再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は短いです。


九校戦編 九校戦③.5

「これは酷い。何の事後処理もせず放置されているな」

 

「そうなの! その所為で大変なの!」

 

 レイに案内された場所は、バトル・ボード会場より少し離れた森林区域だった。地面に手を付いて調べたところ、水の精霊達がとても酷い状態に陥っている事に俺は眉を顰めている。因みにレイはさっきまで透明に近い状態だったが、俺がオーラを送った事で姿が完全に見える状態だ。

 

 水の精霊が森にいるのは全く関連性が無いと思われるだろうが、逆に大有りである。寧ろいなければ、この周囲にある森林が成り立っていない。

 

 この森林区域が健康で豊かに生い茂っているのは、地中の水脈があるからだ。もしも無かったら、この辺りは草木が一切生えない荒野となっている。

 

 同時に水脈は水の精霊達が大変好む場所であり、それを行き来する事によって根を張っている草木の成長も促している。自然が豊かなのは精霊の手助けがあると言っても過言ではない。

 

 その流れを突然妨害されただけでなく、更には水の精霊その物を強制的に操ろうとする愚か者が現れた。レイ曰く悪意のある人間達の所為で、水脈の一部にいる水の精霊達が悪性に染まりつつあった。そうでない他の精霊達が大変慌てている状態である。

 

 恐らく沓子みたいな古式魔法師の仕業と見ていいだろう。精霊を操る術を持っているのは古式魔法師だけしかいないので。

 

 誰がやったのかは知らないが、精霊に対する気遣いと言うものが全く無い低俗な古式魔法師で、単に利用する道具としか見てないのだろう。もしそうでなければ精霊を元に戻す為の事後処理をしている筈だ。

 

「レイ、下がってろ。今すぐに俺が水の精霊達を浄化する」

 

「分かったの!」

 

 俺は悪性に染まっている水の精霊達を元に戻す為の準備をしようと、近くに浮いているレイを下がらせた。

 

 バトル・ボード会場周辺にいる人間達に気付かれない措置として、即座に視覚阻害と防音の結界を張る。もうついでに誰かが迷い込まないよう、人払いの術式だけは施しておく。前の世界で北欧の主神――オーディンから学んだルーン魔術で。

 

 分析魔法らしき物を使う妙な眼(・・・)を持った司波に気付かれるかもしれないが、そこは至って心配はない。修哉の話によると摩利を病院に運んで、治療に付き添っていると言っていた。今は俺に意識を向けていないから大丈夫だ。加えてアイツは俺に対する警戒を多少緩めている事もあって、今のところは問題無いと思ってるだろう。

 

 さて、今は遠くにいる司波よりも、目の前の精霊を何とかしないとな。結界も張って、人払いの術式も施し終えたから、これで一通りの措置は完了だ。

 

 一部とは言え、水脈にいる水の精霊達はかなりいる。これだけの数がいるのは、恐らく九校戦が始まる前から操っていた事になる。その所為で精霊の一部が完全に汚染されていた。このまま放置してれば、危うく他の無垢な精霊達が汚染されていただろう。と言っても、この澄み切った場所なら時間さえあれば元に戻るが。

 

 一気に浄化するには俺のオーラでなく、聖書の神(わたし)能力(ちから)――『浄化の光』でなければ無理だった。そう判断した聖書の神(わたし)は片手に光を集束させようとする。

 

「ああ、ご主人様の手から綺麗な光が……」

 

 その直後、一切汚れの無い純白な輝きを発した光が俺の片手を覆い始めた。

 

 因みに離れているレイが、まるで魅了されるように眺めているが無視させてもらう。

 

 準備が完了した俺は――

 

「汚染された精霊達よ、浄化せよ!」

 

 地面に当てた瞬間、覆っている光が段々と消えていく。

 

 地上だと見えないが、今頃地中にある一部の水脈は聖書の神(わたし)が放った『浄化の光』で覆われているだろう。同時に汚染されてる水の精霊達が、その光を充分に浴びている筈だ。

 

 改めて水脈に意識を向けてみると、汚染されている水の精霊達が次々と浄化されて、元の澄んだ状態へと戻っていく。それどころか以前よりも活発化しているような気もするが。

 

「凄いの凄いの! 水の精霊達が元に戻っていくの!」

 

 レイも感知してるようで凄く喜んで、ふわふわと浮いていながらもはしゃいでいた。

 

 そして一分もしない内に、汚染された水の精霊達の浄化は完了する。この世界の古式魔法師なら相当な時間を要するだろうが、聖書の神(わたし)なら造作も無い事だ。

 

「よし、終わったな。悪いがレイ、すぐに――」

 

「ありがとうなの、ご主人様ぁ!」

 

「って、いきなり抱き着くんじゃない」

 

 喜びの余り、途端に抱き着いてくるレイに俺は眉を顰める。

 

 前にも言ったが、今のコイツは人型になっている他、一切服を身に纏ってない全裸のままだ。

 

 もしこれが俺じゃなく修哉だったら、顔を真っ赤にしながら大慌てするだろう。同時に紫苑からの嫉妬付きで。

 

