再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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いまいちな内容かもしれません。


九校戦編 決行

 本戦ミラージ・バット決勝戦を前に、俺はレイとディーネを連れて、司波達に気付かれないよう姿を消した。

 

 と言っても、完全に姿を消した訳ではない。以前にブランシュを殲滅する際、アリバイ作りとして『分身拳』を使い、分身の俺は修哉達と一緒にいる。

 

 以前にも説明したが、分身拳を使うと実力が多少落ちる欠点があっても、全力を出すまでもない相手なので何の問題も無い。例え司波と交戦したところで確実に勝てると断言出来る。

 

 俺の方は大丈夫だから良いとして、問題は精霊のレイ達だった。予想通りと言うべきか、二体とも聖書の神(わたし)のオーラで作った服を身に纏わせたら、窮屈で動き辛いと苦言を呈された。

 

 いくら相手が敵とは言え、人前で姿を見せる際に素っ裸は不味い。加えてレイとディーネは容姿端麗な美少女だ。主人の俺が全裸で出現させれば、裸を強要させてる変態と見られてしまう。いくら聖書の神(わたし)でも流石にそればかりは御免被りたい。

 

 その為、二体には服に慣れてもらう為の時間を要した。一時間以上掛かってしまって予定が狂ってしまうも、こうなる事は分かっていたので許容範囲内として収める事にした。

 

 そして完全に準備を終えた俺達は、未だ眠っている古式魔法師を連れて無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)がいる場所へ向かおうと転移術を発動する。場所は横浜中華街で、そこに建てられた横浜グランドホテルの最上階だ。

 

 言い忘れていたが、今の俺は前回と同様に変装済みだ。駒王学園の制服を身に纏い、白般若の面を被っている。

 

 

 

 

 

 

「ジェネレーターが戦果ゼロで取り押さえられるとはな……」

 

「想定外だ。まさか日本軍にいる九島の部隊がしゃしゃり出て来るとは」

 

「あの死に損ないめ。いい加減に隠居すればいいものを」

 

「今はそんな事よりも、優先すべきはあのガキの始末だ」

 

「兵藤隆誠は一体どんな素性のガキだ?」

 

「それが……全く分からないんだ。係累(けいるい)は無ければ、家族構成も問題無し。パーソナルデータに関しても、魔法科高校に入学する前まで一般人と何ら変わりない生活を送っている」

 

「あれ程の魔法や馬鹿げた身体能力を持った奴が一般人? 一体何の冗談だ?」

 

「どちらにしろ、あのガキを消す事に変わりない。我々の邪魔をした報復として、奴の家族も皆殺しに――」

 

 

「随分と面白い会話をしてるじゃないか」

 

 

 

 何か今聞き捨てならない事を言ってたなぁ。報復として俺の家族を皆殺しにするって。

 

 ……よし、徹底的にぶちのめそう。何の関係も無い家族に手を掛ける愚者共に、もう慈悲を与える必要なんかない。俺の大事な家族に手を出そうと考えた事を冥界の底から後悔させてやる。

 

「だ、誰だ貴様! 一体何処から入って来た!?」

 

 俺の声に反応した無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)と思われる幹部共が一斉に振り向いていた。

 

 テーブルに座ってる五人が幹部の魔法師で、ソイツ等を囲うように立っている三人は、俺が午前中に交戦した強化人間――『ジェネレーター』か。

 

 普通に考えれば、一人でこんなところへ来る自体間違っているだろう。けれど、聖書の神(わたし)からすれば、そこら辺の雑魚となんら変わりない。

 

「初めまして、無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)東日本総支部の愚者(クズ)共。俺の名は『白般若』。九校戦では随分好き勝手やってくれたようだな」

 

『!?』

 

 慇懃無礼な挨拶をしながら自己紹介をした途端、幹部達は一斉に驚愕を露わにした。

 

 『白般若』と言う名前は以前、ブランシュのリーダー『司一』に教えた偽名だ。流石にバカ正直に本名を言う訳ないは行かないから、今後も何かあれば『白般若』で通すつもりでいる。

