再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

75 / 240
九校戦編の最終話となります。


九校戦編 十師族からの警告

 モノリス・コード決勝戦が始まるまで、隆誠が沓子たち三高美少女達と仲良く(?)観戦してる事は後に一高生徒達に知られてしまった。

 

 修哉と紫苑は隆誠と一緒に観戦したかったが、(含んだ笑みを浮かべながら)邪魔しては悪いと思って諦めている。けれど、達也一行の中でエリカが隆誠を物凄く揶揄っていた。

 

 これに少しばかり頭に来た隆誠は思わず、『そんな事ばかりするから、俺に勝てないんだよ』と言い返してしまった。その所為で『あたしと勝負しなさい!』と催促される破目になってしまったが。

 

 そんな平穏な時間を過ごしている中、別の場所では少しばかり深刻そうな雰囲気になっていた。

 

 

 

 

 

 

「師族会議からの通達が来たわ」

 

「ほう?」

 

 とある部屋にて、真由美は十文字と話をしていた。

 

 十文字はつい先ほど試合を終えたばかりで、今は上半身タンクトップ、下半身プロテクション・スーツ姿だった。

 

 真由美からちょっとした話があると言われたので、消臭剤で汗の臭いを消して身嗜みを整えていた。紛れもないジェントルマンだと彼女は思いながらも話を続ける。

 

 二人がこうして話しているのは、一高のチームメンバーとしてではない。十師族としての話だ。

 

 その為、真由美が万が一の事を考え遮音障壁を形成している。周囲の耳に入ったら不味い話である為に。

 

「一昨日、一条くんがリューセーくんに倒されたでしょう」

 

「……それで?」

 

「十師族はこの国の魔法師の頂点に立つ存在。例え高校生のお遊びであっても、十師族の力に疑いを残すような結果を放置しておくことは許されない、だそうよ」

 

「あの試合内容は、『十師族の力を過信したが故の結果』だと、兵藤は言っていたがな」

 

 新人戦モノリス・コード決勝を終えた後、十文字達は隆誠の作戦内容の詳細を聞いている。

 

 十師族である一条がいれば勝てる、と言う甘い考えを持ってる三高の隙を突こうとした隆誠に、十文字は非常に興味深く聞き入っていた。

 

 一高が見せた試合は、どんなに個人が優れていてもチームワークで勝てる、と言う物だった。そして個人戦に持ち込もうとする将輝が、逆にチームの足を引っ張る事になったのだと隆誠は断言した。もしも三高も一高みたいな連携プレーを見せれば負けていたかもしれないと。

 

 その途中で、同じ十師族である真由美と十文字は段々耳の痛い話となってきて、周囲との連携は大事だと改めて認識する事となった。特に本戦モノリス・コードに出場してる十文字としては猶更に。

 

 だが、それを知らない十師族(むこう)としては、隆誠が将輝を倒した結果を見過ごせないようだ。

 

「つまり、十師族の強さを誇示するような試合を求めている、ということだな?」

 

「ホント、馬鹿馬鹿しいったら……」

 

 もしも隆誠が聞いたら確実に呆れるであろうと、真由美は内心そう思っていた。同時に申し訳なく思った。一高の為、勝利に貢献してくれた隆誠の気持ちを踏み躙ってるような気分に陥っているのだから。

 

「リューセーくんが傍流であっても十師族の血を引いているなら、こんな三流喜劇に巻き込まれる事も無かったのに……」

 

 真由美の愚痴に対して、十文字は何もコメントしなかった。

 

「任せておけ」

 

 その一言だけ応えたのみだった。 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、この試合は流石に君達と一緒に観るのはどうかと思うぞ?」

 

 モノリス・コード決勝戦は第一高校対第三高校。

 

 これは色々な意味で因縁のある対決だ。新人戦モノリス・コードの決勝で俺を含めた一高が三高に勝ったのだから。

 

 だから一緒に観戦しようとする沓子達にとっては、非常に気まずい状態になる筈。

 

 のだが――

 

「そんなのはもう今更じゃよ」

 

 沓子は如何でもいいように言い放ち――

 

「確かに兵藤君の言う通りかもしれませんが、既に三高の総合優勝が断たれた以上、最早何の意味もありません」

 

 一色は吹っ切れた感じで言っており――

 

「それに、あんな凄い試合展開になってる以上、もう三高(ウチ)に勝ち目はない」

 

 十七夜は冷静なままで試合の結果を予想しながら言った。

 

 懇親会の時から親しげに接していた沓子はともかく、一色と十七夜は初めて会った時と違う印象だった。

 