 本当なら服を着させたいがレイには不要な物だった。と言うより精霊は普段からありのままの姿を晒しているから必要無いのだ。それによって古式魔法師達は精霊を探知している。

 

 例えば精霊が何かで覆われている際、それを呼び出した古式魔法師が異物として取り払おうとするだろう。これを別の観点で言い換えれば、お洒落な服を着てる精霊に古式魔法師が必要無いと無理矢理ひん剝いて裸にさせていると思えばいい。古式魔法師達が聞けば極端だと反発されるかもしれないが、精霊本来の姿を見ようとしてるから別に間違ってはいない。

 

 とまあ少し脱線しかけたが、取り敢えず抱き着いてるレイをさっさと引っぺがすとしよう。

 

 何とか落ち着かせて離す事に成功すると、突如異変が起きた。と言っても別にレイではない。水脈を通じてる地面から、精霊が出現したのだ。しかも大量に。

 

「あっ、水の精霊達がご主人様にお礼を言いたがってるの」

 

「だからって多過ぎだろう」

 

「それだけご主人様に助けられたってことなの」

 

 言いたい事は分からなくも無いが、こんな大量に来られたら非常に困る。これから病院に戻ろうとしたら絶対に付いてくるのが目に見えているから。

 

 そう思っていると、水の精霊達がどんどん俺に群がっていく。レイが言ったように、お礼を言っているんだろう。

 

「レイ、取り敢えず離れるよう言ってくれないか? お礼はもう充分に伝わったからさ」

 

 今回はレイがいるから大丈夫だろうと安心するも――

 

「ダメなの。水の精霊達がご主人様の力になりたいって離れないの」

 

「………え?」

 

 予想外の返答が来た事に俺は固まってしまった。同時にこの後の展開も容易に浮かんでしまう。

 

「………はぁっ。またやらないといけないようだ」

 

 九校戦前夜の事を思い出しながら、俺はもう諦めるように次の作業に取り掛かろうとする。

 

 レイに自身の後輩が出来る事を教えると、物凄く喜びながらまたしても俺に抱き付いてきた。

 

 再び『中核(コア)』である光玉を作ると、水の精霊達が一斉に集まったのは言うまでもない。

 

 前回と違って、今度は虹色でなく幻想的とも言える美しい蒼色だった。

 

 そして加護の光で加えた後、少し身長が高めな青髪の見目麗しい少女が浮いたまま出現する。当然レイと同じく全裸のままで。イッセーが見たら興奮する抜群のスタイルだ。

 

 名前は……水の精霊だから『ウンディーネ』で、一部を取って『ディーネ』で良いか。またしても安直だが。

 

「やったのやったの! レイの後輩なの!」

 

 近くで大はしゃぎしているレイを無視して、俺は水の精霊に声を掛ける。

 

「さぁ目覚めよ。お前の名は『ディーネ』だ」

 

「ディー……ネ……?」

 

 水の精霊――ディーネが閉じている(まぶた)を開くと、宝石とも思われる綺麗な碧眼が出てきた。

 

 俺が視界に入った瞬間、彼女は嬉しそうに、にこやかな笑みを浮かべる。

 

「主よ、姿と名を与えて、恐悦至極に存じます。この身は、貴方様に、絶対の忠誠を、誓います。何なりと、ご命令を」

 

「いやいや、別に忠誠は誓わなくていいから」

 

 何かこの子、レイと違って丁寧で難しい言葉を使えるんだな。同じ精霊でもタイプが違うんだろうか。

 

 あとこれは非常にどうでも良い事なんだが、何だかディーネって光井と似た声のような気がする。ついでに『花鳥風月』とも言わせてみたら、真っ先に反応しそうだ。

 

 まぁそんな事よりもだ。

 

 折角水の精霊(ディーネ)を集束させたのだから、此処でちょっと色々訊いてみるとしよう。

 

「確認するが、お前がディーネになる前の記憶はあるか? 例えば人間に操られていたとか」

 

「はい。憶えて、います……!」

 

「ひっ!」

 

 俺が問うと、ディーネは途端に怒りに染まった表情となった。隣にいるレイもビックリして、俺の後ろに隠れている。

 

 さっきまで無垢な笑みを浮かべていたコイツがそうなるって事は、強制的に操られた古式魔法師の連中に相当な殺意を抱いているんだろう。

 

「落ち着け、ディーネ」

 

 取り敢えずその怒りを宥めようと、俺は子供をあやすように頭を優しく撫でる事にした。

 

 怒りの表情を浮かべていたディーネだったが、段々とそれが消えて無垢な笑みに戻っていく。

 

「よし、落ち着いたな」

 

「あ……」

 

「むぅ~。ディーネずるいの」

 

 撫でるのを止めた途端、彼女は残念そうな表情に戻るも俺は気にしない事にした。何故か頬を膨らませているレイも同様に。

 

「では訊かせてくれ。お前がディーネになる前、術者に操られて何を強要されたのかを」

 

「は、はい。お話、致します」

 

 目覚めたばかりで悪いと思いながらも、俺はディーネの話を一通り聞く事にした。




レイの後輩として、水の神造精霊『ディーネ』が出来ました。

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