再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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九校戦編 レッグボール

 この世界のスポーツは発展していると改めて認識する。

 

 何故そんな事を思っているのかと言うと、今やっている体育の授業で体感しているからだ。

 

 今日の授業はレッグボールと言う競技をやっている。

 

 前の世界でやったフットサルから派生した競技で、無数の小さな穴が開いた透明の箱でフィールドをすっぽり覆ったフットサル。ただし選手は頭部保護のヘッドギアを着け、ヘディングはハンドと同じ扱いで禁止となっている。透明な箱の中で競技というもの自体、前の世界にいる俺以外の人間が知れば驚くだろう。

 

 魔法を併用した競技としても行われる事もあるが、魔法を一切使わないルールもあり、今回の授業も魔法抜きで行われている。

 

 レッグボールは反発力を極端に高めた軽量ボールを使用する為、フィールドを囲う壁と天井にもスプリング効果を持たせている。まるでピンボールみたいに上下左右と目まぐるしく跳ね返るボールを追いかけ、相手ゴールに蹴り込むというスピーディとパワフルな競技だ。見た目が派手だから、『観る』スポーツとしても人気が高い。

 

 だから今、休憩中の一年E組とF組の女子生徒が、授業そっちのけで見物している。

 

「くそっ! どきやがれ天城!」

 

「やなこった!」

 

 ボールを持っているレオが突進しようとするも、修哉がそれを阻んでいた。

 

 レオはさっきまで他のチームメイト相手には難なく躱してドリブルしていたが、急にガラリと変わっている。まるで厄介な壁とぶち当たっているように。

 

 当然それは修哉のディフェンスによるものだ。俺の修行による成果がよく出ている。

 

 相手のドリブルを見て、修哉がまるで見抜いているかのように無駄のない動作をしてる事で攻める事が出来なかった。その為にレオは試合中でも若干苛ついている。

 

「達也!」

 

「しまった!」

 

 これ以上は無理だと判断したのか、レオは咄嗟にシュートの勢いで司波にパスを送る。修哉が止めようとするも、向こうの判断が速かった為に間に合わなかった。

 

 パスとは思えない速度で来るボールを、司波は真上に蹴り上げる事で勢いを殺し、天井から跳ね返ってきたところを踏みつけて押さえる。簡単そうにやってるけど、あれは結構難しいと補足しておく。

 

「吉田!」

 

 まるで機械みたく精密なボール捌きでパスを受けた司波は、側面の壁に向けてボールを蹴った。壁を利用したパスである。

 

 ボールが跳ね返った先には、吉田と言う細身の男子生徒がいる。スピードに乗った司波からのパスを後ろに逸らす事無くワントラップで処理し、そのままゴール目掛けてシュートをした。

 

 だが――

 

「おっと」

 

「だぁぁぁ! これもダメなのかよ!?」

 

 ゴールキーパー役の俺が即座に片手で受け止めた事で阻止した。

 

 吉田が驚いた顔をしているとは別に、レオは物凄く悔しい顔をしながら叫んでいた。

 

 俺がキーパーをしてる事で、E組は0点で抑えられている。吉田の他に司波、レオや他の相手がシュートをしても悉く防いでいた。それによってE組側は歯軋りする一方だ。

 

 どんなに向こうが攻めても点が入られる心配がないと思った修哉とチームメイト達は、心置きなくオフェンスに専念していた為、F組は2点取っている。

 

 直後、試合終了となって2-0でF組の勝利となった。この結果に見物しているF組の女子たちから歓声が上がる。

 

 

 

「リューセーって本当に何でもありだな。安心してプレーに専念出来るキーパーなんて初めてだったぞ」

 

「そうか? 俺はただ役割を果たしただけなんだが」

 

 見学ゾーンに戻った俺は、修哉と一緒に適当な所で腰を下ろしていた。

 

 少し離れた先には未だに悔しそうな顔をしているレオがいる。一緒にいる司波は負けた事を大して気にしてないのか、さっきプレーしていた吉田と言う男子生徒の近くへ移動していた。レオも一緒に。

 

「うわっ、アイツまだ睨んでるし……」

 

「司波と違ってレオは分かりやすいなぁ」

 

 レオがこっちを見て早々に睨んできた事で修哉が一瞬怯むも、大して気にしてない俺は苦笑していた

 

 アイツもエリカと同様に負けず嫌いな性格のようだ。多分だけど、次にまた勝負する事になったら、真っ先に俺か修哉に挑もうとするだろう。

 

「お疲れ様。ナイスプレーだったわよ」

 

