再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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フライング投稿です。

達也一団のお泊り会に参加する話を考えましたが、無しにしました。

今回は夏休み明けの話です。

それではどうぞ!


夏休み編 技の披露会

 魔法科高校の夏休みが終わり、二学期目が開始された。

 

 登校早々、久々に会ったクラスメイト達から挨拶された他、俺が九校戦で活躍した件について色々と訊かれる破目になった。

 

 アイス・ピラーズ・ブレイクで使用した魔法、モノリス・コードで使った技等々、質問の嵐である。詮索はマナー違反だと何とか窘めたが。

 

 まぁ、クラスメイト達がああなるのは無理もない。一科生が中心で参加していた九校戦に、はみ出し者みたいに参加した二科生の俺が、新人戦男子アイス・ピラーズ・ブレイク準優勝の他、(代理参加として)新人戦モノリス・コードで優勝したのだ。技術スタッフとして参加した司波も含めて。一科生達から、あからさまに補欠(ウィード)と蔑まされていた二科生達としては、これほど愉快な話は無いのだろう。

 

 対して新人戦スピード・シューティングで準優勝した森崎を除く、他の一年男子一科生達は全員予選落ちの結果だ。北山から聞いた話だと、予想通りと言うべきか、殆ど肩身が狭くなっているようだ。コレを機に少しは省みてくれると良いんだが。

 

 それ以外に、他の一科生至上主義者達からもチョッと面白い反応をされた。今まですれ違った際に二科生と言う理由で嘲笑していたが、自分を見た途端に忌々しそうな眼をしていたのだ。それに気付いた俺が振り向くと、向こうは途端に目を逸らして逃げるように去ると言う事をしている。九校戦で俺の実力が判明したから、下手に手を出せば藪蛇になると理解したに違いない。

 

 因みに同行していた修哉と紫苑は、今までと異なる展開を見た事で、少しばかり唖然としていた。優秀だと自負していた一科生(ブルーム)があんな事をするとは思いもしなかったかのように。

 

 尤も、これで一科生達が二科生に対する態度を改めようだなんて微塵も思っていない。九校戦はあくまでイベントの一つに過ぎないし、長年根付いた差別意識を改善するのには相応の時間を要する。教育者である教師陣が率先してやってくれれば話は別だが。

 

 九校戦前にも言ったように、二科生の俺と司波が大成果を挙げて、一高の悪しき伝統を壊す切っ掛けになれば良いと思っている。例えば、生徒会長の真由美が前々から考えていた、『生徒会役員一科生限定廃止案』を通す事が出来るかもしれないとか。

 

 それを考えると、もしかしたら彼女はこうなる事を望んで俺を選手として参加させたのかもしれない。いくら頑張っても自分は一科生だから、二科生の誰かが活躍するのを証明しなければ周囲が納得しないだろうと踏まえて。その結果、俺だけでなく技術スタッフの司波や、そして幹比古の二科生三人が新人戦モノリス・コードで優勝したから、真由美にとって非常に嬉しい誤算となった。この機を絶対無駄にしないよう、何としてでも廃止案を認めさせるだろう。

 

 是非とも頑張ってくれと他人事のように応援していた俺だが、チョッとばかり後悔する事となってしまう日が来るのは、もう少し後になってからだった。

 

 

 

 

 

「いいな修哉、絶対にその場から微動だにするなよ。下手に動いて当たり所が悪かったら気を失うからな」

 

「わ、分かった……」

 

 放課後のクラブ活動。

 

 第二小体育館の中央に立ち、剣道着を身に纏ってる俺は、対面してる修哉に向かって警告していた。

 

 今日は剣術部の練習日だが、俺と修哉、そして(正式になった)主将の壬生も参加している。

 

 春の事件以来、魔法系競技のクラブと非魔法競技系のクラブの間で、もっと交流を持つべきだと言う気運が高まったのだ。特に元々同じ競技で、ルール上、魔法を許容してるか許容してないかの違いで分かれていたクラブは、いつまでも殻に閉じこもらないでお互いの長所を積極的に取り入れていこう、と言う風潮が生まれた。

