再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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夏休み編 知り合いの厄介事

「………よし」

 

 明智を捜そうと動き出した俺は、周囲を確認していた。

 

 遊園地に来ている客、そして監視カメラの目が無い事を認識した瞬間、俺は能力(ちから)を使って自身を透明化した。

 

 透明と言っても、自分の周囲に視覚阻害用の結界を張っただけに過ぎない。もし客やカメラが見ていたら、俺が幽霊みたいに消えたと思われるだろう。

 

 直後、地面に付いていた俺の両足が離れていく。まるで重力に逆らうように身体がどんどん浮いていき、目印である『賢者の塔』と同じ高さになって漸く止まる。

 

 言うまでもないが、こうなっているのは俺が飛翔術を使っているからだ。勿論、トーラス・シルバーとか言う魔工技師が開発した『飛行魔法』でなく、純粋な聖書の神(わたし)能力(ちから)として使っている。

 

 それを使えば遊園地にいる客達が釘付けになるどころか、大騒ぎになってもおかしくないのだろう。けれど、地上にいる者達は誰一人そうなっておらず、全く気付いていないように今も遊園地を楽しんでいる最中だ。気付いているのは、既に『賢者の塔』に辿り着いて、密かにセージ達の護衛をしている(今も透明化中の)精霊達――レイとディーネだけだ。俺が目を向けた瞬間、レイがブンブンと手を振ってアピールしている。

 

 聖書の神(わたし)と霊的な回路(パス)が繋がってる神造精霊達はともかく、客達が自分に気付かないのは視覚阻害用の結界を張っている為である。客達の中に里見達と同じ魔法師がいても、俺に絶対気付く事はない。聖書の神(わたし)能力(ちから)は魔法と全く異なるから、気付く事すら出来ない。司波みたいな妙な眼を使ったところで、多少の違和感がある程度で済むだけだ。

 

 まぁそれはそうと、さっさと肝心の明智を捜すとしよう。

 

 俺が飛翔術を使ったのは、この広いワンダーランドの全体を見渡す為だ。地上で捜すより、上空から対象を発見して向かった方が効率が良いから。

 

 明智がいると思わしきオーラの方へ視線を向けると……あっと言う間に発見した。けれど何故か、客が入れない筈のエリア――バラの生け垣迷路にいる。

 

 あそこは拡張工事中で通行禁止となっていた筈だ。セージ達と一緒に行動していた時に確認している。

 

 にも拘わらず、あのエリアにいるか。方向音痴で迷うにしても明らかにおかしい。それに加え、明智は今もあそこから出れずに同じ場所をグルグル回っている最中だ。

 

 そうなっているのは当然だろう。何せ出口へ向かおうとする明智を阻むかのように、生け垣が動いて壁となり、進行を防いでいるから。そして彼女が別の道を行こうとしても、またしても生け垣が動いて進行を塞いでいた。まるで迷い込んだ獲物を逃がさないかのようなギミックである。

 

(いや、違うな)

 

 俺はすぐに気付いた。アレは生け垣のギミックではなく、魔法を使っての妨害行為である事に。

 

 その証拠に、ワンダーランドの関係者(スタッフ)とは思えない黒服黒メガネ黒帽子の一団が、生け垣に細工を施してる魔法を使っていた。

 

 拡張工事中であるのに、迷い込んで追い詰めようとしてる少女にあんな事をしているのは、絶対碌な連中じゃないのは明々白々である。

 

 本当ならすぐに阻止したいが、万が一にスタッフだったら色々不味いから、先ずは素性を確認する必要があった。連中の一人に聖書の神(わたし)能力(ちから)で頭の中を覗かせてもらう。

 

 俺のやっている事は人の道理に反する行為であるのは重々承知している。けれど、明らかに怪しいと分かっている相手に対して不用意に声を掛ければ、何をされるか分かったものじゃない。だから敢えて事前に調べ、素性を探ろうとしている訳である。

 

 スタッフだったら申し訳無い事をしてしまったと反省するが……その必要は無かった。調べたところ、あの連中は明智を狙う刺客だった。どうやら『ゴールディ家』の秘術――『()(だん)タスラム』とか言う術式を奪う為に来日してきたようだ。

 

(いつの時代でも、愚かな人間はいるものだ……)

 

 お家騒動に関する事だと分かり、聖書の神(わたし)は途端に嘆息の息を漏らした。秘術欲しさに犯罪行為を平然とやろうとする魔法師(にんげん)のやる事に対して。

 

 聖書の神(わたし)が人間に転生し、『欲』と言う物を理解した。善悪関係無く、それが無ければ人間として成り立たない事も含めて。

 