 すると、見物していた女子生徒の一人――紫苑が俺達に近付いて声を掛けて来た。

 

「修哉も凄かったけど、今日のMVPは間違いなくリューセー君ね」

 

「誰かさんのプレーを熱心に見入っていた紫苑に言われてもなぁ」

 

「な、何言ってんのよ!」

 

「?」

 

 俺のツッコミに紫苑は急に顔を赤らめながら噛み付いてきた。

 

 けど、そうしたところで全く怖く感じない。試合中にチラリと、レオ達を抜いて見事にシュートを決めたのを凄く嬉しそうな顔をしていたのをバッチリ見たので。

 

 因みに誰かさんとは修哉の事だが、当の本人は気付いていないみたいで首を傾げている。

 

 気付かれる前に話題を変えようとしたいのか、紫苑が司波達に近付こうとするエリカと柴田の方を指していた。

 

「そ、それはそうと、あそこにいる千葉さんが凄く悔しそうな顔をしてたわよ。主に西城君を罵倒してたわ。『何やってんのよ』とか『情けない奴ね』とか酷い言いようで」

 

「エリカも辛辣だなぁ」

 

「西城の奴は気の毒に……って、何だあの格好!?」

 

 紫苑の台詞に俺は気の毒そうにレオを見ていたが、修哉も同様に視線を移した際にギョッとしていた。

 

 突然だが、この世界にあるドレスコードは現在、公式の場において肌を露出しない事をよしとされている。それは当然学校も公式の場とされており、夏も上着の着用が義務付けられ、女子生徒はスカートの下に肌の透けないタイツかレギンスの着用が義務付けられている。

 

 だがこのルールは、体育などの運動系に関するスポーツウェアにまで適用はされない。俺たち男子生徒は膝上丈のトランクスを穿いていて、紫苑も腿の半分を隠すスパッツ姿だ。これが体育の授業における女子生徒の平均的なスタイルである。

 

 何故急にこんな説明をしたのかと言うと、エリカの格好が色々と問題があるのだ。

 

 今のエリカは脚の付け根からむき出し状態で、丈と呼べるもの自体が全くない。上に着ている半そでシャツの裾丈が中途半端に長い所為で、パッと見では下着しか付けてないように感じになっている。

 

 修哉はそれを見た為にギョッとしているのだ。彼女の近くにいる司波たちも似たような反応をしている。

 

「やっぱり男子から見てもおかしいと思うわよね、千葉さんのアレは」

 

「へぇ~、このご時世にアレってまだあったんだなぁ~」

 

「「え?」」

 

 俺が懐かしげに見ながら言ってると、修哉と紫苑がすぐに此方へ視線を移した。

 

「リューセー、お前……知ってるのか?」

 

「ああ。アレはブルマーと言って、約一世紀前に使用されてた女子用体操服だ。見ての通り下着同然な物だから、当時は色々と話題になっていたそうだ」

 

「ず、随分詳しいのね……」

 

 スラスラ答える俺に紫苑が若干引き気味だった。

 

 詳しいも何も俺が前の世界での高校時代にいた駒王学園は、アレを女子達の体操服として使われていたんだよ。

 

 同時にブルマー姿を見て興奮していた男子(バカ)共を何度も目撃した事があった。それは当然、当時どスケベ丸出し状態だった(イッセー)も含まれている。更にはアイツの友人である松田と元浜など盗撮する連中もいたほどだ。

 

 当時の駒王学園はリアス、朱乃、ソーナという学園アイドル達の他、見目麗しい美少女達がいっぱいいたせいか、良からぬ事を企む不逞の輩がいて色々と大変だった。俺も生徒会から愚弟を諫めてくれと何度頼まれた事か。一応思い出の一つだが、余り良い物とは言えない。

 

「ち、因みに、色々な話題って例えば何なんだ?」

 

「あの姿を盗撮して観賞用、もしくは小遣い稼ぎ目的の為に誰かに売っていたとか」

 

「げっ!」

 

「何ソレ、気持ち悪……!」

 

 一部教えた途端に修哉がドン引きしており、紫苑は女の立場としてか顔を青褪めながら身震いしていた。

 

 他にも性行為関連の話題もあるが、これは流石に色々と不味いので言わないでおいた。もし言えば二人がすぐに顔を真っ赤にすると容易に想像出来るので。

 

 この世界の人間は性関連の耐性が低いという事を俺は既に知っている。しかしそれだとあまり良くない言い方なので、ここは貞操観念が高いと訂正しておく。

 

