(後は事後処理だけ、か。それにしても、
ミラージ・バット決勝が終わり、司波妹が見事優勝を飾った事で一高の総合優勝が確定した。三高の一色愛梨と接戦を繰り広げた事で、名勝負と記録されている。
祝賀パーティーをやってもおかしくないが、本戦モノリス・コードが控えてる為に明日以降に繰り延べられていた。俺としては別にどちらでも良い事だ。
しかし、それでも祝いたいと言う事もあって、プレ祝賀会的な意味合いのお茶会がミーティングルームを借りて開催されていた。
参加している一年男子達が怪我人を除いて居心地悪そうにしてる中、俺はその枠から外れて談笑している。修哉と紫苑、そして幹比古やレオ、エリカと柴田の二科生メンバーと。
俺以外の二科生がいるのは、真由美からの粋な計らいによるものだ。幹比古は俺と一緒にモノリス・コードに参加してくれたお礼の他、修哉達は俺と司波の友人だからと。
そんな中、
情報を入手してる最中に色々と知った。奴等がちょっかいを出していたのは、九校戦を利用しての賭博をしていたかららしい。勿論それは表立ったモノでなく、犯罪組織等の連中が秘密裏に行っていたそうだ。
今年は優勝候補である第一高校に多くの組織が賭けていた為、第一高校に優勝されると主催者である
私利私欲の為に魔法師の未来を平然と奪おうとする行いに
だが、それとは別に奴等がとんでもない物を扱ってる事を知って思わず言葉を失った。奴等が供給源にしてる『ソーサリー・ブースター』と言う魔法増幅装置が人間の脳、正確には魔法師の大脳を中枢部品としていると知り、
最初は幹部達を徹底的にぶちのめした後、連れて来た古式魔法師も一緒に軍へ引き渡すつもりだったが、その前に別の意味で殺してやろうと急遽予定を変更している。
向こうにいる本体の俺は、気絶してる
『コイツ等を好きにしていいですよ』
と言った瞬間、向こうは快く了承してくれた。流石に魔法を使って抵抗されたら面倒なので、俺の方で
今頃は悲鳴を上げながら、男好きな筋骨隆々な男達に服を引ん剝かれて……とても濃密な時間を過ごしているだろう。
とまあ、
ただ情報提供するとは言っても、俺が直接渡したら色々と面倒な事になってしまう。いくら九島でも、どこで入手したのかと流石に疑問を抱かれるのが容易に想像出来る。そうならないよう、ちょっとした一芝居をしないといけない。
取り敢えず引き渡しに関しては、このプレ祝賀会を終わらせてからだ。こんな状況の中で抜け出したら、真由美が折角呼んでくれた修哉達に申し訳ない。
あと、言い忘れていたが、今この場に司波はいない。今は部屋でグッスリと眠っている。
「って事で修哉、悪いけど今夜はお前がいる部屋に泊めさせてくれ」
「それは別に構わないが、何でだ?」
「司波の奴が、『流石に疲れたから、出来れば今夜は一人で静かに眠りたい』、だとさ」
「あ~……そう言えば司波君、新人戦が始まって以降ずっと大忙しだったわね」
「まぁな。それに加えてモノリス・コードにも無理に出場させた事もあって、ある程度の要望を聞き入れる事にしてるんだよ」
この程度で詫びにはならないが、と付け加えて言った事に修哉はある程度納得した。
すると、俺がモノリス・コードと言って何か思い出したように言ってくる。
「なぁリューセー、昨日の決勝で一条を倒した技だけど、アレって俺にも出来るか?」
「残念だけど、九頭竜撃はそんな簡単に使えるものじゃない」
今の修哉の身体能力では同時斬撃どころか、神速に近いスピードと突進力がまだまだ身についていない。
如何でも良い事だが、俺が九頭龍撃についての会話をしてる事に、エリカや摩利、そして桐原が思いっきり聞き耳を立てているが敢えて無視している。
「九頭龍撃を使いたいなら、基礎練の難易度を更に上げる他、他の技を会得してマスターしなければ無理だ」
「そ、それって……リューセーが俺に技を教えてくれる、って事で良いのか?」
「お望みなら、な」
