再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回もフライング投稿です。


夏休み編 生徒総会

「それでリューセーくん、昨日はどうだった?」

 

 翌日の朝。

 

 校門へ辿り着いて早々に摩利が俺を見た途端、有無を言わせない雰囲気を醸し出しながら風紀委員会本部へ連れて来た。

 

 恐らく午後から大変忙しくなるのを考慮して、なるべく時間に余裕がある朝の内に済ませたいんだろうと思われる。

 

 因みに予定してる生徒総会・立会演説会・投票は、午後の授業を全て潰して行われる。現代の高校としては、充分な一大イベントだから当然と言えよう。

 

 そして摩利の質問についてだが、態々問い返す必要は無かった。

 

「そうですね。七……いや、八回ほど襲われ掛けましたね」

 

 俺の返答を聞いた瞬間、摩利はやはりと言わんばかりに顔を引き締めていた。

 

 だが――

 

「全部俺が、ですけど」

 

「……はぁっ?」

 

 対象が真由美でなく俺だと分かった瞬間、途端に表情が変わった。

 

 そうなるのは無理もない。彼女としては、てっきり反対派が真由美に襲い掛かるんじゃないかと言う不安が的中するも、実は俺だったという返答を聞けば気が抜けてしまうのは致し方ない事だ。

 

「いや~、まさかあそこまでだったとは知りませんでしたよ」

 

「……すまないが、分かり易く説明してもらっても構わないかね?」

 

「ファンクラブですよ。真由美さんの、ね」

 

 片言のように単語だけ告げると、摩利はすぐ納得顔になった。

 

「なるほど。つまりは勘違いで嫉妬された、と?」

 

「ええ。最初一緒に歩いてる時までは敵意の視線で済んでいたんですけど、真由美さんが突然俺の腕に引っ付いてきた瞬間、殺意の視線へと変貌しまして」

 

「ちょっと待て。それはそれで問題のような気がするんだが」

 

「ああ、それは大丈夫です。摩利さんが考えてるような事じゃありませんから」

 

 真由美が俺の腕に引っ付いたと聞いて摩利は頬を引き攣らせるも、即座に違うと否定しておいた。

 

 それでも聞きたそうな表情になるも、俺は続きを言おうとする。

 

「流石に本気で襲い掛かる度胸まではありませんでしたよ。バカな真似をして真由美さんに嫌われたら、それでお終いですからね」

 

「確かにな……」

 

「尤も、例えそうしたところで俺が一人残らず伸してましたがね」

 

「彼等が踏み止まってくれて助かったよ」

 

 モノリス・コードを通じて俺の実力を知ってる摩利は、ファンクラブの連中が賢明な判断を下した事に内心感謝してるようだ。

 

「だがそれとは別に、何故真由美が君に引っ付いていたのかを是非とも知りたいんだが」

 

「午後の生徒総会が終わった後に分かりますよ」

 

「何? どう言うこと――」

 

 更に訊こうとする摩利だったが、朝の予鈴が鳴った事で中断となった。

 

 午前の授業が始まって以降、彼女は休み時間中に俺を再び呼び出す暇が無かったのか、そのまま午後を迎える事となる。

 

 

 

 

 

 そして午後。予定していた生徒総会が開始され、生徒一同は講堂に集まっている。

 

 講堂の各場所に総勢九名の風紀委員が配置されており、全員が緊張感を持って警備中だ。

 

 いや、一名だけは別だった。演壇の下手にいる司波だけは、生真面目な態度を見せていながらも、大してやる気が感じられない。

 

 アイツからしたら、今行っている生徒総会の内容を見て、実に下らないと思ってるんだろう。

 

 尤も、それは俺も同感だった。別に真由美が通そうとしてる『生徒会一科生限定廃止案』に対してじゃない。それを反対している連中に関して、だ。

 

 先に言うと、今回の廃止案はそこまで大して意味の無い物だ。生徒会長と言う役職は別としても、「副会長」や「書記」、そして「会計」の肩書は卒業しても大した意味を持たない。はっきり言ってお飾り同然な経歴である。

 

