再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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九校戦編 九校戦⑯

「市原先輩、もうこれは一高(ウチ)の勝ちじゃないですか?」

 

「まだ油断は出来ない……と言いたいですが、そうとしか言いようがありませんね。流石は司波くんです」

 

 新人戦ミラージ・バットの決勝が行われている中、俺は天幕に待機していた。

 

 本当なら修哉と紫苑と一緒に会場で観る予定だったが、二人には急な呼び出しを受けたと既に電話で話したので了承済みだ。今は市原や他のスタッフ達と一緒にモニター観戦している。

 

 モニターでは光井と里美が絶好調と言わんばかりに、他校の選手達を引き離してポイントを獲得していた。これでもう逆転負けする事はないと確信出来る。

 

 二人の実力以外に、CADの性能もある。と言うより、ソフト面の性能差と言うべきか。それを調整してるエンジニアである司波のお陰で。

 

 モニターでは見えないが、恐らく他校の技術スタッフはショックを受けているだろう。魔法式の処理が圧倒的に速いと分かれば猶更に。

 

 市原やスタッフ達も優勝が確実だと思いながら観戦してる中、俺の懐にある携帯端末が突然振動した。それを取り出してディスプレイに表示してる名前を見た途端、既に思考を切り替えた。

 

 市原に電話が入った事を言った後に天幕を出て、少し離れたところで通話をONにする。

 

「もしもし」

 

『私だ。今は取り込み中かね?』

 

「問題ありません」

 

『そうか。なら結果を報せるとしよう。後で十文字君も報せるだろうが、条件付き(・・・・)として君の出場は認められたよ』

 

「ありがとうございます、九島閣下」

 

 俺に電話してきたのが九島だと、天幕にいる市原は微塵も気付ていないだろう。彼女の事だから、友人の修哉からだと思っているはず。

 

 何故そんな大物が俺の端末に直接連絡してきたのかについてだが、昼頃九島が俺をVIPルームに呼んで尋問と言う名の相談を中断した際にある小さな紙切れを渡された。驚く事に何と、九島の連絡先と思われるナンバーが書かれていたのだ。

 

 それを見て俺は頬を引き攣らせるも、当の本人は全く気にせず遠慮なく使ってくれと言われた。内心そんな機会は訪れないだろうと思っていたのだが、十文字からモノリス・コードに出てくれと頼まれたから、使うしかないと連絡する事を決意する。

 

 流石の九島も渡して早々に俺から連絡が来るとは思ってなかったみたいだ。大会委員会に第一高校試合続行の他、俺を代役として試合に出場させる為の折衝を十文字がするから手助けして欲しい事を説明すると、彼は快く引き受けてくれた。それはもう凄く楽しそうに声が弾んでいたと分かるくらいに。

 

 俺が新人戦モノリス・コードに出場するのは、九島としても賛成らしい。新人戦男子アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝が観れないなら、是非ともそれで埋め合わせして欲しいと。念の為に大会委員会が検査の件で簡単に俺の参加を認めないだろうと言っておくも、『そこは私と十文字君に任せてくれたまえ』と言ってすぐに電話を切った。

 

 そして今、こうして俺に結果を報告しようと電話してきている。俺は感謝するも、九島が少し気になる事を言っていたから素直に喜べなかった。

 

「して閣下、条件付きとは一体?」

 

『君がピラーズ・ブレイクで使用したCAD、並びにその魔法を使わない事を絶対条件とされた。流石にこれには私や十文字君も反論出来なかったよ』

 

 九島から聞かれた条件を聞いて、俺は内心残念がる事無く予想通りだと納得した。

 

 知っての通り、俺のCADは昨日の検査でトラブルが起きた。九校戦が終わってから検査する予定となっているから、そんな曰く付きとなってる状態で使用許可は認めないのは当然と言うべきだろう。

 

 続いて俺が試合で見せた魔法だが、殺傷性ランクがAランク並みで危険過ぎるとの大会委員会側の見解だ。今回のモノリス・コードでは一条の『爆裂』と同様、一切の対人使用は認められないと言ってきた。

 

 そんな条件を付けるのは寧ろ当然だった。検査装置を壊したCADを向こうは絶対認めないだろうし、俺が試合で見せた魔法――と言うより技は、普通の人間どころか魔法師を簡単に殺せる威力だ。向こうがそう考えるのは無理もない。

