今回はプロローグなものなので短いです。
それではどうぞ。
後夜祭パーティを終えた翌日、一高を含めた各魔法科高校の関係者達は世話になったホテルを後にしようと、バスなどの交通機関を利用してそれぞれの学校へ戻る為の準備をしていた。
去年と同じく各校一斉に戻るのではなく、現在地から遠い学校を優先するのが決まりとなっている為、東京にある一高がバスに乗車するのは後になってしまう。一通りの支度を終えている俺は部屋で待機してる中、携帯端末を使って電話している。
「流石に明日は無理だから、明後日で構わないか?」
『ああ。親父や母さんに確認したが、その日で問題無いと言っていた』
「分かった。じゃあ明後日に」
俺が電話しているのは一条将輝で、家族を連れて一条家に行く約束の確認をしている。
シールド・ダウンを終えた後に約束したのは良いけど、色々やる事があって後回しにしていた為、こうして確認の電話をしていると言う訳だ。
それは当然一条にも言える事で、俺が電話するまですっかり忘れてて、つい先程まで少々慌てるように日程の確認を取っていた。どうやら昨日の後夜祭パーティで、俺が司波妹とダンスしたのが相当頭がいっぱいだったらしい。昨日に司波妹とダンスを終えた直後、『どうして司波さんが兵藤にダンスの誘いをしてきたんだ!?』と真っ先に問い質す程だったからな。俺と司波が実はデキてて男同士のダンスをするのを阻止しようと、彼女にあらぬ疑いをかけられていたからと言える訳がない。
一通りの電話を終えた俺は通話を切ると、話を聞いている修哉が声を掛けてくる。
「一条の家に行くなら、俺も参加したかったな」
「お前はやる事があるだろ? 修哉と紫苑にとって大事なイベントが、な」
「う……」
まるで痛い所を突かれたように、途端にばつが悪そうな表情となる修哉。コイツがこうなっているのは、翌日以降に紫苑の父親に会わなければいけないからだ。
何故そんな事をしなければいけないのかと疑問に思うかもしれないが、これには相応の理由があるのだ。
修哉は前々から幼馴染である紫苑が好きで恋人同士になりたいと願うも、そうなるには大きな障害を乗り越えなければならない。彼女の父親との勝負に勝って交際許可を得ると言う大きな障害が。
聞いた話によると、紫苑の父親は自分を倒す男でなければ娘の交際を断じて認めないと言っていた。けれど倒すにしてもマーシャル・マジック・アーツの達人クラスだから、去年の修哉では全く勝てないから殆ど諦めていたとの事だ。
修哉と紫苑がお互いに好意を持っている両片思い状態なのを知っている俺としては、実に厄介極まりない障害だと煩わしく思っている。一年以上経っても二人の関係が発展出来ず、物凄く歯痒い日々を送り続ける破目になったのだから。
だけど数日経てば、その歯痒い日々が漸く終わる。俺が師匠となって徹底的に鍛え続けた事で並みの魔法師以上の実力を持ち、今年の九校戦に参加した種目で優勝を飾った今の修哉なら、紫苑の父親に問題無く勝利出来るだろう。修行用バンドを外して全力で挑めば、な。
明後日に一条の家に行く俺は見届けられないが、こればかりは流石に手を貸す事は出来ない。恋愛はあくまで当人同士の問題なので、第三者である自分が口出しすれば失敗どころか、馬に蹴られてしまう恐れがある。
「修哉、俺が金沢から戻っても『一切進展が無かった』と言うオチだけは止めてくれよ」
「わ、分かってるって……」
修行の時は大変勇ましい顔つきになってるのに、恋愛事となればこうも臆病になるか。
余計なお節介だと分かっていながらも、俺は絶対に父親に会うよう最後の念押しをしていると、バスに乗る時間になったので終わりとなった。
☆
「ふぅっ、思ったより時間が掛かったな……」
バスで一高に戻った後は解散となったが、生徒会は九校戦に関する事後処理があって、他の生徒達と違って帰宅するのが遅くなった。学校側から九校戦の結果を纏めた書類を至急作成して欲しいと言われた為に。
余りにも急な依頼だったから、俺が思わず『そんなの夏休みが終わってからでも良いじゃないですか』と言っても、向こうは『どうしても必要だから、とにかく急いで作成するように』との一点張り。それを聞いて、教員側に大きく関わる案件なのだろうと俺は察した。それは当然自分だけでなく司波達も同様に、な。
学校にもデータ化させた結果を送信してるのだから、書類作成ぐらい教員達の方でやれよと言いたい。九校戦で疲れた俺達にやらせるなんて、自分達ではまともに作成出来ないと暴露してるも同然な事に気付いてないかもしれない。
第一高校って他の魔法科高校よりもエリート校の筈なのに、生徒だけでなく教師も、何故こうも柔軟性に欠けているのだろうか。もしもそうでなければ、(去年に真由美から聞いた)制服の発注ミスによって起きた差別問題はとっくに解決してる筈なのに、な。
自分も含めた生徒会が疲労困憊のまま書類を作成して、自宅に辿り着いたのは夕方となった。
(今年は多分大丈夫だと思うが)
家に入る直前、俺はある事を思い出した。玄関に入った瞬間、泣きじゃくった顔で弟のセージと妹のセーラが凄い勢いで飛びついて来た事を。
あの時は十日以上経っても俺が家に戻ってこなかった事で、二人が泣いて大変だったと母さんが言っていた。
だから前回の二の舞にならないよう、俺が帰って来るのは8月16日だと言ってある。セージ達はうんと頷きながら寂しそうな表情をしていたけど、そこは敢えて気付かないフリをした。
今年は生徒会の仕事で帰るのが予想以上に遅れたとは言え、二人は今日帰って来るとちゃんと理解してる筈だ。そう信じてる俺は扉を開けようとする。
「ただい――」
「兄ちゃ~~~ん!!」
「にぃに~~~!!」
玄関に入った瞬間、去年と同じく泣きじゃくった顔になってるセージとセーラが飛びついてきたのであった。
――うんうん、あの子達の気持ちは分かるのね。
――確かに。あの子達の、心情は、私も大変、理解してます。
透明化しているレイとディーネは、セージ達がこうなるのは当然だと頷いていた。
因みにオーフィスと今年造った神造精霊『フェン』はこの場にいなく、今も別行動を取っている。フェンは狼の姿になっている事もあって、散歩をさせる必要があると彼女が言ったのだ。尤も、ご飯を食べたくなった時はすぐに戻るらしいから、恐らく数日も経たない内に戻るだろう。七草弘一が知ったら神霊の監視を放棄してると言われるかもしれないが、
母さんに一条家に行く事を説明する前に、セージとセーラを宥めなければいけない俺は、二人を抱えてリビングに入ろうとする。
久々に書いたから四苦八苦しました。
内容がいまいちかもしれませんが、感想お待ちしています。