再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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九校戦編 準備会議前のやり取り

 授業を終えた放課後、修哉には諸事情で剣道部を休むと伝えた。俺が九校戦準備会議に出ると素直に教えてしまえば、あっと言う間に噂が広まってしまうから誤魔化す事にした。友人に嘘を吐くのは心苦しいが、後になれば分かる事だと自身に言い聞かせている。

 

 剣道部主将代理の壬生も同様の理由で教えていない。何しろ剣道部は過去に誰も九校戦に参加した事がないから、知った途端に大騒ぎとなってしまうのが目に見えてる。教えるにしても発足式で正式に決まってからにしたいと、真由美達も了承済みだ。

 

 俺の部活欠席に修哉と紫苑が不可思議に思ってる中、俺は一目散に部活連本部へ向かった。そこで今回の会議をやるからと真由美から聞かされている。

 

 四月に三巨頭+司波の前で超スピードと遠当ての種明かしをした場所である事に、俺は思わず苦笑してしまう。あそこで彼等と初めて対面し、そして(特に摩利を)驚かせた思い出があるので。

 

 部活連本部に着いて中に入ると、既に何人か席に着いていた。言わなくても分かると思うが、此処にいるのは一科生だけだ。その為、二科生の俺が入った途端に凝視されている。『何故此処に二科生が?』みたいな感じで。

 

 嘗ての事を思い出してしまう。前世(むかし)の高校時代で、初めてレーティングゲームの観戦ルームへ行った際、貴族悪魔達からの敵意に満ちた視線を送られた事があった。そこは魔王サーゼクスが黙らせた事でどうにか事無きを得たが。

 

 あの身勝手(クソったれ)な貴族悪魔達ほどではないが、一科生達が二科生の俺に対して友好的ではない事がよく分かる。後から来る司波も似たような目に遭うだろう。

 

 俺としてはそんな子供染みた差別意識をさっさと捨てて欲しいと思っている。しかしこれは長年放置されていた為、一高の悪しき伝統となってしまっていた。これを改善するには何かしらの大きな出来事が起きない限り、一科生達が考えを改める事は絶対無いだろう。

 

 そう考えると、先ず第一歩を踏み出す為の切欠が必要だ。例えば二科生の俺と司波が今回の九校戦で一科生以上の結果を示すとか、選手の俺が参加する競技で優勝、技術スタッフの司波が選手達に手厚いサポートで優勝へ導かせる、と言う結果を。

 

 九校戦出場に関しては大丈夫だろう。三巨頭が反対する一科生達を説得すると言ってたので、いくら無駄にプライドの高い一科生達が反発したところで、三巨頭達の意見を覆すほどの度胸があるとは思えない。それでも平行線を辿った場合、俺が実技トップである事を証明する為に実演で示せばいいだけの事だ。

 

 そう考えながら席に着いて会議が始まるのを待ってると、新たに入って来た一科生が俺を見て驚きの声を出した。

 

「お、兵藤じゃねぇか。ここに来たって事は、お前も九校戦に選ばれたのか?」

 

 声を掛けて来たのは、剣道部主将代理の壬生と交際中である二年の桐原武明だ。

 

 他の一科生と違って負の感情は一切無く、純粋に驚いている。

 

「お久しぶりです、桐原先輩。まぁ、そう言う事です」

 

 俺が二科生であるにも関わらず、彼は全く差別意識がないみたいで、遠慮なく俺の隣の席に座っている。

 

 その光景に他の一科生達は不思議そうに見てるも、俺達は全く気にしていない。

 

「見たぜ、この前の定期試験の結果。まさか一科生どころか、あの司波妹を抜いて実技トップとはやるじゃねぇか」

 

 桐原の台詞にこの場にいる一科生達が信じられないと言わんばかりに驚愕していた。

 

 その中には一年もいて、何やら歯軋りしているのもいる。確かアイツはA組の森崎、だったか。最初は俺を見た途端に何か言いたげな様子だったけど、二年の桐原がいた事で口出し出来なかったんだろう。

 

「ありがとうございます。因みに理論トップの司波も此処に来る予定ですよ。選手の俺と違い、技術スタッフとして」

 

「マジかよ!? まぁ言われてみれば、確かにアイツならスタッフに選ばれてもおかしくねぇな」

 

 まさか桐原が九校戦に出るとは。俺の周囲は敵だらけかと思っていたが、予想外の味方がいたとは驚きだ。

 

 彼が俺とこんなに友好的なのは当然理由がある。一ヵ月前に俺がエリカと手合わせした際、その時に剣術部数名の中に桐原もいて見物していた。

 

 あの勝負は引き分けとなったが、俺が千葉家の娘であるエリカ相手にあそこまで戦えたのが余りにも予想外だったみたいだ。

 