 

 九島や十文字も、大会委員会側の言い分に何も言い返す事が出来なかったのは容易に想像出来る。今も少々残念そうに言ってる九島の声で何となく分かるから。

 

「まぁそうでしょうね。尤も、その程度(・・・・)で済むのなら問題ありません」

 

『ほう? 随分と自信があるようだね。CADが使えない以上、君が使う魔法は殆ど封じられているも同然だと言うのに』

 

「あれはあくまでピラーズ・ブレイク用です。明日のモノリス・コードでは、全く違う物を披露します。派手さは少々欠けるでしょうが、それでも来賓席からご覧頂けたら幸いです」

 

『そうか、なら明日の試合を楽しみに待つとしよう。そろそろ十文字君が其方へ行くだろうから、ここで失礼するよ』

 

 そう言って用件を終えた九島は笑い声を一切隠そうともしないまま、すぐに電話を切った。

 

 彼の予言が的中したかのように、俺が通話を終えて早々に十文字の姿を確認する。

 

「兵藤、約束通りお前の試合出場をどうにか認める事が出来た」

 

 十文字からの朗報は既に聞いていたが、俺は敢えて初めて知ったように振舞いながら聞いていた。

 

 ただ、折衝中に突然九島が来たのは予想外だと内心かなり驚いていたようだが、味方であった事が嬉しい誤算だったようだ。流石の大会委員会も突っ撥ねる事が出来ず、何とか条件付きと言う事で首を縦に振ってくれたとの事だ。

 

 やっぱり俺の方で事前に頼んでおいたのは正解だった。もし十文字だけで大会委員会に折衝すれば、例え試合続行が認められても、俺の出場は断じて無理だと突っ撥ねられて諦めざるを得なかったかもしれないから。流石にこれは十文字の前では言えないから、俺の胸の中に留めておく事にする。

 

 一通りの話を聞き終えた俺は十文字と一緒に天幕へ戻ると、ミラージ・バットも丁度試合終了となっていた。言うまでもなく一高の優勝で、一位が光井、二位が里美のワンツーフィニッシュで飾っている。

 

 市原や他のスタッフが安堵している中、俺は再び携帯端末を使おうと連絡する。

 

『どうした、兵藤?』

 

「急で悪いが、少しお前と話しがしたい」

 

『何? 電話で話せない内容か?』

 

「ああ。だからこの後すぐに――」

 

 電話に出た司波は訝りながらも、俺の言う通りに指定の場所へ来ると了承してくれた。

 

 因みにアイツの近くにいるであろう司波妹は連れてこないよう言ってある。釘を刺しておかないと絶対付いてくる他、俺が話す内容に必ず口出しをするだろうと思いながら。

 

 

 

 

 

 

「お前と一緒に負傷した森崎達の代わりとしてモノリス・コードに出ろ、だと?」

 

「そ。リーダーの真由美さん達からのお願いだそうだ」

 

 指定の場所――ミーティング・ルームで俺と司波は二人だけで話していた。

 

 俺の話を聞いた司波は薄々気付いていたのか、それを聞いても大して驚く様子を見せていない。

 

 どうやら悟っていたようだ。ミラージ・バットを終えた直後、自分に連絡が来た段階で。

 

 しかし、そんな事を全く気にしてない俺は、一緒にモノリス・コードに出場するよう淡々と述べていた。

 

「……兵藤、三つほど訊きたい」

 

「どうぞ」

 

 一通り話し終えた俺は司波からの質問を聞こうとする。

 

「お前は試合に出ても大丈夫なのか? この前のピラーズ・ブレイクの事もあって、大会委員会が簡単に認める事はないと俺は踏んでいたが」

 

「そこは十文字会頭が折衝してくれて、条件付きで認めてくれたそうだ」

 

「………そうか」

 

 それと九島閣下も加わってくれたと言いたいが、ここで言ったら司波が絶対に驚くだろうから敢えて口にしなかった。

 

 俺が出場出来る理由を知った司波は、次の質問に移った。

 

「予選の残り二試合は、明日に延期された形になっているのか?」

 

「ああ。聞いた話によると、明日の試合スケジュールを変更してもらえる事になっているそうだ」

 

「怪我でプレーが続行不能の場合であっても、選手の交代は認められていない筈だが?」

 

