再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回もフライング投稿です。


もしも隆誠が誰かの家族だったら 一条家⑦

 2095年4月6日

 

 

 

「真由美と摩利が模擬戦の申請をしたって……何でまたそんな事に?」

 

「詳細については知らんが、第三演習室でやるようだ」

 

 一年の一科生と二科生が校門付近で騒ぎを起こした翌日の放課後。

 

 部活連の仕事がある為、俺は克人のサポートをしようと部活連本部で一緒に執務を行っていた。

 

 その最中に執行部員の一人から、生徒会長と風紀委員長が模擬戦の申請をしたと言う報告が会頭である克人の耳に入ったから、副会頭の俺に教えてくれている。

 

「因みに相手は?」

 

「1-Eの司波達也と2-Bの服部刑部だ」

 

「………ああ、何となく読めてきた」

 

 誰がやるのかを聞いた瞬間、俺はすぐに察した。模擬戦をやろうとした理由を。

 

 今日の昼休み後、教室に戻って来た真由美から大変興味深い事を教えてくれた。1-Aの司波深雪を生徒会に加えるのとは別に、1-Eの司波達也を風紀委員会に加えようとすると言う話を。

 

 一科生が生徒会に入るのは当然としても、二科生が風紀委員会に入るのは非常に珍しい事だ。普通はどちらも一科生がやる事になっている。

 

 しかし、風紀委員会は生徒会と違って、一科生でなければ入れない規則は一切無い。加えて、生徒会推薦枠に二科の生徒を選んでも規定違反にならないから、摩利はそこを突いたのだろう。その直後に真由美は即賛成して司波達也を風紀委員に指名したらしい。

 

 それを聞いた俺は内心『上手く利用したなぁ』と少しばかり感心した。真由美としては、一科生と二科生の垣根を壊す絶好の機会と思った筈だ。生徒会長になった今でも四苦八苦してるのを俺は知っているから。

 

 だが、二科生が風紀委員会に入ろうとするのに面白くない連中は当然いる。それは当然一科生で、服部もその一人である。

 

 服部は他の一科生と同様にガチガチの魔法至上主義だから、恐らく司波達也が風紀委員会に入る事を猛反対したに違いない。摩利も話し合うだけでは折り合いがつかないと判断して、服部に納得させる為の措置として司波達也との模擬戦を提案した、と言ったところだろう。

 

 彼女が風紀委員長になって以降は『模擬戦』の数が結構増えている。実力主義かつ好戦的な性格であるが故に。

 

「克人は見に行かないのか?」

 

 生徒会長と風紀委員長が許可した模擬戦とは言え、部活連としても把握しなければならないから、見に行く事には何の問題も無い。

 

「そうしたいのは山々だが、まだ仕事が残っている。会頭として疎かにする訳にはいかない」

 

「……あ、そう」

 

 まだ書類仕事が残っていると言い切る克人に対して、俺は少しばかり呆れるように嘆息する。

 

 この仕事は本来、他の執行部員にやらせるべきなんだが、克人の奴が頑なに自分でやると言ったのだ。確かにコイツがやればあっと言う間に終わるんだが、それはそれでチョッと問題がある。

 

 克人は十文字家代表補佐の立場がある故か、物凄く責任感が強い奴でもある。それは部活連会頭として相応しいと言えばそれまでだが、俺としてはもう少し柔軟にやって欲しい。自分一人で仕事を片付けてしまっては、他の部員達が仕事を覚えないから、克人のやってる事は正直言って悪循環を招いてしまう。

 

 俺が副会頭をやってどうにか緩和する事は出来たのだが、それでもまだ多くの仕事を自分でやろうとする。克人は他の部員達と違って正確かつ適切に処理するから、余り強く言えないのが現状であった。克人の後任となる次期会頭にも、引継用の資料を作成しておく必要がありそうだとつくづく思う。

 

「じゃあ、俺が代わりに行ってくるよ」

 

 既に自分の仕事を終えてるから、副会頭である俺が克人の代理として模擬戦を見に行くと言った直後――

 

「言い忘れていたが、模擬戦の申請があったのは今から三十分程前だ」

 

「……は?」

 

「恐らく、既に試合は始まっている」

 

「それを先に言え!」

 

 俺は慌てながら部活連本部から出て、急いで第三演習室へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 第三演習室に到着するも既に終わっていたとすぐに分かった。

 

 扉から服部が出てきたので訊ねたところ、仕事があるからと少々言い訳染みた事を言って退散したのだ。その様子からして、アイツは司波達也に負けたのだろうと推測する。

 

 克人がもう少し早く言ってくれれば試合を見れたのにと思いながら、俺は第三演習室に入ろうとする。

 

「あら、リューセーくんじゃない。どうしたの?」

 

 俺が入室したのに真っ先に声を掛けたのは真由美だった。彼女以外にも、摩利や他の生徒会メンバー、そして司波兄妹も一斉に此方へ視線を向けている。

 

「此処で模擬戦をやると克人から聞いたんだが」

 

「一足遅かったな。もう既に終わってるぞ」

 

「やっぱり」

 

 摩利が終わったと言った事で、改めて認識した俺は諦めるように嘆息した。

 

「因みに結果は?」

 

「此処にいる達也くんの勝ちだ」

 

 何故か自慢気に教える摩利の姿に、俺は少しばかり意外そうに見る。

 

 摩利が昨日会ったばかりの男子生徒を名前で呼ぶとは珍しいな。それだけ彼の事を気に入ったと言う証拠、なのだろうか。因みに真由美も司波達也の事を『達也くん』と呼んでいるのを知っている。

 

 まぁ、あの服部に勝ったのだから、推薦した彼女としては気分が良いのだろう。

 

