再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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すいませんが、今回は幕間的な話です。


スティープルチェース編 スティープルチェース 次の準備

「何? この警備兵達は、文弥がやったんじゃないのか?」

 

「はい。犯人は未だに分かりませんが、突然意識を失ったんです」

 

 目的は完全に達成していないが、配置されていた十二体のパラサイドールを全て撃破した達也が駐車場に戻ると、文弥の部下である黒服達に運ばれている警備兵がいた事に驚いた。

 

 てっきり此処へ来た文弥が片付けたのかと思って訊いたのだが、達也は思わぬ返答を聞いた事で怪訝な表情になる。

 

 水波にも確認したところ、何度も警告してる途中で突如声が途絶えて何事かと気になるも、ピクシーから達也の任務達成を聞いて外を見ると警備兵達が倒れていた、と言う状況しか分からないとの事だった。

 

 ピクシーであれば何か分かるのでないかと思ったが、達也は流石に無理だと敢えて確認しなかった。彼女は自身をサポートする為にパラサイドールの索敵や会話内容を聞いていたから、そんな状況の中で警備兵に意識を向けられる訳がないからと言う理由で。例え訊いたところで、ピクシーは下手に答えれば隆誠に消されると恐れ、マスターである達也に申し訳ない気持ちになりながらも素知らぬ振りをするだろう。

 

「ただ、一つ気になる事がありまして」

 

 まだ話す事があったのか、文弥の台詞に達也はすぐに耳を傾ける。

 

「僕が来た時には警備兵しかいなかったんですけど、何故か視線を感じまして」

 

「誰かが隠れていたのか?」

 

「いえ、僕が見た限り誰もいませんでした」

 

 この駐車場は隠れそうな箇所はいくらでもあるが、諜報活動している文弥の実力であれば、隠れている者がいれば即座に発見するなど造作もない。にも拘らず、捉える事が出来なかったのであれば、認識阻害に関する魔法を使っていた可能性が高い。精神干渉系魔法の使い手である文弥ですら簡単に欺ける相当な実力者だと達也はそう考えた。

 

 達也が可能性として考えられる人物は数名思い浮かべるも――

 

「確認したいが文弥、兵藤の奴は会場にいたか?」

 

 すぐに隆誠がやったのではないかと、文弥に確認をした。

 

「兵藤隆誠の事ですか? 彼は競技開始から終了までずっと会場にいたと、姉さんから報告がありましたけど」

 

「そうか」

 

 文弥からの返答に達也は内心落胆する。

 

 達也の読みは当たっているのだが、会場にいた隆誠は、実は分身拳で作った分身体だと言う事に気付く事は出来なかった。

 

 警備兵を眠らせた犯人が結局分からずじまいとなり、彼等は一先ず後始末をする。

 

 

 

 

 

 

 女子スティープルチェースの一~三位が再び一高が独占したのは勿論喜ばしいのだが、二位である司波深雪がお通夜ムードを醸し出していた。先日ミラージ・バットで二位となった光井と同じく、な。

 

 彼女としては兄である司波の功績に恥じないよう優勝を目指していたようだ。しかし、俺の弟子である紫苑が瞬間移動を使って逆転されて準優勝と言う結果になった為、とんでもない失態を晒したと落ち込んでいる。トラップに嵌った千代田達を見捨てて優勝を狙おうとしていたのに、それを後から紫苑に追い抜かれたとなれば無理もないだろう。尤も、俺から言わせれば自業自得だ。もしもあの場面で見捨てる行動を取らなければ、今とは違う結果になっていたのだから。

 

 因みにパラサイドール撃破後に戻ってきた司波は、真っ先に司波妹へ向かって慰めていたのは言うまでもない。それを見ていた紫苑は光井の時と同じく罪悪感を抱いていたが、そこは俺の方で気にしないよう言ってある。光井の時と違って、あのシスコンは悲しんでいる妹を見た事で怒りのオーラを少しばかり感じ取れたから。

 

 次の男子スティープルチェースに向けて準備をしている最中、俺は急遽司波に話があると呼び出された。

 

 

 

「兵藤、お前がこの後の競技で残ったパラサイドールを始末すると師匠から聞いたが、間違いないな?」

 

「そのつもりだ。けど司波の方で全部倒しきれなかったのか?」

 

 一高の本部天幕から少し離れた場所で、俺は司波と二人でパラサイドールについて話していた。前置きを一切抜いて本題に入ってきた事に内心苦笑するも、敢えて気にせず話を合わせている。

 

 九重が万が一の事を考えてパラサイトを倒す手段を持っている俺に話した、と言うシナリオらしい。本当は後からパラサイトの存在に気付いた俺が、背後から声をかけた後に問い詰めた筈なんだけど、どうやらあの住職は都合の悪い内容を上手く誤魔化したようだ。まぁそんな事は別に如何でもいいが、な。

 

「事前に確認した数は十六体だったが、女子スティープルチェースでは十二体しかいなかった」

 