 

 その直後、俺が敵だと認識した奴等は即座に動き出そうとする。

 

「十四号、十五号、殺せ!」

 

 幹部の一人がジェネレーターに命じた。

 

「承知シマシタ」

 

「実行シマス」

 

 それに応じる二人は俺を殺そうと即座に襲い掛かろうとする。

 

 会場で襲い掛かって来た奴ほどでなくとも、それなりのスピードで左右から突進してくるが――

 

「邪魔だ」

 

 俺が両手を対象の前に出して遠当てを発動させた瞬間、ジェネレーター二体は揃って直撃しただけでなく、そのまま壁にめり込むほど激突した。

 

 

「なっ……お、おい、何をしてるんだ!? さっさと起きろ!」

 

 予想外の展開になった事で幹部達が呆然とするも、さっき命じた一人が怒号した。

 

「不…可能……デス」

 

「身体ガ……動キ……マセン」

 

 しかし、その命令をジェネレーターは実行する事が出来なかった。壁にめり込んだまま動こうともしない。

 

「口答えするな! やれ!」

 

 抑揚の無い返答をしたジェネレーター二体に対して、癇癪を起こす幹部。

 

「無駄だ。さっきの一撃でソイツ等の骨を粉砕させてもらった。いくら強化人間でも骨が無ければ動く事は出来まい」

 

 会場で相手をした奴と違い、頭蓋骨以外の骨は全て粉砕した。強化人間と言う事もあって、常に領域干渉で身を守っていたから、前の奴には大してダメージを与える事が出来なかった。その為、今回はソレを貫通する威力で放ったと言う訳だ。

 

 勿論その気になれば肉体ごと粉々にする事は可能だが、流石にこんな場所でやったら確実に返り血を浴びてしまう為、敢えて加減しておいた。それでも魔法師を確実に殺せる威力である。

 

「くそっ! 十六号、やれ!」

 

 使えないと判断したのか、今度は別のジェネレーターに俺を殺すよう命じた。

 

 だが――

 

「十六号と言うのは、コイツの事か?」

 

『!?』

 

 既に超スピードで移動した俺は対象の背後に回って、首筋を手刀で当てて昏倒させていた。当てた際に聖書の神(わたし)の光を注ぎ込んだから、今のコイツは途轍もない倦怠感に襲われており、暫くの間は起き上がる事が出来ない。

 

 頼みにしていたジェネレーターが全て倒された事により、幹部共を覆っていたと思われる領域干渉が消えたのを確認する。

 

 どうやら奴等の防御魔法によって守られていたようだ。それによって、今の幹部共は完全に丸裸となったと言う訳か。

 

「そんなに俺を殺したいなら、自分でやってみたらどうだ?」

 

 出来ればの話だが、と付け加えて鼻で笑ってやった。

 

 すると、俺の挑発に幹部数名が激昂する。

 

「「死ねぇ!」」

 

 流石は犯罪組織の幹部と言うべきか、学生が使う魔法とは違って殺傷力の高い魔法を放ってきた。

 

 尤も、俺にとっては痛くも痒くもない攻撃だ。俺の身体を覆っている薄いオーラで簡単に弾き飛ばせるが――

 

「返すぞ」

 

「ぐあっ!」

 

「うぐっ!」

 

 反射して、自分の魔法で自滅させる事にした。腕や足に当たり、大怪我に等しい状態だった。

 

 これは以前、俺のCADに電子金蚕を仕込ませようとした際に反射した俺の能力(ちから)だ。真由美達には対抗魔法――『鏡面(ミラー・)反射(リフレクター)』と誤魔化したが。

 

「ば、バカな! 『反射障壁(リフレクター)』を使ってないのに、何故反射された!?」

 

 仲間がやられた事により、別の幹部が信じられないと言わんばかりに驚愕している。

 

 そう言えば、そんな魔法もあったな。確かアレは領域魔法の中で難度が高いとされていた。

 

