選定会議の内容についてだが、俺の予想通りと言うべき流れだった。二科生である俺と司波の参加に一科至上主義の連中から多くの反対意見が出たのは言うまでもない。
結論を言うと、二科生の俺と司波は無事九校戦のメンバーとして参加する事が決定した。これは三巨頭の決定だけでなく、数少ない肯定派からの援護もあったからだ。
これだけでは分からないだろうから、先ず俺の方から簡単に説明する。
俺が選手として参加する事に、言うまでもなく選手側の一科生達が一斉に反対した。主に森崎を筆頭にした一年達が。
そこを摩利がこう言った。
『我々は定期試験の成績を参考に選定している。その際に二科生である兵藤隆誠くんは実技トップの他、理論も三位と言う好成績を収めている。これ程の結果を示した彼が、九校戦メンバーに選定しない理由はない筈だが?』
物凄く効果覿面だったのか、森崎達は言葉に詰まって言い返せない状態となる。
一高で九校戦に参加出来る条件は、この前の定期試験で上位成績者である事だ。なので摩利の言った事は決して間違っていない。二科生だからと言う不文律など一切関係無く、
思った以上に早く決まりそうだと思っていたのだが、ここで名も知らない一科生が面白い事を言い出した。
『あの成績は何かの間違いです! 二科生が一年の代表である司波さん以上だなんてあり得ません! きっと何か不正をした筈です!』
これを聞いて思わずドキッとした。その一科生が言った根拠の全くない当てずっぽうは、ある意味大当たりだ。
理論は別として俺が実技試験でトップになったのは、魔法とは別の
知っての通り、俺はこの世界の魔法を簡単に使う事が出来ない。原因は今も分からないが、異なる世界からやってきた
しかし、それとは別に前の世界で使っていた
因みに
前世でそれを身を以て経験した
自分が施した対策により、俺は
話が脱線したので戻そう。
ある意味大当たりの当てずっぽうを言った一科生だが――
『ならばそこまで断言出来るのであれば、今この場で不正をしたと言う根拠を具体的に示してみろ』
――大変不機嫌そうな表情をしても摩利は終始冷静な対応であった。
反対していた一科生は感情的に発言していた為か、何一つ根拠を出せないまま引っ込んでしまう。
この世界の人間が
他の一科生達も、これ以上感情論での批判を続ければ自分達の心証もより厳しくなる、と考えるだけの理性はあったみたいで、渋々といった心情を隠し切れぬまま引き下がった。
結局のところ、定期試験の結果は違反を全くしてない正当なものであるとの事により、俺は九校戦の代表メンバーの一人として認定された。反対派だった一科生達が一切文句が言えないまま。
思っていた以上に早く終わったから、次に技術スタッフ側として参加する司波もすんなり事が運ぶと思うだろう。だがしかし、またしても一科生達が反対意見を口々に出してきた。
選手と違って、技術スタッフは定期試験の成績だけで決まるものじゃなかった。司波のエンジニアとしての技能が全く不明な為に、反対派の連中は生徒会側の推薦だけでは納得行かないのだ。信用出来ないスタッフにCADを預けたくないと言う選手側の理由も含めて。
それは確かに尤もな理由である事は俺も充分理解している。それと同時に、連中の行動にも呆れていた。
もしも司波が優秀な一科生であったら、多少の疑問視はされても即時反対する事をしないだろう。それどころか多少思うところはあっても、スタッフが人手不足と言う理由に納得して参加を認めるかもしれない。
つまり俺が言いたいのは、一科生は二科生と言う名の
何故そこまでして二科生の参加を認めないのかと、前の世界にいた
それを聞いただけで
必死に努力して優秀な成績を示した一科生達は、魔法力の低い二科生は自分より劣っている存在だと無意識に思考する傾向がある。勿論それは一科生全てではなく、差別的な考えを持たない者だっている事も補足させてもらう。
今回ここにいる反対派の連中は、明らかに二科生を下に見ている者達だ。一科生の自分達が必死に努力して頑張ったんだから、大して努力してない二科生と同等に扱うのは無理だ。みたいな感じで。
そんな中、今回の定期試験で二科生の中に自分達に匹敵、もしくはそれ以上の存在が現れた。言うまでもなくそれは俺と司波だ。更には魔法科高校の大イベントの一つである九校戦にまで参加しようとしている。
劣等生も同然である二科生の筈がいつの間にか対等の立場に立っていると考えた瞬間、連中は真っ先に否定するだろう。こんな事は断じてあってはならない事だと。
故に一科生達は二科生の参加を必死に反対しようとする。自分達の存在意義が揺らぎかねない存在を退場させる為、感情的になって二科生だからと遠回しな理由を付けて。
とまあ、これが俺の予想した一科生達の心情だ。多分この説明で
しかし、だからと言って俺は反対する一科生達を嘆かわしく思っても、別に愚かな人間とは見ていない。連中がそう言う風に考えるようになったのは、『魔法』という存在に囚われているからだ。
……って、また話が脱線してしまったな。会議の話に戻るとしよう。
