再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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もう一つの幕間話です。


幕間 修哉の修行とエリカの勝負

 真由美達にスイーツを用意して約一ヵ月経った。

 

 今は学校の授業を終えた放課後に剣道部へ行くという、平穏な時間を充実している。と言っても、主に修哉を鍛える為だが。

 

「やぁぁぁぁぁ!」

 

「ほい」

 

「がっ!」

 

 正面から相手を威圧しながら振り下ろす修哉の竹刀を、俺が右手で持ってる竹刀で簡単に弾いてすぐに面を食らわせた。当てたのは修哉が被っている面の防具だが、それでも衝撃がかなりあったみたいで、少しばかり痛そうな声を出している。

 

 まだ修哉に基礎を教えてる最中だが、思った以上に成長が早かった為、急遽変更して簡単な試合形式で鍛えている最中だ。

 

 バンド付きで基礎練をやってた最初の頃は、もうそれだけで完全にバテるどころか倒れていた。他の剣道部員達も心配するほどに。

 

 その時に壬生が俺にやり過ぎだと抗議しようとしてたが、そこを修哉が『これは俺が望んだ事なんです!』と言って彼女は引き下がる事となった。

 

 それから何度も何度も俺の基礎連をやっては修哉がバテて倒れると言う光景が連日続いていた。しかし途中からソレも無くなって何とかギリギリ耐えれる状態までになった事に、壬生達も漸く安堵の息を漏らしていたのを今でも憶えている。

 

 俺も俺でこの展開には驚いていた。辛い基礎練ばかりやらされて嫌気が差し、もう諦める頃だろうと予想していたが、全く逆の展開となった事に思わずある事を思い出す。

 

 前の世界で(イッセー)を鍛えていた際、『辛いならもう止めてもいいぞ』と促すも、アイツは絶対に諦めないと言う根性を俺に見せてくれた。そして頑張った結果、超常的存在の悪魔達と戦える程の実力(ちから)を得たのだ。

 

 俺はあの時ほど教え甲斐があり、師として充実した日々を送る事が出来たのは初めてだと今でも感慨深い思い出となっている。この世界ではそんな機会はもう二度と訪れる事はないだろうと思っていた。

 

 筈だったのに、それがまさか身内ではなく、高校で出来た友人の修哉が再現してくれるとは……少しばかり感動したのは内緒だ。

 

 いい光景(もの)を見せてくれたお礼……と言う訳ではないが、この際だから人間の限界以上に強くさせてみようと考え始めた。勿論、それを修哉が了承するかどうか、ちゃんと確認するつもりでいる。

 

 取り敢えず今は修哉が紫苑の父親を倒せる実力をつける事が先決である事に変わりはない。その後の事はじっくり考えればいいので。

 

 さて、話が結構逸れてしまったので、いい加減戻すとしよう。

 

 修哉と試合形式で鍛錬をやっていると言ったが、実はもう十回以上やっている。言うまでもなく全部俺の勝ちだ。

 

 他にも一通りの防具を付けてる修哉に対して、俺はそれを一切身に付けず剣道着と竹刀のままだけでやっている。

 

 当然これには修哉も舐められていると怒りそうになっていたが、今はもうそんな考えをする余裕が無いどころか、どうやって俺に一本当てるか必死になっていた。

 

「修哉、勝てない相手だと分かって、やぶれかぶれになるな。冷静になれ」

 

「はぁっ……はぁっ……! んなこと言っても……お前強すぎるから……そうでもやんないと当てる事が……!」

 

「だったら、どうして当たらないのかを一度振り返ってみろ。何も考えずにやれる基礎練ならまだしも、こう言った試合形式では全く別だ。ほら、壬生先輩達も休憩に移ってるから、お前も少し体を休めろ。その間、さっきまでの試合を振り返ってみるんだ」

 

「……そこは指摘してくれないのか?」

 

「そんな簡単に教えるほど、俺は優しくない。それに十回以上も連続でやったんだから、お前ならすぐに分かる筈だ」

 

 武術や剣術のド素人だった(イッセー)ならまだしも、修哉は既に剣道の経験者だ。いきなりどこそこが悪いと指摘すれば、そう簡単に納得してくれないだろう。

 

 だから一度休憩中に振り返ってもらい、その後で答え合わせをするつもりでいる。考えるのと考えないのでは受け止め方が全く異なるので。

 

 俺も休憩しようと一旦修哉から離れ、剣道部員が用意してくれた飲み物を手にしてゴクゴクと飲む。

 

「本当に兵藤君のやり方はハード以上ね」

 

「あ、壬生主将」

 

「“代理”が抜けてるわよ」

 

 声を掛けて来た壬生に振り返ると、少々複雑そうな表情をしていた。

 

