触れてないのにも拘わらず、まさかこうも簡単に隙を見せるとは。それだけ九島は手一杯な状態と見るべきか。

 

 恐らく前夜祭の後で話した時から、既にそんな状態だったかもしれない。魔法師を軍事力にしたくないと何か熱弁しようとするも、急に魔法師が軍以外で活躍出来る道がないかについて尋ねてきた。あの時の俺は何の疑問も抱かずに話を合わせていたが、今思うとアレは咄嗟に話題を逸らす為の方便だったのだろう。尤も、俺の返答を聞いた九島は虚を突かれた表情になっていたが、な。

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、何でもない」

 

 心配そうに問う俺に、九島は何でもないように振舞っていた。

 

 

 

 

 

 

 九島と話を終えた俺は、部屋に戻らずホテルの展望室で寛いでいた。既に昇っている月明かりによって、目の前に映っている富士山の輪郭がはっきり見える。同時にバルコニーから見下ろす先には、明日のスティープルチェースの舞台となる演習用の人口森林が暗闇に包まれているが。

 

 因みにエルンストの近況を確認したところ、今もずっと大人しくしているようだ。ではなく、下手に身動きが取れないと言い直すべきか。その証拠に監視中のレイが得た情報(きおく)を見た際、去年の論文コンペ前に見た一高カウンセラーの小野遥がいた。恐らくカウンセラーとは全く別に、『ミズ・ファントム』としてエルンストを監視しているのだろう。

 

 大変退屈そうに監視してるレイだけど、九校戦が終わるまでやってもらう。自ら監視をすると志願したのだから最後までやってもらわないと、な。勿論終わった後には何かしらの褒美を考えているが、それは後ほどあの子から直接聞く事にした。

 

「兵藤くん」

 

 すると、誰かが自分に声をかけて来た。展望室は夜間立ち入り禁止ではないが、こんな時間に最上階のバルコニーにやってくる人物は限られる。

 

「そろそろ来ると思ってましたよ、九重さん」

 

 振り向いた先には、九重寺住職の九重八雲がいる。

 

「九島烈から何か聞けたかな?」

 

 つい先程まで俺が九島と話していたのを、何故この住職が知っているのかと疑問を抱くべきかもしれないが、それは今更なので気にする必要など無い。

 

「別に何も。強いて言えば、今も相当疲弊している様子です」

 

「そうだろうね。パラサイドールの開発や根回しで色々忙しい身にも拘わらず、九校戦にまで顔を出しているから無理もない」

 

「もしも俺が何かしらの理由で九校戦に出場しなかったら?」

 

「間違いなく此処に来なかっただろうね」

 

 断言する九重に俺は若干苦笑してしまう。俺の出場有無でそこまでハッキリするなんて、改めて九島は俺のファンなのだと認識される。

 

 前置きはここまでにして、そろそろ本題に入るか。

 

「それはそうと、明日のスティープルチェース女子の部で司波は動きますか?」

 

「勿論その予定だよ。でも何で女子限定なんだい?」

 

「アイツは自分の妹に関すること以外殆ど無関心ですから」

 

「う~ん、そこは否定出来ないね」

 

 九重は司波が自分の妹を精霊の眼(エレメンタル・サイト)で常に視ている事を知らずとも、薄々気付いているかもしれない。そうでなければ即座に否定し、司波の師匠として何かしらの擁護している筈だ。

 

「だけど大丈夫。今回は(・・・)パラサイドールが投入されたら、どちらの部も動く手筈になっているよ。藤林少尉からのお願いでね」

 

「藤林少尉とは、ポニーテールの髪形をした女性軍人ですか?」

 

「うん、そのお嬢さんだよ。因みに彼女は九島烈の孫娘でもある」

 

「そうでしたか……ん?」

 

 九重からの意外な情報に俺はある事に気付いた。

 

「チョッと待って下さい。その人が九島閣下の身内であれば、今回のパラサイドールに大きく関わっているのでは」

 

「ああ、そこは兵藤くんが気にする必要は無いよ。今の彼女は辛い立場に立たされている、ぐらいしか言えないね」

 

「……つまり断腸の思いで司波にお願いした、と言う訳ですか?」

 

「まぁ、そんなところだよ」

 

 これ以上は答えられないのか、九重は曖昧な返答しかしない。

 

 俺としては彼女の立場など如何でも良いので、これ以上の追求はしないでおくとしよう。

 

「なら質問を変えます。司波は俺がパラサイトを倒せる事を知ってる筈なのに、何故今になっても声を掛けないんですか?」

 

「ああ、それかい。僕もさり気なく触れてみたんだけど」

 

 先程まで曖昧な返答をしていた九重だが、急に困ったような表情になっていた。

 

「『兵藤と一緒に行動すれば、作戦に支障をきたすから遠慮したい』と頑なに断られてね」

 

 ああ、成程ね。俺に声を掛けない理由が漸く分かった。

 

 司波は恐れているのだ。俺が施した封印術で、精霊の眼(エレメンタル・サイト)が強制封印されてしまうのを。そんな事態になればアイツは間違いなく狼狽し、作戦失敗になる光景が容易に想像出来てしまう。

 

 今回は非常事態として限定解除しても構わないが、それは却って不都合になる。もしやってしまえば、アイツは今後も事あるごとに相応の理由で何度も申請するかもしれないから、下手な真似は出来ない。

 

「あの達也くんが物凄く渋い顔をしていたのは、何か相当不味い事情があるみたいだね。もしかして、この前達也くんの眼を封印した事に何か関係してるのかい?」

 

「さて、俺には何の事やら」

 

 鋭い質問をしてくる九重だが、俺は敢えて惚ける事にした。

 

「取り敢えず司波が拒む理由は分かりました。でしたら九重さん、明日のスティープルチェース男子の部でパラサイドールが出てきた場合、俺が対処する事を司波に伝えて貰えませんか?」

 

「え?」

 

 戸惑いの表情を見せる九重だったが、俺がパラサイトを倒すなら構わないと了承するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで兵藤君、オーフィスちゃんはいるかい?」

 

「それ毎回訊いてきますね。自ら神霊に会いたがる僧侶なんて普通いない筈なんですが」

 

「だってあの子凄く可愛いし、全然嫌がる事無く普通に話してくれるからね。僕にとっては癒し系のマスコットだよ」

 

(……まぁアイツは無表情でも、ちゃんと会話するからな)

 

「で、オーフィスちゃんは?」

 

「えっと……アイツはこの前と同じく森で散歩中です」

 

「またぁ!? チョッと兵藤くん、神霊の主として彼女をほったらかしにするのはどうかと思うよ!」

 

 九重はまたしてもオーフィスに会えない事にショックを受けた後、急に訳の分からない説教をするのであった。




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