 あの連中がやろうとしている事は否定しない。それが人間であると理解してるから。

 

 だからと言って、犯罪行為を行おうとするのは見過ごせなかった。明智がもし『魔弾タスラム』に関する術式を提供しなかった場合、あの連中は拉致して無理矢理にでも奪おうとしている。そして万が一に目撃者もいたら始末する事も含めて。

 

 本来であれば奴等と無関係な俺が関わるべきではない。けれど、相手の目的が判明した以上見過ごす事は出来ない。明智に危険が及んだら、ワンダーランドに来てる里見達が大騒ぎとなるだろうから。

 

(明智が気付く前に、黒服共は俺の方で密かに片付けておくか)

 

 あの連中は明智に意識を向けてる他、姿を消しながら降下してる俺の接近に全く気付いていない。

 

 黒服共の数は十人程度で、それなりの実力を持っている魔法師達であるが、俺からしたら全く問題無い雑兵に過ぎなかった。

 

 何故なら――

 

 

「ぎっ!」

 

「がっ!」

 

「お、おい何がぐあっ!」

 

 

 一瞬で背後を取り、黒服の首筋に手刀を当てて気絶させているのに全く気付いていないのだから。

 

 その途中で何名かは何者かの奇襲を受けてる事に気付いて応援を呼ぼうとするも、それをさせないよう即座に接近して気絶させている。

 

「よし、片付いたな」

 

 十秒もしない内に、黒服共を全て気絶させると、バラの生け垣に使っていた魔法の想子(サイオン)が途端に消えた。その場にいる明智は困惑しているだろう。

 

 今気付いたが、彼女の近くに誰かがいた。知らないオーラだが、魔法師と思わしき反応がする。明智のオーラに何の異常も無いのを察するに、ワンダーランドのスタッフ、もしくは彼女の知り合いかもしれない。

 

 取り敢えず目的を果たした俺は、この場から離れるとしよう。ここを通るであろう明智達が気絶してるコイツ等を見て驚くだろうが。

 

 

 

「えっ!? と、十三(とみ)(つか)くん! なんかメン・イン・ブラックと思われる人達が倒れてるんだけど!?」

 

「一体何が起きて……ん、コレは……。どうやら普通のお客さんじゃないようだね」

 

 

 

 

 

 

 黒服共を気絶させて離脱した俺は、『賢者の塔』に戻って結局見付からなかった事を里見達に嘘の報告するも、その数秒後に明智が戻ってきた。

 

 俺が捜していた事を知った明智は申し訳無さそうに謝っていたが、今まで何処にいたのかと尋ねた瞬間、途端に答え辛そうな表情になったが、少々苦しい言い訳みたいな説明をするも、誰も深く訊かずに納得していた。迷子になった本当の理由を知ってる俺も、敢えてそうしている。

 

 またしても迷惑を掛けたからお昼ご飯を奢ると彼女は言うも、気持ちだけ受け取っておくと断っている。その代わり、セージとセーラの遊び相手になって欲しいと。

 

 セージはともかく、セーラは女の子だ。なるべく同性と一緒の方が良いだろうと思い、明智達と一緒にいさせようと思った。

 

 明智以外に、里見達も俺の頼みを快く引き受けてくれている。三人はセーラの事が気に入ったのか、非常に可愛がってくれている。セージがずっと俺の傍にいる事で、時折頬を膨らませ、自分に詰め寄ってくる事はあるが。

 

 そんな中、昼食の時間となったので、近くにあるベンチに座って食べる事にした。セージ達のリクエストによる俺の手作り弁当を。因みに明智達はクレープでお昼代わりだ。

 

「「いただきま~す!」」

 

 俺が弁当を用意すると、セージとセーラは美味しそうに食べ始めた。それを見て頬が緩みそうになるが、俺も自分用の弁当を食べる。

 

「ほわぁ~、随分と凝ったお弁当だね」

 

「兵藤君のお母さんはかなりの料理好きと見た」

 

 明智と里美が俺達が食べてる弁当見てそう言うも――

 

「いいや、この弁当は全部俺が作ったものだ」

 

「「「!?」」」

 

 真実を教えた途端、二人だけでなく桜小路も何故か驚愕していた。

 

 クレープだけじゃ物足りないと思った俺は、三人に自分が作った料理のおかずをあげると――

 

「す、凄く美味しい……!」

 

「僕は料理が得意じゃないけど、何故か途轍もない敗北感に襲われている……!」

 

「何か、女として負けたような気が……」

 

「「?」」

 

 まるで大敗したかのような明智達女性陣の姿に、弁当を食べているセージとセーラが全く理解出来ないように見ているのであった。




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