 俺が彼女を主将と呼んでいるのは勿論理由がある。

 

 以前のブランシュ襲撃事件で剣道部主将――司甲がマインドコントロール治療で長期間の休学中となっている為、現在は壬生が代理として主将を務めている。

 

 当然、これに壬生は最初反対していた。他の三年を差し置いて主将になる気はないどころか、事件関係者である自分には無理だと。

 

 けれど、三年も含めた他の剣道部員達が彼女が相応しいと説得された。今の剣道部で一番の実力者は壬生だからと言う理由があり、その熱意に負けた彼女は渋々承諾する事となった。現主将の司甲が戻って来るまでの間という条件付きで。

 

「どっちでも良いじゃないですか。それで、また前みたいな抗議ですか?」

 

「もう同じ事は言わないわよ。修哉君が望んでやってるって言われたからには、もう口出しする気はないから」

 

 弟分の修哉から釘を刺されてしまった事もあって、壬生はもう抗議する事はないようだ。

 

「でも、あそこまでやる必要あるの? 修哉君が紫苑ちゃんのお父さんに勝つ為だからって、あんなオーバーワーク同然の基礎練をやらせるのは流石に……」

 

「そこはちゃんと俺が責任持ってやりますので、どうかご安心下さい」

 

「………そうね。修哉君を君に任せた以上、あたしは見守るわ。けど、もし修哉君の身に何か不都合な事が起きたらすぐに止めさせるからね」

 

「分かってますって」

 

 何かこの人、修哉に対して若干過保護なところがあるような気がする。それだけ中学時代は仲の良い先輩後輩だったって事なんだろう。

 

 俺と壬生や試合を振り返ってる修哉、そして剣道部員達が休憩している中、突如異変が起きた。と言っても、闘技場にある出入り口用の扉がいきなり開いた音がしただけだが。

 

 剣道部の他、一緒に使っている他の部も気になって振り返ると、そこには見覚えのある女子生徒が佇んでいた。一通り見回して俺と目が合った瞬間、そのまま遠慮無く入った後――

 

「隆誠くん、一体いつまで待たせるのよ!? いい加減にあたしと勝負しなさい!」

 

 色々な理由で散々避けられて完全に堪忍袋の緒がキレたエリカは、周囲の目を一切気にせず俺に勝負を申し込んできた。

 

「ちょ、エリちゃん!? よく分からないけど、取り敢えず落ち着いて……!」

 

「さーや、そこをどいて! あたしはこの男と勝負する約束があるのよ!」

 

 そこから先はエリカと愛称で呼ぶほど親しい壬生が何とか宥めてもらった後、明日の放課後に勝負する事となった。

 

 因みに修哉が今までの試合を振り返った結果、自身の身体能力がまだまだ俺に届かない他、攻撃に移る動作を完全に見抜かれているからと答えた。

 

 見事に正解だったので、試合をする際にそこを一通り指摘して本日の部活を終える事となった。

 

 

 

 

 

 

「やっと来たわね! 待ちくたびれたわよ!」

 

「いや、まだ部活前なんだが……」

 

 翌日の放課後。

 

 闘技場へ来て早々、いつの間にか陣取っていたエリカが今か今かと言わんばかりに佇んでいた。勿論、自前の胴着を身に纏っている。

 

 どんだけ勝負したかったんだよと内心呆れながらも、準備を終えて胴着を纏い、竹刀を手にして彼女と相対している。

 

 俺とエリカの勝負に壬生たち剣道部だけでなく、剣術部の桐原達も興味深そうに見物している。

 

「ところで、あそこにいる予定外の観客は君が誘ったのか?」

 

「いいや。あたしはただ達也くん達に今日試合するって教えただけよ。見に来てなんて一言も言ってないわ」

 

 他にもエリカの友人である司波達も此処にいた。少し離れた所から司波兄妹とレオ、眼鏡をした女子生徒の四人以外にも、一科生の女子生徒二人もいる。

 

「ついでに三巨頭にも教えたのか?」

 

「それこそあたしが知る訳無いでしょ!」

 

 更に驚く事に、試合の事を知らない筈の真由美と摩利だけでなく、何と十文字もいた。

 

 何処で知ったのかは知らないが、我が第一高校の三巨頭の登場に周囲がどよめいている。けれど向こうは俺とエリカの試合を止める様子を見せないどころか、司波達と同じく見物に徹しようとする感じだ。

 

 彼女達の方へ振り向くと、真由美は笑顔で手を振りながら応援。摩利はまるで『君の実力を見せて貰うぞ』と言わんばかりの不敵な笑みを浮かべており、最後に十文字は腕を組んだまま無言でジッと見ている。

 

