再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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今回は非常に短い内容の為、幕間としました。

フライング投稿です。


横浜騒乱編 幕間

 あれから数日が経ち、論文コンペの開催が差し迫って来た。

 

 そんな中、学校に探りを入れていると思われる式神の存在が消え失せていた。大亜連合から送り込まれたスパイ達を拘束してると九島が言っていたので、連中はもうそれどころじゃ無くなったのだろう。

 

 これにて事件解決したと考えるべきなんだが、俺はとてもそんな風に思えない。寧ろ、まだ終わらないどころか、これから何か本格的に起こるんじゃないかと危惧している。呂剛虎のいる特殊工作部隊をスパイとして送り込んでくる時点で、大亜連合は何か良からぬ事を企んでいると見るべきだ。加えて、そのスパイを拘束されて連中が大人しく引き下がるなんて考えられない。再び日本に侵攻する計画を立てているなら猶更に。

 

 とは言え、それは九島のいる国防軍が考慮すべき案件だ。学生の身分である俺が一々口出しする事じゃない。万が一に向こうが俺達に何かやらかすのであれば、軽く捻り潰せば良いだけの話だ。喧嘩を売ってくる際の代償はそれなりに支払ってもらうがな。

 

 

 

 西暦2095年10月29日

 

 

 

「やはり今日もダメでしたか」

 

「ええ。この前の件で中々許可が出なくて……家の名前でごり押しできることでもないし」

 

 土曜日の放課後。

 

 生徒会が明日に控えた論文コンペの準備をしてる中、俺は別行動をしていた。真由美に会って、鑑別所にいる関本の再面会が出来たかを尋ねるも、思った通りの結果となった事に俺は内心嘆息している。

 

 呂剛虎による襲撃事件の後、関本は錯乱状態に陥っていた。最初は摩利が使った魔法が原因じゃないかと思うも、当の本人が違うと自信を持って断言した為、命を狙われた事によるパニックという結論である。関本も命を狙われる事に心当たりがあったからなのか、あそこまでの錯乱状態に陥ったかもしれないが。

 

 それ等が重なった事で、今も面会出来る状況ではなかったようだ。

 

「でも、明日の午前中には何とか行けるようになったわ」

 

「明日ですか……」

 

 さっきも言った通り、その日は論文コンペ開催日当日だった。生徒会は各校の顔合わせも兼ねて、八時に現地集合となっている。それは当然、副会長の俺も行かなければならない。

 

 けれど関本の面会と同時に重なっている為、俺はどちらかを優先するしかなかった。因みに一高のプレゼン予定は最後から二番目、午後三時からとなっている。生徒会が論文コンペに対応するのは中条となっている為、俺が遅れても何の支障もないから大丈夫――

 

「だからリューセーくんは明日、論文コンペの会場へ行って。後の事は私と摩利でやるから」

 

「え?」

 

 と思いきや、真由美から論文コンペを優先するよう言われた事で面喰らってしまった。

 

 こんな事を言ってはいけないんだが、俺は論文コンペに大して興味は無い。あくまで生徒会の仕事として見てるだけに過ぎないから、個人的に関本の尋問を優先したいと思っていた。

 

 それをいきなり護衛をしなくていいと言われたら、流石にチョッとばかり文句を付けたくなる。元はと言えば、俺に護衛をして欲しいと頼んできたのは、目の前にいる真由美なのだから。

 

「あの、真由美さん。此処まで来てその様な事を言われたら――」

 

「言いたい事は分かっているわ。本当なら私としても今日中に済ませたかったんだけど、生徒会副会長のリューセーくんが論文コンペ当日に遅れてくるのはチョッとね。それに、あーちゃんにも余計な心配を掛けたくないから」

 

「それは……」

 

 真由美の言い分は十二分に理解出来た。

 

 今回行われる論文コンペに生徒会長の中条は審査員の一人として任命されている。それを知っている真由美は、彼女を安心させるよう俺に会場へ向かって欲しいのだろう。

 

 加えて、今の八王子特殊鑑別所は呂剛虎の襲撃があって、俺が護衛をしなくても必要無いほどの警戒態勢を敷いているらしい。そう考えると、俺が行く必要が無いのはある程度の納得が出来る。

 

「……分かりました。ですがその代わり、後で教えて下さいね。でないと護衛として頼まれた意味がありませんから」

 

「ええ、勿論よ」

 

 護衛を諦めた俺は、明日に備えての準備をしようと、生徒会室に戻った。

 

 因みに俺が早めに会場へ行く事を知った修哉と紫苑は、自分の付き添いとして一緒に行く約束をしていたのだが、そこで予期せぬアクシデントが起きてしまった。何と二人揃って論文コンペ前日に風邪を引いてしまったのだ。

 

 修哉だけでなく紫苑も慣れない訓練をずっと続けさせたのが原因か、それ等の疲労が一気に襲い掛かって二人の体調が急に悪くなってしまった。一両日は安静にしなければならないという診断結果により、二人が明日の論文コンペに欠席となってしまったのは言うまでもない。

 

 二人に無理をさせてしまった俺は罪悪感を抱くも、これは却って幸運だったと考えを改める事となる。明日の論文コンペで、俺が懸念していた大亜連合の侵攻が的中するとは思いもしなかったのだから。




本当でしたら修哉と紫苑の活躍する場面を考えましたが、それだとリューセーの動きを制限する事になってしまう為、敢えて退場させる事にしました。

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