勿体ぶるように言う俺だが、元々は修哉を強くさせる際に相応の技も教えようと考えていた。
剣をメインにしてるから、『放浪する剣信』の技が丁度良い。
その技は剣術の技である為、修哉には剣道から剣術に移行する事になってしまう。本当なら剣道一筋にさせるべきだが、以前あったブランシュ襲撃の件があるから、修哉にはある程度の自衛手段としての戦闘技能を学ばせておきたい。またどこかの犯罪組織に襲われる可能性が無きにしも非ずだから。
「どうする修哉? 興味無いなら今まで通りの修行にするけど」
「や、やるに決まってるだろ! 弟子の俺としては願ってもない!」
「そうか」
やる気十分の意思を見せる修哉に俺は笑みを浮かべた。
「よし。だったら今度の部活で――」
「ちょっと隆誠君! そんな簡単に秘伝技を教えちゃっていいの!?」
「おい兵藤ぉ! 出来れば俺にも教えてくれぇ!」
「リューセーくん! 学校で秘伝技を教えるのは流石にどうかと思うぞ!」
俺が言ってる最中、聞き耳を立てていてエリカ、桐原、摩利が突然口を出してきた。
エリカと摩利は尤もらしい事を言ってるが、物凄く知りたがってる顔だ。
それと桐原には悪いけど、俺が技を教えるのは修哉だけなので、他に教える気はない。
「………やっぱり私も何か教わった方が良さそうね」
ん? 何か紫苑が俺を見ながら妙な事を言ってるな。
何を教わりたいのかは知らないが、友人の紫苑だったら別に構わない。飛行魔法じゃない飛翔術を教えるつもりでいるし。
☆
一高側のプレ祝賀会があと少しで終わろうとしてる中、別の場所ではとある二人が少々重苦しい会話をしていた。
「閣下、自分からもお聞きしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」
「構わん。言ってみたまえ」
独立魔装大隊隊長――風間少佐が確認するように問い、魔法協会理事――九島烈が頷いた。
九島は元国防陸軍の軍人で既に退役しているが、今なお国防軍魔法顧問の地位にある。だから現役軍人である風間と会う事に何の不思議もない。
そんな老人に対し、風間は冷ややかな感情を持ちながらも礼儀を尽くしている。あくまで公的な秩序に則ったものであるが。
先程まで、今回の九校戦に参加した第一高校の司波達也について話していた。
司波達也が十師族――四葉の直系である事を九島は知っている。彼の母親――司波深夜の旧姓は四葉であり、四葉家現当主――四葉真夜の姉である事も。一時期、その姉妹は九島の教え子でもあった。
同時に四葉にも危惧していた。このままでは四葉が強くなりすぎて、十師族の一段上に君臨する存在となってしまうかもしれない未来を考えながら。
その為に達也を引き抜く為の話を持ち掛けようとするも、風間は九島の意図をまるで見抜いているように断ち切った。達也は我が軍の貴重な戦力であると。
これは無理そうだと九島が退散しようと考えた矢先、向こうから予想外の問いがきた為、取り敢えず聞く事にした。
「閣下は達也だけでなく、今年の九校戦に参加した兵藤隆誠にも注目されているようですね」
「ああ、彼か」
話題が隆誠の事になった途端、九島はつい先程までと打って変わる様に、楽しそうな笑みを浮かべていた。
「兵藤隆誠君が見せてくれた試合は実に見事だった。年甲斐もなく興奮してしまったよ。風間少佐も、さぞかし驚いたのではないかね?」
「……否定はしません」
九島の言葉に風間は反論出来なかった。それどころか、全く信じられない位に絶句した。
達也が過大評価する程の人物だから、相当な実力者だと予測しながらピラーズ・ブレイクの試合を見ていた際、隆誠が見せた『光の槍』で観客達と同じく言葉を失っていた。
その後も明らかに殺傷力が高いと思われる魔法で勝ち上がっていく事で、風間だけでなく一緒に観ていた部下の真田達も驚きの連続だった。十師族でもないのに、何故あれ程の魔法を使えるのかと疑っていた程だ。