 二人は、と言うより一色は最初俺の事を如何でもいいような感じが見受けられた。それが変わったのはアイス・ピラーズ・ブレイク以降だ。恐らく俺が何度も圧倒的勝利(ワンサイドゲーム)を見せた事で評価を改めたんだろう。

 

 加えて新人戦モノリス・コードも同様に、俺が見せた超スピードや技も凄く気になっているようだ。何でも彼女は稲妻(エクレール)と称されており、それ以上の速さを見せた事で実力差を思い知らされたとか。まぁ俺には如何でも良い事だが。

 

 それはそうと、十七夜の言う通り、今の試合は凄い展開だった。と言うより、一方的な展開だろう。

 

 因果応報、なのだろうか。

 

 新人戦で一条が八高に対してやっていた事を、三高はそっくりそのままやり返される形となっていた。

 

 因みに俺も同様の事をやっていたのだが、あの時の再現を見せられている事に少々申し訳ない気持ちになっている。当然それは八高に対して。

 

 一人で進軍してる十文字は多重移動防壁魔法『ファランクス』を展開したまま、三高選手達が放ってる魔法を悉く防いでいた。

 

 同時に彼から放たれるプレッシャーに圧されている所為か、三高はもうすっかり息が上がっている。既に勝負あったとしか言えない展開だ。

 

 そして進軍の歩みを止めた十文字は、防壁を張ったまま敵選手目掛けてショルダー・タックルの体勢で突っ込んだ。

 

 怒涛の如くな突進に、三高の選手一人が吹き飛んだ。二人目、三人目となす術もなく全員跳ね飛ばされて。

 

 一高の総合優勝に花を添えると言うべき完全勝利だった。

 

「凄い。流石は十文字家の次期当主……」

 

「『ファランクス』をあそこまで使いこなすのは見事としか言えません」

 

 十七夜や一色は三高の敗北よりも、十文字の実力に舌を巻いているようだ。それは当然の反応と言えるだろう。

 

 だが、俺はとてもそんな風に見えなかった。アレが本当に彼本来の戦い方なのかと疑問に思ったほどだ。

 

「どうしたのじゃ、隆誠殿? 一高が優勝したのに、余り嬉しそうでないみたいじゃが」

 

「勿論嬉しいよ。ただ――っ!」

 

 俺が沓子に言ってる最中、観客の拍手に応えようと手を挙げている十文字を見てると、途端に一瞬彼と目が合った。刹那、フッと笑ったのも確かに見えた。

 

(……成程、そう言う事か)

 

 俺は察した。十文字があんな一方的な試合展開を見せた理由を。

 

 あの眼は明らかに、『俺はお前より強い』――と言う一種の警告だ。さっきまでの一方的な試合も、十師族としての力を誇示する為のパフォーマンスなのだろう。

 

 戦う前から、力では敵わないと相手に知らしめ、歯向かう事を断念させると言う、絶対的な抑止力を見せ付けたかったに違いない。

 

 兵藤隆誠(おれ)はともかく、聖書の神(わたし)の立場からすれば、『それがどうした?』と言い返してやりたかった。

 

 決して見下している訳ではないが、魔法が優れてる程度で自分を簡単に捻り潰せると思っているなら大間違いだ。聖書の神(わたし)が全力でやれば、例え十師族の連中が共闘し束になって挑んだところで、一瞬で消し去ることくらい造作もない。最低でも神滅具(ロンギヌス)級に匹敵する武器を用意しなければ、聖書の神(わたし)に勝つのは無理だと断言しておく。

 

 それと十文字、兵藤隆誠(おれ)は貴方を尊敬する先輩と見ており、聖書の神(わたし)は君を素晴らしい人間(こども)と見ている。だから、自分と敵対する道を選ばないよう切に願う。

 

「隆誠殿、先程から一体如何したのじゃ? 今度は黙ったままでおるが」

 

「何でもないよ」

 

 沓子からの問いに俺は適当に誤魔化す事にした。自分の考えを気付かれないように。

 

「そうじゃ隆誠殿、今夜のダンスパーティーはわし等と一緒に踊ってくれぬか?」

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 約二週間前とは打って変わり、ホールは和やかな空気に包まれていた。

 

 十日間に渡る激闘から解放されたのだから当然と言えよう。今はもう他校とか一切関係無く、過度にフレンドリーな精神状態になっていた。

 

 後夜祭合同パーティであるが、俺の視点で見ると合コンみたいに思えてしまう。他校同士の男女が良い雰囲気になってる光景を何度も目にしていたから。

 

 これもある意味、九校戦の醍醐味かもしれない。魔法師としての繋がりを得る為に遠距離恋愛の出会い場所を提供してる、みたいな感じで。

 