 そう考えると、前の世界は此処と比較すると凄く開放的だったと言えるだろう。

 

 例えるなら(イッセー)の事が大好きなリアスは、何の恥ずかしげもなく素っ裸となって一緒に寝るのが当たり前となっていた。更には朱乃も、自慢の柔らかい胸や尻を(イッセー)に触らせていた。ある意味逆セクハラだが、それをされた当の本人は凄く喜んでいたけどな。

 

 そんな話を修哉と紫苑に教えたら、二人揃って間違いなく完全茹蛸状態になってショートするだろう。

 

 

「黙れバカっ!」

 

 

 すると、いきなりエリカが叫んだのが聞こえた。

 

 俺達は思わずそこへ視線を向けると、顔を真っ赤にした彼女が何故かレオの脛を思い切り蹴飛ばしていた。

 

 脛を押さえて悶絶するレオに、片足でぴょんぴょん跳ね回るエリカ。その光景に修哉と紫苑は訳が分からないと首を傾げている。

 

「い、一体何が起きたんだ……?」

 

「さぁ……?」

 

「大方、レオが余計な事を言ってエリカを怒らせたんだろ」

 

 後ほど確認すると、俺の予想は大当たりだった。レオが俺と似たような話をした際、聞いていたエリカがキレてあんな事をしたのだと。

 

 あそこのやり取りに加わる気が無い俺は、二人に『次の試合が始まりそうだぞ』と言って意識を逸らさせた。

 

 

 

 

 

 隆誠達とは別にE組の男子達は一通りの話が済んだ後、女子のエリカと美月は授業へ戻っている。

 

「そうだ達也、ちょっといいかな?」

 

「何だ」

 

 既に名前で呼ぶほど親しくなった男子生徒――(よし)()(みき)比古(ひこ)は達也にある事を尋ねようとした。

 

「さっき僕達と試合をしたF組の彼――兵藤隆誠についてなんだけど」

 

「お? お前もリューセーの事を知ってるのか?」

 

 幹比古が隆誠の話題に触れた途端、一緒に聞いていたレオが反応した。

 

 達也に質問したが、彼は余り気にせず苦笑しながら答える。

 

「勿論知ってるさ。達也と同様に色々と有名だからね」

 

「アイツと同一視されるのは心外だな」

 

 危険人物並みに警戒している相手と一緒にされたくなかったのか、さっきまで無表情だった達也が少しばかり不快そうに顔を歪めていた。

 

 これには幹比古やレオも予想外だったみたいで、二人は意外そうに見ている。

 

「あれ? もしかして達也、彼とは仲が悪いのかい?」

 

「別に険悪と言う仲ではない。アイツが今まで余計な事を言った所為で、周囲から誤解を招かれた事が何度もあってな。それを除けば普通に話す程度の間柄だが」

 

「そう言うなよ、達也。別にリューセーだって悪気があって言ったんじゃねぇんだからさ」

 

 珍しく感情的になってる達也に幹比古は再び驚くも、そこをレオがフォローに回った。

 

「レオは達也と違って、結構仲が良さそうに思えるね」

 

「リューセーとは馬が合うんだよ。結構話しやすいんだ。エリカもエリカで、アイツの事をライバル視してるしな」

 

「エリカも彼の事を知ってるのかい? それにライバル視って?」

 

 気になる単語だったのか、幹比古は一旦達也からレオにどう言う事だと尋ねた。

 

 訊かれたレオは少しばかり愉快そうな表情で説明する。

 

「幹比古は知らないと思うが、一ヶ月ぐらい前にエリカがリューセーと手合わせしたんだ。その後にアイツ物凄く悔しがってる顔をしててな。チョッとばかり良い物が見れたと思わず笑いそうになっちまったぜ。あ、コレはエリカに内緒な」

 

「悔しがってるって……もしかしてエリカが負けたのかい!?」

 

 レオの説明に信じられないと言わんばかりに叫ぶ幹比古。

 

 因みに幹比古はエリカと幼馴染の関係で、剣術の腕前も勿論知っている。印可を持った実力者である彼女が隆誠に負けたと知れば叫ぶのは無理もない事だ。

 

 すると、聞いていた達也が話に割って入った。

 

「レオ、その言い方は語弊がある。正しくは『兵藤とエリカが手合わせをして引き分けで終わった』と言うべきだ」

 

「え? ひ、引き分け?」

 

「ああ。その結果に納得行かなかったエリカが兵藤に再勝負しようとしたんだが、見物していた会長達に止められてな。その所為で暫く不機嫌になるどころか、兵藤に会う度に勝負しろと強請っていたんだ。今は漸く落ち着いたがな」

