再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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九校戦編 九校戦⑤

 2095年8月6日/大会四日目

 

 

 

 九校戦四日目となり、本戦は一旦休みとなった。今日から五日間、一年生のみで勝敗を争う新人戦が行われる予定である。

 

 ここまでの成績については、一位が第一高校で、二位が第三高校だった。残りの三位以下は差が開き過ぎて、逆転するのはほぼ不可能と判断されている。

 

 その為、一高にとっての強敵は三高。ポイント差は約百ポイントだが、新人戦の成績次第で逆転される恐れがある。

 

 因みに新人戦のポイントは本戦の半分。本戦より低いと言っても、優勝を重ねればかなりのポイントを稼げる他、出場する一年にとっては自分達の栄誉にもなる。新人戦だからって、決して本戦に劣るものじゃない。

 

 それと、競技の順番は本戦と同じだ。

 

 今日の種目は一日目と同様、スピード・シューティングの予選と決勝、バトル・ボードの予選となってる。

 

 けれど本戦とは少々違う。スピード・シューティングは午前が女子、午後が男子と、一気に決勝まで行うスケジュールだった。

 

 故に、今日の新人戦で一番大変なのはエンジニアの司波だ。アイツは女子スピード・シューティングの選手三人を担当してるから、試合が始まる前に彼方此方へ移動しなければならない。ある意味、選手以上にキツいだろう。

 

 それに加え、昨日に起きた摩利の事故に対しての警戒もしてるから、選手が使用するCADを用心深く細かにチェックする破目になっている。余りの重労働に気の毒と言わざるを得ない状況だ。

 

 アイツが大変忙しい中、俺は会場へ行かずに別の場所へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、何の収穫も無かったか……」

 

「ごめんなさいなの、ご主人様……」

 

「申し訳、ありません……」

 

 女子スピード・シューティングの予選が始まっている頃、俺は会場から離れた森林区域にいた。

 

 昨日にレイとディーネを通じて富士山周辺にいる精霊達から聞き込みをしてもらったが、術者に関する情報は全く得られなかった。

 

 俺が残念そうに呟くと、二人は凄く申し訳なさそうな表情になっていた。折角頼まれた初仕事に何の成果も出せなかった事にガッカリされたと思っているんだろう。

 

「別に謝る必要はない。お前達がちゃんと仕事をしたのは凄く伝わっているからさ」

 

 今のところ被害があったのは水の精霊だけだから、他の精霊達に何の被害が無いと分かっただけでも充分だ。

 

 お礼と言う訳ではないが、頑張ったレイとディーネの頭を優しく撫でる事にした。途端にさっきとは打って変わるように表情が変わっている。

 

 主人である俺だからか、嫌がる素振りを一切見せず目を細めている。まるで甘えたがりの猫みたいだ。

 

 もうちょっと撫でたいけど、一先ずこれで終わりにしよう。

 

「「あ……」」

 

「おいおい、手を放した途端に残念がるなよ」

 

 凄く名残惜しそうな表情をするレイとディーネに思わずツッコミを入れてしまう俺。

 

「うう~、もっと撫でてほしいの~」

 

「あ、主……」

 

「はいはい、また今度な」

 

 甘えたがりの子供みたいに上目遣いで見てくる二体の精霊に、俺は宥めるように言った。

 

「ところでディーネ、水脈にいる水の精霊達も問題無かったか?」

 

「はい。全て確認、しましたが、ディーネみたく、操られては、いませんでした」

 

「だったら、今日のバトル・ボードは大丈夫だな」

 

 流石に連日続いて妨害行為をする事はしないようだ。

 

 まぁこれでもし再び事故が起きたりしたら、流石の真由美達も不審に思って大会委員に問い合わせるだろう。尤も、向こうが否定してしまったらそれまでとなるが。

 

 取り敢えず今日は精霊達に被害が及ぶ事は無いと判断して良いだろう。万が一事故が起きた時に備えて、レイやディーネが発見したら即座に俺に報告するよう命じている。

 

 聖書の神(わたし)によって収束され、自我が芽生えた二体の精霊は生まれたばかりだが、そこら辺の精霊達とは違って相当な力を有している。だけどレイ達はまだ力の加減が出来ないから、下手に戦闘行為をさせると相手を殺してしまう恐れがある。