 当然、それは反対派の連中も知っている。普通に考えたら、何故あそこまで頑なに否定しようとするのかと疑問を抱くだろう。その証拠に、俺の隣に座ってる修哉と紫苑が思わず小声で口にしていた。

 

 答えは簡単。あれは単に認めたくないのだ。二科生が生徒会役員になって欲しくないと言う面子の問題、プライドの問題でしかない。俺がそれを言えば、修哉達は確実に呆れるだろう。

 

「七草会長! 貴女の本当の目的は、司波達也と兵藤隆誠の二科生二人を生徒会に入れることじゃないの!?」

 

 ヒステリックに叫ぶ反対派の女子生徒が、突然の名指しをした事で、さっきまで眠そうに見ていた俺は一気に覚醒した。

 

「知ってるのよ! 昨日の帰りには、兵藤隆誠と駅まで一緒だった上に、腕を組んで歩いていたでしょう!」

 

 おいおい、よりにもよって此処でそんな話を暴露するなよ。

 

 因みに俺がいる場所は講堂の二階席だから、一階席と舞台にいる生徒達には見付からない。けど、俺の隣に座ってる修哉と紫苑の他、クラスメイト達が信じられないように凝視している。ついでに、同じく二階席にいる1-Eのレオ達も同様に。

 

 如何でも良い……と言うのは失礼かもしれないが、真由美の傍にいる服部が凄い反応をしている。もし俺を見付けていたら、確実に睨むのではないかと思うほどに。

 

「あと他にも、そこにいる司波達也を度々生徒会室へ招いているでしょう!」

 

 うわ、あの女子生徒、自分から地雷踏んでるよ。

 

 そんな事を言えば――

 

「仰りたい事はそれだけですか?」

 

 あの超絶ブラコン娘が黙っちゃいないだろうに。

 

 いつの間にか立ち上がってる司波妹は、冷ややかな一言を告げた後、冷たい視線を送っている。それにより好き勝手に叫んでいた上級生は沈黙するどころか、言葉を発せなくなり恐怖している。

 

 その所為で講堂の空気は完全に冷え切っていた。二階席にいる修哉達にも充分行き届いており、司波妹が発してるプレッシャーに息を呑んでいる。俺にとっては感情を抑えきれない幼児の癇癪程度にしか思えない為、呆れながら見ているだけだ。

 

 結局のところ、司波妹の威圧によって反対派の連中は妨害できなくなり、生徒会役員資格制限撤廃議案は賛成多数で可決される事となる。

 

 

 

 次は中条による選挙演説が始まろうとする。

 

 立候補者が一人しかいないから所信表明演説も同然だが、選挙である為に信任投票が行われる事になっている。しかも投票用紙を使った投票で。今の時代は電子投票をやってもおかしくない筈だが、こう言ったイベントは伝統に沿ってやるようだ。

 

 (司波から与えられた餌によって)ヤル気と緊張が入り混じった表情で中条が演台に向かい、一礼したところで大きな拍手が起こった。

 

 真由美の演説とは違い、此方は随分親しみがある雰囲気だった。それだけ中条は生徒達に好かれている、と言う証拠なんだろう。

 

 だが、それとは別に意外な能弁で「政見」と「政策」を発表しており、これには俺も少しばかり驚いてしまった。思ってても口には出さないが。

 

 内容を聞くだけで中条が生徒会長になっても問題無いだろうと思いきや、またしても面倒事が起きてしまった。司波妹のプレッシャーで威圧されていた反対派の連中が、懲りてないかのように低レベルな野次を飛ばしたのだ。

 

 恐らく真由美とは違い、小動物タイプの中条ならばスルーしてくれる、とでも思ったんだろう。これには俺だけじゃなく、修哉と紫苑も幼稚なやり様を見て完全に呆れていた。

 

 向こうが予想していた通り、彼女は野次に対して何も言わなかったが、ここで予想外な事が起きてしまった。中条を応援している生徒達が激昂し、反対派に掴みかかって大騒ぎとなってしまった。しかも会場の真ん中あたりで小競り合いが生じてしまう程の。

 