 俺とエリカの勝負は部活を巻き込んだ私事丸出しなので、出来れば止めて欲しいと願っていた。しかし、そんな様子を微塵も見せないから諦めるしか得ないようだ。

 

 何だか段々大事になってきた気がすると思いながらも、一先ずエリカに話しかける事にする。

 

「まぁいい。それで、勝負と言ったがルールはどうする?」

 

「こっちとしては真剣勝負……と言いたいところだけど、流石にそれは不味いわね。だから隆誠くんが前にさーやと戦った時の勝負形式で良いわ。けど、あたしは剣道じゃなくて、剣術でやらせてもらうわよ」

 

「いいだろう」

 

 剣術勝負、か。となるとエリカは魔法を使う事になるな。

 

 別に使っても構わないが、そうなると風紀委員が黙って見過ごす訳が……大丈夫みたいだ。チラリと摩利を見たが、エリカを咎めようとする様子を見せていない。まるで構わないと言わんばかりの様子だ。

 

 同じ風紀委員の司波も見たが、上司の判断に逆らえないみたいな仕草をしている。と言っても、アイツは最初から俺の戦いを観察する気満々だろうが。

 

 互いに勝負形式を了承した俺とエリカは、壬生に審判役をしてもらうよう頼んだ。彼女としても今回の勝負に興味があったみたいで、止めようとする様子を一切見せていない。

 

「一応形式上として言わせてもらうわ。剣を使っての勝負に怪我は付き物だけど、相手を死に至らしめ、並びに回復不能な障碍を与える攻撃や術式も一切禁止よ。もし危険だとあたしが判断した場合、即刻中止にさせてもらうわ。勝敗は一方が負けを認めるか、審判のあたしが続行不能と判断した場合に決する。異論はないわね?」

 

「「勿論(よ)」」

 

 改めてルール説明をしながら了承を確認してくる壬生に、俺とエリカは揃って頷いた。同時に手にしている竹刀を構える。

 

 ………どうやら簡単に気を抜く事が出来ない相手みたいだ。構えを見ただけで分かる。エリカは壬生以上の相当な実力者であると。

 

 千葉家は確か百家本流の家系で、『剣の魔法師』と言う二つ名が与えられている名門中の名門である。

 

 そんな凄い家にいるエリカが、どうして二科生にいるのかが不思議だ。と言っても、学校の成績=実力という訳ではない。もし一科生がそんな風にエリカと対決したら、あっと言う間に倒されるだろう。

 

 少しは楽しませてくれそうだと内心笑みを浮かべてると、それとは逆にエリカはさっきと違って真面目な表情になっていた。

 

 俺と違って、そこまで余裕がなさそうだ。見た感じ、始めから全力できそうな気がする。

 

 まだ試合が始まっていないにも関わらず、さっきまでざわついていた周囲が途端に静かになっている。まるで俺とエリカの状況を察しているかのように。

 

 そして――

 

「始め!」

 

 壬生が開始の合図をした瞬間、俺とエリカは即座に動いた。

 

 ここから先は色々と長くなるので、結果だけを言わせてもらう。

 

 先ず勝敗だが引き分けとなった。これにはエリカが全然納得行かないと再勝負を求められたが、そこは三巨頭が止めてくれたお陰でお開きとなった。

 

 内容は主にスピードを競うような勝負で、自己加速魔法を使うエリカに対し、身体能力のみで対応する俺。

 

 余りにも速い戦いだった為、観客の一部は目で追う事が出来なかったようだ。その中で摩利が一番驚いていた。『あのエリカを相手にあそこまでやれるのか!?』と叫んでいたのが聞こえたので。

 

 そんな中、俺とエリカが殆ど技同然の一撃を何度も繰り出した事で、ぶつかり合ってた竹刀が壊れてしまい、審判役である壬生の判断で引き分けとなったのだ。

 

 これによって俺はどうやら『千葉家』に目を付けられる事になってしまった。それどころか千葉家の道場に来いと言われる始末だ。当然、それは丁重に断らせてもらった。

 

 ともあれ、エリカとの約束を果たした事に変わりない。これで修哉の修行に専念出来そうだと安堵したと思いきや、暫くエリカに『もう一度勝負しなさい!』と付き纏われる事になってしまった。

 

 ついでに司波の方は妙な事をしていた。魔法なのかどうか分からないが、まるで俺の体を分析するような感じがした。それはずっと以前からだ。

 

 最初は能力(ちから)を使って一時的な魔法使用不能な状態にしてやろうかと考えたが、そうなったらブラコンの司波妹が黙ってないと思い、今も敢えて見逃している。それにあんな表面上な情報しか分からない分析魔法を使ったところで、俺の正体に辿り着くのは絶対に無理だと確定してるので。




次回は九校戦編に移ります。

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