 だが、必ずしも男女の恋愛とは限らなかった。

 

 俺の場合なんて、大会主催者、基地の高官、大会を後援してる企業の幹部と話す破目となっている。

 

 主に訊いてくるのは俺が使った魔法や技、そして『ウチに来ないか?』と言う勧誘の嵐だ。鬱陶しいったらありゃしない。

 

 全く考えていないと遠回しに断っても、是非とも考えて欲しいとしつこくアピールしてくる。明らかに俺の力目当てなのが丸分かりだ。

 

 引っ切り無しの勧誘にウンザリしていると、それは突然途絶える事となった。魔法協会理事の九島烈と言う超大物の登場に、勧誘していた連中はそそくさと退散していったのだから。

 

「すっかり人気者になっているじゃないか」

 

「どこがですか」

 

 揶揄うように言ってくる九島の発言に、俺はウンザリ気味に言い返した。

 

「こんな目に遭うなら、もう来年の九校戦はパスしようかと思ってます」

 

「それは困るな。君が出場してくれなければ、来年の楽しみが激減してしまうよ。私はもう君のファンになってしまったのだからな」

 

 九島は本心で言ってるようだ。魔法協会理事である彼にここまで言わせた俺って結構凄い事してるかも。

 

「あんな圧倒的勝利(ワンサイドゲーム)同然の試合は何度も観ると、流石の閣下も飽きると思いますが?」

 

「いやいや、そんな事は無いさ。十師族でない君が、あれ程の実力を持っているのだ。一体どういう勝ち方をするのかとワクワクしてしまうのだよ」

 

「随分変わった視点で観ていたんですね」

 

「ハッハッハッハ」

 

 先程の連中と違い、俺は九島と何の遠慮もなく世間話同然の会話をしていた。

 

 言っておくが此処はVIPルームでもなければ、九島の部屋でもない。後夜祭合同パーティをやっている会場だ。

 

 こんな親しげに話してる光景を、会場にいる周囲は……仰天するように目を大きく見開いていた。恐らくこれで俺が九島の陣営に加わったのではないかと勘違いているかもしれない。後ほど、目撃していた真由美達から問い詰められる破目になったのは言うまでもないだろう。

 

「ところで閣下、大会委員会はどうなったんですか?」

 

「詳しい事は言えぬが、運営委員や大会委員長には私の方で厳正な処分を下しておいた。今回の不祥事については、流石に表立って言えぬ内容ばかりでな」

 

「でしょうね」

 

 犯罪組織が関わっていたなんて世間に知られれば、あらゆる所から大バッシングを受けて、九校戦その物が失われてしまうのは容易に想像出来る。

 

 だから今回は世間に一切公開せず、内部だけで処理したという訳か。

 

「それと君の件については明日の朝、大会委員長より第一高校に正式な謝罪をする予定だ」

 

「何だか大会委員長としての最後の仕事みたいに聞こえるのは俺の気のせいですか?」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

 九島が含んだ笑みを見せるので、俺は大会委員長の今後がどうなったのかは何となくだが分かった。彼は来年の九校戦の運営に関わる事はないだろう。

 

「もう一つ、今回の件について一条は知ってるんでしょうか?」

 

「彼には話していないが……何故そんな事を訊くのかね?」

 

「他言無用とは言え、アイツも十師族の一人です。俺の方から真実を教えた方が良いかと思いまして」

 

 九校戦に関係してる十師族の中で、一条だけは一切知らない。

 

 恐らく九島が十師族の現当主達に通達するかもしれないが、それで後になって当主から知った一条が俺に抗議してくるかもしれない。癇癪を起こすほどの子供じゃないと思うが、何も知らされてないままなのは流石に気の毒だ。

 

 だから今の内に教えようと、九島から話す許可を貰おうとしている。

 

「良かろう。次期当主である一条将輝君としても、あの結果は不本意であろうし、立場上は知っておかねばならぬからな。君の方から伝えておいてくれ」

 

 具体的な詳細についてまで語らないようにと言う条件により、一条に話す許可が下りる事となった。

 

 この後に始まるダンスの時間まで、俺は九島との話をするのであった。

 

 

 

 

 九島を含めたお偉方が退出し、会場はますます和やかとなり、浮ついた空気に包まれた。

 

 管弦の生演奏を用意した主催者側の熱意に応えようと、若者たちは動こうとする。

 

 親交を深めた少年少女達は手を取り合い、ホールの中央に進んでダンスをしていた。制服姿なのは少々残念だが。

 

