再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回も端折り気味な内容です。


九校戦編 参加の有無

 試験が終わってから、俺は毎日、放課後を部活で過ごしていた。勿論、修哉を鍛える為に。

 

 今日も俺独自の基礎練をやらせた後、俺と手合わせをすると言う日課を送っている。壬生や他の剣道部員達はもう見慣れて完全スルー状態だが、最初見た時にはドン引きされた。主にハード過ぎる基礎練に壬生が抗議したほどだ。

 

 けれど、修哉が段々と慣れてこなす事が出来るようになったから、もうそんな心配はしていない。今ではもう『よくあそこまでやれるなぁ』と逆に驚いている。

 

 それどころか――

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「よっ、ほっ、はっ、と」

 

 動きと攻撃速度が以前とは比べ物にならないほど上達した修哉の攻撃に、何の苦も無く簡単に防いでいる俺にも戦慄していた。

 

「す、凄い、もう完全にあたしより実力が上じゃない……!」

 

 剣道部に入って三ヵ月程度だが、修哉の急激な進歩に壬生が目を見開いている。

 

 それは俺も同感だった。コイツが思った以上に剣の才能があるどころか、俺の修行にここまでついてこれるとは完全に予想外だ。

 

 急激な進歩には他にも理由がある。ほんの数日前、修哉に付けていた特殊なバンドを一時的に外させた瞬間、重さを感じないほど身軽になっていた。

 

 どれだけ速く動けるようになったかを試す為、陸上部にいる紫苑に頼んで100メートル走のタイムを計ってもらった。彼女を指導してる千代田花音も一緒に。

 

 修哉が全速力で挑んだ結果、何と8秒5だった。オリンピック選手も真っ青な結果に修哉どころか、紫苑と千代田も揃って仰天する始末だ。

 

 因みに俺もやってみたところ、超スピード抜きの(加減した)速度でやると結果は5秒6。タイムを見た三人がさっきより目が飛び出るほど仰天したのは言うまでもない。本気を出せばさっきのタイムなんか軽く超えられるが、流石にそれ以上する気はなかった。

 

 しかし、そこで問題が発生してしまった。第一高校陸上部の最高記録を簡単にぶち抜いた俺と修哉を――

 

『貴方達、今すぐ陸上部に入部しなさい! 高校生の大会どころか日本の頂点を簡単に狙えるわよ!』

 

 千代田が猛烈な勢いで勧誘して来たのだ。

 

 突然の事に俺と修哉は戸惑うも、紫苑がいた事で何とか丁重に断るも彼女は諦める気配が無かった。

 

 それどころか翌日以降、部活中に千代田は陸上部の部長と一緒に闘技場へ来て早々主将代理の壬生に直談判してきた。俺と修哉を陸上部に貸して欲しいと。

 

 いきなりの事に壬生は戸惑うも、事情を知った後に『二人は剣道部(ウチ)の大事な部員なのでダメです!』と強く突っ撥ねた。ここまで凄く頼もしい人だと思ったのは内緒だ。

 

 とまあ、陸上部の事は置いておくとして。俺が修哉に付けさせたバンドを外した事で身体能力が急上昇したと言う訳だ

 

 そのバンドは前の世界で、イッセーやリアス達に使った修行用アイテムだ。この世界でも問題無く作れたから、当然俺も利用しており、お陰で普通の人間どころか、魔法師以上の身体能力を得られた。

 

 尤も、この世界の人間に使うのは流石に酷だったので、難易度を可能な限り低くさせた。修哉が使っているのは初級用だが、普通の人間でも簡単に音を上げてしまうほどだ。初級で完全に慣れたら中級用バンドを使うつもりでいるが。

 

 今の修哉の実力を考えると、壬生どころか、並みの剣術部員を簡単に倒せる程度だ。まだまだ強くさせるつもりでいる。紫苑の父親を超える実力でなければ、紫苑とハッピーエンドを迎える事が出来ないので。

 