「となれば、残り四体のパラサイドールが男子の方で出してくると言う訳か」

 

「俺が倒した後でも必ず出してくるとは断言出来ないが、それでも警戒しておく必要がある」

 

 確かに司波の言う通りだ。向こうの出方が分からなくとも、パラサイドールを出してくる前提で動いた方が良いだろう。

 

「兵藤、もしもパラサイドールが出現したら必ず倒せ。お前はパラサイトを倒せる手段を持っているから、確実に――」

 

「あのさぁ司波。妹が負けたからって、いい加減俺に八つ当たりするの止めてくれないか?」

 

 ずっと気になっていたが、司波は妹を慰めた後から怒りの感情が(にじ)み出ていた。周囲には気付かれないよう無表情だが、俺にだけ不満をぶつけている。

 

「………………」

 

 俺の指摘が図星だったのか、先程まで述べていた筈の司波は途端に無言となっていた。

 

 端から見れば何を考えているのかは不明であっても、俺にはコイツの感情が手に取るように分かる。クラスは違えど、付き合いが一年以上経ったが故なのかもしれない。それは当然エリカ達にも言える事だろうが、

 

「光井の時みたいに軽く流してくれよ。不敗神話なんか一切気にしてないんだろ?」

 

「……済まなかった。落ち込んでいた深雪を見た所為か、少しばかり感情的になっていた」

 

 物凄く文句を言いたそうな目をしておいてオブラートに包み過ぎにも程があるのだが……まぁ本人が認めたので良しとしておこう。これでもしふざけた発言をした瞬間、以前のように精霊の眼(エレメンタル・サイト)を強制封印させていたが。

 

「今回は大目に見るけど、次にまたそんな態度を取れば分かってるよな?」

 

 だがそれでも釘を刺しておかなければならない。此方が本気だと言う事を示しておかないと、また調子に乗った言動をされては困るから。

 

「勿論だ、以後気を付ける。俺としても、あんな耐え難い苦痛は二度と味わいたくない」

 

「……そ、そうか」

 

 コイツは気付いていないんだろうか。自分がとんでもない変態だと公言している事を。

 

 半年以上前、精霊の眼(エレメンタル・サイト)で妹を常時『視』ているのを教えてくれた。掛け値無しに一日中妹の行動を監視しており、もしその途中で強制遮断されたら精神に異常を来たしてしまう事も含めて。

 

 つまり精霊の眼(エレメンタル・サイト)を封印された事で『耐え難い苦痛』と言い切ったのは、即ち変態ストーカー行為をしなければ正常ではいられなくなる。もう完全に精神病質者(サイコパス)としか言いようがないほどに、な。

 

 俺としては非常に如何でも良い事なのだが、一番の懸念は光井だ。彼女は今も司波に絶賛片思い中だから、もしも真実を知れば絶対ショックを受けるのが容易に想像出来てしまう。俺が口出しをする立場じゃないのは分かっていても、如何にかできないのかと少々もどかしい気持ちだ。修哉と紫苑の関係とは違う意味で。

 

「話を戻すけど、もし男子スティープルチェースの方で残りのパラサイドールが出てきたら、俺が責任持って片付けておく」

 

 パラサイドールを開発した九島家の皆さんに悪いが、俺は司波と違って無駄に時間を掛けないであっと言う間に終わらせるつもりでいる。だがそれを行うには、修哉や服部達にチョッと相談しなければならないが。

 

「ああ、是非ともそうしてくれ。話は以上だ」

 

「待て司波、パラサイドールとは別件で確認したい事がある」

 

 去ろうとする司波に、俺は咄嗟に引き留めた。

 

「紫苑が『瞬間移動』を使った事で、『四葉家』は今後どうするつもりでいる?」

 

 本当は紫苑の瞬間移動を見た黒羽姉弟が妙な動きをしないかの確認を問いたいが、それを口にすれば色々不味いので敢えて遠回しな質問をした。

 

「……今のところは不明だ。だが少なくとも、俺から(・・・)一切手を出す気は毛頭無い。お前を敵に回したくないからな」

 

「お前から当主に手出ししないよう進言出来ないのか?」

 

「やってもあくまで判断するのは向こうだ。俺ではどうしようもない」

 

「そこを如何にかしてくれないか? でなければ俺はオーフィスを連れて四葉家当主に直談判するぞ」

 

「勘弁してくれ」

 

 両肩に手を置いて少々顔を近づけながら頼む俺に、司波は無理だと言い切っていた。

 

 それでも俺は何とかするように再度懇願しようと――

 

「お、お兄様、兵藤くん、こんなところで、何を……?」

 

「た、た、達也さんと、兵藤君が、ふ、二人きりで、また……」

 

「「あ」」

 

 司波妹と光井の声がした事で中断せざるを得なかった。

 

 この後に俺と司波は、ショックを受けて石みたいに固まってる二人の誤解を解こうとしたのは言うまでもない。




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