再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

50 / 240
今回は活動報告に載せたリクエストの技を出しました。


九校戦編 九校戦⑨

 同時刻。

 

 九校戦会場から遥か離れた場所にある十師族の拠点。

 

「今の魔法は……」

 

 九校戦をモニター観戦していた女性当主が、口にしていた紅茶を飲むのを止めていた。

 

 現在画面に映っているのは男子ピラーズ・ブレイク新人戦で、一回戦に勝利した少年を柄にもなく凝視している。

 

 先程の少年が指を鳴らした瞬間、槍らしき形状の光を一瞬で発動させて十二本の氷柱を貫通させ、その後に光が爆発して氷柱が消失、と言う十秒にも満たない時間で終わらせて勝利した。

 

 彼女としては少年が勝利した事は如何でもよく、一番肝心なのは使用した魔法であった。

 

「奥様、あの少年が使用された魔法はもしや……」

 

 傍に控えている初老の男性執事が危惧するように問うも、当の彼女は全く聞いていない。

 

 数秒後、凝視していたのを止めた女性当主は落ち着きを取り戻そうと、再び紅茶を口にする。

 

「……葉山さん」

 

「はい」

 

「九校戦が終わり次第、至急調べて頂けるかしら?」

 

「畏まりました」

 

 十師族で四葉家の現当主――(よつ)()真夜(まや)は密かに調べようと、執事の葉山にそう命じた。隆誠が使った魔法は自身が扱う魔法――『流星群(ミーティア・ライン)』に少しばかり似ていたから。

 

 

 

 

 

 

 男子アイス・ピラーズ・ブレイクの一回戦を終えた後、会場にいる誰もが騒然としていた。

 

 どうやら俺が十秒未満で一回戦を突破した事が、九校戦始まって以来の歴史的偉業となっているようだ。

 

 最短時間で勝利した千代田より更に早く終えたから、そうなるのは無理もないかもしれない。現に俺が控え室に戻った際、物凄い勢いで千代田に詰め寄られたのだから。五十里が何とか抑えようとするも、彼も凄く気になっている様子だったし。

 

 だがそれだけでは収まらなかった。俺が五十里と千代田に説明(ごまか)してる最中、三巨頭の真由美達が強襲するような勢いで控え室に入って来た。更にはモニターで観ていたであろう司波から突然連絡が入り、妙に焦っていたような感じで問い詰められた。

 

 控え室が完全に混沌と化した場になっていたが、どうにか全員を宥める事となった。その代わり凄く時間が掛かってしまったが。

 

 それとは別に、女子アイス・ピラーズ・ブレイクに出場してる北山と明智も一回戦を突破した。一回戦の最終ゲームとなる司波妹は未だにやっておらず、午後からの予定となっている。彼女の事だから余裕で突破するだろう。

 

 女子は順調なのだが、男子の方は残念な情報がある。俺以外の一高選手なのだが、一人は一回戦突破するも、もう一人が何と敗退となってしまった。敗因としては試合前から力み過ぎてて、思うように魔法を発動出来なかったのだ。

 

 ちょっとした予想外の展開になったが、それでもまだ予想範囲内なので大丈夫だと真由美が言っていた。

 

 午前の試合が一通り終わり、午後から始まる二回戦に備えるのであった。

 

 

 

 

「司波君、無理しなくても良いんだよ。今日は僕が兵藤君を見てるから、君は向こうに集中した方が……」

 

「問題ありません。彼女達の調整は一通り済みましたので」

 

 男女共に一回戦を終えた午後。

 

 司波妹の試合を見届けた司波兄は、男子アイス・ピラーズ・ブレイクの会場へ来ていた。

 

 モニター越しだったが、彼女の試合はとても印象的であった。

 

 巫女装束を纏っていた事で観客席の周囲が魅了されるように言葉を失っていたのだ。加えて整い過ぎてる美貌もあって、神秘的な雰囲気を醸し出していたから。

 

 俺としては、あの衣装を見て前世(むかし)の同級生かつ義妹である姫島(ひめじま)(あけ)()を頭の中で思い浮かべた。向こうでは『巫女=朱乃』と成り立っていたから仕方がないと言えよう。司波妹と比べて、美貌は互角であっても、実力だと朱乃の方が遥かに上だが。

 

 それと肝心の司波妹の実力だが、強力な魔法を使い圧倒的な差を見せ付けて勝利していた。相手側も完全に呑まれて戦意喪失する程に。

 

 俺と一緒に観ていた五十里の話によると、魔法名は『氷炎地獄(インフェルノ)』。対象とするエリアを二分し、片方に灼熱、片方に極寒、その二つを同時に発生させる高難度魔法だと言っていた。

 

 高校生が使う代物でないと驚きながら言っていたので、俺が思わず並外れた魔法ですねぇと呟いた瞬間――

 

『兵藤君がそれを言っちゃいけないよ』

 

『一回戦で使った君の魔法も充分に並外れてるわよ!』

 

