再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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スティープルチェース編 エルンスト・ローゼンの暗躍

 エルンスト達の動きは、今も透明化しているレイによって完全に筒抜け状態だった。

 

 予定としては後夜祭パーティの最中、俺を(ひと)()の無い場所へ誘い出す段取りを企てている。エリカも同行させていると仄めかして、な。

 

 向こうの思惑に敢えて乗っても良いのだが、勘が鋭いエリカ本人に来られたら色々面倒な事になるので、此方から先手を打っておく必要がある。あのじゃじゃ馬娘は司波と違って、そう簡単に大人しく出来ないのが難点である為に。

 

 今回は流石に分身拳を使ってのアリバイ工作は出来ないから、後夜祭パーティーは不参加とさせてもらう。尤も、なるべく早めに片付けて参加するつもりでいる。でないとダンスの約束をした沓子に何を言われるか分かったものじゃない。

 

 ルームメイトの修哉には申し訳無いけど、中条達に遅れて参加するとの伝言役を頼む事にした。同時にエリカがパーティーに参加しているかを含めて。それを聞いた修哉は最初疑問を抱くも、何かを察したかのように敢えて何も訊かず了承している。その代わりに「後で何があったか教えてくれよ」と言われたが。

 

 

 

 

 

 

(やはりエリカに気付かれたか)

 

 場所はスティープルチェースを行った演習林。俺が此処に来たのは、エルンストの配下である姉妹を誘き寄せる為だ。

 

 競技が始まる前までは厳重な警備を敷かれていたが、今は全く殆どいない。九島と話していた際、此処へ入る為の根回しをした為に。勿論理由を求められたので、エルンストが俺を捕獲しようと動いている事を教えておいた。それを聞いた彼は、『USNAの次はドイツか。君は本当に人気者だね』と苦笑されてしまったが。

 

 演習林に入って既に一キロ以上進んでいる中、修哉から報せが入った。『エリカが後夜祭パーティーに参加する直前、急に何処かへ行ってしまった』と言うメールを見た瞬間、俺は思わず舌打ちをしてしまう。

 

 未だに場所までバレていないとは言え、あのじゃじゃ馬娘は異様に勘が鋭いから、此処へ来るのは時間の問題だと諦めた方が良いだろう。加えて今回の相手はエリカの関係者と思わしき連中だから、横浜事変やパラサイトの時と違って、下手に騒ぎ立てる真似はしない筈だ。まぁ、それでも下手に介入されても困るから、さっさと終わらせるとしよう。

 

「いい加減に出てきたらどうですか?」

 

 移動する脚を止めた俺が後ろを振り返りながら言った。

 

 此処に来て数分経たない内に、背後から迫ってくる足音が耳に入っていた他、二人の生命反応(オーラ)も既に感知している。

 

 向こうがどう動くのかを待っていたのだが、一向にその気配が無いまま下手な尾行をしているので、仕方なく此方から声を掛ける事にしたのだ。

 

 すると、右の木の陰と、左の木の陰から二つの人影が現れた。

 

(あの姉妹だな)

 

 二人はライディングスーツのようなつなぎ服を身に纏っており、頭部もヘルメットにすっぽり覆われて顔が全く分からない。だが全体のシルエットだけでなく、エルンストが命令を出していた姉妹である事は既に分かっていた。

 

 同時にヘルメットのバイザーを上げて二人の顔が露わになると、俺が予想していた人物の姉妹だと的中する。

 

 レイが見せてくれた情報(きおく)通り、二十代前半に見える若い女性の二人だ。改めて見れば本当に双子と思ってしまいそうなほど良く似ているも、顔立ちが妙に作り物めいているような感じだ。まるで司波妹みたいに、な。

 

「兵藤隆誠」

 

 俺から見て右側の女性が、日本語に慣れていない感じがしながらも自分の名を呼んだ。

 

「私達と一緒に来てもらえませんか」

 

 もう一人の女性が放った台詞に、俺は敢えて何も知らないように振舞おうとする。

 

何方(どなた)かは知りませんけど、人違いじゃないですか?」

 

「何を今更。白々しい」

 

 態と惚ける俺の問いに右の女性が苛立たしげな声を上げ、

 

「私達が尾行している事を承知で、邪魔が入らない場所に誘導したのではないのですか?」

 

 今度は左の女性が訝しげに問い掛ける。

 

 どうやら向こうは、俺が誘い込んだことに気付いていたようだ。

 

「あらら、やっぱり見抜かれていましたか」

 

 俺はご明察と言わんばかりに、惚けるフリをやめる事にした。

 

「大亜連合の『人食い虎』を倒せる実力だけでなく、どうやら胆力も相当のようですね」

 

「随分と御存知な事で。それで、一体俺に何の御用ですか?」

 

 国防軍の情報規制は全く当てにならないと思いながらも、俺は彼女達に用件を問い直す。

 

「一緒に来なさいと言ったでしょう」

 

 強い口調で右側の女性が答える。左の女性とは対照的に、随分と高圧的なモノだった。

 