代理として出場したモノリス・コードでは圧倒的と呼べるほどの身体能力を披露し、対人戦闘魔法師の柳でさえも狼狽していたのが凄く印象的だったと風間は思い出した。自身も隆誠が使った技には本当に驚かされたから、あれ程の逸材は我が隊にスカウトしたいと本気で考えていた。
兵藤隆誠は魔法力、身体能力のどちらも優れている。十師族の一員でない筈の彼が何故あそこまでの実力を持っていたのかは一切不明だが、あれ程の逸材は軍だけでなく、警察組織等も絶対に欲しがるだろう。現に会場にいたであろう軍や警察関係者は、大慌てでどこかに連絡していたのがチラホラ見えて、兵藤隆誠について調べようとしていた。
そんな中、軍関係者で彼と一番近しいと思われる人物がいる。目の前にいる九島烈だ。
報告によると、この老人は隆誠が出る試合を観戦する際、VIPルームでなく来賓席に足を運んでいる。ピラーズ・ブレイクやモノリス・コード全ての試合に欠かさずに。加えて彼をVIPルームに招待し、二人だけで話していたそうだ。
故に風間はこう考えた。九島は兵藤隆誠を自身の傘下に引き入れようとしているのではないか、と。
「君としては是非ともスカウトしたいのではないかね? 十師族でもない彼なら猶更に」
「それは自分だけでなく、他の組織にも言える事でしょう」
軍だけでなく、どこの組織でも優秀かつ強力な魔法を使う魔法師を求めようとする。それが力となるのだから。
もしも兵藤隆誠が十師族の一員であれば手を出す事は出来なかっただろう。だが隆誠はソレに全く該当しない一般人であるから、何の遠慮も無く手が出せる。だから多くの組織達は彼を是非とも迎え入れようとする筈だ。
九校戦が終わった後のパーティで、一斉に隆誠に声を掛けてくる光景が目に浮かぶ。風間は必ずそうなると予想している。
「閣下は随分と兵藤隆誠と親しいようですね」
「まあな。あの素晴らしい試合を見せてくれた兵藤君に、私がチョッと驚かそうと声を掛けても全く動じないどころか、ついつい会話が弾んでしまった。実に興味深くなったから、彼をVIPルームに招いたのだよ」
「そうですか」
本当は懇親会で、自身に『指弾』と言う技で胸を当てられた時から九島は隆誠に興味を抱いていた。けれど、それを正直に話す気など無いから、敢えて試合を観た後から興味を抱いたようにしている。
普通なら十師族の長老を相手に緊張してもおかしくないと言うのに、隆誠は達也並みに肝が据わっていると風間は内心思った。けれど、今はそんな事は如何でもよかった。
「その兵藤隆誠と閣下に、自分は少しばかり不審な点がありまして」
「どう言う事かね?」
風間の発言に九島は訝りながら問う。
「閣下、誠に無礼である事は重々承知しているのですが、どうか質問をお許し頂きたい」
「……言ってみたまえ」
「本日の午前中、
「何故そう疑うのかね?」
「あの『ジェネレーター』は、会場の観客席にいた対象の兵藤隆誠を狙おうとしていました。ですが、そこで奇妙な事が起きました。私の部下からの話では、兵藤隆誠とその彼を追っていたジェネレーターが、突如会場からいなくなったそうです。合流した藤林達が会場内、並びに外を捜しても全く見付からない状況の最中、突如閣下直属の部下が『ジェネレーター』を拘束したと言う報告を聞いて混乱したそうです。自分が撤収命令を出した後に彼等からそう聞いて、何故かと疑問を抱いた次第です。兵藤隆誠がいなくなった後、閣下の部下が拘束などと……妙に手際が良すぎるとは思いませんか?」
「つまり君は、私と兵藤隆誠君がグルではないかと?」
「そこまでは申しませんが、あそこまで手際が良過ぎては、そういう風に捉えてしまうのは至極当然でしょう」
風間が推測しても、九島は一切表情を変えずに聞いているだけだ。尤も、図星を突かれたところで、目の前の老人は一切動揺しないだろう。
九島烈は様々な経験をしており、こんな事で主導権を握れるなんて風間は微塵も思っていない。そうでなければ既に隠居しており、今も国防軍魔法顧問などの地位に付いていないのだから。