 何故か五十里と千代田からツッコまれてしまった。

 

 解せぬ。俺は単に感想を述べただけなのに理不尽だ。

 

 まぁそんな事よりも、そろそろ目の前の方に意識を向けるとするか。司波が俺の方へ視線を向けているし。

 

「兵藤、次の試合も一回戦で見せた魔法を使うのか?」

 

「いいや、アレとは全く別の魔法を披露するつもりでいる」

 

「別の魔法、だと?」

 

 俺の台詞に思わず鸚鵡返しをする司波に、五十里と千代田も揃って此方へ視線を移す。

 

 因みに俺が使った『光の槍』だが、俺が独自に開発した収束系の系統魔法と言う事にしている。詳細内容の開示についてはマナー違反なので教えられないと言って何とか留まらせたが、隙あらば聞こうとするだろう。

 

 表面上の情報を教えただけだと言うのに、何故か分からないが司波が途端に目を見開き狼狽しかけていた。普段から冷静であるあの司波にしては珍しい姿だったから、俺も思わず疑問を抱いてしまう程だ。

 

 何でああなっていたのかは知らないが、一先ず気にしない事にした。どうせ聞いたところで、何でもないと言い返されるのが分かっていたので。

 

「と言っても、光を使った収束系魔法に変わりはないが」

 

「……一応、どんな魔法か教えてはくれないか?」

 

「それは見てのお楽しみって事で。大丈夫、充分に勝算のある魔法だから」

 

 俺がそう言った事で、司波は物凄く聞きたそうな表情になりながらも、一先ず引き下がってくれた。 

 

 さて、二回戦が始まるから行くとしますか。

 

 

 

 

 

 

 俺の思い過ごしだろうか。何か一回戦の時と違って、一般客が多い気がするんだが。

 

 それに加え、一回戦で見た修哉達の他に、司波グループの女子選手達(司波妹・北山・光井・明智・滝川・里美・春日)が勢揃いしている。多分、俺が一回戦でやった魔法を直接観たいが為に来たってところだろう。

 

 里美と春日を見て思い出したが、今日はアイス・ピラーズ・ブレイクの他にクラウド・ボールもやっていたな。確か里美が準優勝で、春日が六位入賞だった。二人揃って三高の一色愛梨に負けて、今回の結果となったようだ。

 

 でも、あの二人は充分にやっていた。何度も俺と模擬戦をした為か、一色愛梨が移動魔法らしきものを使って凄まじい速さを見せるも、まるでそれはもう経験済みと言わんばかりに慌てる事無く打ち返していた。その事に一色愛梨は少しばかり戸惑う様子を見せたほどだ。

 

 因みに女子と違って、新人戦男子クラウド・ボールの方は全員予選敗退で入賞すらしていない散々な結果となった。優秀な男子の一科生(ブルーム)達には恐れ入るよ。勿論これは完全な皮肉だ。

 

 一年男子達の敗北の報せを知る度に、同じ男子である二科生の俺も段々と肩身が狭くなりそうな気分だ。尤も、選手でない司波は俺と違って如何でも良いと思っているだろうが。

 

 っと、そろそろ相手の方を見ないといけないな。

 

 二回戦の相手は三高だが一条ではない。九校戦に選ばれる選手で優秀な一人かもしれないが、俺から言わせれば大した事のない相手だ。因みに衣装はクラブにでも入ってるのか、テニスウェア姿だった。一回戦で戦った四高選手のタキシード姿よりは断然良い。

 

 そんな事よりも、一回戦で披露した『光の槍』を使えばあっと言う間に終わるだろう。しかし、あの三高選手やエンジニアが俺の試合を観て何かしらの対策をしてないとは考えられない。そうでなければ、あんな自信満々な表情で挑もうとする姿勢を見せたりしないだろう。

 

 一体何をするのかと思いながらも、フィールドの両サイドにあるポールが赤、黄色と変わっていく。

 

「行くぜ!」

 

 そして青へと変わって開始の合図が鳴った瞬間、三高選手は俺より早く動いた。

 

「成程、そう来たか……」

 

 てっきり速攻で氷柱を破壊すると予想をするも、どうやら逆の事をしたようだ。光の槍で貫かれないよう、最初は防御優先として自陣の氷柱に情報強化を施していた。

 

 情報強化は対象物の持つエイドスの可変性を抑制する対抗魔法である。それで俺の先制攻撃を防ごうとしたんだろう。

 

 けれど、流石に全ての氷柱にまで行き届いていないようだ。恐らく何本か犠牲にして、その隙に俺の氷柱を壊そうとする算段かもしれない。

 

 並みの選手であれば充分に通用する対策かもしれないが、生憎と俺には意味のないものだ。あんな薄っぺらい膜のような情報強化をしたところで、簡単に貫かれてあっと言う間に終わる。

 