 

 特にディーネは操られて悪性に染まりかけた所為で、古式魔法師達に対する怒りと憎しみが強い。水魔法を使って殺す事をしたら色々な問題が生じてしまう。

 

 俺が絶対に手を出すなと強く命じておけば、ディーネは何とか我慢してくれる。それでも怒り心頭となったら、頭を撫でて落ち着かせればいい。

 

「取り敢えずお前達は引き続き、周囲を見張ってくれ。昨日も言ったが、術者を見付けたら絶対手を出さないで俺に知らせるように。いいな?」

 

「分かったの!」

 

「了解、しました」

 

 念を押して言う俺に力強く返事をするレイと、コクリと頷くディーネ。

 

 俺は俺でそろそろ会場に戻って観戦しなければいけない。修哉と紫苑には別行動するとは言ったけど、昨日の事もあって早く合流しないと怪しまれてしまう。

 

「じゃあ悪いが、俺は戻――何してんの君達?」

 

「「……………」」

 

 二人に一旦別れを言いながら背を向けるも、突然レイとディーネがそれぞれ俺の腕に引っ付いてきた。

 

「あの、離れてくれないか? 俺、この後行かなければならない所があるんだけど」

 

「……ご主人様、お願いなの……」

 

「少しだけ、少しだけで、いいですから、傍にいて、欲しいです」

 

「………………」

 

 甘えるようにおねだりしてくるレイとディーネに、俺は思わず言葉を失ってしまった。

 

 何と言うか、とても放っておけない気持ちになってしまっている。

 

 人間ならまだしも、精霊相手に何を考えているんだと思われるだろう。だけどこの子達は生まれたばかりの子供同然だ。子育ての経験がある聖書の神(わたし)としては、人間だろうが精霊だろうが関係無い。

 

 前の世界で天使以外に、術のリバウンドで小さくなったアーシアとリアスの世話をした事がある。あの時は親バカ、じゃなくて兄バカ丸出しだった。アレはアレで良い思い出の一つとなってる。

 

 レイとディーネの心情を考えると、俺が無理だと言って会場に向かったら命令無視して付いてくるだろう。それによって古式魔法師の幹比古や沓子に気付かれて大騒ぎになる可能性が充分に高い。

 

 故に――

 

「……はぁっ、分かったよ。昨日の働きに免じて、少しの間だけ一緒にいる。それなら良いだろ?」

 

「わ~い! ありがとうなの~ご主人様ぁ!」

 

「ありがとう、ございます……!」

 

 修哉と紫苑には申し訳ないが、もう暫くこの森に留まる事にした。

 

 一応合流するのは遅くなる事を連絡しておかないとな。

 

 

 

 

 

 

「ったく、今まで何処に行ってたんだ?」

 

「遅くなるのは聞いたけど、まさか準決勝になるまでとは思わなかったわよ」

 

「悪かったって。だから機嫌直してくれよ、二人とも」

 

 レイとディーネがある程度満足するまで傍にいた結果、女子スピード・シューティングは準決勝まで進んでいた。あと少しで北山の試合が始まる予定だ。

 

 会場に辿り着き、観客席に座ってる修哉と紫苑を見付けて直ぐに謝るも、苦言を呈されてしまう破目となったのは言うまでもない。何一つ文句を言えない俺は甘んじて受け入れながら、二人に詫びとしてスイーツを用意してご機嫌取りをするしかなかった。

 

 その他に俺が予選を観なかった事は、別の席で観戦してるレオ達の耳に入っている。修哉達と同様、後で苦言を呈されるのは確定だ。

 

「ところで、北山の相手は『十七夜(かのう)(しおり)』って言う三校の選手だけど、どんな魔法を使っていたんだ?」

 

 画像を見た際、沓子の連れと思われるショートヘアーの女子だった。

 

 予選を観てないので彼女が使う魔法が分からない為、修哉達に訊かざるを得ない。

 

 俺からの問いに、二人は途端に答え辛そうな表情となる。

 

「あの選手が使う魔法は、もう凄いとしか言いようがなかった」

 