 もし向こうが望むなら、(イッセー)みたいなスパルタ形式で鍛えても構わない。この世界の人間がどこまで強くなるのかを、ちょっとばかり見てみたいなぁ~……等と言う事を考えてしまってるのは内緒だ。

 

「胴ぉぉぉぉぉ!」

 

「甘い!」

 

「がっ!」

 

 掛け声と共に修哉の得意な一撃――逆胴を簡単に捌いてすぐに面でKOさせた。

 

 

 

 

「俺はリューセーが九校戦に出てもおかしくないと思うんだけどなぁ」

 

「またそれか……」

 

 休憩している最中、修哉が九校戦の事を言ってきた事に俺は嘆息した。

 

 それはこの前にレオが話題に出してきた時のアレだ。 

 

 九校戦については既に知っていた。魔法大学付属高校間の、謂わば身内の交流試合であるが、外部にも公開されている。魔法競技を目にする事が出来る数少ない舞台でもあるから。

 

 魔法師や魔工師になろうとする者にとってはデビューする以外に、魔法競技に対する関心を高め、一般社会にも理解や関心を深める為と言う数少ないアピールの場となっている。

 

 と、ここまで聞けば九校にいる誰もが参加出来る数少ない大イベントなのだが、生憎と人数制限がある。

 

 交流試合と言っても優勝する事を前提としているから、各校の選りすぐりの魔法師達が競い合う。他の魔法科高校の選出方法について知らないが、この一高では一科生達が中心となって選ばれる。

 

 これでもう分かったと思うが、一高にいる二科生は最初から参加資格が無いのだ。理由は簡単。一科生より実力が劣るからだ。

 

 加えて、一高が過去の九校戦に参加したのは一科生だけであって、二科生は一人たりとも参加していない。万が一に参加資格があったとしても、一科生達が断固反対するのが目に見えてる。一科至上主義の連中が『二科生が出ても足手纏いになるだけだ!』と言う反対意見を声高に叫んで。

 

 進歩的な考えを持っている生徒会長の真由美、風紀委員長の摩利、部活連会頭の十文字なら俺を参加させようとするだろう。けれど、そうしたところでさっき言った連中が反対するから、結局躓いて断念するのがオチだ。足を引っ張ろうとするのが一科生で、同じ一科生である三巨頭からすれば皮肉だろう。

 

「前にも説明しただろ? いくら俺が実技テストでトップになっても、一科生の連中が簡単に認めようとしないって」

 

 修哉にはレオ達に話した内容を既に説明したのだが、どうも未だに諦めきれてないようだ。

 

「でもウチの会長は差別意識なんか無いから、可能性はあるだろ」

 

「まぁ、そうかもしれないが……」

 

 完全に否定できない為、俺は思わず言い淀んでしまう。

 

 もしかすれば、真由美達が俺の九校戦参加についての議論を今もしてる可能性があると思う。定期試験で結果を示したんだから出すべきだ。みたいな感じで。

 

 しかし、仮に俺が参加したところで殆どが除け者扱いされるだけだろう。二科生に構ってる暇は無い、とか何とか言って。

 

 尤も、俺は別にそうなっても問題無い。個人用の競技で優勝すれば良いだけの話なので。

 

 団体競技であるモノリス・コードは論外だ。俺が他の一科生と組んだところで、味方同士で足の引っ張り合いが起きてしまうのがオチだ。

 

 スピード・シューティング、クラウド・ボール、バトル・ボード、アイス・ピラーズ・ブレイクの四つの競技はどれも個人戦で出場可能だ。その中を選ぶとすればアイス・ピラーズ・ブレイクか。

 

 他の三つの競技も一応それなりに出来るが、ドラグ・ソボールの技を最も使えるのはアイス・ピラーズ・ブレイクだ。例えば繰光弾(そうこうだん)を使って壊したり、光円斬(こうえんざん)で斬り裂いたり、対象の氷柱を爆発させたり等と他の技でも充分に活躍出来る。

 

 そうなったら真由美達から絶対問い詰められる事になるだろうが、独自に編み出した魔法と誤魔化せばいいだけだ。

 