仮に九島烈と兵藤隆誠が繋がっていたと言う証拠を得たところで、糾弾材料の一つにもならないだろう。敢えて言うなら、魔法師とは言え高校生、益してや軍属でなければ身内でもない少年に九島烈が捕らえるよう秘密裏に命じていたとなれば、軍規違反になるかもしれない。
尤も、風間が所属する独立魔装大隊は、司波達也と言う高校生を軍人としている。普通ならとっくに軍規違反になってもおかしくないが、偽名を使ってる事で回避して、今も貴重な戦力の一人として扱っている。
「確かにな。だが残念ながら、私は彼にジェネレーターを拘束しろと一切命じてはおらん。単に偶然が重なっただけだろう」
「そうですか」
事実無根だと主張する九島に、風間は内心白々しいと思いながらも敢えて納得する事にした。相手が相手だけに。
だが実際、九島の言ってる事は半分本当だった。彼は初めから隆誠と結託していた訳ではない。
あれは大会委員長とジックリ話している中――
『俺を殺そうとした危険な男を捕らえたので、閣下の方で引き取って頂けませんか?』
と、隆誠からの連絡が来た後からだ。
最初はいきなりの事に何の冗談かと思っていたが、あの隆誠が何の意味も無く自分に連絡はしない筈だと結論した。
そして自身の部下を寄越して調べた結果、犯罪組織が扱う生体兵器――ジェネレーターである事が判明。並みの魔法師では簡単に倒せない筈のジェネレーターを捕らえた隆誠の実力に、改めて末恐ろしい若者だと思ったのは内緒だ。
そこから先は隆誠の要望通りに応えようと、ジェネレーターは自分達で捕えたと言うシナリオに仕立て上げた訳である。
「ついでに私も訊きたい。君の部下達は会場で兵藤君を見失ったそうだが、結局どうなったのかね?」
「……私が藤林達に撤収の指示をした後、会場から姿を消した筈の彼が、
「ほう」
風間がまるで自らの恥を晒すように答えた事で、九島は何だか楽しそうに笑みを浮かべた。
(確か部下からの報告では、捕らえたジェネレーターを引き渡したのは会場から少々離れた場所だったな。風間少佐の部下や響子が会場にいた筈なのに、一体どうやって戻ったのだ?)
同時に疑問を抱いた。独立魔装大隊の目をどうやって欺いたのかを。
その隊には自身の孫娘である響子がいる。彼女の高度なハッキングスキルがあれば、監視カメラで位置が把握出来る筈。だと言うのに、隆誠はその彼女の目から逃れた。これは流石の九島でも全く分からない。
とは言え、隆誠が上手くやった以上、自分はそれに合わせるだけだ。もしも話す機会があれば、直接訊いてみようと思いながら。
「後になって見付かったとは、君達らしくない失態ではないかね。彼が最初から会場にいたのなら、拘束したジェネレーターを私の部下に引き渡すなど到底無理である事くらい分かる筈だろうに」
「申し訳ありません。どうしても閣下に直接確認しておきたかったものでしたので。どうか、お許しを」
「良い。私はあくまで君の疑問に答えただけだ」
深々と頭を下げて謝罪する風間と、気にしてないように言い放つ九島。
これで自分と隆誠が結託してない事は一応証明された事になるが、九島は内心まだ完全に疑いは晴れてはいないだろうと思った。
すると、風間の懐に入ってる携帯端末から着信が入った。
こんな時に誰だと内心思いながら取り出すと、連絡してきた相手は自身の部下である藤林からだった。
彼女は現在時間外勤務を命じて、
結果報告の連絡はまだ先なのだが、それを無視してまで連絡を寄越すと言う事は、何か予想外な事が遭ったのではないかと風間は瞬時に考えた。
「閣下、大変申し訳ありませんが、少しばかり宜しいでしょうか?」
「構わんよ。私も君と同じく連絡が来たのでね」
九島から席を外す許可を貰った風間は一旦彼から離れて、背を向けながら携帯端末の通話をONにした。
「どうした、藤林。向こうで何か遭ったのか?」
九島に聞かれないよう小声で話しかけるも――
『少佐、一大事です!