 そして暴走気味となったエリカを三巨頭(主に摩利)が諫めた後、見物していた桐原が千代田みたいに俺を剣術部に来ないかと勧誘してきたが、そこを恋人の壬生が阻止してくれた事で事無きを得ている。

 

「あ、そういやぁ、千葉の奴はあれからどうなったんだ? あの勝負の後、何度も勝負しろって言われてたろ」

 

「今は何とか落ち着いています。まぁ彼女の事ですから、隙あらばまた再戦しろと言ってくるかもしれませんが」

 

「だろうな。いやぁ~、この前はホントにいい試合(もん)見せてもらったぜ。もし兵藤が剣術部に来てくれるなら大歓迎なんだが」

 

「言っておきますが、此処で俺を剣術部に勧誘するのは勘弁して下さいね。そうなれば後で壬生先輩が絶対に黙っていませんので」

 

「ぐっ! わ、分かってるって……」

 

 念の為に釘を刺すと案の定と言うべきか、桐原は密かに俺を引き抜こうと考えていたようだ。恋人の名前が出た途端に取り敢えずと言った感じで引き下がっている。

 

「ってか、その壬生は知ってるのか? お前が今回の九校戦に参加するって事を」

 

「いえ、まだ教えてません。ちょっとしたサプライズも兼ねて、来週の月曜日に教えようと思います。剣道部員の俺が初の九校戦出場と知れば大喜びすると思いまして」

 

「おいおい、随分と生意気な事を考えてるじゃねぇか」

 

 せめて剣道部の主将には教えるべき事を敢えて伏せたのはどうかと思うだろうが、俺の理由を聞いた桐原は意地の悪そうな笑みを浮かべるも納得していた。

 

 恐らくだけど、今の彼は壬生が凄く喜ぶ顔を思い浮かんだかもしれない。恋人なら真っ先にそう考えるだろう。

 

 すると、俺と同じ二科生――司波が入って来た。その瞬間、またしても二科生が来た事で他の一科生達が凝視している。

 

 こちらに気付いた司波が視線を向けるも、俺と一緒に桐原が軽い挨拶をした事によって若干目を見開いていた。その後に余り目立たない隅っこの席に座っている。

 

「? どうしたんだ、アイツ。こっちに来るよう促しても来ないなんて」

 

「それは多分俺が原因かと……」

 

「何だ? もしかして喧嘩でもしたのか?」

 

「いや、そう言う訳ではなくてですね……」

 

 俺が司波を九校戦に参加させる原因を作ってしまった為、少しばかり恨まれているのだ。

 

 と言っても、妹が選手として参加する以上、どの道出る事に変わりはない。アイツもそれ位の事は分かっている筈だから、多少俺を恨んでいても非難するような事はしないだろう。

 

 因みに司波妹だが、既に選手として確定している他、生徒会室で留守番となっている。まぁ俺としてはそうしてくれた方がありがたい。もしも一科生の誰かが司波を否定する発言をした瞬間、あのブラコン娘が絶対に黙ってないと思うので。

 

 桐原にどうやって誤魔化そうかと考えてる中、続々と入室してくる一科生達の中に――

 

「あっ、兵藤くんじゃない!」

 

 聞き覚えのある叫び声がした事に俺が振り向くと、以前に会った陸上部の選手――千代田花音がいた。それと見知らぬ男子生徒も一緒だ。

 

 彼女の行動により、この場にいる一科生達が此方を凝視してくる。それは司波も同様に。

 

「何だ兵藤、千代田とも知り合いなのか?」

 

「え、ええ、まぁ……」

 

 物凄く意外そうに問う桐原に俺は苦笑しながら答えた。

 

 そんな中、ツカツカと近づいてくる千代田は即座に話しかけてくる。

 

「どういうこと!? 君が九校戦に出るなんて聞いてないわよ!」

 

「えっと、決まったのは今日でして……」

 

「そうなの!? ああ、もう! こんな事になるなら無理を言ってでも君を陸上部に誘えばよかったわ!」

 

 本気で悔しがっている千代田の台詞と仕草に、周囲が困惑する一方だ。

 

 彼女は一科生である他、陸上部のエースとして活躍している。二科生の男子である俺に信じられない事を言ったのだから、他の一科生達がそうなるのは当然だろう。

 

「珍しいじゃねぇか、千代田。まさかお前が兵藤にそこまで入れ込んでるとはな。ひょっとして許婚の五十里に愛想尽かしたのか?」

 

「ちょっと桐原君、いくらそれが冗談でも怒るわよ?」

 

 二人は軽口を叩き合う仲なのか、とても親しげな感じだった。

 

 けれど、千代田は聞き捨てならないと言わんばかりに少々お怒り気味である。

 

「勘違いされたら困るから言っておくけど、あたしは今も(けい)一筋よ! 他の男子に入れ込むなんて絶対あり得ないんだから!」

 