「リューセーが出る競技が決まったら、俺は必ず応援しに行くからな」

 

「そうね。その時は剣道部総出で見に行くわ」

 

「だから何で俺が九校戦に参加する前提で……って壬生主将、いつの間に混ざってんですか」

 

 俺と修哉の会話に壬生がいつの間にか加わっていた事に思わずツッコミを入れてしまった。

 

「ゴメンね。気になる内容だったから、つい。それと兵藤君、あたしは主将代理よ」

 

「そこは変わらず訂正するんですね」

 

 彼女は未だに剣道部主将である司甲の代理を務めていると言う認識だ。俺だけでなく、他の剣道部員達も完全に彼女を主将と見ているんだが。

 

 修哉も俺と同じ考えなのか、壬生の言い分に苦笑していた。

 

 休憩も一通り済んだので、再び試合形式を始めようとする。だけど今度は俺が攻撃メイン、修哉が防御メインの戦い方でやる。

 

 その後、部活を終えた剣道部は解散となり、各々帰宅準備をして部室から出ようとする。 

 

 いつもは修哉と途中まで帰っているが、今日は陸上部にいる紫苑と一緒に帰る約束をしているらしいので、俺だけで一足先に帰宅する事となった。

 

「明日はどんな鍛え方をしようっかな~」

 

 鼻歌交じりで明日の修行内容を考えながら校門前を通り過ぎようとする瞬間、突如俺の目の前に見覚えのある女子生徒二人が現れた。 

 

「あらリューセーくん、奇遇ね」

 

「良かったらあたし達と一緒に帰らないか? チョッと君と話したい事があるんだ」

 

「………お二人とも、出来ればもっとマシな嘘を吐いて下さい」

 

 

 

 

 

 

 奇遇を装いながら俺に接触する真由美と摩利に少々呆れるも、断る理由が一切無いので付き合う事にした。

 

 その際、他の部活帰りの生徒(特に男)から目撃された事で嫉妬の視線を向けられる事になったが。

 

 行き先はとある喫茶店で、そこで今年行われる九校戦についての話をする事になった。用意するスイーツについて、それも凄く熱心に材料の調達や費用などを細かくチェックするほどだ。どこの世界でも、女は甘い物に目が無いのは共通してると心底思った。

 

「とまあ、建前はここまでにして」

 

「リューセーくん、九校戦に出てくれないか?」

 

 建前の割には凄く真剣だった二人だが、本当の目的――俺を二科生の代表選手として参加して欲しいという要請だった。

 

「それは、他の一科生達が反対するのを承知の上でですか?」

 

 態々説明しなくても、真由美達は分かっているだろう。俺の参加に一科生達が絶対に黙ってない事を。

 

「ええ。議論に議論を重ねた結果、リューセーくんを参加させようと決めたわ。コレは勿論、十文字くんも了承済みよ」

 

「この前の定期試験の成績は既に知っている。実技であの司波を超えて一位になったのは今でも信じられないが、結果が出た以上誰もが認めざるを得ない。それに今年は三連覇がかかっていてな。二科生という理由で、君のような優秀な人材を遊ばせる訳にはいかないんだ」

 

 摩利の話を聞いて思い出した。去年と一昨年の九校戦は一高が優勝していた事を。

 

 三年の真由美と摩利、この場にいない十文字を含めた三年は最後の九校戦だから、何としても有終の美を飾りたいんだろう。

 

 俺を参加させたい理由を聞いた後――

 

「一先ず考えさせて下さい。すぐには答えが出ませんので」

 

 一旦保留する事にした。

 

「分かったわ。じゃあ、急で悪いけど明日の昼休みに生徒会室に来て。そこで返事を聞くから」

 

「出来れば良い返事を期待している」

 

 向こうも簡単にいくとは思ってなかったみたいで、あっさりと引き下がってくれた。

 

 明日の昼休みか。どうでも良いけど、確か午前中に体育をE組と合同でやるんだったな。




前半でリューセーと修哉が出した100メートル走のタイムについて、ご存知の方はいるでしょうか?

感想お待ちしています。

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