 

 その先駆をなす事となったのが剣道部と剣術部で、いの一番で相互交流に参加しているのだった。恋人同士である壬生と桐原としては、一緒にいる時間が出来たと言う口実になっただろう。俺を含めた、それに気付いている者達は敢えて何も言わない事にしてる。

 

 俺と修哉は壬生の付き添いである。いくら交流すると言っても、彼女一人だけが剣術部の練習に参加するのは大して意味が無い為、いつの間にか剣道部の有望株とされている俺と修哉を壬生が連れて来たのだ。

 

 以前に新入部員勧誘の件で剣術部と揉めごとを起こした俺が行くのは不味いんじゃないかと危惧するも、意外とあっさり終わっていた。最初から大歓迎していた桐原以外にも、他の剣術部員達は俺を格下の二科生とは見ていない。それどころか以前の件について謝られた程だ。

 

 加えて、俺が剣士としての相当な実力者であるのを知り、更には九校戦のモノリス・コードで披露した技を見た事で、相応の敬意を払うようになったらしい。

 

 余りにも予想外過ぎる展開に、俺は思わず拍子抜けしてしまった。危惧していた自分がバカらしくなってきたと。

 

 そして現在、新人戦モノリス・コード決勝戦で一条将輝を倒す時に使った技――九頭(くず)(りゅう)(げき)を再現しようとしている。

 

 本当は剣道部の練習の時にやるつもりだったんだが、桐原を筆頭に剣術部員達から乞われたのだ。『あの時の技をもう一度見せて欲しい!』と頭を下げてまで。内心ドン引きしてしまったのは内緒だ。

 

 断ろうとするも、剣道部主将の壬生も恋人である桐原の事を思ってか、一緒になって乞われた為、やらざるを得なくなってしまった訳である。

 

 とは言え、あくまで見せるだけだ。教えるつもりは一切無い。

 

 故に少々時期は早いが、修哉に身を以て経験してもらう為に俺と対面させている。

 

 その最中、壬生と桐原たち剣術部員一同は、まるで俺の言動を見逃さないよう神経を集中してるのか、物凄く真剣な表情で無言のまま凝視していた。

 

「先ずは剣術における、斬撃の種類について教えておこう」

 

 剣術は剣道と違って斬撃が異なっている。剣道家である修哉には前以て知っておかねばならない。

 

「上から下の『切落(きりおろ)し』、相手の左肩から右脇腹の『袈裟斬(けさぎ)り』、相手の右肩から左脇腹の『(さか)袈裟(げさ)』、右から左水平の太刀筋『胴』、左から右水平の太刀筋『逆胴』、袈裟切りの逆で下からの『(ひだり)斬上(きりあげ)』、逆袈裟の逆で下からの『右斬上(みぎきりあげ)』、股下から上の『逆風(さかかぜ)』、そして最後に中央の『刺突(つき)』だ」

 

 俺が説明しながら斬撃の仕草をしてると、修哉はジッと凝視していた。

 

 チラッと桐原達へ視線を向けるも、向こうはうんうんと頷いているから、間違ってはいないと判断して良いだろう。

 

「どの流派のいかなる技であれ、斬撃その物はこの九つ以外には無く、回避や防御もこの九つに対応し展開される。だが――」

 

「っ!」

 

 途端に持っている竹刀を構え、神速で突進していく俺に、修哉が途端に目を見開く。

 

 まるで風が通り過ぎたかのように、修哉から少し離れた位置で止まって俺は着地する。

 

 当然、ただ単にすり抜けた訳ではなく、突進中に竹刀で(かなり加減した)九つの斬撃を同時に打ち込んでいた。これは当たった本人にしか分からない。

 

『……………………』

 

 因みに壬生や桐原たち剣術部員は言葉を失っているように、呆然と立ち尽くすだけとなっている。

 

「自身のスピードを最大限に発動させ、九つの斬撃を同時に打ち込む故、防御、回避ともに不可能だ。これが一条将輝を倒した神速技――『九頭(くず)(りゅう)(げき)』の正体だ。理解出来たかな、修哉?」