 出来れば一緒にしないでもらいたい。聖書の神(わたし)能力(ちから)を人間の魔法と同一視されてしまったら、流石に少しばかり傷付く。

 

 これでも一応は神としての矜持(プライド)があるので勘弁して欲しい。と言っても、目の前の連中からすれば知った事ではないだろうが。

 

「さて、お次は誰だ? 遠慮なく掛かって来い」

 

『…………』

 

 もう一度挑発するも、今度はさっきと違って即座に攻撃する気配を見せなかった。

 

 恐らく、仲間が俺の反射魔法で倒されたのを見たから、自身の魔法を使っても無意味だと悟ったのだろう。それ故に魔法で攻撃出来ないと。

 

 そう思ったのも束の間、別の幹部の一人が突如部屋の中央に置かれている大きなテーブルをひっくり返した。何をするのか大体の想像は付いているが、俺から言わせれば無駄な努力だ。

 

 奴等の抵抗を見守っていると、幹部達はひっくり返したテーブルに隠れたかと思いきや、一人が俺に向かって何かを投げてきた。

 

 それは手榴弾と呼ばれる小型の爆弾で、いくら魔法師と言えども直撃すれば只では済まない強力な武器だ。こんな狭い室内で使うとは愚かな。まぁそれだけ追い詰められたって事か。

 

 『反射障壁(リフレクター)』は固体、液体、気体を問わず、運動ベクトルを反転させる力場を作り出す領域魔法。だから連中は、それ等に該当しない手榴弾なら通用すると思ったんだろう。

 

 だが生憎、そんな物で俺のオーラを貫く事は出来ない。それに態々爆発するのを待ってやるほど俺はお人好しじゃないから――あっ。

 

「………? な、何故爆発しない……?」

 

 テーブルに隠れている幹部達がそう呟きながら、恐る恐る見ると――

 

「何コレ? ご主人様にこんな物投げるなんて失礼なの!」

 

「主、勝手ながら、手を出させて、頂きました」

 

『なぁっ!?』

 

 突如現れた神造精霊レイとディーネの姿を見た事に驚きの声を上げた。

 

 レイは白のミニワンピース、ディーネは水色のサマードレスを身に纏っている。容姿端麗な姿となっているこの子達が着てる事で、美しさが更に強調されている。

 

 この二体が俺の前に現れた事で、俺に向けて投げられた手榴弾は爆発しなかった。今はディーネが作った球体状となってる水の塊に包まれており、未だに形を保ってて、レイが手に持っている。普通ならもうとっくに爆発してもおかしくないが、ディーネの操ってる水が手榴弾の内部に侵入し、機能を失わせたのだろう。

 

 だがしかし、幹部達にとってそんな事は如何でもいいようだ。今も浮遊してるレイとディーネに釘付けだったから。

 

 奴等は気付いたんだろう。この子達が普通の人間でない事に。

 

「な、何だあれは? ()(せい)(たい)……?」

 

「いや、人造精霊では……!」

 

「バカを言え! あそこまで澄み切った人造精霊は存在しない! それに喋る訳が……!」

 

 古式魔法について詳しいのか、幹部共はレイとディーネを見て精霊とはかけ離れた物だと認識してるようだ。神道系に属する古式魔法師の幹比古や沓子だったら、それ以上の反応をするだろうな。

 

 まぁそんな事より、そろそろこの子達に頑張ってもらおうか。特にディーネは古式魔法師に操られた恨みがあるから、元凶のコイツ等で怒りを発散させないと。

 

「お前達、そんな物は如何でも良いから、さっさと捨てろ」

 

「あ、はいなの!」

 

「分かり、ました」

 

 レイがポイッと投げ捨てた事で、手榴弾を包んでいた球体状の水が消えた。コロコロと床に転がっていくソレは一切爆発していない。万が一と言う事もあるから、後で俺が処分しておくとしよう。

 

「さて、もう気付いているみたいだが、コイツ等は見ての通り精霊だ。勿論只の精霊じゃない。詳しい事は知らんが、お前たち古式魔法師で言う『神霊』の類だ」

 