司波の九校戦メンバー入りが予想以上に認められなくダラダラ続いてる中、これ以上はキリが無いと部活連会頭の十文字がある事を提案した。司波の技能を確かめる為に、実際調整させてみようと。
言い出した十文字だけでなく、司波を推薦した真由美が実験台になると申し出るも、そこに思わぬ立候補者が現れた。俺の隣に座っていた桐原がやると言ったのだ。
この事に司波は少々意外そうに見ていたが、桐原の男気に感謝するように調整をする事となる。
そして場所が実験棟に変わって、司波のCAD調整技能のお披露目だ。
とは言っても、ここで経緯を説明したところで結果は分かりきってると思うから一気に端折らせてもらう。
冒頭辺りでも言ったように、司波のエンジニアメンバー入りは決定となった。競技用CADに桐原のCADの設定をコピーし、即時使用可能な状態すると言う課題に見事
だが、それだけで決まった訳ではない。『完全マニュアル調整』と言う高度な技術を披露した事により、以前まで一科至上主義であった服部刑部が支持したのが決め手となった事でメンバー入りを果たす事となった。
司波に関する説明が凄く短いと思われるだろうが、そこは勘弁してもらいたい。
☆
翌週の月曜日。
九校戦メンバーの参加について一切喋っていない俺は、いつも通り普通に教室に入ると――
「おはよう。聞いたぜ、兵藤。マジで凄いじゃねぇか」
「おはよう、兵藤君。頑張ってくださいね」
「おはようございます、兵藤くん。応援しています」
「よっ。俺達の分まで頑張ってくれ、兵藤」
普段そこまで親しくないクラスメイト達から、挨拶ついでに激励された。
何故こんなエールを送っているのかと一瞬疑問を抱くも、答えは既に出ている。俺が九校戦の選手に選ばれた事だ。
「部活を欠席した理由はこう言う事だったんだな、リューセー」
「ホント水臭いわね。せめて私達だけでも教えて欲しかったわ」
席について早々、俺の友人である修哉と紫苑からジト目で睨まれていた。
「悪かったよ。剣道部員で初の九校戦参加と知って、壬生先輩にサプライズしようかなぁ~と思ってな」
本当なら二人に話そうかと思ったんだが、壬生の耳に入る可能性があったので黙っておいた。後ほどお詫びという事で、お昼には俺が作ったスイーツを用意するつもりでいる。
「紗耶香先輩も既に知ってるぞ。放課後は覚悟しておくんだな」
「多分、顔を見た瞬間に大喜びするでしょうね」
あれま、壬生も知っていたか。
本当なら発足式で喜ばせようと思ったが、既に情報が知れ渡ってるからそれはもう無理みたいだ。
「と言うか、何でもう知れ渡ってるんだ? 今日で正式発表される筈なのに」
「他所のクラブの先輩が言ってたぞ」
「出処はそこかよ!」
疑問にアッサリと答える修哉に俺は思わずツッコミを入れてしまった。
まぁ、発足式が始まるまで絶対口外するなと箝口令を敷かれてないからな。仕方ないと言えば仕方ないか。
何か絶対に口外しないと決めていた自分がバカみたいに思えてしまいそうだ。まぁそれは今更だが。
「確か今日の五限目に発足式が行われるから、そこで正式発表になるんでしょ?」
「リューセーは勿論出るんだよな?」
「ああ。俺だけじゃなく、隣のクラスの司波もな」
紫苑と修哉の問いに纏めて答えながら、E組の司波も参加する事も伝えた。それを聞いた二人は少々驚いている。
「やっぱりアイツも出るのか。ま、E組も此処と同じく騒いでいたからな」
「定期試験の理論ではトップだったからもしやと思ってたけど、まさか本当に参加するなんてね」
「司波は選手の俺と違って技術スタッフだけどな」
と言っても、二科生の俺と司波が九校戦に参加するのは前代未聞と言えるだろう。
「念の為に訊くが、二科生のお前達が知ってるって事は、他の一科生達も既に知ってるのか?」
再度問う俺に、これも二人はあっさりと答える。
「当然」
「そりゃもう、すっごく口惜しがってるみたいよ。定期試験の件も重なって猶更に、ね」
普段二科生だからと嘲笑してる一科生に対して思うところがあったのか、修哉と紫苑が満面の笑みだった。
この数ヵ月の間、一科生とすれ違う際に嘲笑される事が時々起こっていた。そこを俺が『あんなの放っておけ』と押さえていた事もあって、少しばかり発散されたと思う。余り良くない事なのだが、二人は常識的な考えを持ってるから大丈夫だろう。
「まぁ確かに、本来は一科生だけ選ばれる選手や技術スタッフの中に二科生が混じってるからな。向こうがそんな風になるのは分からなくもないが」
恐らく隣のクラスにいる司波も似たような事を考えている筈だ。今頃は教室で友人のエリカ達だけでなく、他のクラスメイト達からもエールを送られているだろう。
そう思っていると、突然教室の扉が開いて――
「隆誠くん、聞いたわよ。九校戦の選手として出るんでしょ?」
「頑張れよ、リューセー! お前が出る試合、必ず応援しに行くからな!」
E組のエリカとレオが突然入って来て、俺を見て早々にクラスメイト達と同様のエールを送ってきた。
いきなりの事に修哉達を含めたクラスメイト達は驚いており、俺は俺で苦笑していた。
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