「それも特例で認めてもらえる事になったそうだ」

 

 質問に答えるも、司波はまるで予想通りと言うように相変わらずの無表情だった。

 

 だが此処から少し変わる事になるだろう。

 

「……何故会長達は俺を選んだ?」

 

 ほら来た。これはもう質問じゃなく、遠回しな拒絶だ。俺だけだったら速攻で断ってるだろうが、真由美達から頼まれた事もあって、すぐに「否」を返さずに理由を求めているのだ。

 

「向こう曰く、司波も俺と同じく最も代役に相応しい他、実戦の腕もあるから期待出来るんだと」

 

 俺は戦う所を見てはいないが、ブランシュを叩き潰す事を平然と考える司波は間違いなく実戦経験があると見抜いていた。

 

 それに加え、コイツは何かあればいつでも戦えるような雰囲気を醸し出している。もし俺が司波妹に攻撃しようと動いた瞬間、コイツは即座に迎撃するだろう。そう確信出来るほどの警戒を普段から見せている。尤も、俺がそう考えている事に司波は全く気付いていないが。

 

「モノリス・コードは『実戦』じゃない。肉体的な攻撃を禁止した『魔法競技』だ。それはお前も充分理解している筈だが」

 

「摩利さんからの話だと、お前は以前に二年の服部先輩に勝ったそうだな。だったら充分にやれるだろ」

 

 服部の実力は、二年の一科生の中でも優秀な一人と聞かされた。加えて以前までは一科至上主義の考えだったそうだが、司波に負けた事でその考えが変わってきているらしい。俺にとっては良好な結果と言える。

 

 だが、それは目の前の奴にとっては如何でも良い事のようだった。

 

「生憎だが、俺は選手じゃない。代役を立てるなら、兵藤と同じく一競技にしか出場してない選手が何人も残っている筈だ」

 

「まぁ、それは当然だな」

 

 これが真由美達だったら反論出来ずに押し黙っているしかないだろう。

 

「もう既に二科生の兵藤が結果を出してるから一科生のプライドはこの際、考慮に入れないとしても、代わりの『選手』がいるのに『スタッフ』から代役を選ぶのは、後々精神的なしこりを残す事になる。それはお前も充分に分かっている筈だ」

 

「…………………」

 

 確かに司波の言う通りだった。

 

 九校戦で行われる新人戦は、ハッキリ言って新入生の育成も同然だ。これで今年優勝出来ても、来年・再来年の本戦に悪影響が起きれば、ある意味本末転倒になる。

 

 俺が二科生として選手に選ばれた事により、一科生達は今も不満を抱いている。そこで更にスタッフである二科生の司波が選ばれたら、一年生一科生全体のプライドが、もう完全にズタズタとなって切り裂かれる事は間違いない。

 

「そう言う訳で、俺は断らせて――」

 

「阿呆。そんな心にも思ってない理由で逃げようとするな」

 

「……何?」

 

「この際だからハッキリ言っとく」

 

 司波はキッパリと辞退の言葉で締め括ろうとする途中、俺の言葉を聞いた途端、咄嗟に答えを返す事が出来なかった。

 

 コイツが口にしたのは、単なる正論を述べた逃げ口上に過ぎない。同時に一科生達を気遣う発言をしたところで、俺には上っ面だけにしか聞こえなかった。

 

 真由美達なら効いてるだろうが、ここには俺と司波だけだ。故に全く効かない俺は、遠慮なく反論させてもらおう。

 

「お前の言う一科生のプライドとか今後だとか、そんなモノは今更だ。俺達が九校戦に参加した時点でな」

 

 確かに一科生(ブルーム)達は、二科生(ウィード)の俺達なんかとは比べ物にならないほど努力したからこそ、優れている事は分かる。そこは素直に認めよう。だが、その選りすぐりな一年一科生達が二科生の俺や司波に対して、九校戦が始まる前から今日に至るまでして来たことは何だ。

 

 アイツ等は未だに俺達を二科生と言う理由で同じチームメイトとして見てないどころか、今も爪弾き扱いされるばかりだ。昨日の夕食の時に追い出されたのが、正にその証拠だ。

 

「『二科生』だと言い訳になると思っているのなら、もうその考えは捨てろ。お前は既にその境界線をとっくの昔に越えているんだよ」

 