『!』

 

 俺が神霊と言った途端、幹部共はまたしても驚愕する。もうこれで何度驚いているんだろうか。

 

 本当ならこんな事を口にする気は無かったが、コイツ等は精霊について詳しいみたいだから、敢えて言ってみた。コイツ等がどういう反応を示すかを確認する為に。

 

「ば、バカな、神霊、だと!」

 

「あり得ない……!」

 

「我々や日本の古式魔法師の誰もが、到達してない神霊魔法が、目の前に……!」

 

 犯罪組織とは言え、異国の古式魔法師も神霊魔法についての知識はあるようだ。尤も、向こうもそこまでの領域には至ってないみたいだが。

 

 神霊魔法の使い手がいるなら情報を得ようかと思ったが、コイツ等には知る由もなさそうだから、さっさと終わらせるか。

 

「信じる信じないは、其方の自由だ。さて、そろそろ貴様等を片付けさせて――」

 

「ま、待て……待ってくれ!」

 

 俺が言ってる最中、突如幹部の一人が叫びながら、隠れているテーブルから姿を現した。

 

 しかも抵抗の意思がないように、両手を上げている。

 

「た、確か、『白般若』殿、だったな。こ、ここは、取引をしようじゃないか!」

 

「生憎、俺はそんな物に応じる気は一切無い。此処で貴様等をぶちのめさないと、お前達が殺そうとしてる兵藤隆誠やその家族に危険が及ぶからな」

 

「も、勿論もう彼等に二度と手出しはしない! いや、それどころか我々は明朝からこの国を出て行く! だからその代わり、貴方が欲しい物を此方で用意――」

 

「そんな物、後で根こそぎ頂くつもりだ。此処にあると思われる貴様等無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の機密情報を全て、な」

 

「!」

 

 もうついでにコイツ等の頭の中にある組織情報も、聖書の神(わたし)能力(ちから)を使って調べさせてもらう。

 

「ま、待て! ここはお互いに公平な取引を――」

 

「これ以上お喋りに付き合う気は無い。ディーネ、やれ」

 

「その言葉、待って、いました!」

 

 無駄な足掻きをする幹部を無視した俺が指示を出すと、ディーネは魔法で幹部達全員を覆う程の球体状の水を出現させた。

 

『がぼごぼ!?』

 

 突如水の中に閉じ込められた幹部達は苦しみだした。

 

 ディーネなりの水責めの刑だろうが、まさかこんな事をするとは……。

 

 俺はてっきり水魔法で相手の動きを封じるかと思っていたんだが。それだけディーネの怒りが凄まじい証拠、なんだろうな。

 

「この水は、わたしたち、水の精霊の、怒りだ! 我等の、苦しみを、思い知れ!」

 

「ディーネ! やっちゃえなの!」

 

『ごぼがぼがぼ!』

 

 不味いな。このままだと奴等が水死しそうだ。

 

 いくらディーネが恨みを晴らしたいからと言って、流石にそこまでは許容出来ないな。レイは完全にディーネの味方だから止めようとする気配を見せようとしないし。

 

 聖書の神(わたし)が知ってる精霊は、恨みを持つ相手に一切遠慮しないのが特徴だ。この世界の精霊については今もそこまで詳しくないが、レイとディーネを見る限り、前世で見た精霊と全く一緒であるのが分かった。

 

 やはりこの子達にはある程度の教育が必要だ。今後は人間が持つ価値観や文化について教えるとしよう。その為には先ず、水責めをしてるディーネを止めないと。

 

 その後、俺の方で無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の幹部達に改めて制裁を下し、機密情報を根こそぎ頂く事にした。

 

 余り俺に関係のない情報ばかりだったので放置したが、その中で不愉快極まりないモノを見付けた。『ソーサリー・ブースター』と言う悍ましい兵器の詳細について。




以上、無頭竜(ノー・ヘッド・ドラゴン)の制裁でした。

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