 とは言え、折角向こうが対策を考えたのだから、敢えて使わない事にした。尤も、最初から別の手段で終わらせるつもりだが。

 

 此方が光の槍を出さない事に、したり顔となってる三高選手を見ながら、全く大して気にしてない俺は開いた右手をスッと上げる。

 

『!?』

 

 直後、その右手から突如、少々大き目な黄金色の光球体が出現した事に、三高選手だけでなく周囲から一斉にざわめきと驚きの声が上がった。

 

 いつものように周囲の空気に全く気にしてない俺は、右手を軽く振るった。

 

 放物線を描くように敵陣の氷柱へ向かおうとする光球体だが、その途中で突如分裂し広がりながら、対象目掛けて向かっていく。

 

「うわっ!」

 

 分裂した光球体が氷柱に直撃した瞬間に連続爆発した事で少々強めの爆風と衝撃が発生し、三高選手は顔を守ろうと咄嗟に両腕で覆った。それは当然、観客席にいる人達も同様に。

 

 数秒後、音と風が止んだ事に三高選手が自陣の氷柱を見ると――

 

「う、嘘だろ……? 氷柱が……破壊されてる!?」

 

 彼の言う通り、十二本あった筈の氷柱が破壊されていた。情報強化していた物も含めて。と言っても、氷柱の半分以上無くなっているだけだが。

 

『えええぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!???』

 

 驚愕している三高選手の反応とは他所に、周囲にいる観客達が漸く意識を取り戻したかのように、殆どが仰天するように叫んでいた。

 

 因みに司波妹達だが、観客達と違って叫んではいないが。口をあんぐりと開けて呆然としている。

 

 さっき使ったのは『ドラグ・ソボール』劇場版に出る極悪人キャラのヤサイ人リブロ―、銀河盗賊ジャーボックが使う技――『トラップシューティング』。片手にオーラを集め、放つと同時にオーラが複数に分裂して広がり、対象目掛けて当てる。

 

 この技は本来一つの対象だけに当てるものだが、今回の標的が十二本の氷柱であった為、敢えて分散する事にした。一発当てても大したダメージではないが、あの分散した光球が全て当たれば大ダメージとなる。

 

『……しょ、勝者、第一高校、兵藤隆誠選手! 三回戦進出です!』

 

 またしても言葉を失う審判達だったが、今度は一回戦と違って俺が言う前にちゃんとアナウンスしてくれた。

 

 俺が二回戦突破した事に、もう一人の一高選手は忌々しげに睨んでいたみたいだが、二回戦敗退と言う残念な結果となる。

 

 新人戦男子アイス・ピラーズ・ブレイクにいる一高選手が二科生の俺だけになるとは……予選敗退した一科生の男子達は暫く肩身が狭い日々を送る事になりそうだ。

 

 ついでに如何でも良い事だが、司波は今頃大変悔しがっているだろうな。俺の能力(ちから)を分析しても、起動式その物が全く視えなかった事に。

 

 

 

 

 

 

「……馬鹿な。兵藤が使った魔法の起動式が、一切視えなかった、だと……?」

 

 普段冷静である筈の達也が、これ以上無いほどに狼狽していた。もしも深雪がいたら完全に困惑しているだろう。

 

 やっと隆誠の魔法を調べる絶好の機会が訪れ、精霊の眼(エレメンタル・サイト)をフル活用して分析しようと躍起になっていた達也だったが、予想外な展開が起きていた。普段視える筈の魔法の起動式が視る事が出来なかったから。

 

 あらゆる起動式を視れる筈の眼が全く機能しない事に達也は疑問を抱くも、正常であると分かった途端に狼狽したのだ。

 

「まさか、アレは魔法でない異能の力……いや、そんな筈はない」 

 

 あらゆる想定をした達也が結論を下そうとするも、それはすぐに違うと却下した。例え異能だとしてもCADが対応出来たりはしない筈だと。

 

 CADは魔法師にとって必須のツールとなっており、魔法以外の力に対応する事が出来ない物となっている。だから隆誠が使ったのが仮に異能の力であるなら、CADを通じて魔法を発動させる事が出来ない筈なのだ。

 

 何かしらの細工を施して使えるようにしたのであれば、達也が気付いてもおかしくない。現に自分は隆誠の試合が始まる前からCADのチェックをしている筈だから。

 

 だが、他にも気になる事がある。隆誠が一回戦の時に使った光の収束魔法は、達也と深雪の叔母であり四葉家の現当主――四葉真夜が使う魔法『流星群(ミーティア・ライン)』に少しばかり似ていた。

 

 単なる偶然かどうなのかは分からないが、少なくとも九校戦を見ているであろう真夜もそれに疑問を抱いている筈だと達也は推測する。そして九校戦が終わった後、自分達に連絡をして『兵藤隆誠が使った魔法について調査しろ』などと言う命令を下される可能性があるかもしれないと。




活動報告に乗せたリクエストのコメントをしてくれた

神城卓也さん 桜花77さん

ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。