「何の為に俺を連れて行こうとするのかを訊きたいのですが」

 

「既にエルンスト様より聞いている筈です。貴方を是非ともスカウトしたいと」

 

「エルンスト? ……ああ、貴女達はあの胡散臭い男の部下だったんですね」

 

 既に知っているが、女性の発言に黒幕の存在に気付いたように俺は演技していた。

 

「大方俺を捕獲して無理矢理手駒にする、もしくは人体実験と言ったところでしょうか」

 

「ウフフフフ、確かに手駒にするのは間違っていませんが」

 

「他にもやってもらいたいことがあるのですよ」

 

 二人の女性はこれ見よがしに声を上げていた。

 

 訝しむ俺に、向こうは予想外の返答をする。

 

「貴方には我々の戦力になって頂くだけでなく、新型調整体の母体に遺伝子を提供してもらいます。我が国ドイツでは、人工受精より自然な受精の方が優秀な個体を生み出すと言う説が広まっているのですよ」

 

「要するに、多くの女性と子作りするのが貴方の主な仕事なのです。皆さん美女揃いですから、ハーレム気分を味わえますよ」

 

「そんな愛のない行為なんて真っ平御免です」

 

 前世(むかし)の弟であるイッセーが、もしリアス達と出会わなかったら、間違いなくホイホイと引っ掛かっていただろう。ハーレムを夢見ていたアイツとしては願ってもない展開、みたいな感じで。

 

 対して兄の俺はハーレム願望など一切無いが、性欲はちゃんと勿論人並みにある。だけど、前世(むかし)の頃にとある夢魔(サキュバス)から何度も(性行為も含めた)一方的な求愛をされ続けた所為で、再度転生した今でもチョッとした忌避感がある。その所為で同性愛者ではないかと疑われる破目になったが、な。

 

 そんな如何でも良い前世(むかし)の思い出を浮かべてると、向こうはとんでもない事を言い出した。

 

「大丈夫、貴方の意思は尊重します。最初の相手は、貴方のお友達にしますから、それなら問題無いでしょう」

 

「俺の友達って……まさか」

 

「千葉エリカさん、でしたっけ? 彼女は本家ローゼンの血を引く優秀な魔法師。必ずやローゼンの調整体を代表する新型を産んでくれる筈です」

 

 確かレイの報告の中に、エリカがエルンストと話していると言う情報(きおく)があった。その際、エリカがローゼン家の関係者と言う事実も判明している。

 

 ローゼン家の生まれと言う理由でエリカを連れて行こうと画策していたのは、家族として迎え入れるのではなく、まさか俺との間に子供を作らせる為だったとは。家族愛を大事にしている聖書の神(わたし)からしたら、思わず反吐が出てしまいそうになる。

 

「よく分かりましたよ。貴女達やエルンスト・ローゼンが、人を人とも思わない外道な連中だと言うことが」

 

「「!」」

 

 俺の怒気を感じ取ったのか、女性二人は呼応したかのように、ヘルメットのバイザーを瞬時に閉じる。

 

 向こうの行動を一切気にしてない俺は、一瞬で右の女性へ接近しながら拳で殴り掛かる。

 

 俺の攻撃に、右の女性は避けようとはせず、咄嗟に左腕で受けようとする。

 

 当たった瞬間、まるで分厚い強固な装甲板に当たったかのような、重い衝撃音が周囲に響いた。

 

 女性の身体が跳ね飛ばされるも、スーツの機能によるものか、転倒することなく姿勢を立て直していた。

 

「成程、硬化魔法か」

 

「その通りです」

 

 背後から降ってきた声に、俺は大して慌てる様子を見せず、もう一人の女性からの跳び蹴りを難なくヒョイッと躱す。

 

 俺の前方に、飛び蹴りをした女性が余裕を持って着地していた。

 

 先程の攻撃は本気じゃなかったと見える。でなければ、声を掛けずに不意打ちをやってもおかしくない。尤も、そうしたところで意味は無いが、な。

 

「私たちは硬化魔法を主体とするドイツの調整体魔法師『城塞シリーズ(ブルク・フォルゲ)』。貴方の魔法や身体能力が如何に優れたところで、私たちに傷付ける事は不可能です」

 

「ほう」

 

 硬化魔法と言えば、思わず友人の西城レオンハルトを思い浮かべてしまいそうだ。

 

 そう言えば以前レオは父親がハーフ、母親がクォーターと教えてくれた。その両親の間に産まれた事で、ドイツ人のように彫りの深い顔立ちになっているのは当然と言えよう。

 

 もしかしたら、この二人の女性はレオの関係者かもしれない。あくまで『ドイツ』や『硬化魔法』と言う共通点で推測しただけだが。

 

「そんなモノを俺に自慢したところで、貴女達程度(・・)が呂剛虎より強いとは言えませんよ」

 

「ならば、今からそれを証明してあげます!」

 

「私たちを侮辱したことを後悔させましょう!」

 

 俺の台詞が相当お気に召さなかったのか、二人の女性が同時に襲い掛かろうとする。




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