 青春してるなぁと爺臭い事を考えながら一条を探してると、思いのほか簡単に見つけられた。司波妹にダンスの誘いをしようと、他の他校生男子達と一緒に混ざっていたから。

 

 尤も、兄の司波の登場によって阻まれていた……が、会話をしてる最中に一条が何か気付いた様な顔をした後、司波妹とダンスを始める事になった。

 

 一条と話すのはもう少し先になりそうだと分かった俺は、適当に時間を潰そうかと思ったが――

 

「隆誠殿!」

 

 聞き覚えのある声を聞いた事である事を思い出した。ダンスをする約束を。

 

 振り向いた先には三高の四十九院沓子、一色愛梨、十七夜栞の三高女子トリオがいる。

 

 因みに彼女達も俺が九島と話すのを目撃しており、一色と十七夜がかなり知りたがっている様子だ。

 

「約束を忘れたとは言わせぬぞ!」

 

「分かってるって……どうか私と一曲お相手願えませんか、レディ?」

 

 少々不機嫌となってる沓子のご機嫌を取ろうと、紳士の作法通りな一礼をする事にした。

 

「う、うむ……」

 

 今までの俺と違う態度を見た事に一色と十七夜が驚いているのを余所に、沓子は少しばかり顔を赤らめながらも、差し出された俺の手を取った。

 

 身長差があるも、中央に進んでポジションを取った俺は、淑女をリードする為のダンスを披露した。

 

「りゅ、隆誠殿、随分と手慣れておるようじゃな……」

 

「それなりの知識はありますので」

 

 こう言ったダンスをやるのは前世(むかし)のダンスパーティー以来だ。一応はプロ級の腕前を持っている。

 

 他の学生達より洗練した舞踏を披露してる事に、見物している学生達は感嘆の声を出していた。

 

 因みに司波妹と踊っている一条が何故か口惜しそうな表情をしてるが、全く気にしてない俺は沓子をリードしていた。

 

 夢を見てるような表情となってる沓子とのダンスを終えたかと思いきや、今度は一色、十七夜の相手をする事となった。

 

 特に一色からは称賛の言葉を述べられた。あれ程まで自分をリードするダンスをしてもらったのは初めてだったと。

 

 これで俺の役目は終わった筈なんだが……何故か今度は三高以外の女子達からも自分と踊って欲しいと頼まれてしまった。しかも俺と何の接点も無い筈の女子達からだ。

 

「リューセーく~ん。他校の女子ばかり踊ってないで、私と踊って欲しいなぁ~」

 

「……はい」

 

 他校の女子達を牽制してるのか、一高の代表である真由美からのお誘いを断る事が出来なかったのは仕方ないと言えよう。

 

 いざ踊り始めると、彼女は他の女子達と違ってリズム感が独特だ。演奏とステップがまるで合ってない。真由美が相当な経験者だと分かった俺は、レベルを更に上げる事にした。

 

「やるじゃない、リューセーくん」

 

「そちらこそ」

 

 これには流石の真由美も驚いており、段々と本気になり始めている。上級かつ優雅なダンスを。

 

 当然、俺は向こうに流される訳にはいかず、あくまで相手をリードしようと引き立たせるダンスを見せている。

 

 互いに本気を見せている俺と真由美のダンスに、周囲はもう完全に釘付けとなっていた。

 

 如何でも良いけど服部、頼むから俺に殺意の視線を送るのは止めてくれ。真由美には後で君と踊るよう言っておくからさ。

 

 そして真由美から解放された俺は一旦休もうと、人がいない場所に行ったら――

 

「見事なダンスだった」

 

「会頭……」

 

 まるで労うようにグラスを差し出してきた十文字に、俺は内心意外に思いながらも受け取った。

 

「あの七草とあそこまで踊れるとはな思わなかったぞ」

 

「こう見えて、それなりの知識と経験がありますから」

 

「ほう? 兵藤はどこかのパーティーに参加した事があるのか?」

 

「まぁ、それなりに……」

 

 そう言いながら俺は渡されたグラスを飲み干す。

 

「兵藤、少し付き合え」

 

 すると、まるで拒否権は無いと言わんばかりの真剣な声で言う十文字に、俺は従うしかなかった。

 

 

 

 会場から出た俺と十文字は庭へと場所を移した。

 

 大体の目星は既についている。恐らく十師族の一員である一条を倒した事についてだろう。

 

「兵藤、九島閣下と随分親しげに話していたところを見ると、やはりお前は十師族の一員だな?」

 

 余りにも唐突過ぎる問いだった為、俺は少しばかり衝撃を受けた。

 

 いきなり十師族であるかと聞かれたら、誰だってそうなる。

 