 アイツは魔法至上主義だが、それなりの実力は持っている。入学してから負け知らずだったが、それがまさか二科生の一年に負けるとは。服部からすれば屈辱だろうが、俺にとっては良い薬だと思っている。敗北を知る事も成長の源になるから。

 

 ついでに試合内容も訊いてみると、体術による素早い身体能力で服部の背後を取った瞬間、想子(サイオン)の波動で服部を船酔い同然の状態にさせて倒したそうだ。

 

 それと体術に関しては、どうやら司波は忍術使い・九重(ここのえ)()(くも)の指導を受けていると教えてくれた。あの煩悩だらけの似非坊主に教わってるなら納得である。

 

「……なぁ司波君、もしよければ俺と一戦やらないか?」

 

『!』

 

 話を一通り聞いた俺が勝負の申し込みをした途端、司波達也を含めた全員が息を呑んだ。

 

「チョッとリューセーくん、いきなり何を言ってるの」

 

「いくらお前が副会頭だからって、そこまでの権限は無いぞ」

 

 すると、真由美と摩利が異議を申し立てるように言ってきた。

 

 模擬戦で勝った事に司波達也の風紀委員任命がやっと出来る状況になってるところを、遮るような真似をすれば、二人としては黙っていられないのだろう。

 

 他にも、司波深雪からも気分を悪くしたかのように眉を顰めて、少しばかり俺を睨んでいるが気にしないでおく。

 

「勘違いするな。俺は別に司波達也君が、風紀委員会に入る事に異論なんか微塵も無い。服部を倒せる実力があるなら、寧ろ入って欲しい位だ」

 

「じゃあ、何で達也くんと勝負したがるの?」

 

 俺が理由を述べるも、真由美はまだ納得行かないように再度訊ねてくる。

 

「単に興味が湧いただけだ。あの有名な忍術使いの指導を受けてると聞けば猶更に、な」

 

「……失礼ですが、一条副会頭は師匠の事をご存知なのですか?」

 

「それなりにな」

 

 第一高校に入学して数ヶ月くらいか、一人暮らししてる俺の家に忍び込もうとしてる奴がいた。

 

 その時は泥棒だと思い、警察に突き出してやろうと一瞬で背後を取って気絶させようとしたのだが、そこで予想外の事態となった。何と俺の攻撃を簡単に避けられただけでなく、侵入しようとしていたのが九重八雲だったのだ。その後は色々と話し合い、彼とはチョッとした関係となっている。言っておくが変な意味ではない。

 

 司波達也の様子から見ると、どうやら九重は話していないようだ。教える必要が無かったか、あるいは……俺に不覚を取られた事を知られたくない為に敢えて伏せているのかもしれない。

 

「言っておくけど、俺と勝負したからって、勝敗に関係無く君が風紀委員会に入るのは決まってるから安心してくれ」

 

「…………」

 

 俺が一切問題無いと言っても、司波達也は余り乗り気では無いようだ。もしくは一条家である俺と事を荒立てたくない、とか。

 

 このまま俺が何を言ったところで、あの様子じゃ良い返事は期待出来ないと見ていいだろう。

 

「リューセー、悪いがそんな時間は無い。これから達也くんを風紀委員会本部に連れて行かなければならないのでな」

 

「摩利の言う通りよ。リューセーくんがやるとなれば、また新たに模擬戦の申請をしなければいけないんだから」

 

「ああ、そうだったな」

 

 却下しようとする摩利と真由美の言い分に、俺は否定する事が出来なかった。

 

 確かに俺が模擬戦をやるとなれば、真由美が言った通り再び申請しなければならない。模擬戦の手続きにチョッと時間が掛かる為、それが惜しい摩利としては付き合っていられないだろう。

 

「仕方ない。なら今回は諦めるとしよう。急に無理を言って悪かったな、司波君」

 

「いえ、お気になさらず」

 

 そう言ってる司波だが、内心どう思ってるのやら。

 

「もし俺と勝負したくなったら『護身術部』へ来てくれ。勿論入部してくれても構わないぞ」

 

「おい、クラブ活動の勧誘は明日からだぞ」

 

「良いじゃないか、これくらい」

 

 司波達也に部活の勧誘をする事に風紀委員長の摩利が注意するも、俺は負けじと言い返した。

 

「そうそう司波君。ウチの『護身術部』は主に二科生が中心になってるけど、俺が鍛えた部員達は身体能力や体術に関しては、服部を含めた一科生達以上の実力者揃いだ」

 

「!」

 

 俺が護身術部について軽く教えた途端、司波達也は目を見開いていた。

 

 これで少しばかり興味を抱いて足を運んでくれたら御の字だが……恐らくは来ないだろう。俺が言った程度で動いてくれるかなんて分からないから。能力(ちから)を使って頭の中を探る手もあるが、流石にそれは無遠慮過ぎるので止めておく。

 

「興味が湧いたら、明日には是非とも――」

 

「リューセー。風紀委員長として、これ以上の勧誘行為は違反と見なすぞ?」

 

「分かった分かった」

 

 摩利が次は許さないと警告してくる為、俺はもうやらないという意思表示の為に両手を上げる。

 

 このままいたら彼女の機嫌を損ねてしまいそうなので、用件を終えた俺は第三演習室を出る事にした。

 

「あ、これだけは最後に言わせてくれ。司波君、風紀委員会本部は生徒会室と違って凄く散らかってて――」

 

「リューセー!」

 

「では、さらば!」

 

 俺が風紀委員会本部について教えようとするも、怒鳴ってくる摩利を見て早々退散した。




最新の活動報告で、今のIFシリーズについて考えてる事があります。

もしよければ呼んで頂ければ幸いです。

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