 

 レオと違って正しく説明する達也に、幹比古は段々と納得のいく表情となっていく。教室で彼女の顔を見る度、何であんな不機嫌なんだろうと不思議に思っていたのだ。

 

 それがまさか、学校で有名となっている隆誠と手合わせして引き分けたのが原因だったとは完全に予想外だ。自身の家族に教えれば絶対に驚くだろうと断言出来る。

 

「そんな事があったなんて、全く知らなかったよ。まさかあのエリカを相手に引き分けるなんて。そんな強いなら、兵藤隆誠はどこかの有名な流派に属してもおかしくない筈なんだけど」

 

「……さあな。そこは俺も知りたいぐらいだ」

 

 そう言う達也だが、実は師である八雲経由から情報を入手している。隆誠がどの流派にも属していなく、自己流であれ程の実力者なのであると。

 

 もし教えたら最後、幹比古だけでなくレオも確実に仰天するだろう。そしてこの場にいないエリカも聞けばそうなるどころか、またしても勝負しろと強請るのが再発すると容易に想像出来る。更には隆誠の強さを知る為に、自分の道場へ連れて行こうとするに違いない。

 

 そんな展開になる事を既に予想済みの達也は、敢えて知らないと嘘を吐いた。自ら混乱を招く事をする気は無いと。

 

 これ以上続けると、エリカが何処からか聞きつけて収拾が付かなくなるかもしれないと危惧して、ここで話題を変えようとした。

 

「それはそうと、幹比古は何故俺に兵藤の事を聞いてきたんだ?」

 

 達也からの質問に、まるで察したように幹比古がそれに合わせようとする。

 

「そ、そうだったね。彼がこの前の実技試験で妹の深雪さんを抜いて1位になったのは知ってると思うけど」

 

「ああ。俺としては予想外な結果だがな」

 

「へぇ~。達也でも予想を外す事あるんだな」

 

 実技トップは妹の深雪に間違いないと断言していたところを、実は隆誠だと知った達也は妙な気持ちになっていた。それは本人にも全く分からないみたいだ。敢えて言葉にするなら『モヤモヤとした、ある種の気持ち悪い感覚を覚えていた』みたいなものである。

 

 達也は事実のみ言った筈なのに、レオが茶化すように言ってきた。いくら俺でも何でも当たる訳ではないと言い返したかったが、そうしても無駄だと分かったので敢えてスルーしている。

 

 幹比古も達也の発言に頷きながらも話を続けた。

 

「確かにアレは僕も予想外だったよ。兵藤隆誠が入学試験で二科生となった数ヵ月後、定期試験で一科生以上の結果を出したからね。一体どうやってあれ程の実力を身に付けたのかが今も凄く気になってるんだ。達也達は彼と話す間柄だから、もしかすれば何か知ってるんじゃないかと思って聞いてみたんだ」

 

「そうか。生憎だが俺達も詳しくは知らない。一応アイツに直接聞いてみたが、『独学で努力しただけ』としか分からなかった」

 

「ど、独学であの凄い結果を出したって……」

 

 一科生に教えている教師も形無しと言うべき事を仕出かした隆誠に、幹比古はどうツッコメがいいのか分からなくなってしまった。

 

 それに関しては達也も同様だった。独学でやるにも限度があると言うのに、何故あそこまでの結果を出したのかと。

 

 学校の成績とは言え、二科生であれほどの成績を出したのは前代未聞だ。達也は念の為にと過去の記録を調べてみたが、過去の二科生で隆誠と同等の結果を出したものはいなかった。

 

 あんな非常識な結果を出す奴は隆誠だけだろうと考えている。だがしかし、それは達也にも言える事だ。彼も彼で、理論ではぶっちぎりの一位となって教師を悩ませた原因を作ったのだから。しかし、当の本人は全く気付いていないどころか、失念しているかもしれない。それだけ隆誠の結果が異常だった、と言うべきだろう。

 

「達也、もし機会があれば僕に彼を紹介してくれないかな?」

 

「別に構わないが、俺は余りお勧めしないぞ」

 

「おいおい、いくらなんでもそりゃねぇだろ。リューセーは達也が思ってるほど嫌な奴じゃないんだからさ」

 

 隆誠と話してみたいと願う幹比古に達也が若干嫌そうに言った事に、レオが苦笑しながらツッコんだ。

 

 三人が話し込んでいる中、トレーナーから『いつまでも話してないで試合を見るように』と注意されてしまった為に中断する事となってしまった。




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