 

「………はぁっ、はぁっ……!」

 

 振り向きながら言った直後、修哉は途端に息が上がっていた。

 

「こ、これが、リューセーの、秘伝、奥義……!」

 

 信じられない物を体験したかのように言っている修哉。

 

 いや、これは別に俺の秘伝奥義じゃないぞ。前世(むかし)の頃、とある漫画を見て再現した技に過ぎないから。と言ったところで、修哉だけでなく、未だに固まってる壬生達は信じられないだろうが。

 

 まぁどちらにしろ、修哉が会得するとやる気を出してくれるなら構わない。

 

 直後、先程まで呆然と立ち尽くしていた壬生達が覚醒したかのように騒ぎ始めていく。

 

 

「す、すげぇ!」

 

「一年なのに、あんな凄い技が出来るのかよ!?」

 

「何でアイツ剣術部に入ってくれなかったんだよ~!?」

 

「み、壬生、後生の頼みだ! チョッとでも良いから兵藤を剣術部に貸してくれ!」

 

「だからダメだって言ってるでしょ、桐原君!」

 

 

 何かもう、この後に練習が出来ないと思われる程の大騒ぎだった。

 

 今の内に退散するかしないかと少しばかり考えている中、突如体育館の扉が開いた。

 

 

「これは一体……?」

 

「ちょっと貴方達、何騒いでるの!? 外からも聞こえてるわよ!」

 

 

 気付いた俺が視線を向けると、風紀委員として活動している司波達也の他、二年の千代田花音がいた。

 

 そう言えば摩利が言っていたな。確か風紀委員長の後釜を千代田にする予定とか何とか。

 

 だとすると、大して接点の無い筈の司波と一緒に行動しているのは納得出来る。まぁそれでも、てっきり摩利が直接指導するかと思っていたが。

 

 風紀委員二人の登場により、先程まで騒いでいた壬生や桐原たち剣術部員は途端に罰が悪い表情となっていくのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

「成程。騒ぎの原因は兵藤だったのか」

 

「おいコラ、勝手に人を元凶扱いするなよ」

 

 司波と千代田に状況を教えようと、俺が一通りの説明していた。

 

 話を聞いて納得した司波が俺を元凶だと勝手にまとめている事に睨むも、当の本人は全く動じていない。

 

「全く。司波君に巡回ルートを教えてもらって早々、次期風紀委員長として危うく検挙するところだったじゃない」

 

「たったそれだけの事で検挙されたら、他のクラブ活動も黙ってはいませんからね、千代田先輩」

 

 少々騒いだだけで風紀委員が検挙する。そうなれば抗議や苦情が相次ぐ事になるだろう。

 

「しかし、こんなクラブ活動で技を披露しても良かったのか?」

 

「問題無い。盗み見されるより遥かにマシだからな」

 

「………………」

 

 俺が意味深のように言い放った事で、司波は途端に無言となった。如何にも心当たりがあるかのような反応だ。

 

 もしも九頭龍撃を披露する情報を耳にしていたら、コイツは間違いなく覗き見していただろう。誰にも気付かれないよう、またしてもあの妙な魔法を使って。

 

 俺が既に分かっていながらも、敢えて見過ごされている事に司波は全く気付いていない様子であった。尤も、気付かれたら必要以上に警戒されて凄く面倒な事になる為、放置する選択しかないのだが。

 

「???」

 

 笑みを浮かべる俺に対し、無言で見る司波。

 

 この光景に千代田は意味が分からないかのように困惑している様子だ。

 

 そして、司波は途端に諦めたかのような嘆息をした後、別の話題を出してきた。

 

「ところで兵藤。話は変わるが、夏休み中にチョッとした噂を耳にしてな」

 

「なんの噂だ?」

 

 一体何を訊いてくるのかと思いきや――

 

「お前が一条と会う為に金沢へ行って、ピラーズ・ブレイクの再勝負をしたと言う噂は本当なのか?」

 

 予想外の質問をして来た事に俺は思わず過敏な反応をしそうになるも、何とかグッと堪える事に成功した。




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