「一つのクレーを破壊した瞬間、その破片で他のクレーを次々と破壊していたのよ。まるでスーパーコンピュータみたいに、移動する物体の位置を把握してたみたいな感じで。しかも北山さんと同じくパーフェクトだったわ」

 

「ほう、それはそれは……」

 

 説明し辛そうな修哉に対し、紫苑はその時の状況を分かりやすく教えてくれた。

 

 三校はかなりの強敵だとは聞いていたが、一年も相当な実力者揃いのようだ。バトル・ボードに出場する沓子も含めて。

 

 まだ準決勝だけど、一高は一番厄介な相手が三高だと認識してるので、これはある意味決勝戦みたいなものだろう。恐らく真由美達もそう考えている筈だ。

 

「リューセーは北山さんが使う魔法は知ってるのか?」 

 

「ああ、知ってる」

 

 司波が考案した魔法――『能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)』は、練習期間中に俺が北山と模擬戦した時に知った。

 

 最初に見た時は本気で驚いた。あんな凄い魔法を考案した司波には恐れ入ると思うほどに。

 

 能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)は、「空中を複数の仮想立体で区分けし、標的が侵入したエリアに仮想的な波動を送り、仮想的な波動をうけた固形物に本物の振動を与える」と言う仮想領域を生みだす魔法だ。しかも使用者はCADを前方にかざして引き金を引くだけで標的を破壊する。まぁそれでも司波曰く、かなりの演算スピードが求められる魔法だと言っていたが。

 

「練習期間中、俺が模擬戦の相手をした時に試された」

 

「因みにどっちが勝ったの?」

 

「俺だ」

 

「……マジかよ」

 

 勝負の結果を問われた紫苑に答えた瞬間、修哉が信じられないと言わんばかりに頬を引き攣らせていた。

 

 模擬戦とはいえ、俺に負けた時の北山が凄く悔しがっていたのは今でも憶えてる。アイス・ピラーズ・ブレイクも控えてる筈なのに、何度も俺に勝負を挑んできた。未だ俺に勝ててないけど。

 

「じゃあリューセーは一体何の魔法を使って勝ったんだ?」

 

「エア・ブリッドのみで」

 

「……北山さんにとっては屈辱とも言える敗北ね」

 

 何故か紫苑が北山に対して凄く同情的に見ていた。

 

 確かに能動空中機雷(アクティブ・エアー・マイン)は凄い魔法だったけど、クレーの射出スピードが遅く見える俺からすれば別に脅威でもない。ただ単にクレーを速く撃ち落とせば良いだけの話だ。いくら魔法勝負と言っても、所詮は単なるクレー射撃の魔法バージョンに過ぎないので。

 

 そう思っていると、準決勝に出る選手二人が入場し、所定の位置についていた。

 

 白は北山で、赤は三高の十七夜だ。どちらもバイザーを使って目は見えないが、それでも絶対に勝つと言う覇気を感じる。

 

 どちらが勝つのかと見守る中、不意に北山が視線を観客席の方へ向けた。まるで誰かを探しているように。

 

 そして俺を見付けると、途端に視線を固定する。バイザー越しでも俺を睨んでいるのが何となく分かってしまう。

 

「何か北山が俺を睨んでる気がするな……」

 

「言い忘れてたけど、リューセー君が予選を観てない事を彼女も知ってるわよ」

 

「あと言伝も預かってる。『競技が終わった後に天幕へ必ず来るように』ってな」

 

 うわぁ。それってもう完全に怒ってるじゃないか。

 

 そう言えば北山から、『あの時とは違うところを見せるから、必ず観に来て』って言われてたな。レイとディーネの事もあってすっかり忘れてた。

 

 これは後でスイーツを用意して、どうにか機嫌を直してもらうしかなさそうだ。その前に謝っておかないといけないが。

 

 修哉と紫苑だけでなく、北山にも詫びをしなくならなければいけなくなった事に、今日の俺は色々とダメダメであったと反省しなければならなかった。

 

 少々ブルーな気分となってしまった為、此処から先は結果だけで済ませてもらう。

 

 北山と十七夜の試合は互いに一歩も引かず接戦となっていた。だけどエンジニアである司波の助力があった為、準決勝は見事に北山が勝利し、決勝進出の切符を勝ち取るのであった。




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