 司波の事が余り好きになれない理由が分かった気がする。

 

 そういう事は目の前のコイツも分かっている。

 

 分かっているのに、今更一科生だ二科生だと理由を付けて断ろうとするコイツの根性が気に食わないのである。

 

「……俺はただの技術スタッフだ。お前は――」

 

「関係無い。選手であれスタッフであれ、俺もお前も、一年生二百名の中から選ばれた二十一名の内の一人だ。そこに何の優劣も無い」

 

「そうではなくて、俺でなければならない理由を聞いている!」

 

 司波は、らしくもなく語気を強めて俺に言い放った。

 

 何故そこまで出場したくないのかは分からないが、コイツにもコイツなりの事情があるのかもしれない。だが、今回ばかりは言わずにいられなかった。

 

 俺は溜息を吐くと、呆れたように言う。

 

「はぁ……お前、何か勘違いしてないか?」

 

「……何だと?」

 

「俺は一科生と組みたくないからお前を選んだ訳じゃない。モノリス・コードはチームワーク必須の『魔法競技』だ。チームワークの方が重要で、魔法力は二の次……俺はそう重点を置いた。大体、スペックで全てが決まるなら、九校戦なんて競技は百家やら十師族のお披露目みたいなもんだろうよ」

 

 モノリス・コードは『実戦』でなく、『魔法競技』。元々司波が言った事だ。

 

 確かに一科生の方が火力のある魔法を使えるのだから、単純に考えれば一科生を選ぶべき、という意見の方が大多数だろう。だが、そう上手くいかないのも現実。今回の新人戦で決勝進出者は森崎を除けば二科生の俺だけで、一科生の他の面子はほぼ予選敗退という悲惨な結果に終わっている事から見ても明らかだ。俺を過剰に敵視し過ぎて、気合が空回りしているのが目に見えて分かるというものだ。こんな状態のメンバーから選手を選ぶのは感情的側面以上にリスクが高い。

 

 前世(むかし)でやったゲームのポ〇モンで言うなら、レベルは高いが言う事を聞かない手持ちばかりで、碌に指示を聞かない面子というモノだ。

 

「……俺はお前と特別仲が良い訳でもない」

 

「奇遇だな。俺も正直言ってお前の事は好かん」

 

「……」

 

 長々と喋る俺に司波は段々と何も言えなくなってきていた。

 

 俺はだがな、と付け加える。

 

「十文字会頭は、俺に他のメンバーを選ぶよう言った。……俺は『勝つ為のメンバーを選べ』と言う意味で受け取った」

 

 発言の解釈は当然と言えば当然だ。モノリス・コードの選手全員が競技続行不可という非常事態において、これ程の緊急策を捻り出し、二科生である俺に委託している時点で、負ける前提のメンバー選定などはするつもりはないだろう。

 

「お前は俺がどれ程の運動能力、魔法力を持っていて、どう動けるのか知っている。理由なんてそれだけで充分だろう」

 

 司波は一年女子の何人かのエンジニア担当で、俺は一年女子の練習相手に付いていたのだから、当然俺がどのように動けるのかはある程度見た筈である。少なくとも勝手に反目している一科生連中よりは、どのように動くことが出来るか知っている分、余程動きやすいだろう。

 

 無論、俺が見せた力は一端の内の一端、そのまた更に一端でしか無いが。

 

「大体、お前も俺に似たような事をしたろう? 俺がお前を説得しているのも、元を正せばお前の所為でもあるんだからな」

 

 その言葉のみで、司波は俺が自分を説得する『本当の理由』について察しがついたらしい。

 

「……口を割ったのは会長か? 委員長か?」

 

「両方だ。口裏合わせなら、もっと口の堅い人に頼むべきだったな」

 

 尤も、コレは遅かれ早かれ破綻していたであろう事だから、真由美や摩利を恨むのはお門違いと理解はしていたらしい。これについては、正に因果応報と言う他無いが。

 

 すると、はぁっと溜め息を吐く司波は、降参とばかりに両手を上げた。

 

「……分かった。俺の負けだ。兵藤を勝手に補欠登録した責任は取る」

 

「せめて事前に通達ぐらいはして欲しかったな」

 

 確認しなかった俺にも非はあるがと付け加えながら、もう一人のメンバーについて思案を始めた。

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