「まさか。閣下とは九校戦を通じて、チョッとした御縁が出来ただけですよ」

 

 言っておくが俺は嘘を吐いていないし、十師族の一員でもない。

 

 確かに一介の学生である俺が九島と親しげに話してる所を見たら、もしかすれば九島の関係者ではないかと疑われてもおかしくない。

 

「――そうか」

 

 返答を聞いた十文字は暫く俺をじっと見据えた後、無表情に頷いた。答えに納得したかどうかは分からないが。

 

「ならば、師族会議において、十文字家代表補佐を務める魔法師として助言する。兵藤、お前は十師族になるべきだ」

 

「お断りします」

 

「む……」

 

 間髪無くキッパリと断りの返事をした為、十文字は少々面食らったような表情をしていた。

 

「大方、一条家の次期当主である一条将輝を倒した事で、他の十師族は俺を無視出来ない存在となったのでしょう? だから十文字会頭は穏便に済ませようと、俺を十師族に迎え入れようとしている。その為に真由美さん辺りを結婚相手にして、俺を婿養子にさせようと考えた。違いますか?」

 

「……その通りだ」

 

 十文字は俺の推測が正解だと頷いていた。

 

「まさか、俺が言う前に全て当てられるとはな。だがそこまで見抜いておきながら、何故即座に断ろうとする? いくら兵藤が他の魔法師より優れているとは言え、十師族はお前が考えている以上にずっと重い」

 

 確かにそうかもしれないだろうが、俺には全く興味の無い事だ。今の生活で充分に満足している。

 

 加えて、十師族の権力なんか微塵も欲しくない。表面上は魔法師の頂点として君臨してても、中身は周囲に見えない家同士の熾烈で醜い権力争いをやってるのを知っている。

 

 嘗て天界の長として君臨していた聖書の神(わたし)には分かる。権力を長く持っている人間ほど、段々腐敗していくのを何度見た事か。

 

 特に教会上層部の人間がいい例だ。当初は崇高な考えを持っていたが、年月が経つにつれて傲慢な存在に成り下がっていった。それを知った聖書の神(わたし)は思わず裏切られたと嘆いたほどだ。

 

 この世界の人間も同様、魔法師としての権力を持っている十師族を考えれば、世間には公表出来ない何かしらの闇を抱えている筈だ。そんな奴等の為に利用などされたくない。

 

 目の前にいる十文字克人の他、一条将輝が清廉潔白な人物とは言っても、何れ当主になれば嫌でも闇を目にする事になるだろう。出来れば闇を知っても、清廉潔白な心を貫いて欲しいが。

 

「俺は今の生活が好きなんです。家族に余計な心配をさせたくありませんし」

 

「その家族に万が一危険が及んだ場合、十師族側で保護すると言ってもか?」

 

 余計危険だよ! と俺はツッコミを入れたかった。

 

 十師族なんかに保護されたら人質扱いも同然だ。聖書の神(わたし)がいる限り、絶対にそんな事はさせない。

 

「言っておきますが会頭、今の俺は何を言われてもNOとしか答えませんよ」

 

「……分かった。今回は(・・・)ここまでにしよう」

 

 拒否する俺の姿勢を見て十文字は諦めてくれた。

 

 今回は、と言ったから恐らくまた機会があれば同じ事をしてくるだろう。

 

「だがな兵藤、余りのんびり構えてはいられないぞ」

 

 そう言って十文字は去って行った。

 

 のんびり構えては、ねぇ。

 

 それってつまり……場合によっては、他の十師族と敵対する事になるかもしれないと言う意味なのかな?

 

 別に構わないさ。そうなったら……聖書の神(わたし)を敵に回した事を冥界の底から後悔させてやるだけの話だ。

 

 いや、後悔なんて与える必要はない。『終末光弾』を使って、何もかも消し飛ばせば良いだけなのだから。

 

 ………っと、いかんいかん。俺とした事が物騒な事を考えてしまった。反省と同時に頭を切り替えないと。

 

 さて、十文字との話は終わったから、そろそろ一条に会いに行くか。

 

 司波妹以外の女性とダンスをしてるのが視えたが、まだやっていても中断させてもらうとしよう。

 

 真実を話した後、ある事を持ち掛けるつもりでいる。出来なかった新人戦男子アイス・ピラーズ・ブレイク決勝戦を非公式で、何処か別の場所でやろうと言う提案を。一条が乗ってくれるかどうかは分からないが。




以上で、九校戦編は終了となります。

ここまでお付き合い頂きまして、ありがとうございます。

この作品は一旦完結にしますが、横浜騒乱編を更新する場合、再び連載に切り替えます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。