「何だと!?」
「それは本当かね?」
余りにも予想外過ぎる報告に、風間は思わず声を荒げてしまった。同時に、何故か九島からも予想外みたいな声を出していた。
風間が思わず振り向くも、九島も自分と同じく誰かと電話をしている。目が合った途端、二人は揃って電話をしてる相手に後で架け直すと言って一旦電話を切った。
「申し訳ありません、閣下。今しがた部下から緊急報告が入り、至急確認しなければならない事が……」
「それは奇遇だな。私も急な用事が出来てしまった。ならば今日はここまでにしようか」
☆
(これは、どういう事だ?)
場所は横浜ベイヒルズ北翼タワーの屋上。そこにはホテルの一室で寝てる筈の達也の他、独立魔装大隊少尉・藤林響子もいた。
隆誠を部屋から追い出すように一人で眠りたいと達也が言ったのは、抜け出した事を気付かれない為のアリバイ工作である。もし部屋に戻ろうとしても、そこは妹の深雪が誤魔化して引き止める手筈となっている。
因みに隆誠が深雪と一緒にいる事を達也は非常に気に食わないのだが、任務の為だと己に言い聞かせていた。後でどんな会話をしたのかを確認しようと思いながら、現地に向かったのだ。
達也が此処へ来たのは、
今の彼の感情は、
だと言うのに、それが叶わない結果となってしまった。『
明らかに誰かと交戦したであろう痕跡以外に、ジェネレーター二体が壁にめり込んで動けなくなっており、もう一体はピクピクとしたまま倒れている。幹部達は一人もいない。更にはひっくり返されてるテーブルの周囲には何故か濡れている始末。
自分達が来る前に一体何が起きたのだと、達也は混乱を極めていた。一緒にいた藤林に結果を報告し、彼女は半信半疑な感じでありながらも、上官である風間に報告をしている。
(一体誰が……っ!)
状況が全く読めずに謎が深まる中、達也はふと急にある事を思い出した。今から約四ヵ月前の春、ブランシュが一高に襲撃した時の事を。
達也が妹や他の生徒達と一緒にブランシュのアジトへ突入するも、リーダーの司一やその部下達が何故か倒されていた。誰がやったのかは現在も不明のまま。
しかし、気絶していた司一が辛うじて意識を取り戻した際にこう言った。『白般若の面を被った他校生』と。
(まさか、今回も奴の仕業なのか?)
だとしても、達也には全く分からない。司一の言った事が例え本当だとしても、その人物が
それで思い浮かぶとすれば――
(兵藤……いや、それはない)
達也はすぐに自分が最も警戒している対象――兵藤隆誠を考えたが、それはすぐに却下した。奴には
ブランシュが一高襲撃時に、隆誠は気絶してる修哉と紫苑を保健室へ運んで姿が見えなくなった際、達也は『
最初は何らかの方法で自身の眼から逃れ、ブランシュのアジトへ向かったのではと推測した。けれど、後ほど除外せざるを得ない事になる。あの時はずっと一高にいたから、密かにブランシュのアジトへ向かう事は出来ない筈だと。
それ以外の人物を想定するが、達也は何故か隆誠がやったのではないかと考えてしまう。
(仮に今回も兵藤の仕業だとしても絶対無理だ……なのに、何故……!?)
自分がホテルから離れるまでの間、確認の意味も込めて『
一歩も出ていないと(何故か)安堵し、いざ粛清を開始しようと始めた矢先、信じられない光景を目にした途端、またしても何故か隆誠を思い浮べてしまう。本人もどうしてそうなるのかが全く分からないようだ。
「特尉、大黒特尉………達也くん!」
「!」
達也は深く考え事をしていた為、ずっと自分を呼んでいた藤林に漸く気付いた。
「どうしたの、達也くん? 何回呼んでも反応しないなんて、君らしくないわね」
「すいません。少々考え事をしていました。それで少尉、何か?」
「風間少佐より、私達は一旦帰投せよとの指示が出たわ。ホテルの方は、別動隊に向かわせるそうよ」
「……分かりました」
本当はこのまま現場へ向かって直接検証したい達也だったが、上官からの指示に逆らう訳にはいかないと己に言い聞かせた。納得行かない感情を必死に抑えながら。
そして帰投後、風間より予想外の報せが入った事で再び困惑する事になる。
九島烈より、密かに命じていた部下が
感想お待ちしています。