再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回も短いです。


九校戦編 九校戦㉑

 三位決定戦が終わり、決勝戦で行うステージが『草原ステージ』と発表された。

 

 それを聞いた三高の天幕で歓声を上げる者達がいる中――

 

「はぁ~~。わしはどっちを応援すれば良いのじゃ……!」

 

「この空気の中、一体何を言ってるのよ……」

 

「三高の勝利は間違いないと言うのに……」

 

 両手で頭を抱えてながら嘆息している沓子の姿に、愛梨が少々呆れながら言った。一緒にいる栞も同様に。

 

 けど、愛梨は既に察していた。彼女がこうなっているのは、恐らく彼関連であると。 

 

「分かってるでしょうけど、貴女は三高(ウチ)の生徒なんだから、間違っても一高を応援なんかしてはダメよ」

 

「それに、一条君が本気で行く上に、草原ステージになった以上、もう兵藤選手に勝ち目はない」

 

 愛梨と栞は既に隆誠が一番の障害で非常に厄介な相手と見ている。

 

 沓子が懇親会の時、何故か彼に興味を抱いて声を掛けたのかが最初は全く理解出来なかった。何故あんな一般魔法師なんかに挨拶をするのだと、それを見ていた愛梨は当初不快に思うほどだった。

 

 あんな男と慣れ合うのは止めるようにと何度警告するも、向こうは全く訊かず仕舞いで『あの御仁が出る試合を見れば分かる筈じゃ』と言ってのらりくらり躱される始末。

 

 そして隆誠が出場する競技――ピラーズ・ブレイクを見た事によって、愛梨と栞の隆誠に対する評価が激変した。自分達が全く知らない魔法で、圧倒的な自分達との力の差を見せられ、最短で勝利した事により、沓子が興味を抱いた理由が漸く分かったと痛感させられた。決勝では棄権となった事に複雑な気持ちになったが。

 

 そして今度はモノリス・コードに急遽参戦し、途轍もないスピードと剣技、そして気配を完全に消す隠密技能を披露した。再び驚かされた事により、懇親会で兵藤隆誠を大した事の無い相手だと高を括っていた過去の自分達を本気で殴り飛ばしたいと恥じるほど思い知らされる。

 

 もしかしたら決勝で三高が負けてしまうんじゃないかと危惧していたが、行われるステージを聞いて一安心する。『草原ステージ』では間違いなく一条将輝がいる三高の勝利は揺るがないと。

 

 確かに隆誠のスピードや剣技は驚かされた。けれど、それ等は森林や市街地、渓谷での遮蔽物があった為、相手に不意打ちを仕掛ける事が出来たからこそだ。

 

 今回選ばれた『草原ステージ』は遮蔽物が一切ないどころか、両者共に位置が丸見えである為、流石の隆誠でも一条達に不意を突く事は出来ない。加えて、隆誠を標的としている一条が相手であれば猶更無理だ。今の一条はかなり本気になってる上に、隆誠が出ていた試合を真紅郎と一緒に何度も確認するように見ていたから、相応の対策も考えている筈だ。なのでもう隆誠に勝ち目はないと愛梨と栞はそう確信している。

 

 当然、それは彼女達だけでなく三高全員も、モノリス・コードの優勝は確実だと安心した。非常に悩んでいる様子を見せている沓子を除けば。

 

「分かっておるわい! わしの直感でも既に勝ちが分かってる試合(・・・・・・・・・・・・)だからこそ、隆誠殿を応援したいのじゃ!」

 

「貴女ねぇ……」

 

「沓子、相手は対戦校なんだから、応援なんか以ての外」

 

 言い返す沓子に、またしても呆れながら窘める愛梨と栞。

 

 しかし、彼女の言った『既に勝ちが分かってる試合』とは三高の勝利でない事を、二人は全く気付いていなかった。

 

 

 

 一方、一高側では――

 

「ほほう、『草原ステージ』ねぇ。これは実に好都合だ」

 

「何故そう言い切れるのですか、兵藤くん」

 

 リーダーである隆誠の台詞に、深雪は激励に来た面々の代表で尋ねてきた。

 

「前の試合でやった渓谷ステージや市街地ステージに比べればマシなんだよ。特に水のある渓谷ステージなんて選ばれたら、一条が有利過ぎるからね」

 

「ステージに関しては俺も同感だ」

 

 達也は隆誠の言ってる意味を理解してるみたいで、すぐに頷いた。しかし、チームメイトの幹比古は未だに首を捻っている為、達也が一条の爆裂について軽く説明した。

 

 一条家が使う『爆裂』は水蒸気爆発に使える為、渓谷ステージは大量の爆薬がフィールド全域に用意されているようなものだ。市街地ステージにも実際に水が流れている水道管が張り巡らされている。

 

 その説明を聞いた深雪や幹比古など、(隆誠を除く)他の一年生が理解するも、上級生の顔色は曇ったままだった。

 

 けれど達也は気にせず、隆誠にある事を尋ねようとする。

 

「兵藤の事だから、他にも何か理由があると思うが、一応訊いてもいいか?」

 

「モノリス・コードでチームワークと言う物が、どれだけ重要であるかを三高に教えてやる事が出来るんだよ」

 

「何?」

 

 予想外だったように少々目を見開く達也。

 

「理由はこれから説明するから、取り敢えず向こうで話そうか」

 

 そう言う隆誠は達也と幹比古を奥の部屋へ連れて行き、決勝前に行う最後の打ち合わせを始める。

 

 因みに達也の後に付いてくる深雪に、隆誠が『悪いけど三人だけで話したい』と言われた為に、彼女が不機嫌な表情になったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 新人戦、モノリス・コード決勝。

 