 真由美たち生徒会メンバーが何度も声を張り上げて諫めようとしても、小競り合いをしてる生徒達には全く聞こえてないどころか、掴み合いがどんどん広がっていく一方だった。更には野次もどんどん聞くに堪えない物になっていく始末。

 

「……馬鹿者共が」

 

 低レベル極まりない争いに俺……いや、聖書の神(わたし)は不快な気分となって思わず小声で罵った。

 

 因みに自分がいる二階席は一階の中央と違って暴動は起きていない。

 

「あれが一科生のやる事かよ……」

 

「見ててバカらしくなってくるわね……」

 

 二階席にいる者達が呆然と眺めている中、修哉と紫苑は中央で繰り広げている争いに思った事を口にしていた。

 

 これには流石の風紀委員達も実力行使に出ざるを得ない筈だ。怪我をさせても仕方ない程の決断を下さなければ、これを止める事は無理だろうと。

 

 だが、向こうの決断は遅きに失する事となった。

 

 反対派の連中が、あろう事か今度は俺と司波の中条との仲を邪推する極めて下品な野次を飛ばした瞬間――

 

「静まりなさい!」

 

 聞き覚えのある叱声が不思議と大音量のような錯覚が起きた。

 

 俺や修哉達だけでなく全生徒が目を向けると、途轍もない光景が映っていた。

 

 舞台の上には再び司波妹が立っており、彼女の全身から想子(サイオン)光の吹雪が荒れ狂っていた。まるで世界を浸食するような程の凄まじい干渉力を感じる。

 

 司波深雪は並の魔法師と違い、凄まじいオーラを秘めているのは知っているが、まさか此処までとは思わなかった。尤も、感情を抑えきれずに想子(サイオン)を暴発してしまう時点で、まだまだ未熟だと言わざるを得ない。

 

 まぁ今はそんな事より、あの未熟(ばか)者の暴走を一刻も早く止めないと不味い。このままだと、俺達のいる講堂が氷漬けになってしまうから。

 

 一瞬でそう考えた俺は叱責の意味も込めて『指弾』を使おうと、右手を軽く上げ、同時に中指を内側に丸め親指で押さえ、そして放った。

 

「きゃっ!」

 

 俺が放った指弾は想子(サイオン)光の吹雪を簡単に突き抜け、そのまま司波妹の額にクリーンヒットした。それにより彼女が放出していた想子(サイオン)は途端に霧散していく。

 

 同時に衝撃が少々強かった為か、彼女が後ろに倒れようとする寸前、いつの間にか壇上に立っていた司波達也によって支えられた為に事無きを得ている。

 

 妹の暴走を止める為に背後を取る為に司波が移動していたのは分かっていた。だから俺は彼女に指弾を放つ際、アイツの方へ倒れ掛かるよう、少し衝撃を強めにして撃った。その結果、司波妹は兄に支えられると言う結果になった。

 

 これには流石の司波も気付いていないだろう………と言いたいが、そうはいかなかったようだ。妹が倒れた瞬間、司波は二階席の方へ向け、真っ先に俺を睨んでいた。と言ってもほんの一瞬で、今は妹の身を案じるような会話をしている最中だが。

 

 二階席にも多くの生徒達が座って誰かを特定するのは難しいと言うのに、司波の奴は即座に俺を捉えていた。あの妙な眼を使った反応は無かったから、恐らく警備をしてるフリをしながらも俺を捜していたんだろう。

 

 アイツの俺に対する警戒心は相変わらずのようだ。いや、それどころか更に跳ね上がっているかもしれない。その警戒心によって、司波妹が倒れた原因が俺だと分かったのだから。

 

 後で呼び出される事になるだろうなと思いながらも、全校生徒は司波兄妹の見つめあいに釘付けとなっていた。

 

 その後、会場は完全な秩序を取り戻し、演説会は粛々と予定を消化し、俺を含めた生徒達は投票箱に票を投じる事となる。その際、俺は投票用紙に面白い名前(・・・・・)を書かせてもらったが。

 

 投票結果についてだが、翌日の朝に発表される予定となっている。結果は既に分かり切ってても、明日は少し面白い事になるかもしれないと俺は予想していた。

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