「あ~はいはい。俺が悪かったよ」

 

 愛する男しか興味無いと告げる千代田に俺は思わず唖然としてしまう。こんな人が大勢いる場所で堂々を言い切るってある意味凄いな。

 

 司波を含めた他の一年達も俺と似た反応をしていたが、桐原や他の上級生達は何故か呆れ気味な表情だった。

 

 桐原達がこんな反応をしてるって事は、千代田の惚気は日常茶飯事みたいなものなのか? だとしたら凄く面倒な相手かもしれない。

 

「ちょっと花音。あと少ししたら会議が始まるんだから……」

 

 千代田と一緒にいた男子生徒が落ち着かせようとしている。

 

 彼が桐原や千代田が言ってた五十里(いそり)(けい)、か。何と言うか、女顔の美少年だ。

 

 大変失礼だけど、女装しても『背の高い女性』で通りそうな気がする。

 

「啓、それは分かってるんだけど、この子はどうしても陸上部に必要な人材なのよ」

 

「ああ、確か100メートル走で日本新記録達成したとか……」

 

「そうなのよ! しかも一切魔法使わないで5秒6よ!」

 

『!』

 

 千代田が俺が100メートル走の記録を言った瞬間、この場にいる全員が仰天した。桐原も勿論の事、聞き耳を立てている司波も同様に。

 

 別に教えても構わないが、出来れば此処で暴露しないで欲しかった。もうすぐ会議が始まるのに、俺が余計に目立って居た堪れなくなってしまうんだけど。

 

「ひょ、兵藤……お前、なんつー記録出してやがるんだよ。日本の現役陸上選手ぶっちぎりじゃねぇか……!」

 

「あ、あははは……」

 

「兵藤君、やっぱり考え直してくれないかしら? 陸上部(ウチ)の部長がどうしても君に入部して欲しいって言ってるのよ」

 

「ですから千代田先輩、そう言う話はもうお断りしてます」

 

 どうやら千代田と陸上部部長は未だに俺を陸上部に勧誘したがってるようだ。けど生憎、俺は修哉を鍛える為に剣道部に入ってるので、他の部に入る気なんか微塵も無い。

 

「おいおい、それはちょっとばかり聞き捨てならねぇな」

 

 すると、彼女の発言に桐原が割って入ろうとする。

 

「何? 邪魔しないでよ、桐原くん」

 

「悪いがそれは無理な相談だ。コイツを陸上部に取られるぐらいなら、まだ剣術部に入ってもらった方がマシなんでな」

 

「ちょっとちょっと、もう会議が始まるんですから……!」

 

「そうだよ、花音。落ち着いて……!」

 

 さっきの釘差しは一体何だったんだろうか。桐原が千代田を牽制しながらも、剣術部が頂く宣言してるし。

 

 俺と五十里が止めに入ろうとするも、バチバチと火花を散らす二人が一触即発な雰囲気になろうとする寸前――

 

「桐原、何をしている」

 

「花音! これから会議が始まるんだから早く席に着け!」

 

「「!」」

 

 それはすぐに収まる事となった。

 

 入室しながら議長席に座る十文字と摩利が名指しした事で、二人は不味いと言わんばかりにバツが悪そうな表情になる。

 

 特に千代田は摩利の叱責が物凄く効いたように、ビクッとしながらもションボリとしながらも、五十里と一緒に近くの席に座った。

 

 血気盛んな桐原と千代田でも、二人の前では形無しだった。勿論それは他の一科生達にも言える事だ。十文字達の存在感が強いからこそ、故に第一高校の三巨頭と呼ばれている。

 

「それでは、全員揃いましたので、九校戦メンバーの選定会議を開始します」

 

 最後に入室した真由美も議長席に腰を下ろした後、まるで何事も無かったかのように会議を始めようとした。

 

 肝が据わってると言うか何と言うか、本当に頼もしい事で。そうでなければ三巨頭の一人にはなってないか。

 

 さて、会議が始まったので俺も頭を切り替えるとしよう。今回の会議で俺と司波の参加に否定的な考えを持っているであろう一科生達を、三巨頭は一体どうやって言い包めるのやら。

 

 ………おや? 思わず周囲を見回してたら一科生達の中に、司波と一緒にいた光井と北山がいるな。あの二人も参加するのか。

 

 まぁ考えてみたら、彼女達は森崎と同じA組で優秀な成績を収めている。だから九校戦に出てもおかしくない。

 

 そう考えると、司波が技術スタッフ参加すると知れば大喜びするだろう。特に光井は友人以上の好意を抱いている節が見受けられるし。

 

 てっきり三巨頭を除く一科生達は殆ど敵だらけかと思いきや、案外そうでもなかったと俺は少しばかり安堵した。




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