 一高が『草原ステージ』に辿り着くと、三高も同時に登場していた。

 

 向こうが此方を見て少々戸惑い気味な様子を見せているも、隆誠達は敢えて気にしないでいる。

 

「幹比古、いつまでも恥ずかしがってるんじゃない。俺だって着てるんだからさ」

 

「そんなこと言われても……」

 

 ローブを身に纏っている幹比古が、凄く恥ずかしそうにフードを更に深く被り直してるのに隆誠が呆れるように言い放っていた。

 

 因みに隆誠はフードがないマントを羽織っており、幹比古と違って堂々としている。

 

「……何で達也だけ」

 

 幹比古は一人だけ仮装してない達也に恨み節を吐く。

 

「打ち合わせの時に説明しただろ? 司波には一番頑張って貰う(・・・・・・・・)から、走りにくい物を身に着ける訳にはいかないって」

 

「俺としては不本意だがな」

 

 今度は達也がボヤくように少しばかり恨めしげに睨んでいたが、隆誠は聞き流してるように素知らぬ顔だ。

 

 幹比古も漸く観念するが、それでも深い溜息を吐いている。

 

「はぁ~……向こうでは絶対大笑いしてるのが手に取るようにわかるよ」

 

 その台詞を聞いた隆誠と達也は、誰の事を指しているのか等と態々口にしなくても分かっていた。

 

 

「あ~あ、西城と柴田さんは気の毒に……」

 

「やっぱり別行動を取って正解だったわ」

 

 客席にいる修哉と紫苑は、少し離れた席で爆笑しているエリカを見ながら、彼女と一緒にいる二人に対して凄く同情的な目で見ていた。

 

 周囲の視線が突き刺さっているのに今も笑い声が響いていたが、レオと美月が何度も窘めてた事により、エリカは漸く落ち着いた様子になっていく。

 

「にしても、リューセー君と吉田君は何であんな格好をしてるのかしら?」

 

「さぁな。けどまぁ、アレにはきっと何かある筈だ」

 

 草原ステージに遮蔽物は一切無い為、観客席から直接フィールド全域が見渡せる。だから修哉は隆誠と幹比古が態々マントやローブを羽織って目立っているのには、必ず何か理由があると踏んでいた。

 

 それは当然、観客達の中にも修哉と似たような考えを持っている。あの『ローブ』や『マント』を一体何を使うのか、と言う好奇心が湧きながら。

 

 だが、対戦する三高としては好奇心でなく疑念が深まる一方だった。

 

「ジョージ、あれは『不可視の弾丸(インビジブル・ブリット)』対策か?」

 

「分からないな。仮にそうだとしても、司波達也と吉田幹比古ならともかく、兵藤隆誠がそんな対策をする必要はないと思うんだけど……」

 

 兵藤隆誠は間違いなく将輝と正面から戦うだろうと確信していた。けれど挫かれるように、隆誠と幹比古の格好を見て疑念が深まる一方だ。

 

 その二人とは別に、達也だけ何も身に纏っていない。一番に動きやすそうに見えるから、前衛を務めるのが丸分かりだ。

 

「もしかして、兵藤隆誠は将輝と戦うのを避けてディフェンスに回るとか?」

 

「彼が将輝の挑発に敢えて乗らなかった、と言う可能性は充分にあるかもしれないが……」

 

 チームメイトの推測に、真紅郎がそう考えるも断言出来なかった。

 

「兵藤隆誠……!」

 

 一番に戦いたい筈の相手からまた避けられるのかと考えるだけで、将輝は再び怒りがこみ上げてくる一方だ。

 

 しかし、その個人的な怒りはすぐに抑え込もうとする。今の自分は試合に勝たなければいけない立場であると自省しながら。

 

「今此処で分からない事をあれこれ考えても意味は無い。取り敢えず予定通り俺が前に出る。二人はフォローを頼む」

 

 リーダーとして振舞う将輝に、真紅郎とチームメイトは力強く頷いた。第三高校の誇りである一条家次期当主の言葉は頼もしいと。

 

 十師族の一員である彼がいれば、モノリス・コードは絶対に優勝すると三高の誰もが確信している。しかし、それこそが最大の油断である事に全く気付いていない。

 

 

 

「く、九島先生、随分と此処で観戦されますね……」

 

「なに、今年は中々面白い若者がいるのでな。ついつい来てしまうのだよ」

 

 またしても来賓席の最前列に座っている九島烈に、大会委員達は内心非常に疲れ切っているのだが敢えて顔に出そうとしない。

 

 そんな苦労を全く気にしてない老人は、前から用意されている革張りの椅子に腰を下ろしてジックリ観戦しようとする。

 

(さて兵藤君、君は一条の次期当主相手に一体どう出るのかな?)

 

 九島としては、隆誠が簡単に負けるとは思っていない。それどころか、一体どんなやり方で勝つのかと考えている。

 

 とは言え、個人競技のピラーズ・ブレイクと違って、今回行われているモノリス・コードは団体競技。如何に個人が優れていても、他のメンバーの足を引っ張る事をすれば負けてしまう恐れだって充分にある。

 

 それに加えて、相手は優勝候補と呼ばれている三高で、十師族である一条の次期当主もいる。今までの試合と違い、いかに隆誠でも一筋縄で勝てる相手ではないと、九島はそう踏んでいた。

 

 勝敗のカギを握っているのは、一高の兵藤隆誠と三高の一条将輝。そのどちらかが倒れれば戦況は一気に傾くだろう。

 

(だが一高にはもう一人……)

 

 九島はモニターに映っている少年――司波達也を見ていた。既にこの世に去った嘗ての教え子の事を思い出しながら。

 

 そんな考えとは他所に、試合開始の笛が鳴り、戦いの火蓋が切られた。

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